2007年4月,韓国Gravityから「
ローズオンライン エボリューション」(以下,ローズオンライン)の全権利を取得したフェイス(
関連記事)。同作のソースを自社で開発できることになり,その後の展開が楽しみだった本作だが,TGS 2007会場において,
意外な形で「ローズオンライン」を目にすることになった。
場所は,ビジネスソリューションコーナーのボーンデジタルブース。同社では,デジタルクリエイターを支援し,CGソフトウェアの販売やCG関連の書籍を出版している。そこでどこかで見たようなコスチュームのお姉さんが。「これはもしかして?」とブースを覗いてみると,案の定「ローズオンライン」の名前があったというわけである。
この出展について,ブースを担当していた同社 取締役
石橋俊雄氏に話を聞いてみると,どうやらフェイスから提案された企画で,技術系の学校などに,学生の研究のために本作のサーバー環境を提供するというものだという。
さらに話を聞いてみると,フェイスは日本のネットワークゲームやSNSの環境を自分で構築するのは大変だろうということで,自社のもつノウハウを隠すのではなく,むしろ大学などの若い人に研究してもらいたいと考えているという。ボーンデジタルは,サーバー環境の提供やセットアップの指導をする,窓口になるとのこと。これには両社共通の「日本の(オンライン)ゲームがもっと世界に広がってほしい」という思いがあるとのことだ。
ローズオンラインは,デフォルメされたキャラクターが女性にも受け入れられやすく,オンラインゲームの構築を試してもらうにはいい環境だと話す。
さて,具体的に何をどうするのかというと,学校へのオンラインゲーム(ローズオンライン)のサーバー/インフラ環境を提供し,学内専用のローズオンラインを構築できるようにするという。そして,学生が作成したキャラクターやモーションを学内サーバーに実装して,自分達で実験できるという,まさにオンラインゲームを作る経験を得られるわけだ。また,学生が作成したアイデアやデータは,フェイスの審査は必要になるものの,本サーバーに実装される可能性もあるという。これはこの企画が,フェイスと学校との共同研究という形であるからこそ実現するものだ。
石橋氏は「日本にもっと強くなってほしい。開発できる人が増えてほしい」という思いを繰り返し語ってくれた。たしかに現在,日本では開発者不足の声を聞くことが少なくない。海外を見ると,テクノロジーの進歩と共に開発者の技術も向上しているのを感じるが,日本ではそれ以前に,新しい開発者が育つ環境が整っていないように感じられる。結果,技術者の数は伸びず,少ないリソースは,オンラインゲームを含めてゲームの開発に行き届かない,ということになるのではないか。
なお今回の出展の目的は,販売ではなく,この企画を知ってもらうことが目的とのこと。そもそも,この企画ではフェイスにもボーンデジタルにも利益はないが,業界が広がるし,元気になるじゃないですかと熱く話してくれた。
日本でクリエイターを目指す人に,実際に商業として運営されているサーバーに触れ,楽しく勉強してほしいと語っていた。
ゲーム関係だけで付き合うのではなく,異業種の人達とコミュニティを作るという考えを,フェイスは持っているという。また,ボーンデジタルとしては,一人でも多くの優秀なエンジニアやクリエイターの育成が,日本の将来を担うと考えているとのこと。いずれは,「ローズオンライン」のサーバー環境で育成されたエンジニア/クリエイターが開発した,新しいオンラインゲームが登場する日がやってくるかもしれない。