
連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第844回「買えました。そして負けました」
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私は次の日に行われる試合のことで頭がいっぱいだった。とはいえ,私はプロレス一本で活動しているわけではない。別の用事で池袋にいた。そしてそこでの打ち合わせを終え,帰路に。
頭を切り替え,次の日の試合について考えていた。次の日,私はアメリカからやってくる選手とのタッグマッチを控えていた。世界最高峰のプロレス団体WWEを経て,今は同じく世界2位のプロレス団体AEWに所属する2人組。向こうでは人気タッグチームらしいのだが,どうにも情報が入ってこない。この動画時代において,検索してもなかなか試合の動画が見つからない。
前情報として伝えられているのは一人がサウジアラビア系で初めてWWEとの契約を勝ち取った人物で,もう一人が身長198cm超えの筋骨隆々の黒人選手。正直,恐怖である。高スペックの対戦相手であることは分かっているのに,対策ができない。
そんな時だった。同学年でもあり,友人でもあるこの連載の前担当氏からのメッセージが届いたのは。
「池袋の家電量販店で条件付き先着販売をやっていたので,Nintendo Switch 2買えました。つって帰宅したら家の隣の店でも売ってました。だいぶ買いやすくなりつつあるっぽいですね」
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……なんですと!? 1時間前まで池袋にいたのに。今さらそんなことを言われても。私としてはどうにかして明日の試合の対策を練らないと,場合によってはケガをしてしまう状況なのである。
試合のこと以外考えている暇が……急きょ家を出たよね。メッセージを受信したのは17:26。私は,18:15には最近買ったチャリンコに乗っていた。買ってから1か月間,梅雨を理由に乗っていなかったわけだが,この時のために私はチャリンコを買ったのだきっと。
こうしてチャリンコに乗って10分ほどの最寄りの家電量販店に駆け込んだ。大型店舗ではなく,2階と3階に商品を置いてある規模。この店舗の閉店時間は19:00。到着時点で時刻は18:30。
私が店に着いた時には,もう軽く閉店作業を始めている店員さんもちらほらいた。そして私は衝撃的な事実を知ることになる。なんとこの店舗,ゲイムコーナーが存在しないのだ。恐る恐る店員さんに尋ねる。「あ,うちにはゲイムコーナー無いです」と,心なしかちょっぴり誇らしげに言い放たれる。
もう今日はダメだ……こちとらチャリンコ,ほかの店舗をハシゴする気力もねえ……こんなことなら家で明日の対策を練れば良かった。30分前の自分に「決してブレるな!」とアドバイスをしてやりたい。迷うな30分前の私。お前はプロレスラーだぞ! 明日の勝利のために,できるだけの準備をするのがプロってやつじゃないのか!
いや……そもそも私がプロレスラーという職業を選んでなければ,こんな絶望感に押しつぶされることはなかった。24年前の私,プロレスで食っていこうなんて甘い考えは捨てるんだ! ……しかし時はすでに刻まれている。今の私は48歳のしがないベテランイロモノプロレスラー。試合の準備を放棄し,目先の最新電脳玩具に狂い店に行ったものの,そこは求めるものを取り扱っていないという,ケアレスミス。
「そうですか。万一にでもNintendo Switch 2があればと思って来たんですが……」
がっくりととうなだれながら絞り出す私。
「ありますよ」
誇らしげな店員は私に伝える。
私も答える。
「そうですよね,やっぱりそもそもゲイム取り扱ってないですもん……え?」
誇らしげな店員はさらに誇らしげに言う。
「実はですね,少しですけど入って来てるんですよ」
マジか!
まさかゲイムを取り扱ってない家電量販店に置いていようとは! 30分前の私に伝えたい。
「今欲しいと思ったものを全力で奪いに行かないでどうする! チャンスは人生で何度巡ってくるか分からないんだ! だから,ここぞという時には自分を賭けろ! そういう人生を歩みたいんじゃなかったのかよお前は!」と。
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家に帰り,風呂に入り,食事を済ませ,次の日の準備を済ませ。もう,明日の試合のことなど知ったことではない。私は夢を叶えた男なのだ。
明日の対戦相手は世界最高峰のプロレス団体で活躍したかもしれない。だが,Nintendo Switch 2は持ってないだろ? 私は持ってるよ。なので貴様らと対戦する前に,私はコイツを遊び倒してやるのだ! 徹夜でな! フハハハ!
高揚する私は,Nintendo Switch 2を箱からTake it out。手にしたNintendo Switch 2本体の左上のボタンを押し,文字通りSwitch it on。
初期設定画面。嬉々として,そして粛々と設定を済ます。続いて「まるごと転送」をやってみましょう。
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やっぱ互換性があるんでね。2さえあればNintendo Switchで遊んだゲイムも全部引き続き遊べるわけで。そうそう,Nintendo Switchにはたくさんのゲイムをダウンロード済みだから,「まるごと転送」しようにもNintendo Switch 2の容量が足りないかも? 確かmicroSDカードを刺せばいいんだったな……。と,そこで適当に家にあった大容量microSDカードを差す。
「このmicroSDカードは対応しておりません」
うん? 調べる。スマホで調べられる時代で良かった。なるほど。Nintendo Switch 2ではmicroSD Expressメモリーカードというものじゃないと使用できないと。うん。買ってない。microSD Expressメモリーカードがなくても「まるごと転送」はできるらしいけど,今すぐソフトを全部ダウンロードできないというのは,ちょっとやだ。
寝よう。明日試合だし。明日は勝って「週刊プロレス」の表紙を狙おう!
……しかし この写真が
表紙に使われることは
なかった
初対戦の相手チームとの死闘に
全てを出し尽くした
男色は
相手チームにウソのようにボロ負けした
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今週のハマりゲイム
PlayStation 5:「Winning Post 10 2025」
Nintendo Switch:「1f y0u're a gh0st ca11 me here!」
iOS:「ロードモバイル」
iOS:「ウイニングイレブン カードコレクション」
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