小型ゲームPCである「ROG GR6」をモバイルして,どこでもゲーム環境(ただし力技)を実現してみたのが,本記事の本題である
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出落ち感満載の写真からお届けしてみたが,いきなりいったいどこで何してるんだ的なカットに至った経緯から説明しておこう。
ROG GR6(型番:GR6-R034Z)
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:0800-123-2787 / 0570-783-886(平日9:00〜18:00,土日祝祭日9:00〜17:00)
実勢価格:15万〜16万8000円程度(税込,2015年11月28日現在)
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ASUSTeK Computer(以下,ASUS)といえば,以前はマザーボードやグラフィックスカードのメーカー,近年ではZenシリーズなどに代表されるモバイルデバイスやノートPCのメーカーとしてよく知られているわけだが,実のところ,日本でもけっこう前からゲームPCをコンスタントに市場投入しているメーカーだったりもする。ゲームPCだと最近は,ハイエンドのノートと,小型のデスクトップが力の入れどころとなっており,2015年秋は,「
PlayStation 4より小さいゲームPC」として,「
R.O.G.」(Republic of Gamers)ブランドの新作「
ROG GR6」「
ROG GR8」を市場投入してきた。本稿で取り上げるのは,より小さなROG GR6(型番:GR6-R034Z)のほうだ。
今回はASUSから「ROG GR6をもっと世に知らしめたい。手段は問わない」(意訳)と打診があり,思いつきで「消費電力的にモバイルできそうだなあ」と,そんなことを伝えたら,あっさりとOKが出たというわけである。「どこでモバイルするか」は一言も伝えていなかったが。
設置場所を選ばないゲームPC,ROG GR6
日本語フルキー配列のキーボードが付属することもあって,製品ボックスはけっこう大きめ
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いかにモバイルしたかは後述するとして,まずはROG GR6を概観してみよう。
ROG GR6は,本体と,ASUS製のゲーマー向けワイヤードキーボード「RA01」,そして日本で単体販売もされているゲーマー向けワイヤードマウス「ROG Sica」のセット品だ。あとは液晶ディスプレイと何らかのサウンド出力装置を用意すれば,すぐにゲーム環境として利用できるようになる。
ボックスを開けると,ASUSからのメッセージを確認できる。このあたりのギミックは,すっかりゲーム関連製品のお約束になっている感がある |
というわけで取り出した内容物。本体3点セットのほかに,定格120W仕様のACアダプターも付属する |
RA01はメンブレンスイッチ採用のキーボード。通電時は赤く光る。ROG Sica(Sica:シーカ)は主にMOBAプレイヤー向けとされる製品で,セパレート仕様の左右メインボタンを素早く連打できるというのが最大の特徴になっている。搭載するセンサーはPixArt Imagingの光学式である「PMW3310」だ
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本体はこの小ささ。写真で側板部に見える4つの突起は,横置き時の脚となるゴムだ
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本体は縦置き横置き両対応で,縦置き時のサイズは60(W)
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245(D)
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238(H)mm。横幅60mmという細さが大きな魅力だ。意外と奥行きおよび高さがあるので,安定感に不安を抱くかもしれないが,「ハ」の字型に広がっている側面パネルが設置面を捉えてくれるので,実のところ,不安を感じる必要は全然ない。素直に,フルタワーPCのようには置き場を取らないことのメリットを享受できる。
縦置き時に正面から見ると,上から下に向かって少し太くなるデザインで,ハの字状の側板が接地していると分かる(左)。右は横置き時のイメージ
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本体正面には,電源ボタンのほか,Steamの「Big Picture」モードへ入れるショートカットボタン,ヘッドフォン出力およびマイク入力用の3.5mmミニピン×2,USB 2.0(Type-A)
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2を用意。背面にはACアダプター接続端子と,USB 3.0(Type-A)
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4,1000BASE-T LAN
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1,DisplayPort
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1,HDMI(Type A)
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1,S/PDIF角形出力
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1,マイク入力とライン出力,ライン入力用の3.5mmミニピン×3を備えている。小型とはいってもそこはデスクトップPC,インタフェース類はとても充実している。
接続インタフェースは本体前面と背面に集中している。USBポートが6つあるのは,ヘッドセットなり実況配信用のWebカメラ接続なりを考えるとグッドだ。なお,写真で背面左端にあるのは側板のロック機構。いわゆるケンジントンロック対応だ
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縦置き時の底面(左)と天面(右)。両方にスリットがあるので,底面吸気,天面排気という理解でいい
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気になるスペックは,CPUがBroadwell世代のノートPC向けモデル「Core i5-5200U」(定格クロック2.2GHz,最大クロック2.7GHz,2C4T,共有L3キャッシュ容量3MB)で,GPUが「GeForce GTX 960M」(グラフィックスメモリ容量2GB)。メインメモリはPC3-12800 DDR3L SDRAM SO-DIMM 8GB
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2,ストレージは容量256GBのSSDと,総じてミドルハイクラスのゲーマー向けノートPC的な仕様といえるだろう。
側板を開けて,メモリスロットとストレージスロットにアクセスしたところ
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R.O.G.というか,ASUS製品らしいなあと思うのは,本体向かって右間側の側板を外すと,いとも簡単にメモリスロットと追加の2.5インチストレージスロットへアクセスできるところ。
国内仕様のROG GR6は標準のメインメモリ容量が16GBあるので,こちらをどうにかする必要はなさそうだが,「多数のゲームをインストールしたい,でも標準の256GBでは全然足りない」という場合に,SSDやHDDをさくっと増設できるのはとてもありがたい。
ストレージデバイスを追加するだけなら,自作経験ゼロでも,まず事故る心配は無用だろう(※念のため付記しておくと,側板を開けるところまでが保証対象。ストレージの取り付け自体は自己責任となる)。
分解したところ。あくまでも自己責任だが,難度は低いので,購入後,掃除をしたくなったときに安心かもしれない
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さて,ここでちょっとメーカー保証外の行為,分解を行ってみたい。PCの分解を行うとメーカー保証が失われるので,本稿の内容を参考に分解するときは,くれぐれも個人の責任において行ってほしいが,側板を外し,マザーボードを取り出してみると,筐体サイズの割に大がかりなクーラーがお目見えした。2本のヒートパイプを持つこのクーラーが,CPU(+オンパッケージのチップセット)とGPU,グラフィックスメモリを冷却しているわけだ。
マザーボードを取り出し(左),大がかりなクーラーと,標準の2.5インチSSDも外してみた(右)。クーラーがCPUとGPU両方の冷却を担当している。ちなみにこのクーラー,公称駆動音はアイドル時で20dBA,最大負荷時でも28dBAと低く,実際の動作音はとても小さい
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マザーボードに隠しUSB Type-A端子が用意されていたので何かと思ったら,IEEE 802.11ac対応のASUS製無線LANコントローラ用だった。ほどよいチカラワザで,実にいい |
Core i5-5200Uの記念写真。TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)15WのUltrabook用プロセッサで,チップセット機能がオンパッケージのSoC(System-on-a-Chip)だ |
GeForce GTX 960M。ダイ上の刻印は「N16P-GX-A2」だった。組み合わされるグラフィックスメモリチップはSK Hynix製の「H5GC2H24BFR-T2C」。512MBモデル4枚で容量2GBとなる
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写真上端がアナログ段。線が引かれて,独立している
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また,基板を見てみると,アナログサウンド段が独立し,ノイズの影響を受けにくくなっていたり,オーディオ用コンデンサを搭載していたりするのも分かる。ROG GR6は高音質と謳われるサウンド機能「SupremeFX」を搭載するというのが特徴の1つだが,確かにサウンド周りは専用設計になっているわけである。
ROG GR6によるどこでもゲーム環境は意外とカンタン
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ROG GR6のACアダプター |
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SUGOI BATTERY Ver.2 メーカー:システムトークス 問い合わせ先:問い合わせページ 直販価格:3万8880円(※2015年11月28日現在) |
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SUGOI INVERTER SW 250W メーカー:システムトークス 問い合わせ先:問い合わせページ 直販価格:1万2800円(※2015年11月28日現在) |
というわけで,ROG GR6を外へ持ち出す話となる。
前段でも紹介したとおり,ROG GR6のACアダプターは,120W出力仕様だ。つまり,シンプルに考えるなら,この点に対応できさえすればいい。
そこで今回,まず用意したのが,システムトークスの「
SUGOI BATTERY Ver.2」(型番:SGB-MDC300LP2)である。
本機は,持ち運びに堪える約2.5kgという重量で,75000mAhという大容量を実現したモバイルバッテリーだ。世間には「ノートPC向けの外付けバッテリー」もいくつか出てきているが,デスクトップPCであるROG GR6の出力に追いつくものというと,筆者の知る限りこれしかない。
シガーライターソケット(DC12V 最大20A)のほか,Mini DIN(DC12V/5V 最大4A),USB(DC5V 最大4A)に対応するため,シガーライターソケットにインバーターを接続し,そこにROG GR6のACアダプターをつなげば,さくっと使える簡便さがありがたい。
というわけでインバーターだが,ちょうどシステムトークスがスゴイバッテリー2対応製品「
SUGOI INVERTER SW 250W」(型番:ACI-SG250SW)をリリースしたタイミングなので,これを使うことにした。
本機は,AC100Vを正弦波で出力できるだけでなく,バッテリー電圧が9Vまで降下しても動作するため,SUGOI BATTERY 2のバッテリー容量ギリギリまで利用できるのがポイントだ。ちなみに,変換効率は90%が謳われている。
On-Lap 1303H
メーカー:GeChic
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) 03-5812-6131(平日9:30〜12:00,13:00〜16:30)
実勢価格:2万9000〜3万5000円程度(※2015年11月28日現在)
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ディスプレイは,販売代理店のテックウインド扱いとなる台湾GeChic製の「
On-Lap 1303H」を選択した。
On-Lap 1303HはUSB給電なので,ROG GR6のUSBポートで電力を賄えることと,USB給電ながらHDMI入力に対応した(※別売りケーブルを使えばMini DisplayPortにも対応)「普通の」ディスプレイとして使えること,そして,13.3インチワイドで解像度1920
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1080ドットのIPS液晶パネルが,“安物IPS”とは一線を画す,きちんとした発色を実現できていることがチョイスの決め手だ。
もう1つ,通信環境としては,4Gamerの機材である「Wi-Fi WALKER WiMAX 2+ HWD15」を使って,WiMAX 2+接続を行っている。まあ,モバイルルーターであれば何でもいいだろう。
三笠の後部艦橋でセットアップ中のROG GR6。ちなみにマウスパッドなしでいけるかと思ったらマウスのセンサーが上手く反応しなかったので,ここではASUSの封筒で代用している。意外と滑りがよかった(笑)
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セットアップ中の様子
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なお,ここで一点お断りしておくと,本稿ではバッテリー駆動時間を考慮していない。3時間近く動けばいいよねくらいのイメージでいるが,公称のバッテリー駆動時間が「冷蔵庫で約7.8時間」なので,相応のプレイ時間は確保できると考えている。というか,セットアップと実際のゲームプレイで現地には3時間滞在したのだが,その間,バッテリー残量について心配することは一度もなかった。
記念艦三笠でWorld of Warshipsを楽しむ
WoWsに登場する三笠
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さて,なぜ三笠なのかという話をしておくと,1つは,ROG GR6が「
World of Warships」(以下,WoWs)とコラボしており,購入するとTier Vのプレミアム巡洋艦「Marblehead」やゲーム内通貨がもらえるということ。もう1つは,以前販売されていたTier IIプレミアム艦である三笠を編集氏が購入済みであったことが挙げられる。
そういった事情から,「横須賀の
記念艦三笠で,WoWsとコラボしているROG GR6を使って『三笠プレイ』したら面白いのではないか。きっと世界初の試みだろうし」と考え,管理団体である三笠保存会に企画書を送って了承を得た結果が,本稿というわけだ。
「
Ingress」(
Android /
iOS)や「
艦隊これくしょん -艦これ-」絡みで人気の観光スポットになっているため,訪れたことがあるという読者も多いと思うが,三笠は,主に日露戦争で活躍した戦艦だ。現在は世界三大記念艦の1つとして,神奈川県横須賀市の三笠公園で保存されている。
上部甲板や艦橋,あるいは艦内の常設・特別展示を観覧できるだけでなく,8cm補助砲は実際に旋回させたり上下角を変えたりといった体験も可能である。
外から見ているだけでも楽しい記念艦・三笠。撮影時は,船舷にある団体客用ハッチが開いていた
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ROG GR6をモバイルする目的で,せっかく三笠に乗艦しているのだから,三笠っぽい場所でプレイしてみようということで,まずは前出の8cm補助砲へ。実際に動かして楽しんだりしたのだが,ふと「これに一式乗るんじゃないか?」と思い立ち,実際に乗せてみることにした。
実際に触れて,動かすこともできる8cm補助砲。身体を入れる部分の奥にある手回しハンドルで角度を調整できる。ちなみにこの補助砲をWoWsの母港画面で見ると右のスクリーンショットのような感じ
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結果が下の写真だ。マウスの置き場所こそ筆者の大腿部となったが,普通に遊べる状態になったので,さっそくCo-op戦に突入した。ついに,「三笠で三笠をプレイする」ことが現実のものとなったわけである。
ゲーム環境「8cm補助砲 powered by ROG GR6」の勇姿。ここではASUSのSTRIXブランドに属するゲーマー向けヘッドセットで音を聞くことにした
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マウス操作をするための場所がなかったので,大腿部をマウスパッドとしてプレイ開始。普段は駆逐艦しかプレイしておらず,戦艦はおろか,巡洋艦すらTier II止まりなので,「戦艦ってどうやって動くんだろうなあ」と思ってプレイしていたら,編集氏に「どう見ても駆逐艦の動き」と突っ込まれたりもした。参考までに,見た目はかなりエクストリームなプレイ環境だが,キー操作の安定感がよく,プレイ自体は試遊台感覚だった
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グラフィックス設定は,解像度1920×1080ドットのフルスクリーンなら「中」設定がベター。これですこぶる快適といった感じである。見た目重視ならもう少し高い設定も選択できるだろう
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ROG GR6を持って三笠の甲板上をうろうろしていて気づいたのだが,本体側面のR.O.G.ロゴマーク部は凹んでいて,指を引っかけておきやすい。持ち運ぶことを前提にしているなら,覚えておくといいだろう
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お次は,艦首である。より戦艦っぽい場所でのゲームプレイはマストだろう。
今回は,一般観光客の皆さんによる「この人達はいったい何をしているんだろう?」という視線を受け止めつつ,またカップルによる「写真お願いしま〜す!」ミッションをこなしつつ,艦首付近にゲーム環境を展開した。いやほら,貸し切りでもなんでもなく,撮影場所として使わせてもらってるだけだからね……。
艦首付近でプレイしているところ。展開完了のタイミングからしばらく,艦首付近にほかの観光客がいなかったので,On-Lap 1303H内蔵スピーカーを使ってプレイしてみた。魚雷接近アラートがいつもより心臓に悪い感じで,大変よろしい
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通風塔か,でなければ錨鎖固定用だったのではないかと思うが,錨鎖に挟まれる格好でテーブル状のものがあり,ここにゲーム環境を展開したため,室内に近いプレイスタイルを取ることができた(左)。ちなみにこの部分はWoWsでもしっかり再現されている(右)
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とにかく場所を選ばないROG GR6。「ゲーマー向けノートPCすら邪魔」と思う人にお勧め
正面から見ると,割とアリな感じだと思う。三笠でWoWsのイベントとかやったりしないかしら
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ゲーマー向けノートPC並みのスペックと小ささ,そしてデスクトップPCならではの拡張性。両方を実現したROG GR6のメリットを最大限生かすべく,記念艦三笠に協力を願ったわけだが,実際にROG GR6をモバイル環境で必要とする可能性は低いだろう。
今回の機材はケーブルなどをひっくるめても6kg以下なので,バックパックに突っ込んでいくストロングスタイルもまったくもって不可能ではないが,持ち運ぶという観点からすれば,ROG GR6を友人宅に持っていって一緒にゲームをプレイするとか,そういう用途がメインになると思う。
それよりも重要なのは,
小さく,場所をとにかく取らないことである。据え置き型ゲーム機がメインで,PCゲームはオンライン対戦専門という人は少なくないと思うが,そういう人と,ROG GR6は無類の好相性を発揮する。
据え置き型ゲーム機のつながっているディスプレイの脇にちょこんと置いておけば,すぐにPCのオンライン対戦をスタートできるうえ,ゲーム以外でもPCとして使いたいと思ったときには,十分過ぎるほどの拡張性を持ったWindows 10プリインストールモデルとしても利用できる。しかも,動作音は笑ってしまうほど静かだ。
PCゲームはオンライン中心にプレイしているが,正直,ノートPCすら邪魔で,部屋には置きたくない。そんなワガママ人にこそ,ROG GR6はちょうどいいゲームPCなのである。
大日本帝国海軍 連合艦隊司令長官 東郷平八郎大将にROG GR6をオススメして撤収した
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■期間限定,Steamウォレット1万円分プレゼントキャンペーン
ASUSは,ROG GR6(型番:GR6-R034Z)とROG GR8(型番:GR8-R109Z)の購入者に向けたキャンペーンを実施中だ。具体的には,両製品を購入のうえ,製品のシリアルナンバーと必要事項をキャンペーンページで登録すると,1万円分の「Steamウォレット」を手に入れることができる。
受付期間は12月5日(土曜)から12月25日(金曜)までの3週間で,1週あたり先着10名,計30名限定だ。受付期間以前に購入したROG GR6とROG GR8も対象なので,すでに入手済みという人は,5日以降,忘れずに登録しておこう。また,うっかりして枠が埋まってしまったという場合は,翌週また申し込めるので,ご安心を。
詳細はASUSのキャンペーンページをチェックしてほしい。
→ASUSのキャンペーンページ