2016年1月16日,東京・秋原原のイベントスペース「アキバ・スクエア」にて,ライアットゲームス(Riot Gamesの日本法人)のMOBA
「League of Legends」 (以下,LoL)の国内リーグ戦,
「LEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUE 2016 Spring Split」 (以下,LJL2016)開幕戦が行われた。
2014年からスタートし,今年で3年目を迎えるLEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUEは,春季大会であるSpring Split,夏季大会であるSummer Splitの2シーズン制で,それぞれ数か月にわたるリーグ戦を行い,優勝チームを決定する。
Spring Splitには
「International Wild Card Invitational」 (※2015年はDetonatioN FocusMeが
出場 ),Summer Splitには
「International Wild Card Qualifier」 と呼ばれる公式国際大会への出場権がかけられており,日本最強という栄誉だけでなく,日本代表チームを決める大会でもあるのだ。
なお,本年度からはついに
Riot Games公式大会 となり,そのルールも世界各地で実施されているプロリーグ準拠──例を挙げるなら,競技用のトーナメントサーバーで試合が行われること,試合中に外周音が耳に入らないようヘッドセット着用の義務付けられること,さらには規定の音量レベルを保つことなどがレギュレーションに取り入れられた。
また,
公式ルール(PDF) には,“チームへの参加報酬支払い”についての言及もあり,LJL 2016の予選リーグである「LJL 2016 Challenger Series」への参加資格には,“LJLに参加する際にチームの法人化が可能なチームに限る”という項目が盛り込まれた。つまり,国内ではおよそ初となるであろう,メーカー主導による本格的なプロリーグが産声を上げたわけだ。
そんな今シーズンには,2015年の
「GRAND CHAMPIONSHIP」 を制した
DetonatioN Focus Me ,準優勝の
Rampage ,昨年度から続投となる
7th heaven ,
CROOZ Rascal Jester に加え,予選大会であるチャレンジャートーナメントを勝ち上がってきた
Unsold Stuff Gaming と
BlackEye の全6チームが参戦。日本代表の座と賞金をかけ,長きにわたる戦いを繰り広げてゆくことになる。本稿では,その開幕戦の模様をフォトレポートでお届けしていこう。
中央に用意された選手席を観客席が囲む会場レイアウトは,2015末にドイツで行われた「World Chanpionship 2015 Grand Finals」を思わせる。なお,静かな局面では「大丈夫! 俺は余裕でファームできるから!」とか,「そこ危ない! バックバックバック!」とか,選手同士のやり取りが直接聞こえてくることもあった
各試合は,1試合につき2セット先取制の,いわゆるBO3形式で行われるた。司会・進行はDJMucchamn氏(上写真),実況はeyez氏(下写真左),解説はRevol氏(下写真右)と,これまでのLJLでもお馴染みの面々が担当
第1試合 7th heaven vs. Unsold Stuff Gaming
「7th heaven」 ――Evi選手(Top) / Awaker選手(Jungle) / Shinmori選手(Mid) / YutoriMoyashi選手(ADC) / ThintoN選手(Support) 昨年10月,LJL 2015の参加チームであるRabbitFiveと合併。ThintoN選手以外は元RabbitFiveのメンバーであるが,Awaker選手はSupportからJungleへ,YutoriMoyashi選手はTopからADCへポジション変更し,新体制でLJL2016に挑む
「Unsold Stuff Gaming」 ――apaMEN選手(Top) / isurugi選手(Jungle) / CLOCKDAY選手(Mid) / Haretti選手(ADC) / Enty選手(Support) チーム名は“売れ残り”という意味だが,元CROOZ Rascal JesterのapaMEN選手,元7th heaven(以下,7th)のClockday選手とEnty選手,北米サーバーにてSeason 5のChallengerに昇格しているisurugi選手,Haretti選手といった実力者達が集う
LJL2016 Spring Split Round1 Match1 Game1 7h vs USG
1戦目では,Kindred,Varus,Ezrealというマークスマン(いわゆるADCに適したチャンピオン)構成を採った7thに対し,Unsold Stuff Gaming(以下,USG)はTahm Kench,Elise,Blitzcrankといった小規模集団戦に強い構成を選択。7th側が構成の強みを活かし,次々とタワーを破壊して中盤までを有利に進めるも,USG側はEnty選手(Blitzcrank)の見事なグラブによる仕掛けで集団戦を制して逆転。最後は5回目のドラゴンをゲットし,7th側の陣地になだれ込んだUSGが勝利した
LJL2016 Spring Split Round1 Match1 Game2 7h vs USG
2戦目もEnty選手(Thresh)のフックが光り,キルの起点を作り出してUSG側が序盤をリードする展開に。中盤の集団戦も制してバロンを取りに行くUSGに対し,7th側のVel'Koz&Miss Fortuneという強力なAoE Ultが炸裂,バロンおよびMidのインヒビターまで破壊して大逆転。バロンバフとVel'Kozのポークを利用してシージを進める7thに対し,起死回生のイニシエートを仕掛け得るUSGだったが届かず,そのまま7thが勝利して1-1に持ち込んだ
LJL2016 Spring Split Round1 Match1 Game3 7h vs USG
そして迎えた最終戦では,2試合目でUSG側がヘッドセットを耳から外してしまったため,BAN枠が1つ減り,かつレッドチーム側というペナルティを受けることに。Pick&Banフェイズで優位を取った7th側は,タンクかつピール役として強力なTahm Kench,Trundleからなる集団戦に向けた構成を選択。対するUSG側は序盤に強い構成を作ったものの,試合では7th側が序盤からUSGを圧倒。すべてのレーンを優位に進めていき,キル数19-1という大差を付けてネクサスを破壊。開幕戦第1試合目を勝利で飾った
第2試合 CROOZ Rascal Jester vs. BlackEye
「CROOZ Rascal Jester」 ――cogcog選手(Top) / ・GalB選手(Jungle) / HW4NG選手(Mid) / Rkp選手(ADC) / Corn選手(Support) LJL参加3年目を迎える古豪。今シーズンでは従来のメンバーであるcogcog選手,Rkp選手に加え,GalB選手,Corn選手,そしてHW4NG選手と3名の強豪韓国人選手(なお,HW4NG選手は日本居住者と見なされており,レギュレーションには抵触しない)が加入を果たし,大幅な戦力増強を行っている
「BlackEye」 ――Arfoad選手(Top) / Serick選手(Jungle) / Alps選手(Mid) / RhythmAsalt選手(ADC) / Ryavka選手(Support) 以前は“神風”というチーム名だったが,チャレンジャートーナメントの勝ち上がりに伴い,マルチゲーミングチームBlackEye(以下,BE)にチームごと加入。名前を変えての参戦となった。LJLへの出場経験があるのはAfroad選手のみであり,経験面での不安は残るが,個人技に長けた面々が集っている
LJL2016 Spring Split Round1 Match 2 Game1 CRJ vs BE
1戦目のPick&Banフェイズでは,最強クラスのADCといわれるMiss Fortuneがオープンとなり,ブルーチームであるCROOZ Rascal Jester(以下,CRJ)はすかさずこれをPick。Rkp選手のMiss Fortuneを守りながらキルを集め,常に試合を優位に進めていく展開に。そうしてBE側のネクサスに攻め込むも,ヘルスの少なさを突いてBE側がギリギリネクサスを守る。しかしCRJの優位は変わらず,バロンを確保して再度ネクサスに押し寄せ,1勝目を勝ち取った
LJL2016 Spring Split Round1 Match2 Game2 CRJ vs BE
2戦目はTopにShen,JungleにGravesと序盤〜中盤に強い構成を採ったCRJに対し,BEはOlaf,Lulu,Kalistaと後半戦にフォーカスした構成で臨む。試合はCRJが思惑どおり序盤戦でリードを奪う。その後はあまりキルの発生しない静かな展開となったが,cogcog選手(Shen)がUltの存在を活かしたBotのプッシュでBEをかき回すと,そこを起点にCRJが攻め込み,むき出しになったネクサスを見事破壊。2連勝で初戦を白星で終えた
第3試合 DetonatioN FocusMe vs. Rampage
「DetonatioN FocusMe」 ――Yutapon選手(Top) / Catch選手(Jungle) / Ceros選手(Mid) / Zerost選手(ADC) / Eternal選手(Support) 昨年のGRAND CHAMPIONSHIPで見事優勝を果たし,公式国際大会「International Wild Card Qualifier」への出場経験もある日本屈指の強豪チーム。大黒柱であるYutapon選手,Ceros選手に加え,元RabbitFiveのZerost選手,さらには韓国のプロチームであるSBENU SonicboomからCatch選手,Eternal選手を招へいし,万全の体制でLJL 2016に臨む
「Rampage」 ――Paz選手(Top) / Tussle選手(Jungle) / tei選手(Mid) / Meron選手(ADC) / Dara選手(Support) 直近ではLJL 2015 Season 2を制している実力派チーム。Topレーナーとして大きな存在感を放っていたAmuse選手の脱退があり,今シーズンは元Salvage JavelinのPaz選手を起用したものの,そのほかのスターターはこれまでどおりであるため,チームとしての練度はほかの追随を許さない
開幕戦の最終試合は,2015年のGRAND CHANPIONSHIPの再来となる組み合わせに。なお,欧米のプロシーンでは,試合開始前に両チームのコーチが握手を交わすことが通例となっており,LJL 2016でもその光景を見ることができた。なんというか,とてもプロっぽい
LJL2016 Spring Split Round1 Match3 Game1 DFM vs RPG
1戦目では,競技シーンでは珍しいSionをピックしたDetonatioN FocusMe(以下,DFM)に対し,「Rampage」(以下,RPG)はFioraを当てるという構図に。注目のTopレーンでは,Yutapon選手のSionがPaz選手のFioraを苦しめ,その優位を活かしたBotへのテレポートでDFMが先手を取る。RPGも人数差のある状況を見逃さずにキルを重ねて食らいついていったものの,最後はDFMが見事な集団戦を展開して4キル。そのままネクサスを破壊して勝利を果たした
LJL2016 Spring Split Round1 Match3 Game2 DFM vs RPG
2戦目では,tei選手のViktorに対するCeros選手のAhriがMidレーンでの戦いを優位に進めていく。一方,RPG側もDara選手(Thresh)のフックが見事Zerost選手のEzrealを捉えると,Paz選手(Lissandra)も素早くTeleportで追随し,2キルとドラゴンを確保して食らいつく。しかし,Midへのガンクを華麗にさばいたCeros選手の活躍により,DFMがMidのタワーを次々破壊して引き離していく展開に。苦境に立たされたRPGは,DFMの攻めを幾度となく凌ぎ続け,DFMがミスするや否やバロンを獲得。これを活かして逆転を目指すも,DFMの攻めは鋭さを増していき,最後は見事エースを取ったDFMが,がら空きのネクサスを破壊して勝利をもぎ取った
欧米のプロシーンもかくやの豪盛なレイアウトでハイレベルな試合を堪能できたこの開幕戦。Riot Gamesのスタッフに聞いたところ,なんと600人近くの観客が詰めかけていたそうで,会場は立ち見が出るほど盛況だった。
また,観客それぞれが思い思いに応援や歓声を上げていることも印象に残っている。
2014年のLJL開幕戦 を思い返すと,「日本のLoLコミュニティもここまで来たか!」と感慨深くすらあるほどだ。あとは,欧米のようにこうしたオフラインイベントが頻繁に開催されるようになってくれれば,観戦者としては最高なのだが。
ともあれ,LJL 2016の激しい戦いはまだ始まったばかりである。日本のLoLファンは,LJL 2016の今後の試合をチェックしつつ,間近に迫ってきたクローズドβテストに備えておこう。