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32bit版と64bit版。ゲーマーが選ぶべきWindows 7はどちらかを考える
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印刷2009/11/21 22:29

テストレポート

32bit版と64bit版。ゲーマーが選ぶべきWindows 7はどちらかを考える

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 Windows 7が一般PCユーザー向けに発売されて,約1か月が経過した。Microsoftの発表によれば,相当に売れているようなので,読者のなかでも,すでに乗り換え済みという人は少なくないだろう。
 Windows 7について4Gamerでは,2009年8月の時点で入手したRTM(Release to Manufacturing,PCメーカーが搭載PCを製作するための製品版)で,Windows XPやWindows Vistaとの比較を行い,DirectX 10世代以降のタイトルをプレイするプラットフォームとして,Windows 7はベストになる可能性があると結論づけている。Windows XPとの比較など,このあたりは8月24日の記事に詳しいので,興味を持った人はぜひチェックしてもらえればと思う。

 ただ,どんな事情や理由があるにせよ,Windows 7へ移行する決断をした場合,エンドユーザーは,もう一つ,重要な選択を行わねばならない。それは,32bit版と64bit版のどちらを選ぶか,というものだ。


64bit版でゲームパフォーマンスは変わるのか?

最新世代の3Dゲームを前提に考える


 2009年11月下旬時点では,DDR2モジュールの値上がりがやや目立ってきているが,それでも一頃と比べると,メモリモジュールの価格は非常に低くなった。3Dゲームを満足にプレイできる環境に限定して話をするなら,ゲーマー向けPCはおろか,大手メーカー製のPCでも,もはや搭載するメインメモリ容量は4GB以上が圧倒的多数だ。

容量4GBのメインメモリを搭載した32bit版Windows 7システムの例。利用可能な容量は2.99GBとされている。1GBもムダになっているわけだ(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します)
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 一方,これまで国内で流通してきたWindows XPやWindows Vistaは,32bit版がほとんどだった。32bit版OSには,メインメモリは最大でも3.2GB程度しか利用できない,俗にいう「4GBの壁」というものが存在するため,4GBを超えるメインメモリを搭載しても,利用できるのはだいたい3〜3.2GB。「余剰分はRAMディスクとして,キャッシュなどに用いる」という“裏技”はあるものの,基本的に無用の長物となってしまう。
 そしてこの制限は,Windows 7時代でも同じだ。32bit版Windows 7を利用する限り,メモリモジュールを合計4GB以上搭載したPCを用意しても,確保できるのは従来同様,最大3.2GB程度に留まる。

 32bit版OSには,「これまで長い間,市場を支配してきたため,デバイスドライバやアプリケーションの対応が,64bit版に比べて進んでいる」という利点がある。とくに,古くからサービスされている,あるいは,64bit版OSへのニーズがまだ高まっていない国で開発されたオンラインゲームだと,32bit版OSのみのサポートに留まる例が少なくない――このあたりは2009年10月22日に掲載した,主要オンラインゲームパブリッシャへのWindows 7対応状況アンケート結果集計記事が詳しい――ので,オンラインゲームをメインにプレイしている人は,十分に注意が必要といえる。

64bit版Windowsでは,信頼性確保の目的で「デジタル署名」のないデバイスドライバを(そのままでは)利用できなくなっている。4Gamer読者に関係のあるものだと,「Xbox 360 Controller for Windows」の“有志版ドライバ”(※あえてリンクは張らない)が当たるだろうか。もっとも,PCの起動時に[F8]キーを押して「ドライバ署名の強制を無効にする」とか,ほかにもいろいろと回避策はあるので,大きな問題ではなかったりするが
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 ただ,一般PCユーザー向け64bit版Windowsの本格的な普及は,厳しく見積もっても,Windows Vista時代の中期から始まっていた。そのため,最新世代の3Dゲームタイトルは,多くが64bit版OSでの動作がサポートされていたり,問題なく動作するようになっていたりする。主に欧米産の最新3Dゲームタイトルを好んでプレイするような人からすると,64bit版OSにおいて,互換性はもはや問題ではなく,むしろ「32bit版と同等のパフォーマンスが出るかどうか」のほうが課題になるのだ。

 64bit版Windowsは,32bitアプリケーションを「WOW64」(Windows-On-Windows 64)というエミュレーション層で動作させる仕様になっている。WOW64は高いパフォーマンスを実現するように設計されているものの,言ってしまえばエミュレータなので,32bitアプリケーションを32bit版Windows上で動作させるのと比べると,どうしてもパフォーマンスの低下が避けられない。
 つまり,WOW64のパフォーマンスに問題がないなら,4GB以上のメインメモリを利用できる64bit版のほうが魅力的だし,逆に64bit環境で32bitアプリケーションを実行したときに大きなペナルティがあるなら,64bit版を選ぶ理由はほとんどなくなる。本稿でチェックしようというのは,このポイントである。

 というわけで今回は,表1に挙げるシステムを用意して,32/64bit版Windows 7のパフォーマンスを比較することにした。

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AMDの日本法人である日本AMDから貸し出しを受けた「ATI Radeon HD 5870」リファレンスカード。今回は本カードを搭載したシステムで32/64bit版Windows 7のテストを行う
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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション8.2準拠。ただし,テストスケジュールの都合で,今回は「3DMark06」「Call of Duty 4: Modern Warfare」「ラスト レムナント」は割愛した。一方,64bit版Windows 7においては,メインメモリ容量4GBと8GBの2パターンでテストを行い,メインメモリが増えることで,ゲームのパフォーマンスに影響が出るかをチェックする。
 また,11月21日時点におけるAMDの公式最新グラフィックスドライバは「ATI Catalyst 9.11」だが,今回はテスト開始時点の最新版だった「ATI Catalyst 9.10」を用いること,それに伴い,「バイオハザード5」は,公式の英語版ベンチマークソフトを用いてテストすることをあらかじめお断りしておきたい。

 なお以下,64bit版Windows 7については,「64bit版Windows 7/4GB」「64bit版Windows 7/8GB」といった感じで,メインメモリ容量の違いをOS名に付記する。


32/64bitで性能面に大きな差はない

スコア上は大容量メモリの効果があることも


 グラフ1,2は,「Crysis Warhead」のテスト結果になる。
 本作は,1月30日にリリースされたVersion 1.1.1.710パッチで,64bitモードで動作する実行ファイルが用意されているのが大きな特徴だ。パッチ自体は64bit版Windows XP/Vista向けにリリースされたものだが,64bit版Windows 7でも問題なく動作するため,64bit版のテストにおいて,今回はこの64bit版実行ファイルを用いているが,ご覧のとおり,32bit版OS上で実行させた32bit版Crysis Warheadと,64bit版OS上で実行させた64bit版Crysis Warheadに,パフォーマンスの違いはないといっていい。
 メインメモリの違いも,「高負荷設定」における解像度2560×1600ドットで,ようやく最大4fps開いた程度。無理矢理「64bit版Windows 7が有利」ということはできなくもないが,ここは「体感上の違いはない」と述べておくべきだろう。

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 続いては,64bit版実行ファイルが用意されていないため,32bit版実行ファイルで比較している「Left 4 Dead」だ。グラフ3,4を見ると分かるとおり,ここでも基本的に差はない。
 あえて重箱の隅をつつけば,64bit版Windows 7で32bit版実行ファイルを利用することで,1%程度のパフォーマンス低下はあるようだが,それは,メインメモリを8GB搭載することでカバーできるレベル,といったところか。

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 同じく,32bit版実行ファイルで行ったバイオハザード5のテスト結果がグラフ5,6になるが,傾向はCrysis Warheadと同じ。32/64bitWindows 7のどちらでもスコアに大きな差はなく,また,メインメモリ容量による違いもない。

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 グラフ7,8に示したのは,やはり32bit版実行ファイルでのテストになる「Race Driver: GRID」(以下,GRID)の結果だ。
 GRIDでも,傾向そのものはあまり変わっていないのだが,描画負荷の低い低解像度で,64bit版Windows 7のほうが,若干ながら32bit版Windows 7より高いスコアを示しているのは興味深い。

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 最後に「64bit版Windows 7を導入すると,ゲーム以外のアプリケーションでは何がどう変わるのか」をチェックすべく,システム総合ベンチマークソフト,「PCMark Vantage」(Build 1.0.1.0)を実行してみることにした。
 PCMark Vantageには,64bit版の実行ファイルも用意されているため,64bit環境では32/64bit版実行ファイルの両方でテストしている。

 さて,その総合スコアはグラフ9にまとめたとおりだ。64bit環境で64bit版実行ファイルを利用したときのスコアが,32bit版実行ファイルを利用したときと比べて1000ほど高い。

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 PCMark Vantageのスコア詳細は,表2にまとめた。本ベンチマークソフトは,画像の編集やビデオのトランスコード,メールの検索など,実際のユースケースに合わせた(とされる)さまざまなシナリオでテストを実行するようになっており,個別のパフォーマンスをチェックできるのだが,これを見ると,一部,64bit版で動作するように設計されたプログラムを利用するように設定されているテスト項目でスコアを大きく伸ばし,そうでないところは32/64bit環境でスコアに大差ないことが分かる。

 目を引くのは,「PCMark Gaming 2」の「CPU Gaming」で,64bit環境のスコアがとくに高い点だが,この項目は,AIアルゴリズムを利用したCPUテスト。基本的には,マルチスレッド性能を見るテストになっているので,64bit版実行ファイルでは,64bit環境に最適化された(≒64bit幅のレジスタを利用した)テストになっているのだろう。先ほど示した,実際のゲームタイトルとは乖離したスコアであることからして,必ずしも今日(こんにち)のゲームにおける状況を反映したものではないことを押さえておきたい。

 現実的には,トランスコードや画像処理に64bitのメリットがあると見るべきではなかろうか。

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最新世代の3Dゲームは

64bit環境でもまず問題なし


 すべてのゲームタイトルでも今回と同様の結果になるとまでは断言できないものの,テスト対象の結果が見事に似通ったものになった以上,32bit版と64bit版で,少なくとも,目に見える形でのパフォーマンス低下はまず起こらないと見ていい。
 地デジチューナーユニットなど,一般PCユーザー向けデバイスの一部は,64bit版Windows 7で動作しないという話も聞かれるが,少なくともゲーム用途での制約は,先ほどキャプションで述べた,回避可能な「デジタル署名」の件くらいである。

 つまり,4GBを超えるメインメモリを扱えるというメリットは,それほど大きなトレードオフなしで手に入るわけだ,もちろん,「ゲーム用途で,今すぐ4GB超級のメインメモリ容量が必要か?」という議論からは逃れられないのだが,最新世代の3Dゲームを主にプレイする人なら,「将来に向けた拡張性を手に入れるつもりで,Windows 7への移行を機に,64bit環境へと足を踏み出す」というのも,分の悪い賭けにはならないと思われる。
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