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印刷2018/09/15 00:00

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AI推論向けGPU「Tesla T4」や「Xavier」ベースの開発環境など,新発表が相次いだ「GTC Japan 2018」基調講演レポート

GeForce RTX 20搭載カードを掲げるJensen Huang氏(CEO,NVIDIA)
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 2018年9月13日と14日,NVIDIAは,同社主催のAI関連開発者向けイベント「GTC Japan 2018」を東京都内で開催した。初日の13日には,NVIDIAのCEOを務めるJensen Huang(ジェンスン・ファン)氏が基調講演に登壇し,複数の日本企業との協業や,新製品の発表を行った。
 例によって,講演そのものではゲームグラフィックスに関わる話はなかったのだが,日本で開かれたGTCとしては異例なほど多くの新製品が発表となったので,簡単に概要をまとめてみたい。


TurungアーキテクチャベースのAI推論向けGPU「Tesla T4」


Tesla T4を掲げるHuang氏
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 まずは,速報で報じたAI推論向け数値演算アクセラレータ「Tesla T4」の話題から。

 NVIDIAはこれまで,AI推論用としてPascalアーキテクチャベースのGPU「Tesla P4」や「Tesla P40」を展開していた(関連記事)。Tesla T4は,その後継に位置づけられるもので,TurungアーキテクチャをベースとしたGPUを搭載するPCI Express x16拡張カードタイプの製品だ。

Tesla T4はPCI Express x16カード型の推論用アクセラレータで,Tesla P4の後継製品となる
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 Huang氏によると,Tesla T4は多精度(Multi-Precision)の演算に対応する行列計算用演算ユニット「Multi-Precision Tensor Core」を搭載しているという。具体的には,16bit単精度と4・8・16bit整数による4×4の積和算を行う演算器を320基内蔵しているとのこと。これにより「Tesla T4は多精度の推論を実現する」とHuang氏は主張していた。

Tesla T4は,16bit単精度と4・8・16bit整数演算が可能なTensor Coreを搭載する
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 この新世代Tensor Coreにより,Tesla T4は「Tesla P4比で最大12倍の推論性能を持っている」そうで,大幅な推論性能の向上を果たしたとHaung氏は主張する。

Tesla T4の浮動小数点を用いた推論性能は,Tesla P4比で最大12倍を実現しているそうだ
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 ただ,GeForce RTX 20シリーズやQuadro RTXシリーズにおけるTensor Coreの仕様が,まだ明らかになっていないこともあり,何を持ってTuringアーキテクチャとなるのかは,正直よく分からない。
 GeForce RTX 20シリーズのTensor Coreも,Tesla T4と同様に多精度の演算をサポートするという可能性は高そうだ。しかし,Tesla T4のTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が75Wである点を考慮すると,GeForce RTX 20シリーズ並みのレイトレーシング向け演算ユニット「RT Core」を搭載しているというのは,少々考えにくいのではないか。
 そう考えると,Tesla T4が採用するGPUコアは,グラフィックス用途への流用をさほど考慮していない,つまりAI推論専用に設計されたものかもしれない。Tesla T4が発表されたからといって,これが低消費電力版GeForce RTX 20シリーズの登場につながると予想するのは,やや早計に過ぎるかもしれない。

 ちなみに,このTesla T4を16基搭載した推論サーバー1台は,従来型のCPUを使ったサーバーにして,ラック5台分に相当する性能を持つとのこと。「GPUを買えばお金を節約できる」と,Huang氏は笑いながらお気に入りのフレーズを繰り返していた。

ラック5台分のサーバー(左)を,16基のTesla T4を搭載したサーバー1台(右)で置き換えられるので,「GPUを買えばお金が節約できる」とHuang氏
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Xavierを搭載する自律動作マシン向けプラットフォームなどを発表


 GTC Japan 2018でNVIDIAは,Volta世代GPUを統合するSoC(System-on-a-Chip)「Xavier」を,自律的に動くロボットやドローンに展開する製品やソリューションも発表している。
 Xavierは,自動運転車やロボット,自律動作マシンでの使用を想定したSoCで(関連記事),ARMv8アーキテクチャに基づく64bit CPUコアを8基と,Volta世代のCUDA Coreを512基,Tensor Coreを20基集積するという強力なプロセッサである。

 Xavierは,用途別にいくつかのバリエーションがあり,2018年1月には,自動運転車向けの「DRIVE Xavier」と,それを使った自動運転車向けプラットフォーム「DRIVE Pegasus」が発表済みだ。そしてGTC Japan 2018では,その自律動作マシン用の組み込み向けプラットフォームとなる「NVIDIA AGX」が発表となった。

Xavierベースの自律動作マシン用プラットフォーム「NVIDIA AGX」を発表
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 NVIDIA AGXでは,用途に応じてさまざまな製品バリエーションが存在するようで,Xavierのみを搭載する組み込みボードや,単体GPUと組み合わせたボードがラインナップされるとのこと。NVIDIA AGXが「将来のロボットにおける脳になる」とHuang氏はアピールしていた。

 NVIDIA AGXを用いた開発キットも登場するという。その1つが,2018年10月1日出荷を開始するという自動運転車両向けの「DRIVE AGX Xavier DevKit」だ。

左写真でHuang氏が手にしているのがDRIVE AGX Xavier DevKitだ。DRIVE AGX Xavier DevKitは,NVIDIA AGXを用いた自動運転車両向けの開発キットである(右)
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 また,ドローンやロボットの開発用途向けには,コンパクトな開発キット「Jetson AGX Xavier DevKit」(以下,Jetson AGX)を投入する。
 Jetsonの名を冠する開発キットは,2014年に登場したKepler世代の「Jetson TK1」から続く製品であり,そのXavier版が登場するわけだ。

Jetson AGX Xavier DevKitを披露するHuang氏(左)。ドローンやロボット向けの開発キットで,NVIDIA製の開発キットであるJetsonシリーズの最新版と言ったところ(右)
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 Xavier搭載製品の最後に発表となったのは,NVIDIA AGXを用いた医療機器向け開発プラットフォーム「Clara AGX」である。
 Clara AGXでは,撮影した画像をAIで処理することで鮮明にし,患部をはっきりと示す画像を得られる医療機器を開発することが可能になるという。開発を支援するソフトウェアも,NVIDIAが提供するそうだ。

Clara AGXは医療機器向けの開発プラットフォームだ
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 というわけで,NVIDIAはXavierを核としたシステムに,「AGX」という名を付けて,ロボットやドローンと言った自律動作マシン,医療そして自動運転の分野に展開していくことになるようだ。


NVIDIAの新たな協業相手にヤマハやスズキが


「世界的な車両メーカーであるヤマハ発動機に協力ができて非常に嬉しい」とHaung氏
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 新製品ラッシュに続いて,Huang氏は他業種との協業に話を進めた。
 その1つが,ヤマハ発動機とNVIDIAの協業だ。ヤマハ発動機が開発する自律車両やドローンなどに,Jetson AGXや,ロボット開発のための学習用シミュレーションシステム「NVIDIA Isaac」を採用するという内容である。

ヤマハ発動機にて先進技術本部研究開発統括部長を務める村松啓且氏
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 ヤマハ発動機との協業については,事前説明会が行われており,ヤマハ発動機 先進技術本部研究開発統括部長の村松啓且氏が,協業の狙いや開発する製品について少し詳しく説明しているので,簡単に紹介しておこう。

 村松氏によると,ヤマハ発動機がJetson AGXの採用を計画しているのは,無人農業用車両や小型低速の電動車両,無人ヘリコプターおよびドローン,そして二輪車やモーターボートといった製品の安全性を向上させる技術での4分野とのこと。
 その中で,最も実用化に近づいているのが無人農業用車両だそうで,「2020年には実用化したい」と村松氏は述べていた。具体的に何をするマシンなのかは,企業秘密とのことで説明はなかったが,「木になる何かをなにかする車両」だそうだ。

ヤマハ発動機が2020年の実用化を目指している無人農業用車両
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 NVIDIAとの協業において村松氏が最も期待しているのは,NVIDIA Isaacだという。「Isaacは,まだ完成した技術とは言えないものだと捉えている。我々から『Isaacにこういう機能を付け加えてほしい』といったフィードバックを行って,より良いものにしていきたい」(村松氏)とのことで,これが協業という形をとる理由でもあると村松氏は述べている。

Isaacは,仮想環境内でロボットを訓練するシミュレーションシステムである
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 なお,現時点でのヤマハ発動機は,農業機械を手がけていない。ただ,農薬散布用の無人ヘリコプターでは大きなシェアを持っており,農業分野との関わりがまったくないわけではないという。開発中の無人農業用車両は,農業機械分野への新規参入を果たす役割もあるわけだ。


ハイブリッドレンダリングはゲームグラフィックスの主流になるのか


GeForce RTX 2080搭載カードを掲げるHuang氏
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 以上が基調講演の主な内容であるが,4Gamer読者が一番注目しているであろうGeForce RTX 20シリーズの話題も,少しはあった。といっても,講演内ではとくに新しい情報もなく,Huang氏が「GeForce RTX 2080」搭載カードを披露した程度だ。
 その一方で,講演後に行われた報道関係者向けのQ&Aでは,GeForce RTX 20シリーズに関する質問にHuang氏が回答していたので,簡単にまとめておこう。

 まず,「ハードウェアアクセラレーションでレイトレーシングを実現しようと考えたのはいつ頃からか」という質問に対して,Haung氏は「一昔前に我々は,『Optix』という(レイトレーシング向けの)APIをリリースした(関連記事)。その当時から,レイトレーシングのハードウェアアクセラレーションを試行錯誤してきたが,そんなときに我々はAIの技術に出会った。AIを用いたハイブリッドレンダリングがブレークスルーになった」と振り返っていた。

 Huang氏は触れなかったが,NVIDIAがノイズの多いレンダリング途中のレイトレーシング画像から,深層学習を使ってノイズを取り除くデモを披露したのが3年ほど前だったと記憶している。おそらくその頃には,GeForce RTX 20シリーズ的なハイブリッドレンダリングの手法が実現可能という目処を付けていたのではないか,と筆者は推測している。

 もう1つ,「ゲームにおいてレイトレーシングが主流になるのはいつからか」という問いに対して,Huang氏は「今年からだ」と即答。NVIDIAの「RTX Technology」によるハイブリッドレンダリング技術は,従来型のラスタグラフィックスを拡張するものなので,ゲーム開発者が実装するのは「極めて簡単」であるとHuang氏は主張する。
 「RTXをオンにすればリアルな光や影の表現が得られるし,オフにすれば従来のグラフィックスで描画される」(Huang氏)という技術なので,「ゲームの世界においても,すぐにRTXが取り入れられていく」とHuang氏は予言していた。

 Huang氏の狙い通りに,ハイブリッドレンダリングがゲームグラフィックスの主流になるのか。ゲーマーにとって,今後のゲームグラフィクスの動向には注目しておく必要がありそうだ。

基調講演の最後に,Huang氏がノリノリで披露したのは,ブルース・リーと同じように動く自身の映像だ。NVIDIAのラボが開発した「人のポーズを検出するGAN(敵対的生成ネットワーク)」を用いて生成した動画デモだそうで,聴衆にも大いにうけていた
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GTC Japan 2018公式Webサイト

  • 関連タイトル:

    NVIDIA RTX,Quadro,Tesla

  • 関連タイトル:

    GeForce RTX 20,GeForce GTX 16

  • 関連タイトル:

    Volta(開発コードネーム)

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