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ハロー!Steam広場 第335回:ナチスドイツの戦災孤児を育てる実話ベースのライフシム「My Child Lebensborn」
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印刷2021/07/02 12:00

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ハロー!Steam広場 第335回:ナチスドイツの戦災孤児を育てる実話ベースのライフシム「My Child Lebensborn」

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「すちーむ」ってなぁに?というよい子のみんな集まれー! 「ハロー! Steam広場」は,PCゲームのダウンロード販売サイトSteamで公開されている気になるタイトルを,筆者が独断と偏見でピックアップして紹介する,とっても有意義なコーナーだ。毎週欠かさずチェックすれば,サマーセールのTOPに出てくるタイトルすべてに「ライブラリ内」タグが付いている上級Steamerにジョブチェンジできるかも。




画像集#021のサムネイル/ハロー!Steam広場 第335回:ナチスドイツの戦災孤児を育てる実話ベースのライフシム「My Child Lebensborn」

ナチスドイツの戦災孤児を育てる実話ベースのライフシム「My Child Lebensborn」


 今回は,ノルウェーのデベロッパSarepta studioとTeknopilotが手がける「My Child Lebensborn」を紹介しよう。先日続編の制作も発表された本作は,ヒトラー率いるナチスドイツによる政策「レーベンスボルン」(生命の泉)によって生まれた子供を育てるライフシムだ。登場するキャラクターはオリジナルだが,設定や物語は実話をベースにしており,“実際に過去に起こった悲劇”の一端が描かれる。

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 アーリア人(純潔なドイツ民族)こそが支配階級にふさわしいと考えたナチスドイツは,国策の1つとして,金髪や碧眼といった特徴を持つ子供を,未婚の女性に出産させることにした。そのための政策がレーベンスボルンであり,大戦中にナチスドイツの占領下にあったノルウェーでは,駐留するドイツ兵との間で,1万人を超える子供がこの計画によって誕生したと言われている。

実は導入部での説明は非常に簡素で,時代背景などはゲーム内の手紙や日記で間接的に知ることができる形だ
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 本作では,このレーベンスボルンによって生まれた子供を養子に迎えた里親の目線で,ゲームが進んでいく。子供は男の子のクラウス,女の子のカリンから選択できるが,本稿ではクラウスを選んで進めている。

 物語は,クラウスを養子に迎えてからある程度の月日が経過したところから始まる。親であるプレイヤーとクラウスは,決して裕福とは言えないが,それなりに幸せな親子生活をノルウェーで送っていた。クラウスは聡明な子であり,自分が養子であることをそこまで気にすることなく,近く始まる学校生活を家で心待ちにしている。

養子となるクラウスとカリン。絵が好きで,何かあったときはその様子を色鉛筆で描いて残している
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 しかし,クラウスに待ち受けていた学校生活は過酷なものだった。“ナチスの子”であることが周囲に知れ渡っており,クラウスは学校内で激しいいじめに遭ってしまう。同級生からの罵倒や無視はもちろんこと,傷を負ってボロボロになって帰ってくることは珍しくない。教師からも邪険に扱われ,入学前は友達だった子からも相手にされなくなってしまう。
 教師にこのことを訴えても,率先して差別する側が対処するわけがなく,まともに接してくれる協力者は皆無といっていい。かつては笑顔に溢れていた我が子の顔は,あっという間に暗く沈んだものになっていく。

 親であるプレイヤーは,クラウスの置かれているこの状況・環境をなんとかして改善したいと考える。だからといって,子供につきっきりというわけにもいかない。金銭的に余裕があるわけでもないので,週末を除けば毎日働きに出なければ生活もままならない。

穏やかな日々を描く序盤は,お風呂に入れたり,食事を与えたりといった基本的な世話のチュートリアルを兼ねている。左上のアイコンが時間帯を,その横の丸いマークが残り時間を示している
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 ゲームは1日単位で区切られ,朝・昼・夕方・夜にそれぞれ一定の回数だけアクションを起こせる。子供には「空腹度」「清潔度」「メンタル」のゲージが存在し,それぞれ時間経過と共に減少していくので,「食事を与える」「風呂に入れる」「いっしょに遊ぶ」といった行動でそれらを回復させていく。

 平日のお昼は,親も子も家にいないのでスキップされる。それでも,“普通”に生活していくのに必要なアクションは十分に取れる。問題は,子供が普通の学校生活を送れていないことだ。いじめられてボロボロになって帰ってきたら,破けた服を直してあげたいし,お風呂にも入れてあげたい。しかしアクションの回数に限りがあるので,何かには目をつぶらなければならない。

徐々に,だが確実に追い込まれていく我が子。だが手を差し伸べてくれる人はほとんどおらず,打開策を見いだすのは難しい
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 プレイヤーは,残業して稼ぎを増やすこともできる。ただし,その場合は帰りが遅くなるので,夕方のアクションが取れない。残業を終えて家に帰ったら,ボロボロの我が子が帰りを待っていた。そんな光景に出くわすこともある。もっとお金を稼いで少しでも良い生活をさせてあげたいと思うのは当然のことだし,もっと子供との時間を大切にしたいと気持ちもあってしかるべきものだ。ただし,この2つを両立させることはできない。

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食事をするには食材が必要だ。食材はお店で購入できるが,出費を抑えたいなら,森や湖で生の食材を調達できる
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 時間やお金の使い道以上に悩むのが,ときおり我が子がぶつけてくる疑問や質問だ宿題内容をクイズ形式で聞いてくる……といった穏当なものもあるが,多くは自分の出自に関するものだったり,いじめを回避する方法をだったりと,答えに窮するものばかりだ。
 相手はあくまで子供であるし,「ナチズムが何か」といったことを理解させるのは難しい。だからといって,ごまかすような答えばかりをしていては,心を閉ざす一方だ。時には包み隠さず答える勇気が必要になる。ただし,真実を語っても事態が解決するわけではない。

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 純粋なリソース管理ゲームとして見れば,本作の難度はそこまで高くない。仕事にさえしていれば最低限のお金はもらえるし,不味いものでも腹はふくれる。突発的にお金や食料が消えるようなトラブルが起こることもない。倹約すれば相応にお金は残せるし,森や湖で無料の食料を調達することもできる。子供が本当に飢えてしまうような事態は,恐らく起きないはずだ。

 ただ,本作で重要なのはそこではない。時代に翻弄され,国家に見捨てられ,周囲からは石を投げられ,肉親からも引き離された人々が過去に実在し,それでもどうにかしようと懸命にもがいていたことが,ゲームという媒体を通じて“身をもって体験できる”ことこそが,このゲームの“核心”なのだろう。

 筆者もクラウスからの質問には,かなり悩んで返答することが多かった。また,いわれのない暴言・暴力で心身共にダメージを受けていく子供を見るのは,かなりキツイものがある。しかもこれは歴史や実話をベースにしているという点が,なおさら心を締め付ける。

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 物語全体は大きな闇に包まれており,子供が悲しむ姿を何度も見ることになる。世の中の色眼鏡は無慈悲に子供を切りつけ,傷つける。それでも,この親子が日々,小さな希望や安息を見つけて生きていく姿には,筆者も勇気づけられた。映画や本では得がたい生々しい体験が得られる作品なので,覚悟を決めてぜひプレイしてみてほしい。

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