そうだ アニメ，見よう：第193回は「シャングリラ・フロンティア」。フルダイブ型VRゲームを舞台に，クソゲーハンター・サンラクの活躍を描く

　硬梨菜氏によるライトノベル「シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜」は，2017年に小説投稿サイト「小説家になろう」で発表され，現在も連載中の作品だ。書籍化に先駆けて，2020年より「週刊少年マガジン」で不二涼介氏によるコミカライズ版（KCデラックス/既刊15巻）がスタートしている。コミックスの売り上げは，累計部数550万部を突破。「全国書店員が選んだおすすめコミック2021」や「第5回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」などに入賞し，ついには第47回「講談社漫画賞」少年部門（2023年）を受賞したマンガファン期待の話題作だ。

　というわけで，「そうだ アニメ，見よう」第193回のタイトルは，同作をアニメ化した「シャングリラ・フロンティア」（毎週日曜17：00〜TBS系列ほか）。制作はC2C，シリーズ構成・脚本は「宝石の国」や「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの筆安一幸氏が担当。監督は初代「THE IDOLM@STER」のキャラクターデザインを担当し，映画「ベルセルク 黄金時代篇」や「魔女の旅々」を手掛けたベテランの窪岡俊之氏が務めている。

「シャングリラ・フロンティア」

　ディスプレイを使用するゲームがレトロゲームに分類されるようになった，少しだけ未来の世界。フルダイブ型VRゲームが主流となった世界でも，最新のVR技術に内容が追いついていない“クソゲー”が存在していた。そんなクソゲーをクリアすることに情熱を捧げる“クソゲーハンター”の少年・陽務楽郎（CV：内田雄馬）は，行きつけのゲームショップの店員にクソゲーとは真逆の“神ゲー”を勧められる。そのゲームとは，総プレイヤー数3000万人の大作「シャングリラ・フロンティア」だった。


　勧められるままに「シャングリラ・フロンティア」を購入した楽郎は，鳥頭で半裸のキャラクター「サンラク」としてプレイを開始。持ち前のプレイヤースキルで強敵を撃破していくが，「跳梁跋扈の森」のエリアボス・貪食の大蛇とのバトルで毒を浴びてしまい，近隣の町「セカンディル」に駆け込んだ。
　街で装備を整えたサンラクは，強敵が出現すると言われる夜のフィールドで“七つの最強種”の一角「夜襲のリュカオーン」に遭遇する。ゲーム開始から1年間，3000万人のプレイヤーのうち，誰一人攻略できていないユニークモンスター相手に，，サンラクは驚異的な粘りを見せるも，あえなく敗退。しかし，彼はその逆境を，「シャングリラ・フロンティア」という神ゲーを楽しんでいた。
「俺は今，ゲームを最高に楽しんでいる！」


　街でリスポーンしたサンラクは，リュカオーンの呪いを体にマーキングされ，胴や足に防具を装備できなくなっていることに気付く。どうやらNPCとの会話にも補正が入るらしい。そんなサンラクの前に，ウサギの姿をしたNPCのエムル（CV：日高里菜）が現れ，ユニークシナリオ「兎の国からの招待」への招待を受ける。新たな展開に胸躍らせるサンラクは兎の国「ラビッツ」に足を踏み入れるのだった。

ゲーマーの夢見るシチュエーションを追体験

　本作は，フルダイブ型VRゲーム「シャングリラ・フロンティア」をはじめ，さまざまなジャンルのVRゲームに挑戦する主人公・陽務楽郎の姿を描いた作品だ。フルダイブ型VRゲームもしくはVRMMOとは架空のゲームジャンルで，古くは高畑京一郎氏のSF小説「クリス・クロス 混沌の魔王」，ゲームでは「.hack」シリーズなどが思い当たるが，なにより川原 礫氏の「ソードアート・オンライン」で爆発的に認知されたジャンルとなる。
　その後，SAOフォロワーともいえる作品が小説投稿サイトで数多く生み出され，今シーズンでも「とあるおっさんのVRMMO活動記」がアニメ化されている。


　このジャンルの醍醐味といえば，なんと言っても読者（視聴者）が主人公と一緒に，見たこともないゲームをプレイしている感覚を共有できることだろう。本作では，クソゲーばかりをプレイしていた主人公が誰しも認める神ゲー「シャングリラ・フロンティア」を体験し，そのクオリティの高さに驚き，ゲームにハマっていく様子を丁寧に描いている。


　そして，まだ誰も倒したことのないユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」と遭遇し，一度は敗れたものの，ほかのプレイヤーが手を付けていないユニークシナリオへと足を踏み入れていく。未知へのあこがれ，ユニーク（唯一）への独占欲などが入り混じった，ゲーマーなら誰もが憧れるシチュエーションを彼と同じ視点で味わえるわけだ。夜襲のリュカオーンとの出会いをきっかけに，サンラクのプレイ体験は大きく変貌し，ここからサンラクだけの「シャングリラ・フロンティア」がスタートすることになる。

大迫力の夜襲のリュカオーン戦

　さまざまなクソゲーに挑戦してきたサンラクは，ゲームに対する勘の良さと反応速度が常人よりも鍛えられているという。フレーム単位での見切りが必要なパリィもやすやすとこなし，ほぼ敵の攻撃を食らわない回避スキルでレベルのハンデを乗り越えていく。

　このプレイヤースキルが十二分に発揮される，敵との戦闘シーンが本作の大きな見どころだ。アニメでは，躍動感あふれるサンラクの動きや，ゲームとは思えない敵モンスターのアクションを，多彩なエフェクトと妥協のない作画で迫力のあるシーンに仕上げている。第3話「黒狼夜襲」での夜襲のリュカオーン戦は，序盤のクライマックスといっても過言ではない手に汗握るバトルを繰り広げた。
　「魔女の旅々」や「月が導く異世界道中」，そして「江戸前エルフ」といった話題作を手掛けてきたスタジオC2Cのこだわりが詰まった回なのでお見逃しなく。

クソゲ―仲間たちが集結

　ユニークシナリオに突入したサンラクは，“七つの最強種”を狙うギルドやシナリオの考察に熱を上げるチームなど，ゲーム内でさまざまな勢力に狙われることになる。さらに，彼を慕う斎賀 玲（CV：和氣あず未）ことサイガ-0，クソゲー仲間のアーサー・ペンシルゴンこと天音永遠（CV：日笠陽子），オイカッツォこと魚臣 慧（CV：小市眞琴）らが仲間に加わり，物語は思いがけない方向へ進んでいく。
　果たしてサンラクは，夜襲のリュカオーンを討ち果たせるのか。そしてまだ見ぬユニークモンスターたちはいつ登場するのか，興味は尽きない。ともあれ，満を持して登場したサンラクの相棒・エルムの「ですわー」をアニメでもたっぷり堪能しよう。


　なお，Netmarbleにて本作をベースにした新作ゲームの制作が進行中だ。現段階ではPVしか公開されていないが，サンラクやサイガー0の戦闘アクションを確認できるので，気になる人はこちらもチェックしておこう。

「シャングリラ・フロンティア」公式サイト

「シャングリラ・フロンティア」公式X（旧Twitter）

放映データ
2023年10月〜
毎週日曜17：00〜TBS系ほか

キャスト
サンラク/陽務楽郎：内田雄馬
サイガ-0/斎賀玲：和氣あず未
アーサー・ペンシルゴン/天音永遠：日笠陽子
オイカッツォ/魚臣 慧：小市眞琴
エムル：日高里菜
ヴァイスアッシュ：大塚明夫
サイガ-100/斎賀 百：花守ゆみり
アニマリア：千本木彩花
オルスロット：山下誠一郎

スタッフ
原作：硬梨菜　不二涼介（講談社「週刊少年マガジン」連載）
監督：窪岡俊之
副監督：池下博紀
シリーズ構成・脚本：筆安一幸
キャラクターデザイン・総作画監督：倉島亜由美
モンスターデザイン：長森佳容　大河広行　河野絵美　有澤寛
プロップデザイン：横山友紀　河野絵美
アクション・エフェクトディレクター：酒井智史
メインアニメーター：芳賀 亮　月田文律　西野武志　姚江 浩　新田駿也
アクション作画監督：日浦玲奈　星野玲香
総動画監修：髙橋知也
色彩設計：高木雅人
色彩設計補佐：手倉森咲子
美術監督：野辺勇紀（インスパイアード）　中村朝咲（インスパイアード）
美術アドバイザー：増山 修
２Dワークス：田村あず紗
３Dデザイン：Emotional Pictures
撮影監督：山杢 光
編集：定松 剛
音響監督：藤田亜紀子
音楽：髙田龍一 (MONACA)　広川恵一 (MONACA)　高橋邦幸 (MONACA)
OP：「BROKEN GAMES」FZMZ
ED：「エース」CHiCO
アニメーション制作：C2C
(C)硬梨菜・不二涼介・講談社／「シャングリラ・フロンティア」製作委員会