
連載
そうだ アニメ,見よう:第234回は歴史大河ファンタジー「鬼人幻燈抄」。江戸時代から平成までの170年を駆け抜けた男の物語
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中西モトオ氏による小説「鬼人幻燈抄」(双葉文庫刊/全14巻)は,江戸時代から平成まで170年を旅する鬼人の物語を描いた和風ファンタジーだ。本作は,2011年に小説投稿サイト「Arcadia」で発表され,その後「小説家になろう」で改訂版を連載し,2019年から双葉社より単行本が刊行された。里見 有氏によるコミカライズ版も刊行されており,根強い人気を誇る作品だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第234回のタイトルは,同作をアニメ化した「鬼人幻燈抄」(毎週月曜24:00〜TOKYO MXほか)。制作は横浜アニメーションラボ,シリーズ構成・脚本は「ポケットモンスター」シリーズや「ヴァニタスの手記」の赤尾でこ氏が担当。監督は「アサシンズプライド」や「スーパーカブ」の相浦和也氏が務めている。
「鬼人幻燈抄」
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江戸から遠く離れた山間の鍛冶場「葛野(かどの)」で暮らす甚太(CV:八代 拓)と鈴音(CV:上田麗奈)は,仲の良い兄妹だ。幼いころに,とある理由から家出した2人は元治(CV:小林親弘)に拾われ,娘の白雪(CV:早見沙織)ともども彼の子供として育てられた。
元治は,神に祈りを捧げる「いつきひめ」と呼ばれる巫女の護衛役「巫女守(みこもり)」だった。やがて,成長した甚太は元治の跡を継ぎ,“白夜”と名を変えた白雪の「巫女守」を務めるようになった。
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ある日,甚太は鬼の討伐に赴いた森で,遥か未来を語る不思議な鬼(CV:白熊寛嗣)に出会う。鬼を退治することには成功したが,その鬼から能力を受け継ぎ,甚太の体も鬼になってしまう。
同じころ,別の鬼(CV:近藤 唯)が村を襲い,その混乱に乗じて白夜が殺されてしまう。白夜を殺したのは,鬼にかどわかされて鬼となり果てた鈴音であった。鬼となった鈴音の力は強大で,遠見の力を持つ鬼は「今から百七十年後に,すべての人を滅ぼす災厄となり,永久に闇を統べる王が生まれる」と予言する。
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鬼となったことで歳を取らなくなった甚太は名前を“甚夜”と変え,さまざまな時代で鬼を討伐しながら過ごし,鈴音の姿を追い求める。
1時間スペシャルで放送された「葛野編」
本作は,江戸時代,幕末,明治,大正,昭和,平成までの170年にわたる物語を描いた“歴史大河ファンタジー”だ。18歳の姿のままの主人公・甚夜が,千年朽ちぬとされる宝刀「夜来」を携え,さまざまな事情を抱えた人や鬼と関わっていく。
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物語のプロローグである「葛野編」を描いた第1話「鬼と人と」は,1時間スペシャルで放送された。なぜ,甚太と鈴音が葛野で暮らすことになったのか。鈴音が姉とも慕う白雪を殺したのはなぜなのか。
集落を存続するための決断が,どんな惨劇を招いたかが語られる。鬼と人が紡ぐ本作「鬼人幻燈抄」がどんな作品なのかを,ぎゅっと凝縮した第1話となった。コミック版のように,「平成編」のワンシーンをちら見せしているのもニクイ演出だ。
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第2話からは「江戸編」がスタート
第2話からは舞台を移し,「江戸編」がスタートする。甚夜はここで鬼退治を生業として暮らし,この町でさまざまな出会いを得る。商家「須賀屋」の店主・重蔵(CV:相沢まさき)やその娘である奈津(CV:会沢紗弥),いきつけの蕎麦屋の主人・喜兵衛の店主(CV:上田燿司)とその看板娘・おふう(茅野愛衣),若い侍や夜鷹,そして怪しい付喪神使いなどなど。
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そもそも鬼である甚夜は,率先して人と関わりを持とうとはしない。いつも仏頂面の彼をおふうは「愛想がない」と言って笑う。そんな甚夜を気にせず接してくれる彼らこそ,鬼である甚夜が人の道を踏み外すのを救っているのかもしれない。
意外な事件の真相
甚夜が遭遇する事件は,鬼に関わることとはいえ,常に血なまぐさいものというわけでもない。人の生と死,入り組んだ愛情が生んだ悲しい事件もあれば,心がすっと軽くなるものもある。本作は,そうした事件の裏に潜む真相を解き明かすことで,意外な事実や,過去にあった出来事を明らかにしていく。
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第6話「幸福の庭 後編」でも,思いもよらぬ人物がストーリーの中心になり,驚いた視聴者も多いはず。第7話「九段坂呪い宵」では若かりし元治のエピソードが語られた。このあたりが本作の人気の一因となっているのかもしれない。
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2クール連続で放送。どこまで描かれる?
本作は,2クール連続の放送が予定されている。最後の「平成編」までアニメ化されるかどうかは分からないが,今のペースなら期待が持てそうだ。
ド派手なバトルシーンよりもどちらかというと,切なく,泣ける,しっとりとしたストーリーが見どころとなる本作。170年を生きる甚夜と,彼と出会った人々が紡ぐ人間模様をまだまだ堪能できそう。ちょっぴり大人の物語を求める人に,おすすめの作品だ。
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TVアニメ「鬼人幻燈抄」公式サイト
TVアニメ「鬼人幻燈抄」公式X
放映データ |
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2025年4月〜毎週月曜24:00〜TOKYO MXほか |
キャスト | |
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甚太/甚夜:八代 拓 | |
鈴音:上田麗奈 | |
白雪:早見沙織 | |
清正:熊谷健太郎 | |
ちとせ:社本 悠 | |
元治:小林親弘 | |
同化の鬼:白熊寛嗣 | |
遠見の鬼女:近藤 唯 | |
奈津:会沢紗弥 | |
善二:峯田大夢 | |
重蔵:相沢まさき | |
喜兵衛の店主:上田燿司 | |
おふう:茅野愛衣 | |
三浦直次:山下誠一郎 | |
夜鷹:生天目仁美 | |
秋津染吾郎:遊佐浩二 |
スタッフ |
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原作:中西モトオ(双葉文庫) |
監督:相浦和也 |
シリーズ構成:赤尾でこ |
キャラクターデザイン:池上たろう |
プロップデザイン:杉村友和 |
美術設定:工藤ただし(パインウッド) 磯辺 結(千住工房) 新妻雅行(千住工房) |
美術ボード:磯辺 結(千住工房) |
色彩設計:大西峰代 |
3D監督:遠藤 誠(トライスラッシュ) |
撮影監督:宮坂凌平 |
編集:廣瀬清志(editz) 山条裕香(hisui) |
音楽:?田龍一(MONACA) 広川恵一(MONACA) 高橋邦幸(MONACA) |
オープニングテーマ:「コンティニュー」NEE |
エンディングテーマ:「千夜一夜 feat. 仲宗根泉 (HY)」Hilcrhyme |
音響監督:原口 昇 |
音響制作:ビットグルーヴプロモーション |
アニメーション制作:横浜アニメーションラボ |
(C)中西モトオ/双葉社・「鬼人幻燈抄」製作委員会 |
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