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そうだ アニメ,見よう:第237回はタイザン5氏原作の「タコピーの原罪」。ショッキングな展開が話題の,少女と異星人の物語
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Webコミック配信サイト「少年ジャンプ+」で,2021年12月から2022年3月まで連載されていた漫画「タコピーの原罪」(ジャンプ・コミックス/全2巻)。タイザン5氏の連載デビュー作となる本作は,わずか4か月程度の短期連載であったにもかかわらず,そのショッキングな展開が話題を呼び,1日で200万以上の閲覧数を記録した作品だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第237回のタイトルは,同作をアニメ化した「タコピーの原罪」(毎週土曜0:00〜各配信サービスほか)。制作はENISHIYAが担当し,シリーズ構成と監督を「Dr.STONE」や「メイドインアビス」「葬送のフリーレン」を手がけた飯野慎也氏が務めている。
「タコピーの原罪」
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しずかは,クラスメイトの雲母坂まりな(CV:小原好美)を中心にしたグループにいじめられていたのだ。いじめの原因は,まりなの父親が水商売を営むしずかの母親に入れあげていること。家庭崩壊の原因をしずかに転嫁していたのだった。
父親は家を出ており,1人でいることの多いしずかの心のよりどころは,飼い犬のチャッピー(CV:藤原夏海)だけ。そんな複雑な家庭事情を抱えるしずかの笑顔を取り戻すために,タコピーは手を変え品を変え,彼女を元気づける。
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そんなある日,まりなの策略により,チャッピーが姿を消した。ショックを受けたしずかは,タコピーから借りたハッピー道具「仲直りリボン」を使って,首を吊って自殺してしまう。
しずかの死体を発見したタコピーは,時間を遡ることができるハッピー道具「ハッピーカメラ」の機能を使って彼女を救おうと思い立つのだった。
目指したのは「陰湿なドラえもん」
不思議な力を持ったキャラクターが,不幸な少年少女の前に現われ,その力で彼らを助けてくれる。藤子・F・不二雄氏の「ドラえもん」をはじめ,こうした設定を持つ作品がこれまで数多く生み出され,そして愛されてきた。本作もそうした作品群のひとつとなるのだが,この物語はほかのものとは,かなり趣が異なる。
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主人公の少女しずかは,苛烈ないじめと,子供を顧みない母親のせいで心も体もボロボロ。タコ型地球外生命体のタコピーは,そんなしずかを救おうとハッピー道具を使用するが,ことごとく空回りする。
なぜかというと,タコピーには“人間の悪意”が理解できないから。ハッピー星にはない概念“いじめ”や“ネグレクト”などが分からないタコピーは,見当違いの解決策しか提示できないのだ。空を飛べる「パタパタつばさ」も,喧嘩した相手と仲直りできる「仲直りリボン」も使い方を間違えれば意味はないわけだ。
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作者のタイザン5氏は「陰湿なドラえもんをやりたいと思った」のだとか。彼女を救うべくタコピーは,自殺してしまったしずかを生き返らせ,ハッピーにするべく,時間を何度も巻き戻す。自殺を回避しようと奮闘するタコピーを軸に物語が展開する,ほのぼのとは縁遠い“大人のためのファンタジー”が,「タコピーの原罪」なのだ。
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各配信サービスでのみ視聴可能
本作は,ABEMAやプライムビデオ,dアニメストア,Netflixなど,主要な配信サービスで視聴できるが,TVでは放送されない。全6話の予定で,第1話「2016年のきみへ」は約40分の長尺で配信された。通常の30分アニメが,OP,ED,CM枠を除くと約20分前後であることを考えると通常のアニメ12話分を楽しめそうだ。
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制作にあたっているENISHIYAは,2018年に設立された新進気鋭のアニメスタジオで,元請制作を手掛けるのはこれが初めてとのこと。第1,2話では,丁寧なキャラクター描写と美術,繊細な撮影技術で,原作の持つ独特の世界観を表現していた。
特に,シンプルな造形でありながら,さまざまな表情を見せるタコピーには,制作スタッフのこだわりと愛情を感じ取れる。「〜ピ」という口癖と相まって,愛らしいタコピーのファンが増えそうだ。
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そんな物語を盛り上げているのが,anoさんが歌うオープニング楽曲「ハッピーラッキーチャッピー」と,Teleさんのエンディング楽曲「がらすの線」だ。どちらも本作の雰囲気にマッチしたスローテンポの曲で,ちょっとハードな展開で弱ったココロを癒してくれる。どこか切なさが漂うOP&EDアニメにも注目してほしい。
注意喚起されるセンシティブな内容
本作の冒頭部分では,「本作品には一部、命に関わるセンシティブな描写が含まれています」という,注意喚起がアナウンスされる。これは,自殺やいじめ,ネグレクトなど,現代社会の抱える闇を詰め込んだような本作において警告といえるものだ。
「しずかちゃんをハッピーにしたい」と願いながら奮闘するタコピーをあざ笑うかのように,今後も物語は苛烈を極めていく。果たしてタコピーの願いは叶うのか。物語はハッピーエンドで終わるのか。2021年末にSNSを騒がせた本作がどんな結末を迎えるか,最後まで見届けたい。
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TVアニメ「タコピーの原罪」公式サイト
TVアニメ「タコピーの原罪」公式X
放映データ |
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2025年7月〜毎週土曜0:00〜各配信サービスほか |
キャスト | |
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タコピー:間宮くるみ | |
しずか:上田麗奈 | |
まりな:小原好美 | |
東:永瀬アンナ | |
チャッピー:藤原夏海 |
スタッフ |
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原作:「タコピーの原罪」タイザン5(集英社ジャンプ コミックス刊) |
監督・シリーズ構成:飯野慎也 |
キャラクターデザイン:長原圭太 |
プロップデザイン:中井 杏,10十10(テントテン) |
2Dワークス:アズマ,10十10 |
美術監督:板倉佐賀子 |
色彩設計:秋元由紀 |
CGディレクター:茂木邦夫 |
カラースクリプト:大谷藍生 |
撮影監督:若林 優 |
編集:坂本久美子 |
音響監督:明田川 仁 |
音楽:藤澤慶昌 |
アニメーション制作・プロデュース協力:ENISHIYA |
(C)タイザン5/集英社・「タコピーの原罪」製作委員会 |
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