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PowerColorの「Radeon RX 580 XTR」カードをテスト。選別版Polaris 20は通常版と何が違うのか
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印刷2017/05/22 00:00

レビュー

選別品「Polaris 20 XTR版RX 580」搭載カードは,通常版と何が違うのか

PowerColor Red Devil Golden Sample Radeon RX 580 8GB GDDR5(AXRX 580 8GBD5-3DHG/OC)

Text by 宮崎真一


PowerColor Red Devil Golden Sample Radeon RX 580 8GB GDDR5(型番:AXRX 580 8GBD5-3DHG/OC)
メーカー:Tul
問い合わせ先:CFD販売(販売代理店) 050-3786-9590(平日13:00〜17:00)
実勢価格:3万5700〜3万6500円程度(※2017年5月22日現在)
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 第2世代Polarisマクロアーキテクチャを採用するGPU「Radeon RX 580」(以下,RX 580)には,通常版である「Polaris 20 XTX」搭載モデルとは別に,選別版である「Polaris 20 XTR」を採用したモデルも存在している。4Gamerで先にテスト結果をお届けしているのは,通常版搭載カードのほうだ。

 通常版であるPolaris 20 XTX搭載モデルだと,その3D性能は「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB)といい勝負ができるレベルだったわけだが,Polaris 20 XTR搭載モデルではどうだろう? 同GPUを採用するTul製カード「PowerColor Red Devil Golden Sample Radeon RX 580 8GB GDDR5」(型番:AXRX 580 8GBD5-3DHG/OC,以下 Red Devil RX 580 GS)を入手できたので,テストにかけてみたい。


ブースト最大クロックが通常モデルよりも高い選別版という扱いのRX 580 XTR


RX 580 XTR。パッケージ上の刻印は「215-0910066」だったので,RX 580の「215-0910038」とは別扱いということなのだろう
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 以下,Polaris 20 XTR版RX 580を「RX 580 XTR」と書いて通常モデルと区別するが,RX 580 XTRの正体は,発表時のニュース記事にもあるとおり,高クロック動作が可能な,AMDによる選別品である。
 そのため,動作クロックと,動作クロックの引き上げに伴う公称典型消費電力の違い,そしてグラフィックスメモリ容量のラインナップ違いを除いて,RX 580との間にスペックの違いはない。具体的には以下のとおりだ。

  • RX 580 XTR:ベースクロック1257MHz,ブースト最大クロック1340MHz,演算ユニット数36基,シェーダプロセッサ数2304基,メモリインタフェース256bit GDDR5,グラフィックスメモリクロック8000MHz相当,グラフィックスメモリ容量8GB,公称典型消費電力185W
  • RX 580:ベースクロック1168MHz,ブースト最大クロック1244MHz,演算ユニット数36基,シェーダプロセッサ数2304基,メモリインタフェース256bit GDDR5,グラフィックスメモリクロック8000MHz相当,グラフィックスメモリ容量8/4GB,公称典型消費電力150W

 そんなRX 580 XTRを採用するRed Devil RX 580 GSは,メーカーレベルで動作クロックの引き上げがなされた,いわゆるクロックアップモデルである。

外部出力インタフェース部のすぐ近くにあるトグルスイッチでUltra OCモードとSilent OCモードを切り替えられる。カード上のシルク印刷だと「OC/SILENT」だが,Tulの説明ではそれぞれ「Ultra OC」と「Silent OC」となる
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 動作モードは「Ultra OC」と「Silent OC」の2つで,PCがシャットダウンした状態,もしくはPCにカードを差す前の状態から,カード上のトグルスイッチで,グラフィックスBIOS(=VBIOS)自体が切り換わる。ブースト最大クロックはUltra OCだと1425MHz,Silent OCだと1411MHzで,これはRX 580 XTRの定格ブースト最大クロックと比べて順に約6%,約5%高い。ちなみにRX 580のレビュー記事で用いたASUSTeK Computerのクロックアップ版カード「ROG-STRIX-RX580-O8G-GAMING」(以下,STRIX RX 580)だと,ブースト最大クロック設定が最も高クロックの動作モードでも1380MHzだったので,RX 580 XTR搭載のRed Devil RX 580 GSは,よりクロックの低い動作モードであっても,それより高いということになる。

 なお,メモリクロックはUltra OC,Silent OCとも,リファレンスと変わらず8000MHz相当(実クロック2000MHz)だ。

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Ultra OCモードを選択のうえ,Radeon Settingsからハードウェア情報を表示させたところ。1425MHzのブースト最大クロックは「コアのクロック」として記載されている
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同様にこちらはSilent OCモードを選択のうえ,ハードウェア情報を表示させたところ。「コアのクロック」はUltra OCより14MHz低い1411MHzとなっていた


カード長は実測で約242mm。3スロット仕様の大型クーラーを採用


カード長自体は長すぎることもないのだが,クーラーは3スロット仕様で,非常に分厚い
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 以上を踏まえつつ,Red Devil RX 580 GS自体をチェックしていこう。

 カード長は実測約242mm(※突起部含まず)なので,先に紹介したSTRIX RX 580の同301mmと比べると,60mm弱も短い計算になる。
 ただ,マザーボードに装着したときの垂直方向へ,I/Oブラケットから実測約35mmもはみ出ており,さらに搭載するGPUクーラーは3スロット仕様となっている。ミドルクラス市場向けGPUを採用するグラフィックスカードとしては,Red Devil RX 580 GSもSTRIX RX 580に負けず劣らず大きく,やや扱いづらい部類に入るだろう。

カードを異なる角度から。左の写真を見ると,クーラーがブラケット部からかなりはみ出ているのが分かる。本体背面側は厚さ実測約1.5mmの金属板で覆ってあり,クーラーの重さによる基板のたわみを防止する仕様なのも確認可能だ
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 補助電源コネクタは,カードの側面から約10mm奥まったところにある実装で,その構成は8ピン×1+6ピン×1。RX 580のリファレンス仕様だと8ピン×1なので,電源周りはかなりの強化を行っていることになる。

補助電源コネクタは8ピン×16ピン×1(左)。外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b(Type A)×1,Dual-Link DVI-D×1となっている(右)
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 3スロット仕様のクーラーは100mm角相当のファンを2基採用している。Tulは,「Radeon RX 480」世代のRed Devilシリーズで,羽が2枚ずつ先端部でつながった独特の構造を採用する「Double Blade III」ファンを採用していたのだが,今回のRed Devil RX 580 GSは,少なくとも見た目はごく普通の羽形状になっている。とくに名前もアピールされていないので,標準的な羽形状に戻ったという理解でいいのではなかろうか。

 GPU温度が60℃以下になると回転が自動的に止まる「Mute Fan Technology」は引き続き採用されているが,これは常時有効で,ユーザーによる無効化といった選択肢は用意されていない。
 なお,GPUクーラー部に関しては,GPUクーラー上面部のRed Devilロゴに赤色LEDが埋め込んであり,これを点灯させるか消灯させるか,補助電源コネクタの近くにある「LED SWITCH」から選択できることも触れておく必要があるだろう。こちらのトグルスイッチは,システムの動作中でも切り替えが可能だ。

補助電源コネクタのすぐ側にあるLED SWITCH(左)。補助電源コネクタから遠い側が常時消灯,近い側が常時点灯となる。工場出荷時設定は常時点灯で,右はまさに点灯させている例である
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 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,クーラーを取り外した時点で保証は失効する。その点をお断りしつつ,今回はレビューのため特別に取り外して,GPUクーラーと基板を確認していきたい。

GPUクーラーを外し,さらに背面の金属板も外す
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放熱フィン部はかなり分厚い
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 まずはCPUクーラーからだが,GPUと触れる枕の部分から,8mm径が4本,6mm径が1本で合計5本のヒートパイプがGPUの真上にある放熱フィン部へ熱を運ぶ設計となっている。メモリチップと電源部は,熱伝導シートを経て「放熱フィンと一体化したヒートシンク」に触れる設計だ。

カバーを取り外した,GPUクーラー単体。GPU用の枕から合計5本のヒートパイプが伸びていることと,GPU用の枕を囲むようにメモリチップ用の枕があり,別途電源部用の枕もあって,それぞれ放熱フィン部と直結していることも分かる
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基板の表と裏。GPU用の電源部はI/Oインタフェース寄りのところにある
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 基板上の電源部は6+1フェーズ構成。この電源部には「Platinum Power Kit-DrMos」というマーケティングネームが付いており,Tulによれば,デジタルPWMとマルチフェイズ制御を組み合わせることで,電力効率や温度耐性の向上を実現しているという。

 確認したところ,GPU用のDriver MOSFET(=DrMosあるいはDrMOS。ドライバICとMOSFETを1つにまとめたもの)は,Infineon Technologiesの「TDA88240」だった。一方,メモリ用のMOSFETはOn Semiconductor製「NTMFS4C10N」と「NTMFS4983NF」を組み合わせた構成となっている。

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電源部は6+1フェーズ構成。6+2フェーズにまで対応するIR HiRel(旧称 International Rectifier)製デジタルPWMコントローラ「IR3567B」の姿も見える
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GPU用のDriver MOSFETはInfineon Technologiesの「TDA88240」だ。最大35A出力に対応するモデルである
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メモリ用はOn Semiconductor製のMOSFET,「NTMFS4C10N」と「NTMFS4983NF」を組み合わせた構成だ
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+5V用にANPEC ElectronicsのPWMコントローラ「APW8722A」と,On Semiconductor製「NTMFS4C10N」が1つ,「NTMFS4C05N」が2つあった

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 なお,搭載するメモリチップはSamsung ElectronicsのGDDR5「K4G80325FB-HC25」(8Gbps品)。メモリクロックは前段でも触れたとおり8000MHz相当なので,チップのスペックどおりの動作クロックということになる。


RX 580やGT 1060 6GBとなどと比較。FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチも実施


 テスト環境のセットアップに入りたい。今回,Red Devil RX 580 GSの比較対象としては,RX 580を採用するSTRIX RX 580を用意。STRIX RX 580は,工場出荷時設定である「Gaming mode」と,MSIのオーバークロックツール「Afterbuner」(Version 4.3.0)を用いてリファレンス相当にまでクロックを落とした状態でもテストを行うことにした。後者は性能検証パートにおいて,便宜的にRX 580のリファレンス仕様として扱う。
 そのほか,上位モデルとなる「Radeon R9 Nano」(以下,R9 Nano)とGTX 1060 6GBも用意している。
 主役となるRed Devil RX 580 GSは,Ultra OCモードとSilent OCモードの両方でテストを行い,グラフ中に限り,「RD RX 580(Ultra)」「RD RX 580(Silent)」と書いて区別する。

 テストに用いたグラフィックスドライバは,「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.5.1」と「GeForce 382.05 Driver」。いずれも,テスト開始時点における最新版だ。それ以外のテスト環境はのとおりである。

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 テスト内容は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション19.0に準拠。ただし,来たるレギュレーション20世代を先取りする形で,「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」に代わり,「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)を実施することにした。
 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチでは,最も高い画質を期待できる「最高品質」と,比較的描画負荷が軽めの「標準品質(デスクトップPC)」の2つのプリセットを選択。テストは1回のみ実行し,結果として表示される整数値のスコアをそのまま採用しつつ,別途,自動的に記録されるレポートファイルから,平均フレームレートもスコアとして取りあげる。

 解像度は,AMDがRX 580では2560×1440ドットをターゲットにしていることもあり,同解像度と,アスペクト比16:9でその1つ下となる1920×1080ドットを選択した。
 なお,テストにあたって,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。これは,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するためだ。


Red Devil RX 580 GSは,クロックアップ版RX 580カードよりも明らかに高いベンチマークスコアを示す


 テスト結果の考察に入ろう。
 グラフ1は,「3DMark」(Version 2.3.3693)における,Fire Strikeの総合スコアをまとめたものだ。Red Devil RX 580 GSは,Ultra OCモードでRX 580よりも約4%高いスコアを示し,STRIX RX 580も2〜3%程度上回った。動作クロックが高い分の,順当な結果だと言えるだろう。
 同じ理由で,ブースト最大クロックが14MHz異なるだけのUltra OCモードとSilent OCモードとの間に,スコア差はほとんどない。

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 同じく3DMarkから「Time Spy」の結果をまとめたものがグラフ2だ。ここでもRed Devil RX 580 GSのUltra OCモードはRX 580との間に約4%のスコアギャップを設けている。GTX 1060 6GBに対して約6%高いスコアであるのも見逃せないところだ。

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 グラフ3,4は「Far Cry Primal」の結果である。Red Devil RX 580 GSのUltra OCモードとRX 580のスコア差は3〜4%程度なので,3DMarkと同じ傾向と言ってしまっていいだろう。対STRIX RX 580のスコアも+2〜3%程度で,こちらも3DMarkの結果を踏襲している。

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 「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)の結果がグラフ5,6で,ここだとRed Devil RX 580 GSのUltra OCモードは対RX 580で104〜107%程度のスコアを示している。R9 Nanoにあと一歩にまで迫る一方,Radeon Softwareの最適化不足もあり,GTX 1060 6GBの後塵を拝している点も興味深い。

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 グラフ7,8はVulkan API版「DOOM」の結果だ。ここでRed Devil RX 580 GSのUltra OCモードは,メモリ容量の制約があって高負荷条件においてスコアを延ばしきれないR9 Nanoに「ウルトラ」プリセットでスコアを並べ,さらにGTX 1060 6GBに対しては16〜29%程度のスコアを付けて圧勝している。これは立派の一言だ。

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 「Fallout 4」でも,Red Devil RX 580 GSのUltra OCモードは「ウルトラ」プリセットでR9 Nanoといい勝負を演じている(グラフ9,10)。GTX 1060 6GBに対して,1920×1080ドットだとやや離されるものの,2560×1440ドット条件で94〜100%程度と,スコア差を縮めている点もなかなか景気がいい。

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 Radeonには厳しい戦いとなるFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの結果がグラフ11,12だ。Red Devil RX 580 GSのUltra OCモードは,RX 580に対して約3〜5%程度,動作クロック分,きっちりスコアを延ばしているものの,対GTX 1060 6GBだと92〜97%程度のスコアとなっている。「最高品質」の2560×1440ドットという,最も描画負荷の高い条件におけるスコアが一番競合を追い詰めているのが救いか。

グラフ画像をクリックすると平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 Red Devil RX 580 GSのUltra OCモードが終始良好な結果を残したのが,グラフ13,14にスコアをまとめた「Forza Horizon 3」である。メモリ容量が足枷となってスコアを大きく落とすR9 Nanoをさておくと,Red Devil RX 580 GSはRX 580から5〜8%程度高いスコアを示し,GTX 1060 6GBに対しても97〜101%程度と,ほぼ互角に立ち回った。

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消費電力は大幅に増加。高い動作クロックの代償は小さくない


 高いクロックで動作する選別品であるRX 580 XTRだが,クロックが高い以上,気になるのは消費電力だ。ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用い,システム全体の消費電力を測定,比較してみたい。
 テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 結果はグラフ15のとおりだ。まずアイドル時はGTX 1060 6GBが若干低めながら,Radeon勢はすべて50W台なので,おおむね横並びと言っていいだろう。
 気になるアプリケーション実行時はというと,Red Devil RX 580 GSのUltra OCモードは,RX 580に対して16〜33W高いスコアを示し,GTX 1060 6GBに対しては79〜140W高いという,同じ市場を狙うカードとしては強烈なスコア差を示してしまった。
 一方で面白いのはSilent OCモードのスコアで,前段で示したように3D性能はそれほど変わらないながらも,消費電力はUltra OCモード比で7〜23W低い。もちろんこれでも競合製品を前にすると焼け石に水ではあるのだが,かなり違うということは覚えておく価値があるだろう。

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 GPU温度も確認しておきたい。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 1.20.0)からGPU温度を取得することにした。テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いてある。
 カードごとに温度センサーの位置やファン回転数の制御方法は異なるため,横並びの比較にあまり意味はない。そのため,Red Devil RX 580 GSの搭載するクーラーの冷却能力を推し測る程度に留めるが,グラフ16を見ると,高負荷時に70〜71℃程度なので,十分な冷却能力があると述べていいだろう。
 なお,アイドル時の44℃というのはR9 NanoやGTX 1060 6GBと比べて高いが,これはアイドル時にMute Fan Technologyが機能し,ファンの回転が停止するためである。

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 気になる動作音は,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,このクラスの製品としては十分静かな印象を受けた。ただ,STRIX RX 580と比べてどちらが静かかと言えば,筆者はSTRIX RX 580に軍配を上げる。
 ちなみにこれも筆者の主観だが,Ultra OCモードとSilent OCモードで,ファンの動作音に大した違いはないように感じられた。


STRIX RX 580よりも安価なのは間違いなく魅力。消費電力が気にならないならアリ


製品ボックス。通常版Red Devilだと文字は赤いのだが,RX 580 XTRを搭載するRed Devil RX 580 GSは文字が金色になっている。店頭で見分けるときはここをヒントにするといい
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 以上,RX 580 XTRを採用するRed Devil RX 580 GSの性能は,通常版RX 580搭載カードよりも明らかに高いことが分かった。そのおかげで,上位製品や競合製品に対する立ち位置もさらによいものとなっている。R9 NanoやGTX 1060 6GBに対して互角だったり優勢だったりする率が上がる点は,素直に評価したい。
 その一方で,消費電力が高くなってしまっていることは大きなデメリットになる。とくにGTX 1060 6GBに対して最悪の場合100数十W上がってしまうというのは看過できないところだ。

 気になる実勢価格は3万5700〜3万6500円程度(※2017年5月22日現在)。今回比較対象として用意したSTRIX RX 580だと同4万〜4万2000円程度なので,それを考えると,Red Devil RX 580 GSの価格対性能比はかなり高いと言える。

 ちなみに,Red Devil RX 580 GSの下位モデルである「PowerColor Red Devil Radeon RX 580 8GB GDDR5」(型番:AXRX 580 8GBD5-3DH/OC)だと実勢価格は同3万5000〜3万6200円程度なので,それと比べても大した価格差は付いていない。

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 AMDが「RX 580 XTRカードは値段で見分けられる」としていたにも関わらず,区別しづらい状況になっているので,その点は注意が必要だ。ただ,消費電力にさえ妥協できるなら,下位モデルと大した価格差のないRX 580 XTR搭載カードであるRed Devil RX 580 GSは,ミドルクラスの選択肢として一定の魅力を持つ製品だとまとめることができるだろう。

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PowerColorのRed Devil RX 580 GS製品情報ページ(英語)

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    Radeon RX 500

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