
連載
「Arctic Eggs」の目玉焼きを焼くフライパンが,なぜあそこまでツルツルなのかを考察する。俺のコラボカフェ:Menu 074
![]() |
4Gamerをご覧の皆様こんにちは。クッキングエンターテイナーの大西哲也です。様々なゲームに出てくる料理をプロの料理人が本気で作ったり,プロ目線で勝手に検証して発表したりする「俺のコラボカフェ」。今回もよろしくお願いします。
今回紹介するのは,2024年5月にSteamで発売された「Arctic Eggs」というゲームです。簡単にいえば「SF世界で人々の要望に答えながら目玉焼きを焼いていく」という内容です。ですが,その独特の世界観や目玉焼きを焼くアクションの難度,巧妙さからマニアックなファンを獲得し続けています。
舞台は2091年の南極で,なぜかニワトリや卵の販売が禁止されています。そんな世界で主人公は脱出を試みたが捕まり,なぜか街に住む空腹の人々に目玉焼きを提供するよう命じられます。違法なのに。
主人公は都市に住む人と言葉を交わし,好みの目玉焼きを調理していきます。その要望がいろいろで,「2個焼いてくれ」「ベーコンを一緒に焼いてくれ」といった普通のものから,「タバコを一緒に焼け」「銃弾が爆発しないように焼け」など,現実にはありえない要望を出してきます。
その試練(?)を乗り越えて,「六胃の聖人」と呼ばれる謎の支配者的存在に近づくことがこのゲームの目的なんだとか。
肝心の調理アクションは,物理演算によって表現されたプルプルの卵を,摩擦係数がゼロともいえるツルツルのフライパンで焼いていきます。しかも,なぜか全員目玉焼きは両面焼きを希望しています。
フライ返しなどは使えず,片手でフライパンを振って食材を裏返さなければなりません。上手に焼くには慣れが必要で,この難度の高さがハマる要因になっているようです。
![]() |
さて,ここで料理研究家として,この目玉焼きを考察しましょう。
日本では目玉焼きといえば,片面焼きの「サニーサイドアップ」が主流ですが,欧米では両面焼きが「ターンオーバー」と呼ばれ,人気です。
焼くときの音と,あまり焼き色がしっかりつかないことから,フライパンの表面温度は140〜150℃くらいでしょう。おそらく黄身は半熟に仕上がっているはずです。
そして,一番の疑問はなぜあれほどフライパンがツルツルなのかということではないでしょうか。フライパンの中央には,赤いロゴが描かれており,これは某社のフッ素加工フライパンの特徴です。ですが,実際に触ってみると少しザラザラしており,作中のような使用感は期待できません。
私のフライパン研究で辿り着いた,現代最強のツルツルコーティングは「和平フレイズ」の「エタニティコート」というフッ素加工が施されたフライパンです。
さらに油は,卵を焼いているときに跳ねるくらいにはしっかりと入っています。摩擦係数を下げるためにも効果的です。早速,焼いてみましょう。
![]() |
![]() |
実食
思った以上に作品中と変わらないツルツルさで調理できて驚いています。もしかすると,ゲームではかなりリアルなコーティングフライパンをモデリングしているのかもしれません。
![]() |
ターンオーバーの目玉焼きは卵白の生感がまったくなく,程よく黄身に火が入っているため,料理としての質はサニーサイドアップよりも高いかもしれません。サンドイッチやハンバーガーに入れる際はこちら一択ではないでしょうか。ぜひお試しください。
今回のテーマはいかがでしたでしょうか? 面白いと思ったり,実際に試したりした人は「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」といったハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれると嬉しいです。
それでは,またお会いしましょう。したっけ!
■■大西哲也(クッキングエンターテイナー)■■
あるときは,料理研究家,またあるときは,「COCOCOROチャンネル」のYouTuber,しかしてその実体は……,料理を通じて多くの人を喜ばせたいと日々奮闘する,クッキングエンターテイナーだ! シェフ曰く「卵料理は小学生の調理実習などでも初歩の料理と言われることが多いが,安定して同じく調理したり,極めるにはかなりの知識と経験が必要」とのこと。確かに「目玉焼きを絶対に美味しく作れる」と自信を持って言える人は少ないかもしれませんね。
※次回の掲載は2025年4月26日を予定しています
- 関連タイトル:
Arctic Eggs
- この記事のURL: