「ボーダーランズ 3」の話題も落ち着き,昨年発売された「ワンダーランズ」も一定の評価を得たGearbox Softwareだが,今後はどうなっていくのか。「Borderlands Echovision LIVE」がアナウンスされ,映画版の公開が2024年8月に決定した「ボーダーランズ」。そのIPの現状をチェックしていこう。
新たなプロジェクト「Borderlands Echovision LIVE」とは……
現地時間7月20日から23日までカリフォルニア州サンディエゴで開催された
「San Diego Comic Con 2023」は,コミックの書籍やその関連グッズの販売,コスプレイヤーたちで賑わう世界最大規模のイベントだ。
今年はソニー・インタラクティブエンタテインメントのアクション「Marvel's Spider-Man 2」の最新トレイラーや,マーベル・コミック・ユニバースで新たな“パニッシャー”のアートワークが公開されたほか,「ザ・ウォーキング・デッド」のダリル・ディクソン(ノーマン・リーダス)を主人公とするスピンオフ作品「The Walking Dead: Daryl Dixon」の9月放映開始がアナウンスされるなど,話題となったトピックは多かった。
「今年はビッグなハリウッドスターが来なかった」と揶揄される割には盛り上がっていたが,その開催に合わせGearbox Softwareが,ひっそりと謎のプロジェクト
「Borderlands Echovision LIVE」をアナウンスしていた。
どこか静かにアナウンスされた印象の「Borderlands Echovision LIVE」だが,年内リリース予定の「SILENT HILL: Ascension」と合わせて,Genvid TechnologiesのAIテクノロジーがどれだけ進化しているのかも気になるところである
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この「Borderlands Echovision LIVE」は,
公式ツイッターで
公式サイトの立ち上げがアナウンスされたのみで,具体的に何なのかは明らかにされていないが,
「A GENVID Interactive Series」という記述があることから,スクウェア・エニックスの元代表取締役社長である和田洋一氏がアドバイザーを務める
Genvid Technologiesが関わっているのは間違いない。
Genvid Technologiesは,視聴者参加型のライブコンテンツを,インタラクティブにコントロールできる
MILE(Massively Interactive Live Events)というテクノロジーを保有しており,そのデビュー作となった「Rival Peak」について,当連載の「第669回:学習型AIキャラクター達のサバイバルを見守るリアリティ番組風ゲームが誕生」(
関連記事)で紹介したこともある。
同社は昨年,Skybound Entertainmentとタッグを組んだ
「The Walking Dead: Last Mile」(ウォーキング・デッド: ラストマイル)を公開しているし(
関連記事),この7月にはコナミデジタルエンタテインメントやBehaviour Interactiveと協力し,
「SILENT HILL: Ascension」を年内にもリリースすることをアナウンスしている(
関連記事)。つまり「Borderlands Echovision LIVE」は,その一連の流れで登場する最新作になるわけだ。
Genvid Technologiesの
公式サイトでは,実は「Borderlands Echovision LIVE」の内容が紹介されている。それによると,「ビッグな夢を見る8人の駆け出しヴォルトハンターが,安全に封印されていたはずのEden-6に潜入したところ,悪夢のような体験が始まる」というストーリーが展開される。また,視聴者の投票によって一人ひとりのキャラクターのアクションや結末が決まっていく,インタラクティブ性の強いシステムは引き継がれているようだ。
トゥーン調のセルシェーダーを駆使した派手なアクションと大げさなストーリー,そしてスタイリッシュなカットシーンやユニークな作風で知られる「ボーダーランズ」シリーズ。本編シリーズの最新作はしばらく先のことになりそうだが,開発元のGearbox Entertaimentではさまざまなプロジェクトが進行中だ
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2024年8月に公開される映画版の成否がシリーズの今後を占う?
2021年にEmbracer Groupの傘下となって以降,Gearbox Entertainmentの一部門としてゲーム開発部が独立。共同設立者であるスティーブ・ジョーンズ氏が,ランディ・ピッチフォード氏から引き継ぐ形でCEOに就任し,ピッチフォード氏はGearbox EntertainmentのCEO兼社長および,新たに設立されたGearbox Studiosの社長を兼務することになった。
その社内改革に先立つ2021年春,ピッチフォード氏は
自身のツイッターで人材募集を行うとともに,「我々がボーダーランズ本編やスピンオフを他社に丸投げするという噂があるがそれは正しくない。
今後も我々自身でシリーズ作品に関わっていく」と宣言していた。
これが
「ボーダーランズ 4」の開発を意味しているのか定かではないが,最近になってGearbox Softwareの
求人ページがアップデートされている。いくつか気になるものの中で,やはり「新しい,オリジナルAAA級IP」の開発チームを率いる
リードプロデューサーの募集には注目してみたい。「Unreal Engine 4の知識」がボーナスポイントに設定されていることから,同社の開発システムがまだ新世代に移行していないことは想像されるが,「ファミリー・フレンドリーな協力型ゲームへの情熱」も要求しているという部分が多いに気になるところだ。
また,「New Tales From The Borderlands」の開発を担当したGearbox Quebec Studiosの求人では,アクションRPG向けのルート,クラフティング,装備,アップグレードなどに精通したゲームデザイナーが募集されているほか,マネタイゼーションやNFT関連の求人も行われており,新しい分野への参入も目指していると思われる。
最近,リモデルされたばかりのGearbox Quebec Studios。アクションRPGを開発中らしいが,ボーダーランズのスピンオフでも全然アリだ。今後の発表に期待しておこう
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そして,前述のSan Diego Comic Con 2023においては,ピッチフォード氏率いるGearbox Studiosが関与するプロジェクトである
映画版「Borderlands」が,
2024年8月9日に公開されることがアナウンスされた。「マイティ・ソー バトルロイヤル」などで,現在も幅広く活動する世界的大女優のケイト・ブランシェットさんがリリス,「ジュマンジ/ネクスト・レベル」のフランクリン役などで知られるケヴィン・ハートさんがローランド,そして“ハリウッドで最も忙しい15歳” アリアナ・グリーンブラットさんがタイニー・ティナの声優を担当。このほかジェミー・リー・カーティスさんやジャック・ブラックさんなど豪華な出演陣により,誘拐されてしまった悪徳武器商人のアトラスの娘を追って旅していくことになるという。
そんな映画版「Borderlands」だが,実は撮影は2021年6月の時点で終了しており,何らかの原因でポストプロダクションにかなり時間がかかっているようだ。また,ドラマ版「The Last of Us」で知られるクレイグ・マジン(Craig Mazin)氏が,いつの頃からかプロデューサーのクレジットから外れていることも,ファンにとっては不安要素と言える。
いずれにせよ,この映画版「Borderlands」が成功するか否かが,「ボーダーランズ 4」やそのほかのスピンオフ作品にも大きく影響することになるはずで,一連のGearbox Entertainmentの活動の成り行きには大きく注目していきたいところだ。
映画版「Borderlands」でアナウンスされているキャスト陣。ビッグネームが集まっており公開がとても楽しみだ
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著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。