連載
レトロンバーガー Order 27:「エリプレ」や「プロギアの嵐」(の英語版)を遊べる「Capcom Home Arcade」がドイツから届いたよ編
2019年11月8日,Capcom UKからプラグアンドプレイ型のゲーム機「Capcom Home Arcade」が発売されました。価格は229.99ユーロで,日本円にするとおおよそ2万8000円です。
この商品,ヨーロッパ圏に向けたものであるため,日本では正規販売されていません。しかしドイツのAmazon.deは日本向けの配送に対応していたので,ドイツ語堪能な筆者は,具体的に言うと「ドイツドイツジャーマン! フランクフルトシャウエッセンアルトバイエルン! ティーガーパンターアハトアハト!」くらいにドイツ語堪能な筆者は入手できました。そんなわけで今回は,「Capcom Home Arcade」がいかなるものか,いろいろと試してみましょう。クーゲルシュライバー!
収録タイトルは以下に記載の,CPシステム(以下,CPS)基板とCPシステムII(以下,CPS2)基板でリリースされた16本です。この中で「Alien vs. Predator」(エイリアンVSプレデター)と「Progear」(プロギアの嵐)の2本は,今回が初の一般向け製品化となります。
「Capcom Home Arcade」収録タイトル(カッコ内は日本語版名称)
- 1944: The Loop Master(1944 THE LOOP MASTER)
- Alien vs. Predator(エイリアンVSプレデター)
- Armored Warriors(パワード ギア)
- Capcom Sports Club(カプコンスポーツクラブ)
- Captain Commando(キャプテンコマンドー)
- Cyberbots: Full Metal Madness(サイバーボッツ)
- Darkstalkers: The Night Warriors(ヴァンパイア ザ ナイト ウォーリアーズ)
- Eco Fighters(アルティメットエコロジー)
- Final Fight (ファイナルファイト)
- Ghouls'n Ghosts(大魔界村)
- Giga Wing(ギガウイング)
- Mega Man: The Power Battle(ロックマン・ザ・パワーバトル)
- Progear(プロギアの嵐)
- Street Fighter II': Hyper Fighting(ストリートファイターII' TURBO -HYPER FIGHTING-)
- Strider(ストライダー飛竜)
- Super Puzzle Fighter II Turbo(スーパーパズルファイターIIX)
ちなみに「Eco Fighters」(アルティメットエコロジー)は,「Capcom Classics Collection Vol.2」(PS2 / Xbox。海外のみ発売)とPSP用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」に収録されたきりで,今となっては家庭用移植版ですらプレイ環境を用意するのが難しいタイトルだったため,これも嬉しいセレクトです。メカメカしくもコミカルなグラフィックスがプレイしていて楽しいタイトルでしたが,個人的にはアーケードゲーム情報誌「ゲーメスト」の攻略記事で書かれていた「マンチョー! カンチョー!」という小見出し(たしか満潮干潮にかけた海ステージ紹介の項)が,何だか印象深くて四半世紀を経た今も忘れられません。自分もどこかで「マンチョー! カンチョー!」みたいな小見出しをぶっこんでみたいと思いつつも機会が無く……。いや,せっかくだから今やってみようか。
マンチョー! カンチョー!
よし気は済んだ。それはさておき,電源を入れるとまず出てくるのは開発元であるKoch Mediaのロゴ。ドイツ/オーストリアの大手メディア企業ですが,国内ゲーマー的には傘下スタジオであるDeep Silverの方が有名でしょう。
Wi-Fiからリーダーボードにアクセスできるそうですが,当然ながら国内の技適(技術基準適合証明)を取得していない製品なので,日本での利用には総務省へ申請を出さなければいけません(11月20日に改正電波法の一部が施工されました)。そんな都合と面倒臭さにより,ネットワーク周りはスルーします。
ゲームプレイはなかなか良好です。エミュレータ実装で操作系はUSB,映像出力はHDMIなので,相応の遅延は発生するものの,レスポンスのいいモニターなら基本的には問題なくプレイできるでしょう。本体重量がけっこうあるので,激しめに操作してもガタつかないのはGOOD。
ただ,映像出力はちょっと「気の利かなさ」が見られるところ。画面は16:9とドット等倍を選べますが,前者はもちろん,後者でも横長に伸びたグラフィックスとなるわけです。こうなるのは,CPS/CPS2基板の画面解像度は384x224で,それが4:3のブラウン管に表示されたとき,丁度いいようにグラフィックスが作られているため。これはマイナスな部分です。
なおHDMI周りは妙な設計らしく,一部のTVやモニターで「映像が出ない」や「映像は出るが音は出ない」といった現象が発生しました。詳細は不明なものの,編集部のハード班に相談してみたところ,出てきた可能性は「規格に厳しい設計のモニターだと信号を認識してくれないのでは」というもの。ちなみに映像規格に関して言えば,CPS/CPS2基板は「59.x fps」といったレートの信号を出力するため,60fpsの家庭用移植版はちょっと早くなるのが典型例であり,今回もそうではないかと思ったりもします。検証が大変なので,あくまで可能性の話ですが。
また,ボタン配置も「気の利かなさ」を感じます。基本的なボタン配置を「Street Fighter II'」に合わせたためかと思いますが,3ボタン以下のゲームだと使うのは下段ボタン。3ボタン以下のゲームは,ゲームセンターだと上段に使用ボタンをアサインしてプレイヤーの両手を平行にさせるスタイルが主流ですが,Capcom Home Arcadeの仕様だと右手が一段下となるわけです。それでいてボタンコンフィグは搭載されておらず,ついでにソフト連射なども搭載されていません。
ゲーセンだとこう |
Capcom Home Arcadeだとこう |
それでもボタンに関して幸いなのが,アケコン準拠の仕様であること。底面カバーを外せば簡単に配置を変更できます。
内部にアクセスするには,底面ラバーを剥がしてプラスネジを抜いていきます。ちなみに「機械を分解したらネジが余ったり足りなかったりする」現象ってあるじゃないですか。この後ラバーを1個なくしました |
内部カバーがあって,ボタン交換は割と大変。特別プリントのボタンだから換装は想定されていない……としても中のマイクロSWがヘタったら換装しなきゃならないしなあ |
ただ,ボタン配列の上下を入れ替えると,「STREET FIGHTER II'」は「プレイできなくはないけどややこしい」状態に。背面のUSBポートにゲームパッドがつながったりしないかと試してみましたが,反応はありません。また,2Pまでしか対応していないということは,「Alien vs.Predator」の3Pも不可……まあ,仮に外部ゲームパッドが使えても,後述する別の理由でやっぱり不可なのですが。
収録されているのはすべて英語版で,リージョン変更はできません。CPS/CPS2基板はマザーボードとROMのリージョンが固定,要は「日本語版のBIOSと日本語版のROMが無ければ日本語版を遊べない」仕様なので,さすがにヨーロッパ向けの商品に日本語対応まで期待するのはお門違いなところ。
ただ,ディップスイッチ設定やシステムメニューへのアクセス手段が無く,難度やエクステンド周期,プレイヤー数などを変更できないのは,これもまた「気の利かなさ」を覚えずにはいられません。先述した,背面USBポートがゲームパッドをサポートしていたとしても「Alien vs.Predator」の3Pが不可というのもこの部分で,プレイヤー数を変えられないわけです。公式Redditではアップデートによるディプスイッチ設定対応などが予告されているので,今後の改善に期待したいですね。
それにしてもエリプレ(エイリアンVSプレデターの略)! エリプレを自由にやりたいな! エリプレは地球上で最も優れたゲームのひとつだから!
……いや,まあ,そんだけ好きなゲームだから,当然基板は持ってるんだけどさ。
セッティングめんどいじゃん。基板。
あくまで個人的な感想ですが,「Capcom Home Arcade」の総評としては,「良」とはちょっと言えないものの,かと言ってマイナス面も「不可」なほど致命的ではないので,まあ予想を上回りも下回りもしない「可」といったところ。送料込みで3万円オーバーの価格を踏まえて考えれば,「コストパフォーマンス的には難しめの『可』」でしょうか。これを「気の利いたゲームセンターで稼働しているゲーム」と似た感覚でプレイするには,ボタンの配置換えや連射ボタンの搭載といった,それこそゲームセンターのオペレータがやるような工作をすることになります。ある意味,“Home Arcade”という商品名は製品仕様を体現していると言えるでしょう。
そういった気の利かなさに「ステイトセーブやチートモードまで実装してくれとは言わないけど,社名ロゴを模した筐体や標準2P仕様よりも,作り込むべき部分があったのでは?」と思わなくもないですが(考えてみるとボタンが凄く凝ったペイントなんですよね……),序盤に述べたように「Progear」や「Alien vs. Predator」が家庭で気軽にプレイできることには,ホームパーティーを開いて祝いたいくらいの喜びがあります。これをきっかけに,カプコンの名作復古がさらに進んでくれたら嬉しいですね! あとアップデートでの改良がドンドン進んだり,いっそ日本語版が発売されたりしたらもっと嬉しいのですが。ついでに日本語版の筐体がカプコンパワースティックファイター状だったら神。
○GOOD
- 未移植タイトルも含めたバランスいい収録ラインナップ
- 三和電子製スティックの採用
- 基本的には問題なく動作するエミュレーション
- アップデートによる発売後の改良
×BAD
- 分解のしづらさや外部コントローラの非対応など“気が利かない”ハードウェア
- ボタンコンフィグの非実装など“気が利かない”エミュレータ
- ディップスイッチやシステムメニューにアクセス不可の“気が利かない”システム設計
◎GOD!!!!
- 「エイリアンVSプレデター」は神ゲー
「Capcom Home Arcade」公式サイト
- 関連タイトル:
Capcom Home Arcade
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