Smilegateから発売中の
「FOCUS on YOU」(
PC /
PlayStation 4)は,VRの強みをうまく活用しているデートアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは写真専攻コースに所属する高校3年生男子となって,撮影を通じてヒロインとの関係を深めていくことになる。
現在,PC版とPlayStation VR版が発売中。PC版はVive / Vive Pro / Oculus Rift / Oculus Rift S / Valve Index等に対応しており,SteamやViveport,Oculus公式ストアで購入可能だ
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ある蒸し暑い夏の日,野外撮影のためにやって来た公園。そこで出会ったのが,童話の中から飛び出してきたかのような女子高生だった……。
彼女の名前は
ハン・ユア。主人公と同じ芸術高校に通う2年生だという。ひょんなことからプレイヤーは彼女の専属カメラマンになることを頼まれ,撮影を重ねるうちに徐々に心惹かれていく。
基本的な流れは,ヒロインであるハン・ユアとの会話の合間に
“撮影セッション”が入るというものだ。ストーリーが分岐することはないが,会話や行動の選択肢に応じて撮影時のポージングや立ち位置に影響することもある。
近年,ゲーム内におけるスクリーンショット撮影が「フォトモード」として搭載されるケースは多くなってきているが,リアルタイムに撮影していくタイプのゲームは珍しいだろう。従来のフォトモードだと自分の位置とフレーミングの調整に頭を悩ませることになったが,VR専用ソフトである「FOCUS on YOU」は,実際の写真撮影に近い感覚でスムーズに楽しめる。
また,撮影セッションの時間はほどよい長さで,シーンが切り替わるテンポもいい。
ハン・ユアとの会話や撮影デートを存分に楽しめる
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選択肢もアリ。音声認識機能を採用し,マイク入力にも対応している
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友人や妹とスマートフォンでやり取りをすることもあるが,登場人物はハン・ユア(と主人公)のみ
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急にクッキングゲームが始まる一幕も。主人公はカフェでアルバイトをしている
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公園での偶然の出会いを経てから,ハン・ユアはグイグイと主人公に迫ってくる。その積極性に少々戸惑ってしまったが,導入部分が長いとVRゲームではダレる要素になってしまうことを考えれば納得がいく。
そのぶん,ヒロインであるハン・ユアへの
開発陣の注力ぶりがうかがえる。喜怒哀楽の分かりやすさはもちろん,微妙な表情の切り替わり,それに伴う仕草が豊富かつ細かい。VRの性質上,プレイヤーはキャラクターを注視することになるわけだが,過度に思えるほどの作り込みだ。そのため,「どういう子なんだろう?」と見ているだけも楽しい。
ハン・ユアの細かい仕草が自然な感じで,いい意味で生々しい
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前述した開発陣のこだわりは,撮影セッションでも実感できる。ハン・ユアはあまり突飛なアクションをすることはなく,自然な重心移動および準備動作からポーズに入り,またポーズを変えていく。そのため,シャッターチャンスを先読みしやすく,初見のプレイでもベストショットを狙っていける。
これは,ただの撮影セッションということではなく,ハン・ユアが主人公のことを意識しているからこそ,とても慎重に動いているように思える。ストーリーが進むほどに彼女の表情や仕草から強(こわ)ばりが消えて,
どんどん魅力的になっていくあたりも,本作をプレイするうえでは重要なポイントと言える。
撮影時の選択肢に回数制限はない。さまざまなシチュエーションを試してみよう
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撮影後に写真をチェックされることもあるが,彼女の判定基準が気になるところ……
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カメラの操作はシンプルにまとまっている。首から下げているカメラを手に取り,顔の前に持ってくると,ファインダーを覗いた画面に切り替わる。ゲーム内で焦点距離は表示されないが,ズームは16mm〜105mm付近まで対応しているようだ。パースペクティブの再現性も高く,純粋に構図を決めて「ここだ!」というタイミングでシャッターを切るだけでいい。
なお,PlayStation VR版の場合,DUALSHOCK 4およびPlayStation Move モーションコントローラーでの操作に対応しているが,「カメラで撮影している感」を得たいなら後者をおすすめする。
冒頭のチュートリアル。PlayStation Move モーションコントローラーを顔の前に持ってくると,ファインダーに切り替わる
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ズームイン/アウト機能で構図を決めたら,あとはシャッターを切るだけ
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PlayStation Move モーションコントローラーを横にすると,縦位置の写真撮影にも対応
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撮影可能枚数には上限がある。ただ,頻繁に補充されることに加えて,ハン・ユアの動き自体は読みやすいため,連写に頼る必要はほぼない
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撮影時の移動は被写体を正面を見て横方向に約180度,見下ろし約90度,見上げ約45度まで可能だ。そのため,ずっと座ってプレイしていると画面に困ってしまう。周囲をちゃんと片付けて,立ち上がって撮影できるようにしたほうがいいだろう。
修学旅行先における撮影プランを立てるシーン。このあたりからストーリーが一気に盛り上がる
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さて,主人公はさまざまなメーカーのカメラを所有しているが,途中からとても見覚えのあるカメラを手にしている。そのカメラのメーカー名は「RONY」。おそらくモチーフになっているのは,ゲーマーにもお馴染みのSony(ソニー)だろう。
さらにゲーム画面から得られる情報を総合したところ,α7IIっぽいボディに単焦点のSEL35F28Zっぽいレンズをマウントしていると思われる。ゲーム内の撮影時にはズーム機能があるため,モチーフにしているのはビジュアルだけだが,こういった部分でも妙なこだわりの強さを感じる。
そのほか,三脚やバッグにも元ネタが分かるものが多く,ちょっと写真に詳しい人なら,思わずニヤリとするはずだ。
冒頭に登場するカメラ。さまざまなメーカーの要素が合体したようなモデルだ
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ハン・ユアが手にしているのはインスタントカメラだ。これはこれでカワイイ
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左がRONY製カメラ,右が筆者所有のSONY製カメラ。VR空間に愛用のカメラ(っぽい)ものが出てきたので,新鮮な衝撃を受けた
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ゲームをクリアすると,各チャプターを振り返ったり,お気に入りのカットを壁紙にしたりできる要素が開放される。さらに髪型や服装の変更が可能になっており,初回プレイ時とは異なる撮影が楽しめる。コーディネートを考えて,ハン・ユアをより魅力的に撮影してみよう。
クリア後には各チャプターで撮影した写真を確認できる
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写真を壁紙として出力したり,プリントしてカフェ店内に展示したりできる
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壁紙のテンプレートがいくつか用意されている
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チャプターのスタート時に髪型や衣装を変更できる
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髪型と衣装を変更すると,ハン・ユアの新たな一面が引き出される
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「FOCUS on YOU」の魅力を語るなら,真っ先にハン・ユアというキャラクターの可愛らしさが挙がるだろう。彼女のビジュアルはもちろんのこと,その仕草や動きにも強いこだわりが感じられるので,ぜひ実際に動いているところをチェックしてほしい。
また,カメラで撮影している感覚をうまく生み出している点も推しておきたい。操作自体はシンプルだが,VR専用ソフトならではの臨場感と実在感がマッチしていて,
「VRで楽しむ撮影デートアドベンチャー」というカテゴリに大きな可能性を感じさせてくれる。
8月30日には無料DLC
「YUAのありがたいココロのパッケージ(FOCUS on YOU THANK YOU PACK)」の配信がPS StoreおよびSteamにて始まっている。さらなる魅力を放つハン・ユアに会いに行ってみよう。
無料DLCにはハン・ユアの特別衣装3種類が収録されている
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