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印刷2022/09/26 20:52

テストレポート

重量約440gの小型ゲームPC「AYANEO AIR Pro ADVANCE VERSION」をチェック。軽量ながら使いやすさは譲らず

 「Steam Deck」の国内発売が決まってから,携帯型の小型ゲームPCへの注目度が急上昇している。その中でも注目したいのが,中国深センを拠点とするPCメーカー AYANEOが開発した「AYANEO AIR」だ。本製品は,最も軽いモデルで公称本体重量が約398gと,Nintendo Switch Lite並みの軽さが特徴となっている。
 今回は,AYANEO AIRの最上位モデルとなる「AYANEO AIR Pro ADVANCE VERSION」(以下,AIR Pro ADVANCE)を入手できたので,写真を中心に紹介しよう。

AYANEO AIR Pro ADVANCE
メーカー:AYANEO
税込価格:18万6120円
画像集 No.001のサムネイル画像 / 重量約440gの小型ゲームPC「AYANEO AIR Pro ADVANCE VERSION」をチェック。軽量ながら使いやすさは譲らず

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 東京ゲームショウ2022のAYANEO/MINISFORUMブースには,国内販売が始まったばかりの小型ゲームPC「AYANEO AIR」が出展されている。Switch Liteを彷彿とさせる筐体デザインに引かれて,多くの来場客が足を止めていた。どんな製品なのか見てみよう。

[2022/09/17 23:12]

 はじめに,AYANEO AIRのラインナップについて簡単にまとめておこう。
 AYANEO AIRは,搭載CPUとメインメモリ容量,内蔵ストレージ容量,内蔵バッテリー容量が異なる4モデルをラインナップする。
 今回取り上げるAIR Pro ADVANCEは,CPUにAMDの8コア16スレッド対応ノートPC向けCPU「Ryzen 7 5825U」を搭載しており,最上位モデルにふさわしい性能を備えているのが見どころと言えよう。その一方で,AYANEO AIR Pro以上の製品は,容量が大きなバッテリーを内蔵しているため,下位モデルと比べて公称本体重量は40gほど重い。性能を重視するのであれば,AYANEO AIR Pro以上を,軽さを重視するならAYANEO AIR STANDARD VERSIONを選ぶといいだろう。
 
 AYANEO AIR国内版の主なスペックをまとめたのが以下のだ。なお,テストに用いた試用機は,国内版ではなく,クラウドファンディングサイト「Indiegogo」で購入した限定モデルで,メインメモリ容量が32GB,内蔵ストレージ容量が2TBとなっている。

表 AYANEO AIR国内版の主なスペック
AYANEO AIR Pro ADVANCE VERSION AYANEO AIR Pro AYANEO AIR STANDARD VERSION AYANEO AIR Lite
CPU Ryzen 7 5825U((8C16T,ベースクロック 2GHz,ブースト最大4.5GHz) Ryzen 5 5560U((6C12T,ベースクロック 2.3GHz,ブースト最大4GHz)
メインメモリ容量 LPDDR4x 16GB LPDDR4x 8GB
GPU Radeon Graphics(統合GPU,8C,動作クロック2GHz) Radeon Graphics(統合GPU,6C,動作クロック1.6GHz)
内蔵ストレージ容量 M.2 SSD 1TB M.2 SSD 512GB M.2 SSD 128GB
ディスプレイ 約5.5インチ有機EL,解像度1920×1080ドット,60Hz表示
無線LAN Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
Bluetooth 5.2
有線LAN 非搭載
内蔵バッテリー容量 10050mAh 7350mAh
公称本体サイズ 224(W)×89.5(D)×29.6(H)mm 224(W)×89.5(D)×26(H)mm
公称本体重量 約440g 約450g 約398g
税込価格 18万6120円 13万6980円 12万3930円 9万7020円


小型ゲームPCらしからぬ軽さは魅力的だ


 冒頭で触れたように,AYANEO AIRは,最近のゲーマー向け小型PCのなかでもとりわけ軽量で,試用機のAIR Pro ADVANCEでも約440gと軽い。有機EL版Nintendo Switch(以下,Switch)の約420gよりも少し重い程度だ。実際に手に持って使っても,重さはそれほど気にならなかった。

AIR Pro ADVANCEはの重量は,公称どおり約440gだった
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 一方,AIR Pro ADVANCEの本体サイズは,実測で223.5(W)×89.5(D)×30(H)mmであり,横幅はSwitchと同程度だ。

写真の上から順に,Switch,Switch Lite,AYANEO AIRを並べて比較(※AYANEO AIR国内版の製品発表会より)
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 ただし,AIR Pro ADVANCEの背面は,左右端をカーブのついたグリップ形状となっているため,背面がフラットなJoy-Con付きSwitchよりも持ちやすい。

背面のグリップに指がかかるので安定して本体を保持しやすい
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 ディスプレイパネルには,5.5インチサイズで,解像度1920×1080ドットの有機ELパネルを採用する。パネルの発色が良好なことに加えて,黒がきちんと黒い表示は,有機ELパネルならではと言えるだろう。

AIR Pro ADVANCE
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 また,一般的な小型ゲームPCよりも,解像度が広い点もポイントだ。ほかのAYANEO製品も含めて,多くの小型ゲームPCは,解像度1280×800ドットというPCとしては低い解像度のディスプレイを採用するものが多い。ゲームをプレイするときは問題ない一方で,Webサイトや動画を見るときにはもう少し広い解像度がほしいと思うこともあったので,ディスプレイの高解像度化は素直に歓迎したい。

 インタフェース類は,ディスプレイ奥側の上側面にUSB 3.2 Gen 2 Type-Cポートと音量調整ボタン,[電源]ボタンを配置する。

上側面にあるインタフェース。USB Type-Cポートの右側には大きな排気孔を設ける
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左が[電源]ボタンで,右が音量調整ボタン。排気孔を避けて持とうとすると,これらに指がよく当たる
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 [電源]ボタンは,既存製品の「AYANEO NEXT Pro」と同じく,指紋センサーを内蔵しており,Windows Helloによる生体認証が利用可能だ。なお,AYANEO NEXT Proでは気にならなかったのだが,AYANEO AIRの場合,上側面と下側面をつかんで持つと,音量調整ボタンや[電源]ボタンに指が当たってしまう。たとえば,動画を再生しながら部屋の中で場所を移動するときに,スリープに入ったり,音量が最大まで上がったりすることがあって,ちょっと面倒な部分もあった。

 一方,ディスプレイ手前側の側面には,USB 3.2 Gen 2 Type-Cポートと,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子,microSDカードスロットを備える。

ディスプレイ手前側のインタフェース
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microSDカードスロット。AYANEOによると,最大100MB/sの読み出しが可能だという
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 上側面と下側面にある2つのUSB 3.2 Gen 2 Type-Cポートは,どちらもDisplayPort Alternate Modeによる映像出力と,USB Power Deliveryに対応しているので,本体に給電しながら外部ディスプレイへの画面出力が可能だ。

AIR Pro ADVANCEの左側面(左)と,右側面(右)には,ボタンやポートを搭載していない
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小さいが使いやすいゲームパッド


 続いてはゲームパッドにも目を向けよう。
 ディスプレイの左右に搭載するゲームパッドは,左奥に左アナログスティック,右手前に右アナログスティックを備えたXbox風レイアウトを採用する。アナログスティックとトリガーボタンのスイッチは,ホールセンサー式のスイッチを採用しているそうだ。

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ディスプレイ左側は左アナログスティックとD-Padを搭載
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右側は右アナログスティックと[X/Y/A/B]ボタンが並ぶ

 AYANEO NEXT Proに比べると,ボタン類は小さい。その一方で,ストロークはしっかりと確保されている印象だ。また,右アナログステイックは,軸が短く,[X/Y/A/B]ボタンを押すときに手が当たりにくくなっている。

右アナログスティックの軸は短めで,すぐそばのボタンを押すとき,邪魔になりにくい
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 ディスプレイ奥側には,[LB/RB]のショルダーボタンと[LT/RT]のトリガーボタンを搭載しており,とくにトリガーボタンのストロークは,通常のゲームパッドと遜色ないほど深めで押しやすい。

ショルダーボタンとトリガーボタン
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 AYANEO AIRのゲームパッド部分は,AYANEO NEXT Proから引き続いて独自ボタンを搭載する。D-Padの下には,Xbox純正ゲームパッド由来の[ビュー]ボタンと[メニュー]ボタンが並ぶ。一方,右アナログスティックの下は,AYANEO独自の設定用ソフトウェア「AYA SPACE」を呼び出す起動ボタンと,キーボードショートカットを割り当てられるカスタムキーを備える。

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左側の独自ボタン。Xbox純正ゲームパッドの[ビュー]ボタンと[メニュー]ボタンが並ぶ
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右側の独自ボタン。大きいほうがAYA SPACEの起動ボタンで,小さいほうがカスタムキーとなる

 これらに加えて,AYANEO AIRでは,ディスプレイ奥側にあるショルダーボタンの横に,[LC]ボタンと[RC]ボタンという2つのボタンを新たに搭載した。ここにはAYA SPACEから,スクリーンキーボードの表示や,スクリーンショットの撮影といった機能を割り当てられる。

赤枠で囲った「…」の刻印がある部分が[LC]ボタンと[RC]ボタンだ
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AYA SPACEから機能を割り当てられる
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AIR Pro ADVANCEの性能をチェック


 ここからはAIR Pro ADVANCEの性能をベンチマークテストで確かめてみよう。なお,AIR Pro ADVANCEは,AYA SPACEのプリセットから,CPUのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)を「ゲーム」「バランス」「省電力」の3段階で設定できる。今回はTDP 12Wの「ゲーム」と8Wのバランスを切り替えてテストを行った。

AYA SPACEからTDPを切り替えられる。省電力の下にある「プロモード」は手動での設定で,最大18WまでTDPを挙げられる。ただし,筐体がかなり発熱するので常用はお勧めしない
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 まずは,グラフィックスベンチマークの定番である「3DMark」から,DirectX 11テスト「Fire Strike」と,統合GPU向けのDirectX 12テスト「Night Raid」,Vulkanベースのクロスプラットフォームテスト「Wild Life」の3種類を実行した。
 グラフ1は,各テストの総合スコアをまとめたものだ。「ゲーム」と「バランス」を比べると,Fire StrikeとNight Raidは約1.65倍,Wild Lifeは約1.77倍と大幅に性能が向上している。

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 続いては「CINEBENCH R23」でCPU性能をチェックした。CINEBENCHでは,マルチスレッドでの性能を検証する「CPU」テストと,シングルスレッドの性能を見る「CPU(Single Core)」テストの2種類があり,それぞれの結果をまとめたのがグラフ2だ。「ゲーム」は「バランス」よりも,マルチスレッド性能で約1.5倍,シングルスレッド性能で約1.2倍の性能向上を実現した。

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 次は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FXIV暁月のフィナーレベンチ)の結果だ。グラフィックス設定のプリセットで「最高品質」および「標準品質(ノートPC)」を選択し,フルスクリーンモードで実行している。結果をグラフ3にまとめた。
 
 「ゲーム」設定時は,「標準品質(ノートPC)」で,スクウェア・エニックスが快適の基準とする「8000」を超えた。4Gamerベンチマークレギュレーションでも,8000以上を合格としており,高画質設定でなければ快適にプレイできるだろう。「最高品質」でも4989と,なんとか「普通」のラインに入っている。
 
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 一方,「バランス」では,「標準品質(ノートPC)」で6107の「やや快適」に留まり,「最高品質」では3018で「設定変更を推奨」となってしまった。ゲームをプレイするのであれば,TDPを「ゲーム」に設定するのは必須と言えよう。


「軽さ」を重視した唯一無二の小型ゲームPC


画像集 No.027のサムネイル画像 / 重量約440gの小型ゲームPC「AYANEO AIR Pro ADVANCE VERSION」をチェック。軽量ながら使いやすさは譲らず
 どちらかといえば,大型大重量化が進む小型ゲームPCの中にあって,AYANEO AIRは非常にユニークな製品となっている。最も軽いモデルで約398g,重いモデルでも約450gというのは高く評価できるポイントだろう。また,筐体のサイズが小さくなっても,ゲームパッドが変わらず使いやすいところも好感が持てる。
 筆者の個人的な印象となるが,AYANEO AIRには「GPD WIN 3」を触ったときに感じた手軽さがあるように思う。ソファーやベッドでくつろぎながら,さっと取り出してゲームをプレイするといった小型ゲームPCならではの良さを備えた製品なっている。
 
 一方で,価格はなかなか手軽とは言えない。15万円を超える製品に比べて,AYANEO AIRは,標準モデルであるAYANEO AIR STANDARD VERSIONで12万3930円と,比較的安価ではあるが,それでもエントリー市場向けゲームノートPC並みの価格だ。ゲームPC代わりに買う物ではない。とはいえ,非常に魅力のある製品であることは間違いないので,気になるゲーマーはぜひ実機に触れてほしいところだ。

AYANEOのAYANEO AIR製品情報ページ

AYANEO日本語公式Webサイト

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