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Zen 4世代CPUとRDNA 3世代GPUを統合したAPU「Ryzen 7040HS」搭載の「Razer Blade 14」が発表。AMDがその利点をアピール
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印刷2023/06/15 00:00

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Zen 4世代CPUとRDNA 3世代GPUを統合したAPU「Ryzen 7040HS」搭載の「Razer Blade 14」が発表。AMDがその利点をアピール

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 Zen 4アーキテクチャのCPUコアと,RDNA 3アーキテクチャのGPUを統合した高性能ノートPC向けプロセッサ「Ryzen 7040HS」シリーズをAMDが発表したのは,2023年1月に開催されたCES 2023だった(関連記事)。当時の予定よりも搭載製品の発売は遅れていたが,2023年5月に入って,PCメーカー各社からRyzen 7040HS搭載PCが次々と発表されている。

 そんな中でAMDは,ゲーマー向け薄型ノートPCとして定評あるRazer Bladeシリーズの14インチモデル「Razer Blade 14」に,Ryzen 7040HSシリーズの最上位モデル「Ryzen 9 7940HS」が採用されたことを明らかにした。それに合わせてAMDは,Ryzen 7040シリーズの機能や性能,中でも内蔵するAIアクセラレータ「Ryzen AI」について改めてアピールしているので,その概要を紹介したい。

Blade 14。公称本体重量は約1.84kgで,厚さは約18mmと,モバイルゲームノートPCとして十分なサイズ感だ。ディスプレイは14インチサイズでアスペクト比16:10なので,解像度は2560×1600ドットだろうか
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Ryzen 7040シリーズは世界初のAIアクセラレータ搭載CPU?


 おさらいになるが,Ryzen 7040シリーズは,Zen 4アーキテクチャベースのCPUコアと,RDNA 3ベースのGPUを1つの半導体ダイ上で統合したノートPC向けのAPU製品だ。薄型ノートPC向けのモデルナンバー末尾「U」の製品と,薄型筐体と高性能を両立させたノートPC向けの末尾「HS」の製品がラインナップされている。
 今回のテーマは,Blade 14に採用されたRyzen 7040HSシリーズのほうだ。

Ryzen 7040HSシリーズのラインナップ。35〜54W(Configurable TDP)で8コア16スレッドの上位2モデルと,6コア12スレッドの下位1モデルがラインナップされている
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Blade 14のモデル構成と価格を記したスライド。搭載する単体GPUは,「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」または「GeForce RTX 4070 Laptop GPU」のいずれかとなっている
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 AMDによると,Zen 4アーキテクチャに基づくCPUコアは,前世代のZen 3ベースに比べて,クロックあたりの命令実行数(IPC)が最大13%向上した。さらに,AVX-512命令セットに対応するなど,新機能の追加も特徴だ。

Zen 4世代CPUの特徴を示したスライド。IPCの向上やキャッシュメモリ周りの改良,AVX-512への対応などが挙げられている
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Ryzen 9 7940HSと,Intelの「Core i9-13900H」の性能を一般向けアプリで比べたスライド。薄型ノートPCで,競合を上回るという
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 統合GPUの高性能も,Ryzen 7040シリーズにおける特徴のひとつだ。上位のRyzen 9/7クラスには,演算ユニットである「Compute Unit」(以下,CU)を12基搭載する「Radeon 780M」が,下位モデルとなるRyzen 5には,CU数が8基の「Radeon 760M」を統合している。
 RDNA 3のCUは,128基の「Shader Processor」(以下,SP)で構成されており,1基のSPは,32bit単精度の積和演算を1クロックで実行できる。GPUの規模を示すシェーダ数に換算すれば,Radeon 780Mが1536基,Radeon 760Mが1024基に相当すると考えていいだろう。
 「Radeon 780Mなら,フルHD解像度で軽めのゲームならばプレイ可能」と,AMDがRyzen 7040HSシリーズで強くアピールしているのも道理であるわけだ。

 ちなみにBlade 14は,単体GPUとしてノートPC向けのGeForce RTX 4070またはGeForce RTX 4060を搭載しており,必要に応じて統合GPUと切り替えて利用できる。AMDの担当者は,「統合GPUを使って『Cyberpunk 2077』をプレイしたが,十分にプレイ可能だった」と述べていた。また,ゲームにおいても「統合GPUを使うことで,バッテリーの消費を抑えられる」ともアピールしている。

Radeon 700Mシリーズのブロック図。RDNA 3ベースなのでレイトレーシングエンジンも内蔵するが,ゲームにおいて実用になるかは微妙なところだろう
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Ryzen 9 7940HSでフルHD解像度,グラフィックス品質を「低」に設定した主要ゲームのフレームレートを示したスライド。まずまずといったところか
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 Ryzen 7040HSシリーズは,最新世代のCPUおよび統合GPUに加えて,「世界で初めてAI専用アクセラレータを搭載した一般向けのx86系CPUである」と,AMDは強調している。
 「いやいや,Intelも統合GPUにAIアクセラレータ機能を搭載してるだろう」と突っ込みたくなる読者も多いかもしれない。しかしAMDは,第一に「GPUは,本来グラフィックスのために設計されたものだ」と強調している。GPUをAIアクセラレータとして流用することはあっても,専用ではないというわけだ。

 なおIntelは,「Advanced Matrix Extension」(以下,AMX)というAI処理に利用できる行列計算エンジンを,ワークステーションやサーバー向けCPUに搭載している。しかし,今のところ一般消費者向けのCPUには「Meteor Lakeまで(AIアクセラレータを)搭載する計画はないので,現時点でPCユーザーにとっては,Ryzen AIがAIアクセラレータを利用する唯一の選択肢だ」とAMDは主張しているわけだ。

 つまり,Ryzen 7040シリーズはAI処理専用設計のアクセラレータを搭載する世界初の一般向けPC用CPUと言えるわけだが,裏を返すとAI以外の用途にはおそらく役に立たないであろう特徴を持っているということにもなる。
 Ryzen AIを実現するために,AMDがRyzen 7040シリーズに組み込んだのが,「AMD XDNA AI Engine」と命名されたアクセラレータである。

右側の「AMD XDNA AI Engine」が,Ryzen AIの一部を示したものだ
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 AMD XDNA AI Engineは,スクラッチパッドメモリとして使える小容量だが高速なローカルメモリとAI Engineをセットにした「タイル」を,格子状に接続した構造を有する。格子をつなぐインターコネクトは極めて広帯域で,ローカルメモリに対しては命令とデータそれぞれに独立したバスを持ち,AI Engineから高速にアクセスできるという。
 ざっくり言えば,ニューロンにおける重み付けに基づく活性化関数をタイルの形で実装したうえで,それを相互接続することでニューラルネットワークを実装するための構造と考えればいい。

ニューラルネットワークをAMD XDNA AI Engineに実装するイメージ
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 ちなみに,先のスライドで示したAMD XDNA AI Engineのアーキテクチャは,じつのところ,AMDが買収したXilinxのアクセラレータ「Alveo」に組み込まれたAIアクセラレータ機能と,おおむね共通した構造を持つ。Xilinxの技術に基づくAIアクセラレータを,CPUに組み込んだのがRyzen AIというわけだ。

 AMDは,「AMD XDNA AI Engineは,3Dグラフィックス分野におけるかつてのGPUのようなものだ」と,強気にアピールしている。GPUがなかった時代,CPUのみの計算では3Dゲームで満足な品質の映像とフレームレートを両立できなかったが,PC向けGPUの登場によって,3Dゲームを快適にプレイできるようになった。AMD XDNA AI Engineは,AIの世界にかつてのGPUと同じ貢献をもたらすアクセラレータだ,というのだ。

 Ryzen 7040シリーズに組み込まれるAMD XDNA AI Engineは,合計20基の「AI Engineタイル」(AIE Tile)と,データストアに利用する5基の「メモリタイル」(Mem Tile)で構成されている。メモリタイルとAI Engineタイルは,DMA(Direct Memory Access)方式でデータのやり取りが可能だそうだ。それらは,CPU内部のデータファブリックを介してメインメモリに接続される。
 各タイル上では,最大4つの異なるニューラルネットワークを同時に実行できるそうだ。複数のAIタスクを,マルチタスクでこなせるわけである。

Ryzen 7040シリーズに組み込まれる実際のAIエンジンのブロック図
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 AMD XDNA AI Engineのトータルな演算性能は,ブロック図左下にあるとおり,最大10 TOPSであるという。これがどの程度の性能かというと,エッジAI(端末上で動作するAI処理)としては,まずまず高速なほうという程度だ。数字上での演算性能では,超高性能とは到底言い難いが,AMDは「10 TOPSという数字は重要ではない」としている。
 というのも,AMD XDNA AI Engineがニューラルネットワークに最適化された設計になっているため,ニューラルネットワークの性能は演算性能の数字以上に高いと言うわけだ。構造が独特だけに,演算性能だけでAI性能は測れないと言いたいのだろう。


AMD XDNA AI Engineを使って3Dグラフィックスの高速化も?


 このように,ニューラルネットワークに特化したアクセラレータを組み込んだRyzen 7040シリーズだが,ソフトウェア側の対応はやや遅れ気味のようだ。
 AMDによると,Blade 14を始めとするRyzen 7040シリーズ搭載ノートでは,Windows標準機能として,Webカメラの背景などにエフェクトをかける機能が利用可能になるという(関連記事)。具体的には,AI Engineを使って人物の背景をぼかしたり,視線をカメラ目線に固定したり,人物が多少動いてもフレームの中央に維持する機能を使えるようになる。

AMD XDNA AI Engineの機能を使って,背景ぼかしやフレームの中央に人物を置く機能を使った例。左が使用前,右が使用時だ
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 似たような機能は,ビデオ会議アプリに用意されているので,特別なインパクトがあるわけではないが,Windowsに組み込まれる可能なので,「アプリを問わず使えることが,大きなメリットだ」と,AMDは主張している。なお,この機能を有効化するとアプリ側にある同種の機能は無効になるそうだ。

 開発者に対して提供される開発環境は,今のところ,AMD XDNA AI Engineをフルに使えるものにはなっていないそうだ。AMD XDNA AI Engineの機能をフルに使いつつ,AI分野で主流になっているライブラリ「PyTorch」のサポートが追加されるのは,2023年第4四半期になるという。アプリがAMD XDNA AI Engineを利用できるようになるのは,少し先になりそうだ。

AMD XDNA AI Engineの開発者向けソフトウェア環境ロードマップ。フルサポート版は2023年第4四半期にリリースの予定
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 ゲーマーとして興味を惹かれたのは,「AMD社内でAMD XDNA AI Engineをゲームに応用する方法を研究中」という話だ。「私たちは,ゲームに非常に力を入れている会社なので,AMD XDNA AI Engineを活用してフレームレートを速くしたり,ゲームをよりリアルにするための方法を社内で研究している」というのである。
 すぐに思いつくのは,NVIDIAやIntelのような超解像技術への応用だろう。ただ,AMDがこれまで提供してきた超解像技術「FidelityFX Super Resolution」(FSR)は,AI技術を使わないことがひとつの売りになっている(※その代わりにシェーダプロセッサを使う)面がある。そうなると,AMD XDNA AI Engineを超解像技術に今さら利用しても,実用面の利点はともかく,インパクトには欠ける。

 そのほかに,AIで疑似レイトレーシングを行うといった応用がすでにあるが,ゲームに応用するとなると恩恵が得られるタイトルが限られるのが難点だろうか。具体的にAMDがどのような応用を考えているのかは明らかにされなかったので,将来的に現れるであろう技術に期待したい。

AMDのノートPC向けRyzen製品情報ページ


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