レビュー
ソニーのeスポーツ向けヘッドセットは,それ以外のゲーマーにも適した実力派
ソニー INZONE H9 II
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INZONEの第2世代ヘッドセットとなる本機は,マイク入力品質の向上を初めとした,さまざまな改良が施されている。というのも,世界的に有名なeスポーツチーム「Fnatic」と共同開発を行っているそうで,よりFPSプロに特化した製品に仕上がっているという。じっくり見ていこう。
●目次
先代よりも軽くなったミニマムなデザイン
INZONE H9 IIは,付属のUSBワイヤレスアダプタ「USBトランシーバー」を使う2.4GHz独自方式ワイヤレス接続と,Bluetooth接続,そしてアナログ接続が可能なヘッドセットだ。USB Type-Cポートもあるが充電専用で,PCとUSB接続しても,PC側には表示されない。
いつものように外観から見ていこう。先代の「INZONE H9」と同じくミニマムなデザインが採用されているが,アームより上,ヘッドバンドやスライダー周りが大きく変わった。
エンクロージャには,相変わらず意匠や装飾は一切ない。最近のソニーらしいデザインともいえる。
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試用したホワイトモデルは,エンクロージャだけはツヤ消し白色で,イヤーパッドやアーム,ヘッドバンドなどすべて黒色となっている。
エンクロージャのサイズは実測約80(W)×100(D)×52(H)mmで,イヤーパッドの厚みは,実測約14mmだった。
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エンクロージャのイヤーキャップ側はプラスチック製で,ボタンやダイヤルに加えて,左右イヤーキャップ中央下にノイズキャンセリング用のマイク孔が,後方やや上には黒いスリットがある。
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イヤーパッドは,内部のサイズが実測約40(W)×65(D)×22(H)mmだった。
製品ページでは,とくに言及していないのだが,肌に当たる外周部は,吸湿性の高いファブリック素材を採用している。そのおかげで,肌触りはいい。
一方,イヤーパッドの内側だけは,合皮素材で密閉度を高めている。初代はオール合皮素材だったので,良い改良点のひとつかもしれない。
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仕様を見ると密閉式で,ドライバーユニットはダイナミック型。口径は約30mmと,一般的なゲーマー向けヘッドセットのドライバーよりも小口径となっている。密閉式なので,エンクロージャの外周にある黒いスリットは,単なるデザインだろう。
公称再生周波数帯域は,5Hzから20kHzで,小口径ながら超重低域まで再生できるようだ。
ボタンやインタフェース類は左右に分かれている。
左エンクロージャの下側には,前側から順に,4極3.5mmミニピンのマイク接続端子,4極3.5mmミニピンのアナログ接続端子,充電状態を示すLED,充電用USB Type-Cポート,ノイズキャンセリングのオン/オフ/モード切替を行う「NC/AMB」ボタン,充電状態を示すLED,音量調整ダイヤルという並びだ。
なお,音量調整ダイヤルは,Windowsのシステム音量とは連動しない。
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確かにこの場所にひとつだけボタンがあるなら,誤ってほかのボタンを押してしまう心配もなさそうだ。
右エンクロージャの下側には,後ろ側から順に「Game/Chat」ボタン,Bluetooth接続状態を示すLED,Bluetoothボタン,電源LED,電源ボタンが配置されている。
なお,電源ボタンは,2秒間長押しでオン,オフを切り替えられる。
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エンクロージャとヘッドバンドをつなぐプラスチック製のアームは,イヤーキャップ上部に直接つながっている。目視で上下に約30度,前後に約90度くらい動く。
上下の動きにはスプリングが入っていて,自動で頭部にフィットする仕組みだ。
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左右のアームに直接接続されているスライダーは,表面側がメッシュ素材で覆われており,裏側両端には14段階に長さを変更できる目盛があった。
ヘッドバンドは,先代よりも小型になって,この点が軽量化に貢献しているようだ。バンド幅は実測約30mm。表側は合皮素材でINZONEのロゴが印刷され,外周には縫い目がある。
裏側には,申し訳程度に薄いクッションが,イヤーパッドのものとは異なるファブリック素材のようなカバーで覆われていた。
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このヘッドバンドの両端にある「スライダーノブ」を動かして,ヘッドバンドの長さを変更する仕組みだ。
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スライダーのクリックはしっかりしていて,装着前に触ったときは,「ちょっと調整しづらいな」と思ったが,被ってからバンド長を調整すると,楽に操作できた。どうやら装着してから調整するタイプのようだ。
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装着してみた印象だが,側圧は当然適度に調整されていて,クッションが薄い頭頂部も,とくに圧がかかる感じはない。少し左右に顔を振ると若干揺れるが,ずれることもなかった。
イヤーパッドの肌に当たる部分は,ファブリック素材なので,肌あたりもいい。なにより軽量で大きくないので,装着しているストレスが少ないのは利点だ。
マイクも見ていこう。
着脱可能なマイクブームは,マイク部分やポップノイズフィルターがやや大きめである。スポンジ素材のポップノイズフィルターは,薄い円柱型で実測約27×14mmのサイズだ。
Fnatic選手たちのフィードバックに基づき,マイクの根元部分にはLEDがあって,マイクミュート時は,これが赤く光る。Fnaticは入力系にこだわりがあるようだ。
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なお,マイクのダイヤフラム口径については明らかになっていない。
ブーム部分は,狙ったところに設置できる柔軟性が高いタイプで,扱いやすい。
接続部分にロックはないが,端子がU字型で,差し込むとカチッと音がしてしっかり接続できる。簡単に抜け落ちる感じはしない。
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ツヤ消し黒色で,上部にはスイッチがあり,PC接続時は左に,PS5やスマートフォンとの接続時は右にスライドさせる。端子と逆側には,INZONE H9 II本体と接続中に白く点灯する小さな円形のLEDがあった。
INZONE H9 IIは,公称本体重量が約260gで,実測ではマイクなしで約253g,マイク付きで約265gと,かなり軽量な部類だ。先代より約70gほど軽量化されており,進歩のほどがうかがえる。
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バッテリー駆動時間は,ノイズキャンセリング機能をオフにした場合の公称値で最大30時間,さらに,マイクをオフにすると最大40時間駆動するという。
バッテリー0%からフル充電までには,3.5時間程度必要だが,5分間の急速充電で60分間プレイできるうえ,プレイしながらでもUSBケーブル経由で充電できるとのこと。バッテリー切れを気にする必要はあまりなさそうだ。
INZONE H9 IIの主な仕様は以下のとおり。
●INZONE H9 IIの主なスペック
- 基本仕様:2.4GHz帯独自方式ワイヤレス,Bluetooth,アナログワイヤード接続対応,密閉型エンクロージャ採用
- 公称本体サイズ:未公開
- 公称本体重量:約260g(マイク含まず)
- 接続インタフェース:USB Type-C(充電用),4極3.5mmミニピン接続端子,専用マイク入力端子,USBトランシーバー
- 搭載ボタン/スイッチ:マイクミュートボタン,音量調整ダイヤル,NC/AMBボタン,GAME/CHATボタン,電源ボタン,Bluetoothボタン
- バッテリー駆動時間:最大30時間(ノイズキャンセリングオフ時)
- スピーカードライバー:30mmドライバー
- 周波数特性:5Hz〜20kHz
- インピーダンス:440Ω@1kHz(有線接続,電源オン時),
21@1kHz(有線接続,電源オフ時) - 出力音圧レベル:111dB/mW(有線接続,電源オン時),
111dB/mW(有線接続,電源オフ時) - ノイズキャンセリング機能:あり
- 方式:未公開
- 周波数特性:未公開
- 感度:未公開
- インピーダンス:未公開
- S/N比:未公開
- 指向性:単一指向性
- ノイズキャンセリング機能:未公開
シンプルなINZONE Hubで手軽に設定変更が可能
INZONE H9 IIは,Windows 11からどのように見えるのかを確認していこう。
INZONE H9 IIは,INZONEシリーズの統合設定ソフト「INZONE Hub」を,ソニー公式Webサイトから入手してインストールすることで,立体音響を始めとしたヘッドセットのさまざまな動作を制御できる。対応OSはWindows 11/10だ。
INZONE Hubのインストール後に,USBトランシーバーをPCに接続してヘッドセットの電源を入れると,自動でドライバソフトがインストールされてヘッドセットが使用可能になり,INZONE Hub上にINZONE H9 IIが現れる。
ただ,初回接続時に気になる挙動があった。
INZONE H9 IIが現れると,旧「サウンドコントロールパネル」が自動で開くのだが,規定の出力デバイスが「ヘッドセット イヤフォン INZONE H9 II - Chat」になっているのだ。
したがって,Windows 11の設定アプリから「システム」→「サウンド」を開いて,「スピーカー INZONE H9 II - Game」にチェックを入れる必要がある。
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「スピーカー INZONE H9 II Game」の行をクリックすると,プロパティが開き,「出力の設定」欄の「形式」で解像度が確認できる。
INZONE H9 II Gameでは,「16bit/48kHz」のみだった。
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マイクは,「ヘッドセット マイク INZONE H9 II - Chat」にチェックがついていることを確認して,この行をクリックするとプロパティが開く。
「入力設定」の「形式」を見ると,「1ch/16bit/48kHz」の解像度なのが分かる。つまり,マイク入力はモノラルだ。解像度はこちらもこれ一択だ。
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INZONE Hubは,3ペイン構成になっていて,左ペインから「サウンド設定」をクリックすると,INZONE H9 IIの機能設定が中央と右ペインに現れる。
設定可能な項目は,「サウンドプロファイル」「音量」「立体音響」「ノイズキャンセリング」「マイク」の5種類だ。この点は初代と変わらない。
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サウンドプロファイルでは,周波数特性をイコライザーで,小さい音と大きい音の音量差を表すダイナミックレンジを,「ダイナミックレンジコントロール」や「オートゲインコントロール」で補正できる。
重要な項目を説明していこう。
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そのほかプリセットは,「Flat」「Bass Boost」「Music/Video」「Custom」だ。FlatとCustomはイコライザーの初期値がすべて「0dB」となったフラットな状態で,ユーザーが自分で調整する。
「立体音響」は,「OFF/ON」のスイッチしかないが,その下にある「音場の個人最適化」から「設定」ボタンをクリックすると,スマートフォン用アプリ「360 Spatial Sound Personalizer」を使って,ユーザーごとに最適化された設定を使うこともできる。
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人の耳の形状は,ひとりひとり異なっているので,音の聞こえかたも少しずつ異なる。通常のサラウンドプロセッサは,多くの耳の形状に近い汎用的なモデルを使用するのが通例だ。個人別に最適化はしないので,人によっては,理想的なサラウンドサウンドを聞けるとは限らない。
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その調整データが,INZONE Hubに適用されるわけだ。
つまり,INZONE H9 IIにおける立体音響の項目は,耳の形状を登録したユーザーに最適化したサラウンド体験ができる,という触れ込みである。
360 Spatial Sound Personalizerアプリでは,ガイダンスに従って図のようにフロントカメラを顔に向け,右を向いたり左を向いたりして耳の写真を撮る。音声ガイダンスも流れるので,一人で撮影も可能だ。
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ちなみに,INZONE Hubでログインしたのと同じIDで360 Spatial Sound Personalizerにログインしないと,データが同期しないので注意しよう。
360 Spatial Sound Personalizerによる撮影と最適化が完了し,データがクラウドにアップロードされると,INZONE Hubにダイアログが現れて,データをINZONE H9 IIに適用できる。
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ソニーが音楽用ヘッドフォンで培ったノイズキャンセリング技術を活用しているそうで,INZONE H9 IIでは,「OFF」を含めた3つの動作を選べる。
- ノイズキャンセリング:漏れ聞こえる周囲の音を聞こえなくする
- 外音取り込み:周囲の音もヘッドフォンで聞こえるようにする
- OFF:どちらも無効にして,普通のヘッドセットとして使う
左イヤーキャップにある[NC/AMB]ボタンを押せば,INZONE Hubを開かなくても,各モードを切り替えられる。NC/AMBボタンを1回押すごとに,
- ノイズキャンセリング(2回音が鳴る)→外音取り込み(3回音が鳴る)→オフ(1回暗めの音が鳴る)
と切り替わる仕組みだ。
「マイク」の項目は,一番上がマイク音量スライダーで,マイク入力レベルを調整できる。
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「オートゲインコントロール」は,出力ではなく入力に適用される機能だ。オン,オフの切り替えだけで,初期値はオンになっていた。
「マイクテスト」では,「テスト開始」ボタンをクリックしてからマイクに向かって話すと,入力した声が聞こえるようになる。これにより,リアルタイムに入力音を聞きながらパラメータを調整できるわけだ。
一番下の「サイドトーン」は,お馴染みの側音を,どのくらいの音量で鳴らすかを調整するスライダーだ。
左ペインのタブを「本体設定」に切り替えると,「一般設定」「Bluetooth」「ノイズキャンセリング」という項目が現れる。
基本システム周りの設定変更をする部分だ。見れば内容も分かると思うので,解説は省略する。
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最後に一点。アナログケーブルをINZONE H9 II本体に接続すると,電源のオン/オフに関わらず,INZONE HubからINZONE H9 IIは表示されなくなる。
おそらくだが,アナログ接続すると,ワイヤレス接続を停止してアナログ接続に移行する排他利用の仕様なのだと思われる。
サラウンドはもちろん,ステレオの音楽再生まで高品位な再生出力
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INZONE H9 IIは2.4GHzワイヤレス接続,Bluetooth接続およびアナログ有線接続を使えるヘッドセットなので,計測テストは,いつもどおりPCで行っている。ただ,Bluetooth接続は,とくにゲームに適した機能ではないので,今回テストしない。
リファレンス機材となるデスクトップPCにINZONE H9 IIをUSBトランシーバーと2.4GHzワイヤレス接続,サウンドカードの「Sound Blaster ZxR」経由でアナログ接続して,検証を行う。
- ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによるヘッドフォン出力の遅延・周波数特性計測と試聴
- マイク入力テスト:マイク入力の周波数特性および位相計測と試聴
ヘッドフォン出力時の測定対象は,周波数特性と出力遅延の2点だ(関連記事)。
一方,出力遅延のテストに用いるオーディオ録音&編集用ソフト「Audacity」は,引き続きバージョン3.3.3を使用し,今回もDirectSound APIを用いたテストのみを行う。
マイク入力の測定対象は,周波数特性と位相特性である(関連記事)。
USB接続型ヘッドセットで気になる遅延の計測結果から見ていこう。
ここでは,初代INZONE H9のテストで導入したやり方で,RME製オーディオインタフェース「Fireface UCX」の設定で内部遅延を変更して,一番遅延が少ない結果が得られる値に設定したうえで計測を行った。
今回も,EPOSのゲーマー向けアナログ接続型ヘッドセットである「GSP 600」をSound Blaster ZxRとアナログ接続した状態を基準として,以下の4項目で基準との差を計測した。
なお,Fireface UCXで設定した内部遅延は,すべて96samplesに設定。アナログ接続の計測では,INZONE H9 IIをSound Blaster ZxRに接続した。
- 2.4GHzワイヤレス接続,立体音響オフ
- 2.4GHzワイヤレス接続,立体音響オン
- アナログ接続,電源オフ
- アナログ接続,電源オン,NCオフ
2.4GHzワイヤレス接続の立体音響オフ時が27.23msで,立体音響オン時は−8.17ms。立体音響オフでも,結構速い部類だと思うが,立体音響オン時はそれをはるかに上回り,ZxRのアナログ接続より早い。
常識的に考えたら,処理が増えると遅延も増えそうなのだが,製品によっては,こういう逆転状況が生じる。何度か計測しても,ほぼこのあたりの結果に終息するので,そのまま掲載した次第だ。
一方,電源オフ時のアナログ接続は,基準値とほぼ同じの−0.40ms。電源オンでNC(とAMB)オフの状態では,逆に遅延が増えて45.97msとなった。
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本稿における音域の呼び方は以下のとおり。
- 重低域:60Hz未満
- 低域:60〜150Hzあたり
- 中低域:150〜700Hzあたり
- 中域:700Hz〜1.4kHzあたり
- 中高域:1.4〜4kHzあたり
- 高域:4〜8kHzあたり
- 超高域:8kHzより上
INZONE Hubのイコライザーは,フラット(≒バイパス)のプリセットを選び,立体音響を含むプロセッサは,すべてオフのステレオモードで計測した。
まずは2.4GHzワイヤレス接続の結果から。
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低域の頂点は120Hzくらいで,60〜130Hzくらいが高い。高域は7kHzくらいに頂点があり,そこから超高域にかけて落ち込んでいく。
低域がほんの少し高域の頂点より高い,きれいなドンシャリ型で,中域の谷は500Hz〜2kHzくらいが底になっている。
次に本体電源オンの状態のアナログ接続を見てみよう。
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2.4GHzワイヤレス接続のグラフとかなり近い形状だが,120Hzの山が若干高い。16kHz以上の落ち込みも,2.4GHzワイヤレス接続より急峻だ。山や谷の周波数と範囲は,ほぼ同じといってもいい。
本体電源オフのピュアなアナログヘッドセットとして動作している状態も見ておこう。
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電源オンのアナログ接続とは,周波数特性が変わる。低域の山は120Hzくらいで,高さもそれほど変わらないが,250Hzくらいからのカーブが異なり,500Hz〜2kHzが平らではない。
120Hzから2.2kHzくらいまでは,なだらかに落ちていって,谷底が2kHzとなる。7kHzの高域の頂点は6〜7kHzくらいが潰れたような形状で同じくらいの高さになっていた。ここも電源オンのアナログ接続との違いだ。
2.4GHzワイヤレス接続と電源オンのアナログ接続は,周波数特性が非常に似ていながら,電源オフのピュアなアナログ接続の周波数特性が異なるわけだ。
このことから推測すると,ワイヤレス接続,アナログ接続のどちらも,おそらく電源オン時はユーザーが触れないイコライザーによる内部周波数補正がかかっているものと思われる。
次に,2.4GHzワイヤレス接続と電源オンのアナログ接続を比較してみよう。
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アナログ接続のほうが,120Hzの山がわずかに高く,16kHz以上の落ち込みが急峻だ。周波数補正がかかっているとすると,この違いはワイヤレス接続とSound Blaster ZxRの差分といえる。それ以外は,ほぼ近いといっていい。
続けてアナログ接続の電源オンと電源オフを比較しよう。
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顕著に異なるのは,250Hzから2kHzのあいだである。
橙色の電源オフは,2kHzに向けてなだらかに下がっているのに対し,赤色の電源オンは,500Hz〜2kHzがほぼ平らになっていた。
また,6〜7kHzの高域の山も形状も電源オフ時は少し頂点が潰れた形状になっており,やや低い。
以上を踏まえて試聴テストに移ろう。まずはステレオ音楽試聴だ。
2.4GHzワイヤレス接続と,アナログ接続時の電源オン/オフで試聴した。
●2.4GHzワイヤレス接続,立体音響オフ,NCオフ
音楽用ヘッドフォンが採用しているスピーカードライバーということもあり,音楽試聴は「こう聞こえてほしい」という音質傾向に仕上がっている。
ややドンシャリで,低域と高域のバランスもよく,高域はあまり強くなく比較的スムースな音に聞こえる。
音楽用ヘッドフォンといってしまってもいいくらい音楽再生にも長けており,さすがソニーといったところか。
立体音響オンでも試してみたが,ステレオ音楽にはあまりお勧めできない。音楽再生のときは,立体音響をオフにしたほうがいいだろう。
●アナログ接続,電源オン
周波数特性が2.4GHzワイヤレス接続時と似ているため,音質傾向も似ている。確認した限り,イコライザーと立体音響は,あらかじめ有効にしても適用されないので,音質に影響しない。
2.4GHzワイヤレス接続時よりも,若干音が暗く感じるが,これはおそらく120Hz付近がより強いため,相対的に高域が弱くなるからだろう。アナログ接続でも音楽再生に適しているのは変わらない。
●アナログ接続,電源オフ
中低域から中域上限までの特性が異なるのだが,聞いた感じでは,電源オンと比べて,若干低域と高域が詰まったような印象を受けた。
具体的には重低域と超高域が少なくなる印象だ。
本体電源オンとオフ,どちらがいいかと聞かれたら,オンのほうがおそらく多くの人が好むだろうとは思う。内部周波数補正がうまくいっている印象だ。
プリセットによる違いだが,全体の傾向だけ述べておこう。
INZONE H9 IIのプリセットは,FPS用にFnaticと共同開発した「FPS-1/2/3」と,それ以外の一般的なプリセットに分かれる。なお,ユーザーが調整できる「Custom」(カスタム)の初期値は,「Flat」と同じだ。
![]() Flat |
![]() FPS-1 |
![]() FPS-2 |
![]() FPS-3 |
![]() Bass Boost |
![]() Music/Video |
FPS-1/2は,非常に繊細な設定で,FPSプレイ時に恩恵がありそうだ。FPS3は,高域を落とすので結構分かりやすい。
ざっと聞いてみたが,FPS-1/2/3はFPSゲーマー向けなので,筆者は適切なコメントができない。FPSゲーマーは,一度使用してみて気に入れば使い続ければいいと思う。
一方,汎用イコライザーは使わずに,Flatで運用するほうがいいと感じた。
サラウンド試聴に移ろう。サラウンド試聴は「立体音響」が使える2.4GHzワイヤレス接続でのみ行い,言及がない限り,NCオン,パーソナライズを有効にしてプレイした。
パーソナライズによる補正は,個人によって結果が異なるので,同じように聞こえない可能性もあるので注意してほしい。
●Fallout 4
ヘリ(ベルチバード)の前でぐるぐる回って,サラウンド感を確かめる。
ソニーの立体音響技術「360 Spatial Sound」は,比較的新しいサラウンド技術なので,サラウンド感は強い。少しだけ右に行ったり,左に行ったりすると,音源がきれいに右に左に移動するのが分かる。これはFPSやeスポーツで役立つだろう。
ヘリの飛行中,前方右に定位するローター音も,後方に定位した低いエンジン音も,定位どおりに聞こえる。
爆発音などの低音〜重低音は,しっかり聞き取れるが相対的に大きくなく,強く感じない。「ああ,いるな」と認識できるバランスのいい鳴り方だ。低音が強くてびっくりしてプレイに影響することはなさそうである。
無線ボイスは,若干引っ込んだ感じに聞こえるが,何を言ってるか聞き取れないことはない。
●Project CARS 2
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また,右前方から右後方,左前方から左後方といった,敵車が今どこにいるのかも簡単に把握できる。総じて前後はもちろんだが,左右移動を非常に把握しやすいのが,INZONE H9 IIの特徴だろう。
周波数特性は,上から下まで特定の帯域で変な凸凹もないので,きれいに再生される。ちょうどいい具合の鳴り方といっていい。
パーソナライズをオフにした状態でも試してみた。
すると,雨の音のように,比較的高域の効果音が強くなる。一方,左右移動の把握は,パーソナライズがオンの状態ほど顕著にしやすくはない。パーソナライズすることで,左右の分離感(セパレーション)に影響があるのだろうか。
実際,INZONE H9 IIがパーソナライズで何をしているのかは,ブラックボックスで分からないのだが,オンとオフで大きな違いがあることは確認できた。
●MONSTER HUNTER:WORLD
PC版「MONSTER HUNTER:WORLD」で村の中を歩き回ってみる。このタイトルでは,FPS-1/2/3のFPS向けプリセットも試して,ダイナミックレンジも変更して試聴を行った。まずは,イコライザープリセットをFlatにして,村の中を実際歩き回って確認してみよう。
本作は,左右の分離感の良さはそれほど感じないが,音源の前で回ってみると,音が極めてスムーズに移動するのが分かる。また,ほかのタイトルでもそうだが,重低域まで聞こえても,バランスがいいので出過ぎない。音の把握は容易だが,プレイの邪魔にはならないわけだ。足音も重くならないが,容易に把握できる。
イコライザーをFPS-1/2/3に変更すると,音質傾向が少し変わるのは分かるのだが,MONSTER HUNTER:WORLDでは,FlatとFPS-1/2の決定的な差は見いだせなかった。
一方,FPS-3になると,8kHz以上の高周波帯域をかなり抑えているので,変化は如実に分かる。具体的には波の音などアンビエント音などが抑えられるのだ。
ダイナミックレンジは,高音も低音でもかかり方に大差はなかった。ただ,オフとの違いは如実にあり,アンビエント音を中心に,音が大きくなる。小さい音をしっかり聞き取りたい場合,ダイナミックレンジを有効にするのはありだと思う。
試聴の最後に,INZONE H9 IIのノイズキャンセリングについても書いておこう。
外音取り込みは,ゲームに集中するモードではないので,ゲームプレイで使用するのは,ノイズキャンセリングだろう。これを有効にすると,周囲のノイズが消えるので,確かに没入感は増す。
ゲーマー向けPCは,どうしてもファンノイズが大きくなりがちだが,外界のファンや空調のノイズをきれいに消してくれるので,ノイズキャンセリング機能は実用的だ。
とくに音質が変化する印象もないので,ゲームプレイ時には常にノイズキャンセリング有効でもいいかもしれない。
大きく改善されたマイク入力品質
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2.4GHzワイヤレス接続と,Sound Blaster ZxR経由のアナログ接続で電源オン,オフのすべてで集音してみた。
計測に当たっては,INZONE Hubの入力補正はすべてオフで,側音は初期値にしてある。
マイク入力の有効周波数帯域は,製品情報ページに書かれていない。ソニーが掲載しているグラフを見ると,約100Hz〜16kHzくらいまでが,有効な周波数帯域のように見える。
また,単一指向性であることは明記されているが,形状には言及がない。これも画像を見ると,カージオイド型であるようだ。
2.4GHzワイヤレス接続時のマイク入力特性から見ていこう。
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2.4GHzワイヤレス接続時のマイク入力特性グラフは,200Hzくらいから3kHzくらいまで似たような高さで,3kHzから8kHzくらいまでが一段低いという,台形に近い形状だ。
250Hz以下は,50Hzくらいに向けて落ち込んでいく。8kHz以上は,急峻に落ち込む。ただ,12〜18kHz付近に信号があるので,サンプリングレートの制約がかかっているのではない,と思われる。
位相はモノラルマイクということもあり完璧だった。
ただ,注意しなければいけないのは,2.4GHzワイヤレス接続時のマイク入力は,常時AIノイズリダクションがかかっていることだ。もちろん,イコライザーによる処理の可能性もゼロではないが,人間の声ではないサイン波のスイープ音を音声として認識せず,それが理由で,このようなアナログ入力と大きく異なる特性になった可能性もある。
そのためグラフは,あくまで参考程度に見てほしい。
なぜ無効化できないAIノイズリダクションが,常時かかっていると分かるかというと,オン/オフのスイッチがないことと,集録時に2.4GHzワイヤレス接続のみ,無音時のノイズがないからだ。
アナログ接続の場合,電源オン/オフのいずれも,「サー」というノイズが小さく聞き取れる。これが,2.4GHzワイヤレス接続時に,常時AIノイズリダクションがかかっていると判断した理由だ。
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INZONE H9 IIをアナログ接続して電源オン状態でのマイク入力特性は,2.4GHzワイヤレス接続とは大きく異なった。
125Hzくらいから1.5kHzまでが,軽い山谷はあるものの平らに近い。そこから2.5〜15kHzくらいが大きく高くなり,さらに6〜9Hzくらいの範囲が,一番高くなっていた。位相はここでも完璧だ。
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INZONE H9 IIのアナログ接続,電源オフの状態は,電源オン状態と近似した周波数特性になった。電源オフだと,INZONE H9 IIのイコライザーはかけられないので,これが本来のマイク入力特性だと思われる。
125Hz〜1.5kHzは,電源オンより少し低いが,大体似た特性と思っていい。アナログ接続だと,16kHz以上も存在するので,マイクは広帯域集音できる周波数特性を持っていると思われる。位相は同様だ。
電源オン/オフ両方のアナログ接続のグラフを重ねてみた。
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50Hz以下の乖離は気にしなくていい。先述のとおり,125Hz〜1.5kHzは,電源オンのほうが少し高いものの,ぴったり一致ではないが,全体的に近似した周波数特性だと思う。
実際自分の声を録音して聞いてみた。
アナログ接続は,電源オン/オフどちらも周波数特性が似ていて,音声が有効な周波数帯域では,差分も誤差のような感じだ。そのため,聞き比べてもあまり差はないが,2.4GHzワイヤレス接続はAIノイズリダクションの有無に加えて,音質傾向もアナログ接続と差があった。
まず,AIノイズリダクションがかかっていないアナログ接続は,電源オン/オフともに似た音質だ。2.5kHz〜15kHzくらいがとても大きいせいか,低域がすっきりしており,何をしゃべっているか聞き取りやすい。
超高域まで音を拾うので,ハイファイ感もある。ただ,AIノイズリダクションはどちらもかかっていないので,無音時にノイズは聞こえる。
一方,2.4GHzワイヤレス接続は常時ノイズレスで,なんというか……,アナログ接続よりはっきり聞こえる。
周波数帯域は,おそらくアナログ接続よりも狭く,高域が抑えられている印象だ。確証はないが,先述のグラフ形状は,正しく周波数の傾向を示せているかもしれない。
低域〜中域は,グラフよりもう少し出ている印象で,ノイズレスなおかげでもあり,輪郭がはっきりして力強く聞こえる。何を言っているかより聞き取りやすくなっている印象だ。
どちらがハイファイ的にいい音かと聞かれたら,アナログ接続であろうが,ノイジーなゲーム環境だと,2.4GHzワイヤレス接続のほうが声は抜けると思える。
サンプリングレート制限のある製品のように,極端にローファイでもないので,いい落としどころかもしれない。
FPSユーザーがメインターゲットだが,それ以外にもリーチするヘッドセット
初代INZONE H9をレビューしたときに,「みんな大好きソニー製品」と書いたが,INZONE H9 IIはそのDNAを確かに引き継ぎ,弱点とされてきたマイク入力品質の向上を実現してみせた。しかも,ワイヤレス接続時はAIノイズリダクションも常時有効になる。
ゲーマー向けヘッドセットなのだから,音楽の話はしなくていいのだが,音楽試聴したときに,「迎合するようで少し悔しいけど,やはりソニーはいいな」と思い知らされた。
もちろんゲームでも,音質傾向と周波数バランスの良さは,プレイに生きると思う。高額のヘッドセットも続々発売されているので,以前ほどのハイエンド感はないが,それでも立派にお高い部類だ。まずは試して見ることをお勧めする。
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INZONE
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