「ありがたき哉 日本語化」は,ここ最近で日本語対応となった海外作品を良い機会だからあらためて紹介しようという,フワッとしたコーナーです
「冒険者になるのではなく,冒険者を雇って働かせたり機嫌をとったり,解雇したりするゲームが遊びたい。だが忘れるな。戦闘もしっかりと楽しめなければ許さない」という人は,今回紹介する
「Our Adventurer Guild」を遊んでみるといいかもしれません。これがそれです。
Our Adventurer Guildは,冒険者ギルドの運営を引き継ぐこととなったプレイヤーが,
ギルドマスターとして手腕を振るうシミュレーションRPGです。ギルドマスターは,資金の管理に腐心しながら,冒険者の採用,お仕事への派遣,育成,士気の維持,そしてギルドの施設拡充などのさまざまな運営判断を行います。冒険者達が直面する戦闘を指揮するのもプレイヤーのお仕事。その場合のシステムは,大抵のゲームを面白くする(気がする)
ターン制戦術バトルです。
そんな本作は,Steamで2024年4月に正式にリリースされ,同年12月に日本語対応となりました。ありがたき哉。決して少なくない費用をかけて翻訳を専門家に依頼するかどうかの判断は「思ったより日本人にもウケてるっぽいからいっそ日本語化してみるか……」的な勢いだった模様です。結果的に
売上げも伸びたとのことなので,素晴らしい判断だったと言えましょう。
落ちぶれたギルドの威信を取り戻すことが最大の目的
Our Adventurer Guildは,ドイツのインディーゲーム開発者である
GreenGuy氏(
@TheGreenGuyProd ※外部リンク)が開発したタイトルです。Steamでの正式リリース以降に日本からも大きな注目を集めたタイトルであり,それを受けて日本語が実装される運びとなりました。ローカライズを決心した経緯や実際の作業,そして売上好調に至るまでの流れは,GreenGuy氏自身が海外掲示板の
reddit(※外部リンク)の投稿でまとめています。そこにも名前が出ているとおり,翻訳を手がけたのは
マツリカゲームズ(
公式サイト※外部リンク)です。
テキストは膨大ですが,しっかりとした日本語で違和感なくプレイできました
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さて,そんな本作でプレイヤーは冒険者ギルドの運営を引き継ぐわけですが,当のギルドは現在,平たく言うと落ちぶれています。原因はさまざまですが,とにかく,ギルドのかつての威信を取り戻すことが,ギルドマスターことプレイヤーの最大の目的なのです。
いろいろと事情がある模様
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ではどうすればギルドを立て直せるか。これは端的に
「ギルドに寄せられた「依頼」(いわゆるクエスト)をひたすら処理する」と考えていいでしょう。依頼は基本的に戦闘を伴うものとなっているので,そのために,仕事を行う主体となる冒険者達を雇い,管理する必要があるわけですね。
ギルド管理のメインの画面です。画面下部には,現在雇用している冒険者がズラリと並びます
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冒険者達は酒場に集まるので,彼らの特性や能力を一人ひとり確認して,良さそうな人物を雇います
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依頼を受けます
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続いて冒険者をアサイン
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依頼にもよりますが,大抵はこういったフィールドへ移動し,罠の解除などを行いつつ,依頼された品を集めたり,お宝を探したりします
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敵と出会うと,戦闘画面になります。詳しくは後述しますが,見慣れた画面といえば見慣れた画面ですね
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戦闘へ向けて,冒険者をどんどん育てていくのも重要です。本作の“絵”が気になる人もいると思いますが,冒険者のポートレートは変更可能です
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なお本作では,1日単位で時間の流れが表現されており,依頼をこなしたり,冒険者を訓練したりといったさまざまな行動に,
所要日数が設定されています。たとえば依頼には1日を要しますし,冒険者が転職する場合は2日が必要,といった具合です。依頼とは異なり派遣だけを行う「任務」の中には,8日かかるものもありました。
5日のサイクルで,酒場に集まる冒険者達やお店の商品ラインナップなどが入れ替わります
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戦闘を伴わない任務でも,お金やアイテム,経験値,能力ボーナスなどが得られます
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冒険者達に多くの仕事をさせるには,戦いで受けた傷を癒やしたり,下がった気分を元に戻したり,時には転職したりするためなどの時間を設けなければなりません。だからこそ多くの冒険者を雇用して,各自がそれぞれ行っている行動にかかる日数を計算して,ローテーションを組んで行動させることになるわけです。
なお気分は能力の増減に関わりますし,あまりにも気分を損ねてしまうとギルドから抜けてしまいます。賞与を出したり,酒場で酒を振舞ったり,一定期間を設けて自然に回復を待ったりすることなどで機嫌をとってやる必要があるのです。やれやれ
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なんだかんだで本作は戦うゲーム。冒険者育成も楽しい
やはり戦闘が,本作の中心的なコンテンツだと思います。ギルドに届く依頼には,「探索」「収集」「掃討」「討伐」などクリア条件の異なる複数のスタイルがあるのですが,どのスタイルでも大抵,戦闘は避けられません。面白いので避ける必要もないのですが。
このようなマップへ降り立って,シンボルエンカウントで戦闘フィールドへ移動するのが基本。いきなり戦闘フィールドへ入るパターンもあります
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マップ上の罠を解除する時や,NPCとの会話のなりゆきによって,20面ダイスによる能力判定が入ることも
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そして戦闘へ突入
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戦闘では,敵味方個々のキャラクターが持つ「自発性」の数値に応じて順番に行動します。基本的には良い位置取りを考えて移動して適宜,攻撃や回復,仲間の支援などを行うといった感じですね。
筆者が遊んだのはまだ序盤であり例外もありますが,基本的に戦闘フィールドはそれほど広くなく,
高低差や
障害物、近寄ることで能力補正を得られる
特殊オブジェクトなどのインパクトが強めでした。戦闘開始直後からの徹底したポジショニングがキモになる――というのが本作の戦闘で受けた印象です。
高台に上がってきた敵を,吹き飛ばし付きのスキルで低地に落として接近までの時間を稼ぐ――など,細かいテクニックがたっぷりとあって飽きません
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冒険者の職業は,たとえば前衛で攻撃に耐える「盾騎士」から後衛で遠距離攻撃を行う「弓使い」,攻撃と回復の魔法をそれぞれ得意とする「魔術師」「司祭」などとさまざまです。それぞれ攻撃力や防御力,命中精度,体力,回避力,行動速度,耐性など,能力的な特徴を持っています。
レベルアップ時,冒険者の特性と職業の特徴を反映する形で,能力が高まります
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もちろん数多くの「スキル」も学ぶことが可能で,冒険者を基本的な性能とスキルでプレイヤーの好みのとおりに育てることが可能です。経験を積んでレベルを上げれば,騎士や暗殺者,大魔術師,吟遊詩人,拳士を始めとしたより上位の職業に転職させられるというのも,お約束の要素ではありますが,きっちりと実装されていますね。
みんな大好き,スキルツリーです
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みんな大好き,転職です
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ギルドの施設の多くは,冒険者の強化に関わるものといえるでしょう。冒険者にスキルを学ばせたり転職させたりできる「教練所」,装備を調えるための「鍛冶屋」,アイテムを揃えられる「露店」などですね。酒場すら,酒を飲ませて冒険者の気分を高めてちょっぴり能力を高められるという意味では,強化関連施設と言えなくもないです。
「ギルド拡充」メニューで,全体的な「できること」を増やしていく形ですね
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素材から装備品を作ってくれる鍛冶屋です。ギルド拡充メニューからキチンと投資していけば,ラインナップは増えていきます
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なお本作には
「人間関係」という要素があります。冒険者間の関係性を指し、知人や親友といったランクが付く仕組み,といったところでしょうか。同じ依頼をこなすなどして人間関係が深まっていくと,戦闘中に連携攻撃のようなものを発動する確率が高まったりします。知人,友人,親友,競合,そのほか
恋人や宿敵といった関係性も存在します。突然発生するランダムイベントによる関係良化・悪化があるなど,このあたりにも飽きさせない工夫を感じますね。
デジタルでの状況把握とタスク管理が楽しい
Our Adventurer Guildでは,冒険者の能力,気分の増減,依頼や任務,傷の治癒などの各要素にかかる日数まで,すべて数字で表現されています。
それらの数字を常に把握してスケジュールを立てつつ,ギルドのお仕事を回していくというのが,忙しいけれども楽しい部分ですね。「任務中の3人はあと2日で帰ってくるから,同じく2日で気分が少し向上する別の2人を加えて依頼仕事に向かわせよう。遠距離攻撃のできる狩人も1人必要だがまだ傷が癒えないので,気分はしばらく低下するが治療院で強制治療を行って――」みたいな感じでしょうか。これぐらいまでゲームに慣れたら,あとは
ものすごいスピードで時間が溶けるはずです。
なお余談ですが,正味30時間ほどプレイした筆者はうっかり本作の攻略Wikiを覗いてしまい,仲間にすることができるはずだったユニークキャラクター(何人か存在します)を取りこぼしていることを知りました。つらいですが,すでに2週目(もしくは最初から)のプレイはこうしよう,とあれこれ考えながら進めています。うーん,これは(いい意味で)キケンなタイトルですよ。
さて本作は,かねてよりMOD対応についての検討が進められていましたが,作業量の都合で実現は困難という結論に至ったことが,GreenGuy氏より2025年2月に発表されました(
Steamニュース※外部リンク)。「無理にMOD対応を進めるのではなく、最初からもっと洗練された続編で実現したい」という考えであるそうです。
ただ同じ報告の中で,
本作のサポートを打ち切らないこと,そして
DLCの制作を決めたことも明らかにされています。プレイヤーのフィードバックを反映した無料のアップデートも行いさらに完成度が高める予定だというのも,嬉しい報告ですね。
現時点で公開されているDLC関連イラスト
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