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16コア+第2世代3D V-Cache搭載の最強CPU「Ryzen 9 9950X3D」レビュー。ゲーム性能はどこまで向上したのか
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印刷2025/03/11 22:00

レビュー

16コア+第2世代3D V-Cache搭載CPU。ゲーム性能はどこまで向上したのか

AMD Ryzen 9 9950X3D

Text by 米田 聡

 「Zen 5」アーキテクチャベースのデスクトップPC向けCPU新製品「Ryzen 9 9950X3D」と「Ryzen 9 9900X3D」の国内発売日が,2025年3月14日に決定した。AMDによる税込のメーカー想定売価は,Ryzen 9 9950X3Dが13万2800円前後,Ryzen 9 9900X3Dが11万2800円前後となっている。

Ryzen 9 9950X3D
メーカー:AMD
税込メーカー想定売価:13万2800円前後(※2025年3月11日現在)
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 両製品は,第2世代の3D V-Cacheを搭載したCPUだ。16コア版のRyzen 9 9950X3Dは「Ryzen 9 7950X3D」の,12コア版のRyzen 9 9900X3Dは「Ryzen 9 7900X3D」の後継品である。
 第2世代の3D V-Cache搭載CPUとしては,2024年11月に8コア版の「Ryzen 7 9800X3D」が発売済みだ。3D V-Cacheによるゲームでの高い性能は,レビューでも明らかだった。

 8コアCPUでは物足らないという配信メインのゲーマーだと,今回の2製品に期待していた人も少なくないだろう。今回は,上位モデルの16コア版Ryzen 9 9950X3Dを試用できたので,そのゲーム性能をまとめてみよう。


1基のCCDに64MBの3D V-Cacheを載せる構造は従来製品から変わらず


Ryzen 9 9950X3Dのパッケージ表側(左)と裏側(右)
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CPU-ZでRyzen 9 9950X3Dの仕様を確認したところ。Level 3が「96MB+32MB」とあるので,片方のCCDに64MBを追加しているのが分かる
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 Ryzen 9 9950X3Dの仕様を確認しておこう。
 AMDは,キャッシュメモリ容量をトータルで記載するので少し分かりにくいが,3D V-Cacheを搭載しない「Ryzen 9 9950X」のL3キャッシュ容量は64MBなのに対して,3D V-Cache版では64MB増えた128MB(※L2キャッシュと合わせると144MB)になっている。この容量は,Zen 4世代のRyzen 9 7950X3Dと同じで,つまり2基ある「CPU Complex Die」(CCD)のうち,1基だけに3D V-Cacheを搭載しているわけだ。
 Zen 5世代では,「CCD 2基とも3D V-Cacheを載せるのではないか?」と予想する人もいたが,少なくともRyzen 9 9950Xでは,従来の形式を踏襲したわけだ。

Ryzen 9 9950X3Dの仕様
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 第2世代3D V-Cacheの特徴については,Ryzen 7 9800X3Dのレビューで詳しく説明している。簡単に説明すると,3D V-Cacheのシリコンダイを,CCDの裏側に配置することで,CCDとヒートスプレッダのあいだの熱抵抗を大幅に下げているのが第2世代の特徴になる。

第2世代3D V-Cacheの特徴を示したスライド
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 これにより,Zen 4世代の3D V-Cache搭載製品で対応していなかった「Precision Boost Overdrive」を始めとするオーバークロック機能を,フルに利用できるようになったのが,ユーザーにも分かりやすい大きな違いである。
 Ryzen 9 9950X3Dの公称動作クロックは,最大5.7MHzで標準が4.3GHzと,3D V-CacheがないRyzen 9 9950Xと同じだ。なお,TDPは変わらず170Wである。

 新CPU登場に先立ち,2025年2月にはAMDのチップセットドライバがアップデートされ,新たに「AMD Application Compatibility Database」というモジュールが追加された。AMDによると,これは,CCDが2基構成のRyzen 9 X3Dシリーズに対して,特定のゲームに合わせた最適化を行うモジュールだ。具合的には,ゲームが起動するスレッド数を抑えることで,レイテンシの少ない3D V-Cache側のCCDで動作できるように調節するものである。

 本稿執筆時点で対応に挙げられているタイトルは,次のスライドに名前がある8タイトルだが,将来的には拡充されていくのではないか。どの程度の効果があるかは確かめられていないが,今後はチップセットドライバのアップデートを,こまめにチェックしたほうがいいかもしれない。

AMD Application Compatibility Databaseは,8タイトルが対応する
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 2基のCCDを持つRyzen 9で重要な「AMD Provisioning Package Service」と,3D V-Cache搭載CPUでゲームと非ゲームのCCD割り当てを調節する「AMD 3D V-Cache Performance Optimizer」も,それぞれアップデートされている。
 AMD Provisioning Package Serviceのアップデート内容で重要なのは,CPUの交換を自動検出してくれるようになった点だ。これまでは,CCDの数が異なるCPUに交換すると,CPU側で同時実行可能なスレッド数が半分になってしまうことがあった。修正するにはWindowsの再インストールが確実という,かなり厳しい制限があったのだが,その必要がなくなったのだ。

Game Barの設定にある「これをゲームとして記憶する」にチェックを入れれば,そのアプリケーションをゲーム扱いにできる
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 なお,AMD Provisioning Package Serviceは,Windows 11の標準機能である「Game Bar」と連動している。Game Barがゲームと認識しているタイトルがフォアグラウンドになると3D V-Cacheが搭載されていない側のCCDを休止状態にして3D V-Cacheが載っているCCDだけでゲームを実行する仕組みだ。
 Game Barがゲームとして認識しないタイトルも一部にある。そのようなタイトルは,ゲームを実行中に[Windows]+[G]キーを押してGame Barの設定を開き,「全般」タブで「これをゲームとして記憶する」にチェックをいれればいい。これで,3D V-Cacheが載っているCCDが使われるようになる。この仕様は以前から変わっていないのだが,3D V-Cacheが載っているCCD 2基構成のCPUではかなり重要なので,覚えておくべきだろう。


Ryzen 9 9950X3Dのゲーム性能をチェック


 早速テストを進めていこう。今回は試用期間の都合で,4Gamerベンチマークレギュレーション30に含まれているゲームテストだけを実施した。比較対象を含むテストに使用したCPUは表1のとおり。

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 比較対象には,3D V-Cacheを搭載しない16コアモデルのRyzen 9 9950Xと,第2世代3D V-Cache搭載のZen 5世代8コアCPUであるRyzen 7 9800X3D,そしてRyzen 9 9950X3Dの前世代製品となるRyzen 9 7950X3Dを用意した。
 今回は,AMDからマザーボードとメモリモジュール,SSD一式を借用した。さらに,その機材に追加する形で,4Gamerのリファレンス機材からG.Skill International製でDDR5-8000設定に対応するメモリモジュール「TRIDENT Z5 NEO RGB」(16GB×2,製品型番F5-8000J3848H16GX2-TZ5NR)を組み合わせて,DDR5-8000設定での性能も調べてみた。借用したDDR5-6000メモリモジュールとあわせて,メモリ設定にはどちらも,EXPOプロファイルを利用している。
 CPUクーラーは,いつものどおりASUSTeK Computer製の大型液冷CPUクーラー「ROG RYUJIN II 360」を,積極的に冷却を行う「Turbo」プリセットで使用した。
 使用した機材は表2のとおり。

クリックすると詳細版を表示します
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 実行するベンチマークテストは,4Gamerベンチマークレギュレーション30に準拠するが,3DMarkでは,UL BenchmarksがCPU評価向けに推奨する「CPU Profile」もテストした。また,次期レギュレーションを先取りして,「バイオハザード RE:4」の代わりに「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」(以下,モンハンワイルズ ベンチ)を採用した。

 ゲームテストの解像度は,3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3種類。画質は高負荷寄りを基本としつつ,GPU負荷を軽減してCPUの性能差が現れやすい設定を採用した。具体的には,すべてのタイトルで超解像技術を用いて,レンダリング負荷を減らしている。より詳細な設定は,各タイトルで触れていこう。


ときに8コアCPUをやや上回るゲーム性能を見せたRyzen 9 9950X3D


 それでは,3DMark(Version 2.31.8372)の結果から見ていくことにしよう。まずはCPU性能を測る「CPU Profile」からだ。

 CPU Profileでは,「Max threads」から「1 thread」まで,6パターンでテストを行う。Max threadsは,CPUが実行可能な最大スレッド数で行うテストパターンだ。したがって一般的には,実行可能なスレッド数が多いCPUほど有利になる。16 threads以下は,スレッド数を決め打ちで実行するテストパターンで,今回テストしたCPUは,すべて16スレッド以上の実行が可能だ。結果はグラフ1となる。

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 面白い結果から見ていくと,CPU Max Threadsでは,Ryzen 9 9950X3Dが3D V-CacheのないRyzen 9 9950Xに対して,約5%上回るスコアを残す。その一方,CPU 16 threadsでは順位が逆転しているのだ。CPU Max Threadsでは32スレッドを同時実行するので,3D V-CacheがあるCCDでは,SMT(同時マルチスレッディング)が有効に機能するのかもしれない。
 ただ,8 threads以下では,Ryzen 9 9950Xのほうがわずかに好成績を残す傾向が見られる。理由は定かではないが,大容量キャッシュによるレイテンシの増加などが影響している可能性はあるだろう。

 メモリクロックの違いは,誤差程度の違いしかもたらさなかった。Ryzen 7 9800X3Dは,ややスコアが低めに出ているが,16 threadsでRyzen 9 9950X3Dに対して約53%程度と,理屈には合うスコアになっている。
 一方,前世代のRyzen 9 7950X3Dは,CPU MaxThreadsとCPU 16 threadsのスコアが明らかに低く,どうやらCCDの片方を停止するコアパーキングが機能してしまったようだ。コアパーキングの影響を受けないCPU 8 threads以下だと,Ryzen 9 9950X3DがRyzen 9 7950X3Dに対して1.26〜1.28倍のスコアを出している。十分に世代の違いを感じさせるスコア差といって良さそうだ。

 続くグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアと,CPU性能を示すPhysics scoreをまとめたものである。

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 Ryzen 9 9000の2製品3パターンは,総合スコアがほぼ横並びだ。一方,CPU性能を測るPhysics scoreでは,Ryzen 9 9950X3DがRyzen 9 9950Xよりも,約2%低いスコアを出すという,CPU Profileの8 threads以下と共通する傾向が見られる。一方,Ryzen 7 9800X3Dは,Ryzen 9 9950X3Dの約62%と,CPU Profileよりは健闘しているが,やはりCPUコア数の差は大きい。
 メモリクロックの違いは,ここでも誤差程度の違いしか出なかった。また,Ryzen 9 7950X3DのPhysics scoreは明らかに低く,こちらもコアパーキングが機能してしまっているようなので,直接の比較は難しい。

 DirectX 12ベンチマークであるTime SpyのCPU scoreをまとめたものが,グラフ3だ。

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 Ryzen 9 9000世代の総合スコアはほとんど横並びだが,注目できるのはRyzen 9 9950XのCPU scoreが,Time Spy ExtremeおよびTime SpyのどちらもRyzen 9 9950X3Dに対して低い点だろう。その差は,Time Spy Extremeで3%弱,無印のTime Spyでは約6%と十分に有意な差が付いた。大容量キャッシュが有効に機能する処理が,Time Spyに含まれている可能性がありそうだ。
 Time Spy ExtremeのCPU scoreを見ると,Ryzen 7 9800X3DがRyzen 9 9950XDの半分以下なのも目に付く。Time Spyでは約61%と,妥当なスコアを残しているので,Time Spy Extreme実行時になにかスコアに影響を与える偶発的な要因があったのかもしれない。また,Ryzen 9 7950X3Dもスコアが振るわず,ここまでと同様にコアパーキングが機能してしまったのかというスコアだ。

 グラフ4は,DirectX 12ベンチマークであるSteel Nomadの結果である。

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 細かい差はあるものの,一貫した傾向を見せておらず,横並びと評してよさそうだ。
 Steel Nomadでは,8コアのRyzen 7 9800X3Dや前世代のRyzen 9 7950X3Dも良好なスコアを残していて,コア数や世代の影響を受けづらいテストであることが伺える。Steel Nomadのグラフィックスエンジンは,DirectX 12ベースのゲームエンジンに近いとUL Benchmarksは主張しているので,この傾向が正しいなら,ゲームにおいても差はあまりない,ということになってしまう。

 3DMarkの最後は,DirectX 12 Ultimateの性能を測る「Speed Way」(グラフ5)である。

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 すべて10400台で,横並びと評していいだろう。グラフィックス処理が重く,CPUの性能差はほぼ意味を持たないわけだ。

 以上,3DMarkの結果を見てきたが,ざっくり言えばメモリクロックの影響や,3D V-Cacheの有無は,スコアからは判然としないといえそうだ。ただ,CPU Profileの結果から推測するにCPU性能自体は,前世代から3割ほど上がっているのだろう,という結論になる。3DMarkにおいて,3D V-Cacheは有効に機能しないという傾向は以前から見えていたので,ゲームでは異なる傾向となるだろう。

 というわけで,ゲームテストの1本めとして,「Call of Duty: Modern Warfare III」(以下,CoD:MW3)の結果を見ていこう。CoD:MW3では,グラフィックス品質を「極限」に設定したうえで,「アップスケール/シャープニング」で「DLSS」を選択して,「NVIDIA DLSSプリセット」設定を描画負荷が軽い「パフォーマンス」としてテストを実行した。結果はグラフ6〜8となる。

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 ざっくり言えば,Ryzen 9 9950X3D,Ryzen 9 9950X,Ryzen 7 9800X3Dに関しては,ばらつきながらも横並びと言える。CoD:MW3のステータス表示で,CPUボトルネックが最も大きいのは言うまでもなく1920×1080ドット時だが,強いて言えばRyzen 7 9800X3Dと前世代のRyzen 9 7950X3Dの平均フレームレートがやや低い程度といったところだろう。

 一方,3820×2160ドットでは,Ryzen 7 9800X3Dの平均フレームレートが,ほかの16コアCPUと比べて明らかに低い。理由は定かではないが,ほかの解像度ではとくに違和感のある結果は出ていないので,テスト実行時に問題が生じたのかもしれない。
 いずれにしても,CoD:MW3ではCPUの差が出にくく,これらのCPUなら,どれを使っても同じように快適とまとめられそうだ。

 次のモンハンワイルズ ベンチは,グラフィックス負荷が高いテストだ。そこで,グラフィックス品質のプリセットは「中」を選び,超解像技術にDLSSの「パフォーマンス」設定を採用した。レイトレーシングは「オフ」,フレーム生成も「オフ」である。
 また,ベンチマーク開始時に,計測時間2分に設定したフレームレート計測ツール「CapFrameX」を起動して,開始後2分間で事実上の最小値となる1パーセンタイルフレームレートを調べてみた。
 まず,グラフ9が総合スコアである。

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 3つの解像度で明らかなのは,3D V-CacheがないRyzen 9 9950Xは,ほかよりも1〜2%程度低いスコアを記録していることだろう。3D V-Cacheが有効なタイトルというわけだ。
 だが,3D V-Cacheを搭載する3製品の差は微妙で,強いて言うなら前世代のRyzen 9 7950X3Dが,低解像度時にやや低いと言える程度だろう。

 グラフ10〜12にモンハンワイルズ ベンチの平均および最小フレームレートをまとめておく。

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 総合スコアでは差が小さかった3D V-Cache搭載CPUだが,平均フレームレートで見ると,数フレーム程度は差が付いている。たとえば,Ryzen 9 9950X3Dは,低解像度においてRyzen 9 7950X3Dに3〜5フレーム程度の差を付けているなど,多少の違いはあるようだ。
 一方,メモリクロック設定の差は,フレームレートで見ても判然としないと言えよう。

 「Fortnite」では,グラフィックス品質として「高」プリセットを選択したうえで,「アンチエイリアス&スーパー解像度」に「DLSS」を選択。さらに「NVIDIA DLSS」設定で,最も描画負荷が軽い「パフォーマンス」を選択した。結果はグラフ13〜15だ。

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 グラフィックス品質をやや落としたために,400fpsを超えるフレームレートが得られ,結果としてCPU間の差が現れている。
 3840×2160ドットではほぼ横並びだが,2560×1440ドットではRyzen 9 9950Xがほかよりもやや低く,1920×1080ドットではRyzen 9 9950Xがほかよりも顕著に平均および最小フレームレートが低くなった。つまりCPU性能差が出やすい低解像度ほど,3D V-Cacheの効果が顕著に現れるゲームなわけだ。

 また,Fortniteの1920×1080ドットでは,Ryzen 9 9950X3DのDDR5-8000設定がやや高いフレームレートを記録している。ようやく高クロックメモリの効果が現れたかというところか。
 ただ,前世代のRyzen 9 7950X3Dも良好なフレームレートを残しており,世代間の差はあまり見られないと言っていいほどだ。Fortniteは以前から,新しいCPUだと少し低くフレームレートが出る傾向があるので,今後のアップデートで変わるかもしれない。

 次の「Starfield」では,グラフィックス品質のプリセットに「高」を選択して,「アップスケーリング」に「DLSS」,「アップスケーリング品質のプリセット」に「パフォーマンス」を設定したうえで,「フレーム生成」は「オフ」で計測した。
 結果はグラフ16〜18だ。

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 Starfieldは,CPUコア数が多いほどフレームレートが高いという珍しいタイトルで,コアパーキングの影響を受けやすい面がある。それを踏まえて結果を見ると,どの解像度でもRyzen 9 9950Xの平均および最小フレームレートがほかより低い。これは,3D V-Cacheの有無の違いによると見ていいだろう。
 Ryzen 7 9800X3Dは,前世代の16コアであるRyzen 9 7950X3Dよりも高い平均フレームレートを記録しているが,低解像度になると,16コアのRyzen 9 9950X3Dに届かない。Ryzen 9 9950X3Dでコアパーキングが機能すれば,Ryzen 7 9800X3Dとの差は小さくなるはずなので,ここはコアパーキングの影響がなかったと見るのが正しいのかもしれない。

 メモリクロック設定の差は,ばらつきが大きく判然としないと言っていいだろう。いずれにしても,Starfieldでは,Ryzen 7 9800X3Dに対してRyzen 9 9950X3Dのほうが,有意に高い性能が得られるようだ。

 次の「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下,FFXVI黄金のレガシー ベンチ)では,グラフィックス品質のプリセットを「最高品質」に設定したうえで,「グラフィックスアップスケールタイプ」として「NVIDIA DLSS」を選択。さらに「適用するフレームレートのしきい値」として,「常に適用」を選択することでGPU負荷を下げる設定を採用した。
 グラフ19が総合スコアである。

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 FFXVI黄金のレガシー ベンチは,3D V-Cacheがよく効くタイトルだ。すべての解像度で最も低いスコアを記録したのは,3D V-Cacheを搭載しないRyzen 9 9950Xで,土俵に上がれていないと表現していいほどだ。
 また,前世代のRyzen 9 7950X3Dは,どの解像度でもRyzen 9 9950X3DやRyzen 7 9800X3Dより8〜10%程度低いスコアに留まっている。3D V-Cacheの効果は見られるものの,世代差が明らかだろう。

 一方で,Zen 5世代の3D V-Cache搭載CPU同士での差は極めて小さく,8コアCPUのRyzen 7 9800X3Dでも優れたスコアを残している。Ryzen 9 9950X3Dでコアパーキングが機能しているなら,コア数は関係ないので,理屈にもあっているスコアだ。
 「強いて言うなら……」というレベルではあるが,DDR5-8000設定のRyzen 9 9950X3Dのほうが,DDR5-6000設定よりもわずかに高いスコアを残している。若干の効果は見られたようだ。

 グラフ20〜22に,FFXVI黄金のレガシー ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめている。

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 傾向は総合スコアどおりと言っていいだろう。最小フレームレートを見ると,3D V-Cache搭載CPUに比べてRyzen 9 9950Xは有意に低く,快適さがやや劣ることがはっきりと分かる。

 続く「F1 24」では,グラフィックス品質のプリセットに「超高」を選択。「アンチエイリアス」には「NVIDIA DLSS」を,「アンチエイリアシングモード」は「パフォーマンス」というGPU負荷を軽減する設定を採用した。
 F1 24の平均および最小フレームレートをグラフ23〜25にまとめている。

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 3840×2160ドットでは,前世代のRyzen 9 7950X3Dがやや低い程度で,ほかは横並びと言っていい。2560×1440ドットと1920×1080ドットでは,3D V-Cacheを搭載しないRyzen 9 9950Xが,ほかよりも低い平均フレームレートを残した。また,Ryzen 9 7950X3Dは,Ryzen 9 9950Xよりは好成績を残すものの,現行世代には及ばない。
 面白いのは,1920×1080ドット時に,Ryzen 7 9800X3DがRyzen 9 9950Xに及ばなかったところだ。コアパーキングが機能してコア数は関係ないとすると,動作クロックが影響だろうか。平均で40fps程度もの差があると,快適さにも多少の差があるかもしれない。
 なお,メモリクロックの影響は誤差程度だ。

 ゲームテストの最後となる「Cities: Skylines II」では,グラフィックス品質のプリセットとして「中」を選択するとともに,「アップスケーラー」として「NVIDIA DLSS Super Resolution」の「最大パフォーマンス」を選択して,GPU負荷を下げている。
 結果はグラフ26〜28のとおりだ。

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 解像度が低いほど,Ryzen 9 9950X3Dが高いフレームレートを記録する傾向が見られる。1920×1080ドット時には80fps台を残しているが,筆者の記憶では,Cities: Skylines IIでのCPU性能比較では,おそらく最高記録ではなかろうか。フレームレートが伸びにくい本作としては,画期的な平均フレームレートと言える。
 Cities: Skylines IIでもコアパーキングが機能するので,Ryzen 9 9950X3DとRyzen 7 9800X3Dがここまで大きな差を付けるのは不思議でもある。F1 24と同様の傾向と言えるかもしれない。
 メモリクロックの差は,すべての解像度で平均1fps程度しかない。

 以上,テスト結果を見てきたが,タイトルによって出入りが激しいものの,Ryzen 9 9950X3Dは,一部タイトルで8コアのRyzen 7 9800X3Dを上回る性能を見せるようだ。だが,Ryzen 7 9800X3Dと同程度にとどまるタイトルも少なくない。コアパーキングが機能すれば,Ryzen 7 9800X3Dと同じ程度に留まるはずなので,Ryzen 9 9950X3Dで大きくフレームレートが伸びるタイトルは,それほど多くはないだろう。

 一方で,ゲームにおいて高クロックメモリは,あまり効果が期待できないようだ。大容量キャッシュにメモリバス帯域幅の効果が覆い隠される面はあるはずで,高クロックメモリの導入は,コスト対効果に見合わないと言っていいだろう。

 はっきりと言えるのは,Ryzen 9 9950X3Dが前世代のRyzen 7 9800X3Dに対して,大幅な性能向上を見せていることだ。その点では,期待どおりの性能とまとめられるのではなかろうか。


Ryzen 9 9950X3Dの消費電力はRyzen 9 9950Xと同程度


 最後に消費電力やCPUの温度を見ておこう。ベンチマークレギュレーション30に準拠した方法で,アプリケーション実行中におけるCPU単体の最大消費電力をまとめたのがグラフ29だ。

画像集 No.040のサムネイル画像 / 16コア+第2世代3D V-Cache搭載の最強CPU「Ryzen 9 9950X3D」レビュー。ゲーム性能はどこまで向上したのか

 CPUベンチマークを含む3DMarkを除いて,ゲームプレイ時の最大消費電力を見ると,Ryzen 9 9950X3Dでは,Cities: Skyline IIで記録した約184Wが,またDDR5-8000設定では,FFXVI黄金のレガシー ベンチで記録した約255Wが最大値だった。3D V-Cacheを搭載しないRyzen 9 9950Xと,ほとんど変わりはないようだ。

 前世代のRyzen 9 7950X3Dは,コアパーキングが効いて1基のCCDが停止する頻度が高いようで,さらにZen 4世代は極めて電力性能が高かったこともあり,Ryzen 9 9950X3Dに比べると圧倒的と言っていいほど最大消費電力が小さい。一方のRyzen 7 9800X3DはZen 5世代の8コアとしては妥当といったところだろうか。一部のタイトルではRyzen 7 9800X3Dが良好な成績を見せることを考えると,Ryzen 7 9800X3Dの電力性能比はRyzen 9 9950Xよりは高いと言っていいだろう。

 次のグラフ30は,アプリ実行中の典型的な消費電力を示す中央値である。

画像集 No.041のサムネイル画像 / 16コア+第2世代3D V-Cache搭載の最強CPU「Ryzen 9 9950X3D」レビュー。ゲーム性能はどこまで向上したのか

 Ryzen 9 9950X3Dは,DDR5-8000設定を含めて,CoD:MW3で記録した約152Wが最も大きな中央値になった。Ryzen 9 9950Xは,Starfieldで記録した約154Wが最高値なので,中央値でも両製品の消費電力は,あまり変わらないようだ。つまり3D V-Cacheは,消費電力が極めて低いのだろう。
 一方,Ryzen 7 9800X3Dは,Starfiledで記録した約111Wが最大で,現行世代の8コアとしては妥当なところ。一方のRyzen 9 7950X3Dは70W台に収まっており,Zen 4世代の電力性能の高さを見せつけている。電力対性能では依然として,Zen 4世代に分があると言えよう。

 消費電力計測の最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テストの実行時におけるシステムの最大消費電力を,グラフ31にまとめておく。

画像集 No.042のサムネイル画像 / 16コア+第2世代3D V-Cache搭載の最強CPU「Ryzen 9 9950X3D」レビュー。ゲーム性能はどこまで向上したのか

 システム消費電力の大部分を占めるのはGPUだが,それでもRyzen 9 9950XとRyzen 9 9950X3Dが同程度という傾向は,システムの最大消費電力でも変わらなかった。Ryzen 7 9800X3Dは700W台に乗ることがないので,システムの消費電力で見れば,Ryzen 9 7950X3Dと大差はないとも言える。


配信ゲーマーにとっての新たな選択肢


 ざっくりまとめるならば,Ryzen 9 9950X3Dは,期待どおりに高いゲーム性能を発揮する。一部のタイトルではRyzen 7 9800X3Dを上回るが,フレームレートでは同程度のタイトルも多いので,ゲームだけを目的にするなら,価格が手頃なRyzen 7 9800X3Dのほうが適当な選択肢だろう。

 一方で,1台のPCでゲームのプレイと動画配信や動画編集などを行うゲーマーならば,Ryzen 9 9950X3Dが選択肢に入ってくる。Ryzen 9 9950Xに比べて有意に高いゲーム性能を持ち,必要に応じて16コアが使えるので,動画を軸にするゲーマーならば,Ryzen 9 9950Xよりも3万円高く出す価値が見いだせるはずだ。

AMDのRyzen 9 9950X3D製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    Ryzen(Zen 5)

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