レビュー
最強のゲーマー向けCPUを継承する新CPUの実力を検証
AMD Ryzen 7 9850X3D
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Ryzen 7 9850X3Dは,2024年末に発売となったゲーマー向けCPU「Ryzen 7 9800X3D」(コードネームGranite Ridge)の,最大動作クロックを高めたマイナーチェンジモデルである。
マイナーチェンジというだけあって,容量64MBのキャッシュメモリを実装したシリコンダイを,8コア16スレッドのCPUダイ(CPU Complex Die,以下 CCD)の下に積層することで,L3キャッシュ容量を倍増させる「3D V-Cache Technology」を採用したという最大の特徴は,Ryzen 7 9800X3Dと何ら変わらない。
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注目の最大クロックは,Ryzen 7 9800X3Dの5.2GHzに対して,Ryzen 7 9850X3Dは同5.6GHzと,400MHzも引き上げられている。
CPUコアアーキテクチャや3D V-Cacheは既存製品そのままなので,語るべきことはあまりない。既存のRyzen 7 9800X3Dに対して,Ryzen 7 9850X3Dでどこまでゲーム性能を引き上げられたのか。テストをしてみたので,結果を見ていこう。
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TDPなどのスペックも変わらず従来品と同じように使える
まずは,「CPU-Z」で確認したRyzen 7 9850X3DとRyzen 7 9800X3Dの情報を見てほしい。
既存のRyzen 7 9800X3Dとリビジョンを含めて同じであり,異なるのは,クロック倍率設定とCore Voltage(コア電圧)のみなのが分かるだろう。
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Max TDPは同じで,定格が120W。ブースト時の最大消費電力にあたるDefault Socket Power(PPT)が162Wというスペックも,既存のRyzen 7 9800X3Dと同じ。つまり,使い勝手もほぼ変わらないと思っていい。
最大クロックを5.6GHzまで引き上げられたのは,キャッシュダイをCCDの裏に配置する第2世代3D V-Cacheの放熱性能の高さによるものだ。詳しくは,Ryzen 7 9800X3Dのレビュー記事を参照してほしい。
4Gamer読者には,あらためて言うまでもないだろうが,3D V-Cache搭載CPUは,高いゲーム性能が特徴だ。そのため,CPU製品としては珍しく,明確にゲーマー向けを謳っている。
Intel製CPUで競合となりそうなのは,「Core Ultra 9 285K」くらいだが,既存のRyzen 7 9800X3Dでも,ほぼすべてのゲーム性能で競合を上回るのは検証済みだ。
したがって,Ryzen 7 9850X3Dで重要なのは,Ryzen 7 9800X3Dに対して,どのくらいゲーム性能が向上するのかという点に絞られよう。
そこで今回は,比較対象にRyzen 7 9800X3Dを用意して,4Gamerベンチマークレギュレーション32に即したゲーム性能のテストを行った。
実行したベンチマークは,4Gamerベンチマークレギュレーション32に含まれる「3DMark」とゲーム7タイトルと,それにCPU性能検証の「Cinebench 2026」だ。
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これらの2製品は,定格でのテストに加えて,ゲーマーが使いやすい自動オーバークロック機能「Precision Boost Overdrive」(PBO)状態での計測も行った。
AMDによると,PBOではブースト時の最大動作クロックを200MHz高めるととともに,コア電圧と周波数カーブを最適化する「Curve Optimizer」で,やや負のオフセットをかけることでコア電圧を抑え気味にすると,ブーストクロックが上がりやすいという。
そこで今回は,PBOの最大動作クロックを+200MHzとして,Curve Optimizerのオフセットを「−5」にする設定で,Ryzen 7 9850X3DとRyzen 7 9800X3Dをテストすることにした。
テストしたパターンは,定格とPBOを合わせて2製品で4パターンということになる。
ちなみに,最新のAMD製オーバークロックツール「Ryzen Master」は,ユーザーインタフェースが大きく改善されていて,旧版に比べると非常に分かりやすく,かつ設定もしやすくなっている。
オーバークロックにあまり馴染みがないゲーマーでも,気軽に試せそうなので,Ryzen Masterを使ったことがないゲーマーも試してみると面白いかもしれない。
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使用した機材は表2のとおりだ。今回はAMDからマザーボード,メモリ,SSD一式が指定されているので,4Gamerとして独自に用意した機材はCPUクーラーと電源,そしてグラフィックスカード程度である。
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グラフィックスカードには「GeForce RTX 5080 Founders Edition」を利用した。CPUのテストでは,GPUのスループットを極力上げるべきだ。GeForce RTX 5080 Founders Editionは,本稿執筆時点におけるゲーム用途前提のCPUテストに,最適なGPUだろう。
CPUクーラーは,いつものとおり,ASUSTeK Computer製の大型液冷CPUクーラー「ROG RYUJIN II 360」を,積極的に冷却を行う「Turbo」プリセットで使用している。
メモリには,AMDの試用機材セットに含まれていた,DDR5-6000に対応するAMD EXPO対応メモリモジュール「TRIDENT Z5 NEO RGB」(容量16GB×2,製品型番:F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW)を使用した。
メモリ設定には,AMDの推奨どおり,DDR5-6000設定のEXPOプロファイルを適用している。
ゲームテストの解像度は,いつもどおり3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3種類。
画質は高負荷寄りの設定を採用しつつ,すべてのタイトルで超解像技術を用いてレンダリング負荷を低減させ,CPU性能の違いを引き出すよう設定を調整している。
ちなみにAMDからは,ゲームの解像度や画質を「極力落とす」ことが推奨されているが,グラフィックの見た目が極端に低い状況のフレームレートを見ても,ゲーマーの参考になるとは思わない。
見た目がも良好な画質を維持しつつ,描画負荷とのバランスを考慮して設定を決めた。設定の詳細については,必要に応じて各タイトルで触れる。
既存製品とのゲーム性能の差は微妙
まずは「3DMark」(Version 2.32.8826)から,CPU性能を物理シミュレーションによって測定する「CPU Profile」を見ていこう。
CPU Profileでは,「Max threads」から「1 thread」までの6パターンでテストを行う。
Max threadsは,CPUが実行可能な最大スレッド数で行うテストパターンだ。したがって一般的には,実行可能なスレッド数が多いCPUほど有利になる。
16 threads以下は,スレッド数を決め打ちで実行するテストパターンで,今回テストしたCPUは,すべて16スレッド以上の実行が可能だ。結果はグラフ1である。
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定格でRyzen 7 9850X3DとRyzen 7 9800X3Dのスコアを比較すると,実行スレッド数が同じになるCPU Max ThreadsとCPU 16 Threadsで2%弱の差がある。
一方で,スレッド数が減少すると差が大きくなり,CPU 1 Threadでは,約5%スコアが高くなった。少ないスレッド数ほどCPUの発熱や消費電力が抑えられ,クロックが上がりやすくなるという理屈どおりの結果だ。
スペック上の最大クロック上昇率は約7.7%あるので,少し物足りないが,妥当な範囲の性能向上ではある。
PBOの新旧比較では,2〜4%程度と少し差が縮まるが,誤差の範囲といえなくもない程度だ。PBOの効果は,どちらもごくわずかに見られるものの,絶大な効果があるわけではない。
これは,今までPBOをテストしたときの傾向と変わらない印象である。
続くグラフ2は,「Fire Strike」の総合スコアとPhysics scoreをまとめたものである。
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定格で新旧を比較すると,ほぼ誤差範囲となった。CPU性能のみをテストするPhysics scoreを見ると,約4%の差があり,CPU Profileテストと整合の取れた性能向上を確認できた。
PBOの新旧比較は,総合で約3%,Physics scoreで2%弱の向上となった。こちらも,CPU Profileとの大きな齟齬は見られない。
グラフ3は,DirectX 12ベンチマークである「Time Spy」の総合スコアだ。
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描画負荷が高めになるTime Spyでは,4パターンの差が1%以下になってしまい,誤差範囲という結果になった。総合スコアに反映される比率はGPU性能が最も大きいため,CPU性能の差が総合スコアに現れないということだろう。
そのことは,より新しい世代のDirectX 12ベンチマークである「Steel Nomad」の結果(グラフ4)からも読み取れる。
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GPU負荷が高いSteel Nomadは,1%以下の差で横並び。描画負荷がかなり軽いSteel Nomad Liteなら,CPU性能の差が出るかと考えたが,こちらも1%以下の差で横並びとなってしまった。
Time Spyの結果と合わせて考えると,CPU性能が4%程度向上していても,ゲームのフレームレートを向上させる力は弱いと見ても良い結果である。
グラフ5は,DirectX 12 Ultimateの性能を測る「Speed Way」だが,こちらも1%以下の差で横並びである。
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レイトレーシングを含む最新のグラフィックス技術を用いたSpeed Wayは,GPU寄りのテストで,CPUの性能差はほとんど出てこない。なので妥当な結果といえよう。
3DMarkの結果を総合するに,CPU性能のみのテストであれば,Ryzen 7 9850X3DはRyzen 7 9800X3Dに対して,最大で4%程度の性能向上が得られるようだ。
ただ,グラフィックスを合わせたテストだと,GPU性能に抑えられてしまい誤差程度にしか現れないという傾向が読み取れる。
それを踏まえたうえで,ゲームでの性能を比較していこう。
1本目は「Call of Duty: Black Ops 7」(以下,CoD:BO7)である。
CoD:BO7では,グラフィックス品質のプリセットに「極限」を採用する一方で,超解像技術に「DLSS」を選択し,「NVIDIA DLSSプリセット」を「パフォーマンス」とすることで,GPUの負荷を軽くしている。
結果はグラフ6〜8だ。
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Ryzen 7 9850X3Dは,定格,PBOを含めて,全解像度で平均1〜3fps程度向上している。
最小フレームレートは,少しばらつきがあった。それでも,2560×1440ドットでは,Ryzen 7 9850X3DがRyzen 7 9800X3Dに比べて向上しているので,クロック向上の効果があると見ていいだろう。
ただ,PBOの効果は,どちらのCPUもほとんど見られない。実際,CoD:BO7の結果に表示されるボトルネック率で見ると,もっとも描画負荷が軽くなる1920×1080ドット時でも,GPUボトルネックが98%に達する。
つまり,CoD:BO7においてフレームレートを左右しているのはGPUで,CPUの寄与はせいぜい2%しかないのだ。この数値から考えると,PBOの効果が見えないのも無理はない。
また,Ryzen 7 9850X3DのRyzen 7 9800X3Dに対するクロック向上率を踏まえると,平均1フレーム程度の差が出れば御の字なのが分かると思う。
「Battlefield 6」では,グラフィックス品質に「最高」を選択したうえで,超解像度DLSSの設定に「超高パフォーマンス」プリセットを設定して,描画負荷を下げた。結果はグラフ9〜11のとおり。
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Battlefield 6の場合,2560×1440ドット以上だと,Ryzen 7 9850X3DとRyzen 7 9800X3Dの差は見られない。Battlefield 6は,プレイヤーの操作が多少は必要なテストなので,多少はフレームレートが変動する。2560×1440ドット以上だと,クロックの差は,操作による変動ほどではないようだ。
描画負荷が最も軽い1920×1080ドットは,定格ならばRyzen 7 9800X3DよりもRyzen 7 9850X3Dの平均フレームレートがわずかに上がっている。だが,PBOでは差がなくなってしまう程度だ。
Battlefield 6のテストは,ボトルネック率などは分からないが,最新のグラフィック技術を用いたゲームだけに,CoD:BO7と同様にGPU寄りだろう。
そのうえで,プレイヤーの操作の影響も少しは加わるので,CPUクロックの差が埋もれてしまう可能性が大きいのではないか。
次の「モンスターハンターワイルズ」では,グラフィックス品質のプリセットを「ウルトラ」に,レイトレーシングをOFFとして超解像度技術に「NVIDIA DLSS」を選択した。
また,アップスケーリングモードを「ウルトラパフォーマンス」に設定して,描画負荷の大幅な低減を図った。結果はグラフ12〜14だ。
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概観すると,Ryzen 7 9850X3Dは定格クロックで,2560×1440ドット以下の解像度において平均1fps程度のフレームレートが向上しているようだ。
PBOの効果ははっきりせず,むしろ低下しているケースも散見されるので,計測誤差の範囲に収まってしまうのだろう。
モンスターハンターワイルズのテストは,ほとんどプレイヤーの操作が不要だが,計測スタートは手動になるので,わずかにスタートが遅れたり早まったりでブレが生じる。PBOの効果は,そのわずかな差に埋もれてしまう程度といえよう。
モンスターハンターワイルズは描画負荷が高いので,もう少しグラフィックス品質を落とせば,差が出やすくなる可能性はある。
だが,あまりにグラフィックス品質を落とすのも,現実的なプレイ環境から離れてしまうので意味がない,というのが筆者の持論だ。現実的なプレイ環境において,Ryzen 7 9850X3DはRyzen 7 9800X3Dに対して,平均1fps程度の差が得られる程度と見ていい。
「Fortnite」のテストでは,グラフィックス品質として「最高」プリセットを選択したうえで,「アンチエイリアス&スーパー解像度」に「DLSS」を選択し,「NVIDIA DLSS」設定で,最も描画負荷が軽い「パフォーマンス」を設定した。
結果はグラフ15〜17のとおり。
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3840×2160ドットや2560×1440ドットでは,Ryzen 7 9850X3DのフレームレートがRyzen 7 9800X3Dよりも2〜3fps程度高い。だが,1920×1080ドットではばらついてしまい,差がはっきりと見えなくなってしまった。
原因は特定できなかったが,Ryzen 7 9850X3Dの定格テスト時にバックグラウンドで何かが発生したとか,意図しない処理が発生してしまった可能性もある。
ただ,いずれの解像度でも,PBOの効果はわずかに見えているのが特徴で,その意味では,クロック向上の効果が出やすいタイトルなのだろう。
Ryzen 7 9850X3D(PBO)が,平均で232fpsのトップスコアを叩き出しているので,ばらつきがあるとはいえ,Ryzen 7 9850X3DはRyzen 7 9800X3Dより多少フレームレートが高まったとまとめていい。
次の「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下,FFXIV黄金のレガシー ベンチ)では,グラフィックス品質のプリセットを「最高品質」に設定したうえで,「グラフィックスアップスケールタイプ」として「NVIDIA DLSS」を選択。
さらに「適用するフレームレートのしきい値」として,「常に適用」を選択することでGPU負荷を下げる設定を採用した。
グラフ18が総合スコアである。
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全体を見ると,Ryzen 7 9800X3D(PBO)だけが,全解像度でなぜかやや低いスコアになってしまった。不測の事態が発生していた可能性がある。
それを除くと,定格では2560×1440ドット時に,Ryzen 7 9850X3DのスコアがRyzen 7 9800X3Dを1%強上回ったほかは,ほぼ横並び。だが,PBOだと,全解像度でRyzen 7 9850X3DがRyzen 7 9800X3Dを3〜5%程度上回る結果を見せている。
とくに,GPU負荷が軽めでCPU性能差が出やすい1920×1080ドットでは,Ryzen 7 9850X3D(PBO)が46000台の高いスコアを叩き出し,FFXIVキングと呼ぶにふさわしい結果を残した。差は小さいながらも,Ryzen 7 9850X3Dのほうが良好な成績が残せると見ていいだろう。
グラフ19〜21に,FFXIV黄金のレガシー ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめている。
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総合スコアからうかがえるとおり,Ryzen 7 9800X3D(PBO)のフレームレートがなぜか低い。なにか予想外の現象が起きていたようで,参考値にしかならないだろう。
そのほかはおおむね順当で,Ryzen 7 9850X3D(PBO)では,有意に高い平均フレームレートが記録した。
「F1 25」では,グラフィックス品質のプリセットに「超高」を選択。「アンチエイリアス」に「NVIDIA DLSS」を,「アンチエイリアシングモード」を「パフォーマンス」に設定して,GPU負荷を軽減した。
結果はグラフ22〜24にまとめた。
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グラフのとおり,Ryzen 7 9850X3Dは,Ryzen 7 9800X3Dに対して有意に高いフレームレートを出せていない。描画負荷が軽い1920×1080ドット時においても,Ryzen 7 9850X3DのフレームレートはRyzen 7 9800X3Dに対して高くはなく,むしろ低い結果だ。
おそらくGPUが,フレームレートの大部分を支配しているためと思われる。PBOの効果もはっきりしないので,CPUクロックの影響が少ないタイトルなのだろう。
ゲームテストの最後となる「Cities: Skylines II」では,グラフィックス品質のプリセットとして「中」を,さらに「アップスケーラー」として「NVIDIA DLSS Super Resolution」の「最大パフォーマンス」を選択して,GPU負荷を下げている。
グラフ25〜27が,その結果だ。
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Cities: Skylines IIは,CPU負荷が高いゲームで,実際,テストを始めるとCPUファンの回転数が有意に高くなる。そのためか,Ryzen 7 9850X3Dは全解像度で3〜5%ほどRyzen 7 9800X3Dよりも高いフレームレートを記録した。順当な結果といっていいだろう。
PBOの効果も見えており,1920×1080ドット時にはRyzen 7 9850X3Dのみ平均70fpsを超えてきた。Cities: Skylines IIのようなCPU寄りのゲームなら,Ryzen 7 9850X3Dが相応の性能を発揮できるようだ。
最後に,CPUクロックが正しく向上しているかを確かめるために実行したCinebench 2026の結果(グラフ28)を見ておきたい。
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Cinebench 2026は,今回が初のテストとなるため,スコアを過去とは比較できないが,3DMarkのCPU Profileなどと整合性のある結果になっている。
全コアを駆動するMulti Threadでは,差がほとんど見られないが,Single CoreやSingle Threadでは,Ryzen 7 9850X3Dのスコアが有意に高くなった。
定格だと,Single Thread時におけるRyzen 7 9850X3Dのスコアは,Ryzen 7 9800X3Dより約10%も高い。カタログスペックどおりCPU性能がものを言う処理では,クロックの高さが表れるようだ。
ただ,PBOの効果はあまりはっきりしなかった。今回は推奨どおりCurve Optimizerに負のオフセットをかけているので,1コアでひとつのスレッドしか動かないような局面だと,むしろクロックが抑え気味になってしまうケースも考えられる。そうした傾向が出たかもしれない。
テスト結果を見てきたが,ゲームにおいては言うまでもなくGPU性能が支配的で,Ryzen 7 9800X3Dに対するRyzen 7 9850X3Dの優位性は,あったとしても小さい。
Cities: Skylines IIのようにCPU負荷が高いゲームであれば,Ryzen 7 9850X3Dのほうが多少は好成績を残せそうだ,ということはいえるかと思う。
Ryzen 7 9850X3Dの消費電力はおおむね同等
最後に,消費電力やCPUの温度を見ておこう。ベンチマークレギュレーション32に準拠した方法で,アプリケーション実行中におけるCPU単体の最大消費電力をまとめたのが,グラフ29である。
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目立つピークを見ると,3DMark実行時のRyzen 7 9850X3D(PBO)で214W,またゲームでは,Cities: Skylines II実行時のRyzen 7 9800X3D(PBO)が207Wを記録している。
PBOは極端にCPUクロックが上がる局面があるので,そのピークを拾ったものと思われる。これらのピークを除いて概観すると,Ryzen 7 9850X3DとRyzen 7 9800X3Dは,ばらつきつつも大きな差がないようだ。
また,PBO設定時だからといって,必ずしも消費電力が高くないことも分かる。これは,Curve Optimizerで負のオフセットをかけているためだろう。コア電圧を抑え気味に制御するので,その分だけ消費電力にも余裕が出るわけだ。
次のグラフ30は,アプリ実行中の典型的な消費電力を示す消費電力中央値である。
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中央値で突出したのは,Battlefield 6実行時のRyzen 7 9800X3D(PBO)時で132W台を記録した。Battlefield 6は,ほかのタイトルより消費電力が高めで,この結果からすると,CPU負荷も相応に高いようだ。
ただ,中央値でもRyzen 7 9800X3DとRyzen 7 9850X3Dに大きな差があるとはいえないようで,おおむね同程度の消費電力と見ていい。クロックはたしかに上がっているようなので,同程度の消費電力でクロックが上がっているのだから優秀といえる。
Curve Optimizerによる負のオフセットも効果的で,あまり消費電力を上げずに多少の性能を上げたい場合に有効な手段といえるのではなかろうか。
ちなみにAMDは,性能を見ながら,Curve Optimizerのオフセットを上下に調整するのが望ましいとしている。今回はそこまで時間がかけられなかったが,消費電力と性能のバランスを取りたいゲーマーは,挑戦してみるといいだろう。
消費電力計測の最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テストの実行時におけるシステムの最大消費電力を,グラフ31にまとめておこう。
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GPUが支配的なだけに,システムの最大消費電力では,CPUによる差が極めて小さいことが分かる。つまり消費電力の点で,Ryzen 7 9850X3DとRyzen 7 9800X3Dに大きな差はないようだ。その意味ではやはり優秀といっていい。
Ryzen 7 9850X3Dの価値は価格差次第
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とはいえ,Ryzen 7 9800X3DがそうであったようにRyzen 7 9850X3Dもまた,現行のデスクトップPC向けCPUの中では,最高のゲーム性能を持つ製品であることに間違いはない。
Ryzen 7 9800X3Dよりも,Ryzen 7 9850X3Dのほうが,わずかながら高い性能を持つことは確かなので,高性能を追い求めるゲーマーなら選んでおいて損はないだろう。
あとはRyzen 7 9850X3Dの実勢価格が,Ryzen 7 9800X3Dの価格にもう少し近づいてくれるとお勧めしやすくなるのだが。
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