企画記事
「ときめきメモリアル」令和の入学オリエンテーション。あの頃の“ときめき”はどう映った? 「ときメモ エモーショナル」新入生に話を聞いてみた
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それをあらためて気づかせてくれたのが、KONAMIから発売されたNintendo Switch用ソフト「ときめきメモリアル 〜forever with you〜エモーショナル」。「ときメモ」の第1作が今のゲーム機向けに帰ってきたのは2025年5月8日のこと。個性的で魅力的な女の子たちと過ごす高校生活,そして伝説の樹の下の告白。あの3年間の青春に胸を高鳴らせた人も多いだろう。
もちろん筆者も(再)入学済みで,「ときメモ エモーショナル」での懐かしくも新しい体験は,筆者自身の高校時代を鮮烈に思い出させてくれた。
30年という年月が過ぎ,記憶が薄れた部分もあったはず……そう思ってプレイを始めてみると,懐かしさと,忘れていたからこその新鮮さが入り混じって,気がつけばあのころのように夢中になっていたのだ。
そして,ふと思った。
私はもう,「初めてときメモを遊ぶ人」の気持ちには戻れないのだな。だからこそ“新入生”だったあのころのようなまっさらな感想を,もう一度,誰かから聞いてみたい――と。
そう思い立ち,今回はもっとも身近な「ときメモ」未経験者である夫と娘に,本作をプレイしてもらうことにした。
30年前の“青春”は,令和の今を生きる大人と10代の目にどう映るのか。そしてそこに,時代を超えて感じる「ときめき」はあるのか? 家族で探ってみた。
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きらめき高校新入生(娘)のプレイに密着!
【今回初めて「ときメモ」をプレイする新入生】
夫S(43歳):大作からインディーゲームまで幅広く遊ぶゲーマーだが,恋愛シミュレーションゲームはほぼ未経験。
娘R(13歳/中2):アクションシューティングが大好きな,スーパーエイムガール。恋愛シミュレーションゲームは全くプレイしたことがない。
【聞き手の在校生】
筆者(47歳):SFC版が初「ときメモ」のときメモラー母ちゃん。それ以来,“きらめき高校の生徒”という自認のまま四半世紀以上が過ぎ,今に至る。最推しは紐緒結奈さんだが,すべてのヒロインは皆尊い。
筆者:
新入生の皆さん,私立きらめき高校へのご入学,誠におめでとうございます。
本日は,僭越ながらわたくしが在校生代表として,オリエンテーションを担当させていただきます!
夫S:
おっ,お母さん張り切ってるな。
筆者:
まあね。「ときメモ」をふたりにプレイしてもらうことが嬉しいから,つい先輩風吹かせちゃいました。
今日はR(娘)のプレイに密着していきたいと思います。S(夫)は先日にプレイして,鏡 魅羅さんからの告白を受けていたね。
夫S:
うん。俺は鏡さん一筋のはずだったのに,途中からヒロインがどんどん出現して俺に注目するもんだから,人間関係のバランスを取るのに苦労したな〜。
体育祭競技の難しさにもびっくりした。でも,なんとか望むエンディングを迎えられて良かったな。
娘R:
待って。そんなに人間関係がややこしいゲームなの? 体育祭が難しいってどういうこと? 好きな女の子と甘酸っぱい青春をのんびり楽しむゲームじゃないの……?
筆者:
Rは「ときメモ」にそういうイメージを持っていたんだね。まあそれは,プレイしてみてからのお楽しみです。
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【娘,私立きらめき高校に入学する】
(オープニングムービーを見る3人)
筆者:
好っきっとかっ 嫌いとぉか〜 最初に言い出したのは〜♪
娘R:
……(母の歌声をスルー)。ねえ,「ときメモ」って,何年前のゲームなの?
筆者:
約30年前ですな。Rなんて全然生まれていないどころか,影も形もないときだね。お母さんはリアルで高校生だった。
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娘R:
そんなに前なのか……私には想像もつかない時代だなあ。
ええと,公式サイトを見たときに朝日奈夕子ちゃんが可愛くて気になったから,今回のプレイではこの人と仲良くなるように進めていこうと思っているよ。名前は漢字も使えるのね。誕生日はどうしようかな。
筆者:
年中行事とかぶるのを避けるとか,ゲーム的に運用しやすい日はあるけれど,そんなに気にしなくていいんかなって思う。
娘R:
じゃあ自分の誕生日を入力しよう。
……えっ,主人公に設定した名前をヒロインたちが呼んでくれるの!? イントネーションも数パターンから選べて,あだ名まで個別に設定できるってすごい。本名を入れようっと。
筆者:
EVS(エモーショナルボイスシステム)だね。
これは次に発売された「ときめきメモリアル2」から実装されたもので,オリジナルにはなかったんだけど,今回のNintendo Switch版でめでたく初代にも実装されたんだよ。
ヒロインが名前を呼んでくれるのは嬉しいよね。
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(きらめき高校入学式の日,好雄と教室で知り合うシーン。伊集院レイについて「あの金持ちのか!」と好雄がコメントする)
娘R:
伊集院レイさんの“お金持ちでイヤミなキャラ”っていうのが,ちょっと昔っぽくて面白い!
でもこの人,お母さんの行っていた「ときメモ」ライブの公式イラストでは,ドレス姿だったはず。普段はパンツタイプの制服を着ている子なんだね。それから,好雄の女の子への執着がすごくてびっくりした。何者なんだ,好雄……。
筆者:
(そうか,令和の新入生は,すでに伊集院レイを女性かもしれないと認識した状態で始まる可能性があるのか! レイの見かたひとつとっても,年季の入った在校生とは違って面白い……って,心の声長っ!)
好雄は現実にはなかなか見ないタイプというか,今どきの創作物でもほとんど見ないタイプかもしれないね。
娘R:
あれ,朝日奈さんがいないよ。ヒロインは全員同じクラスだとは限らないんだね。
朝日奈さんと出会って仲良くなるには,どうしたらいいかな。
筆者:
雑学をそこそこ上げるといいよ。例外はあるけど,どのヒロインもその子と気が合いそうな感じに主人公を仕上げていくと何らかの形で交流が生まれるから。
【娘,朝日奈さんと出会う】
(コマンド画面である,主人公の自宅に移行)
娘R:
うわーっ,この部屋はまさに,昔の学生の部屋って感じがする。
お母さん世代が学生だったころって,こういう大きい機械で音楽を聞くんでしょ。その上に乗っているのは,電話かな。この時代の電話もすごく大きい!
筆者:
そう,電話の子機。これがあれば,家の据え置き型の電話を別の部屋でも使えるんだよ。携帯電話が普及してしばらくしてから,ほとんど見なくなったね(コンポはもちろん,電話の子機すら「とても大きい」と感じるのか。あらためて時代を感じる……)。
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(着々と雑学を中心にパラメータを上げていく)
娘R:
いずれ出会うはずの朝日奈さんと気が合う主人公にしたいから,今のところは雑学をメインに,容姿と運動のパラメータをサブで上げているけど,勉強はしなくていいのかな……?
定期テストもあるみたいだし,なんとなくこの先の学校生活が不安になるんだけど。
筆者:
朝日奈さんとのエンディングを迎えることに限って言えば,全く問題ないはず。
これはSLGの戦略的な話になるけど,あらゆるパラメータを上げてしまうと,いろんなヒロインの出現条件が満たされる。つまり,たくさんの女の子が主人公の一挙一動を見張る感じになって,だいぶ攻略の難度が上がっちゃうんだよね。
娘R:
そういうことかあ。でも,だんだん1週間の回し方が分かってきたかも。この調子でやっていくね。
【初めての体育祭】
娘R:
体育祭もがんばるぞ。スプーンリレーに出ようかな。見た感じ,いちばん簡単そうだしね!
筆者:
……あ,うん……そ,そうだね……。
ええと,操作は,LとRボタンでボールのバランスを取りながら,Aボタン連打で進む感じだよ。
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娘R:
えーっ,分かりやすい操作だと思ったのに,すごく難しくない?
……っていうか,無理だってこれ! この競技で1位をとれる人なんているの?
筆者:
運動パラメータの数値は難度に影響するよ。
できないことはない……んだけど,スプーンリレーや玉転がしは,もともとかなり難しい競技なんだよね。
娘R:
えーん,早く言ってよ〜! 詩織ちゃんが呆れてる……。
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【娘,朝日奈さんに出会う】
娘R:
好雄が朝日奈さんを紹介してくれたよ。やっぱりかわいいしノリがいいなあ。
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筆者:
さっそくデート三昧ですか,楽しい高校生活ですな。
娘R:
朝日奈さんは,どんなデートスポットが好きなんだろう。
筆者:
朝日奈さんのキーワードは,“流行”だね。流行っていれば,普段はあまり彼女に縁がなさそうなところでも,興味を持って楽しんでくれるよ。
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【朝日奈さんと,人間関係を築く】
娘R:
けっこう,夕子と仲良くなってきたと思うな〜。
筆者:
あれ。いつのまにか「夕子」呼びになってる。
娘R:
ゲームのなかの主人公は“朝日奈さん”って呼ぶけど,私が個人的にね。下校時に,よく夕子とお茶して帰っているし,親しみを込めて。
最近,いろんなことを一緒に楽しんで生活は充実してるけど,学校の成績は夕子と並んでかなり下のほう。勉強系のパラメータを上げてないから当然なんだけど。主人公の進路は多少不安になるね。
筆者:
冷静に現実的な問題に向き合っているっ。
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娘R:
あっ! 夕子,顔を赤らめてない?
か,かわいい……。もしかして私のこと,好きになったんじゃない?
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【人間関係を保つ大変さ】
娘R:
好雄の妹の優美ちゃんと,古式ゆかりさんっていう人と知り合ったよ。
最近,学校帰りに夕子以外の子から誘われることも増えて,一緒に帰ることもあるんだけど……。誰とも付き合っていないとはいえ,なんだか夕子のことを考えてソワソワしちゃう。
筆者:
面白くなってまいりましたな!
娘R:
好雄に電話で女の子からの評価を聞いてみたら,なんか詩織ちゃんが怒っているみたいなんだよね。
夕子を優先したいけど,お誘いを断ってばかりだと不満に思われるだろうし。バランスを取るのが難しいなあ。
優美ちゃんとも一緒にゲームセンターに遊びに行く流れになった。夕子以外の人とふたりで出かけるのは気が引けるけど,デートしておくか。夕子に一途でいたいけど,なかなかうまくいかないよ。
筆者:
限られた3年間の高校生活……どう過ごすべきなんだろうね。悩みは尽きませんな! ははは!
娘R:
うう〜〜〜! 高みの見物か〜!
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【伝説の樹の下で……】
このあと鏡さん,詩織ちゃん,優美ちゃんといった,今回のプレイで出現したヒロインたちとなんとかうまくやりつつ,エンディングへ。伝説の樹の下には,朝日奈さんが現れた。そして,彼女からの告白を喜んで受け入れた娘だった。
娘R:
あー,面白かった。夕子のこと,すごく好きになっちゃったな!
筆者:
それはよかった。では,ここからはSも参加してもらって,新入生として「ときメモ」で描かれる“あの時代の青春”を体験したことについていろいろ聞かせてもらいたいな。
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めでたく初の卒業式を終えた新入生たちに話を聞いてみた
【「ときメモ」のこと,どう思っていた? プレイしてみて,どうだった?】
筆者:
ということで,初めてこの作品に触れたふたりの卒業生にお話を聞きたいと思います。
まずプレイする前のことを聞きたいな。ふたりは「ときめきメモリアル」をどこでどう知ったの? そのときの印象も教えてほしい。
夫S:
もちろん発売当時から話題のゲームだったから,ゲーム雑誌で記事や広告を見て存在は知っていたよ。
けれど,アクションやRPGが好きな男子中学生だったから,「俺が普段やらないようなゲームかも」と思っていたなあ。当時は,とにかく剣と魔法で冒険したい子どもだったんだよね。
筆者:
なるほど,Rは?
娘R:
お母さんが「ときメモ」を好きだって言っていたし,声優さんが出演するライブにも行っていたでしょ? だから,名前は知っていたよ。
でも私は,普段アクションシューティングを主にプレイしているから,「ときメモ」は,あんまり馴染みがないジャンルかなって。
私の友だちには恋愛シミュレーションをプレイする人がいないし,それ以上の情報も入らなくて。でも,グラフィックスは平成レトロって感じがしてすごく可愛いって思ってた!
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筆者:
う,レトロか……。PlayStationやセガサターンでも出ていたゲームだから感覚的にはその領域に入ってない気になるけど,確かに30年前の作品だもんね。
Sは,当時「ときメモ」のビジュアルについてどう感じていた?
夫S:
かわいいビジュアルでちょっとドキッとしていたかもしれない。逆にそれで,たとえ当時ほしいと強く思ったとしても,照れちゃって親に「買って」とは言えなかったと思う。
筆者:
なるほどね。私が初めてプレイしたのはSFC版で,そのときは高校生,幸運なことに「ときメモ」が好きな仲間もいた。私たちは,「ときメモ」に出会った環境が全然違うね。
さて,ふたりとも気になったヒロインとのエンディングを見たわけだけれど,印象に残ったのはどんなところだった?
夫S:
ひとりの女の子に狙いを定めて攻略するのかと思いきや,実際はほかの女の子たちともうまく……というか,機嫌を損ねないように立ち回らないといけないのが意外で面白かったな。
女の子たちの名前の横に爆弾マークがつくと,すごく焦るね。
筆者:
そう!! それが「ときメモ」の特徴のひとつだし,大事な部分だよね。
ゲームをエキサイティングにするそういったシステムについて,今でも「爆弾処理ゲーム」みたいにネタっぽく言ってしまったり,コメディ的な要素と捉われてたりする部分はあるんだけれど,今になってみると,これはわりと人間関係をリアルに描いたものだったんだなって思うんだ。
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娘R:
どういうこと?
筆者:
例えば,Rのことを好きで優しく接してくるクラスメイトが,自分の友だちとかほかのクラスメイトのことをすごく雑に扱っていたら,幻滅しない?
だから,爆弾が爆発するとほかの子たちからの好感度も下がるというシステムは,人の心の動きとして自然かもと思ったんだ。
娘R:
それはそうかも。私も,自分には優しくしてくれても,ほかの人を粗末に扱うような人に良い感情は持てないな。
筆者:
だよね,「私にだけ一途」っていうのは,「ほかの人をないがしろにしてほしい」っていうこととイコールじゃないし。
でも,好感度のバランスをとるためにとれる効果的な方法が「複数の女の子とそれなりに一緒に帰る」「デートする」ことだったりするから,そこは全然現実と違う。そのシステム的な割り切りとのギャップが,逆にクスッと笑えるよね。
娘R:
現実で,女の子の好感度を調節するためにいろんな子とデートをしまくっていたら,それこそとんでもないやつだもんね(笑)。
そこは,ゲームならではの面白い部分だね。
夫S:
(ふたりのトークについていけず)お,おう。
筆者:
ごめんごめん,ふたりで盛り上がっちゃって。では話を戻して。Rがプレイしてみての印象は?
娘R:
自分のステータスを上げるためのコマンドを選択してパラメータを上げていくようなシミュレーションゲームをプレイしたのが初めてだったから新鮮だった。
さっきも話していたことだけど,全員の女の子とそこそこ仲良くしたり,ときには振り向いてほしい子の好感度が一番高くなるように,ほかの子のお誘いを断ったり,あえてデートしてみたり,っていう計算が必要だもんね。
筆者:
そこがゲームの面白さや難しさに紐づいているのは,面白いところだよね。
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【レトロな魅力?】
筆者:
さっき,Rが「グラフィックスがレトロでカワイイ」って言っていたよね。
娘世代が「ときメモ」に時代を感じたポイントは,具体的にどこなのかが気になるな。“当時を知っている新入生”であるSも,私とはまた違う感覚があるんだろうなと。
娘R:
グラフィックスもそうだけど,「ときめきメモリアル」というタイトルにも“平成”を感じるかも。
筆者:
どういうこと?
娘R:
“ときめき”とか“メモリアル”とか,単語自体にレトロなかわいさを感じる。
それから,ヒロインたちの喋りかたもかな。全体的にみんなおっとりしてる。私の好きな朝日奈夕子ちゃんは活発系女子だし,喋りかたにはギャルっぽさもあるけど,言葉を崩しすぎず,どことなく大人っぽいなと思う。
筆者:
えーっ,そう感じるんだ! 少なくとも発売当時は,朝日奈さんってすごく砕けた喋りかたをする子だと私は思っていたんだよ。
だけど,確かに今の高校生はああいう喋りかたはしないかも。セリフの言い回しに時代が出ているってことか。言葉ってどんどん変化していくもんね。
娘R:
30年前って,「ナウい」とか言ってた時代?
筆者:
「ナウい」は,もっと前の時代の流行語だね。朝日奈さんはあの当時の最先端という人ではないけど,それでもやっぱり言ってない。朝日奈さんの「超ラッキー」っていうセリフも,令和の今となっては言われなくなったねえ。
娘R:
ゲームのなかで夕子への誕生日プレゼントに,「ヨーグルトきのこ」っていうのをあげたんだけど,あれは実際にあるものなんでしょ?
実際に流行した健康食品がゲーム内に出てくるっていうのも,当時の雰囲気が味わえて面白い!
筆者:
そう。ケフィアっていう乳飲料が,日本では「ヨーグルトきのこ」って呼ばれて流行ったことがあるの。
あと,ゲームに出てきたプレゼントで,当時流行した時代を感じるものとしては,“全自動ハボキ”もあるねえ。実際の商品名に“全自動”という言葉はついていないけれど。
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娘R:
は,はぼき? 何に使うものなの? 食べ物じゃないよね?
筆者:
“ハボキ”は,はたきとほうきの機能を併せ持ち,掃除機に取り付けることで吸引力も得られるアタッチメントで……。
娘R:
えっ? 平成にそんなものが大流行したの? 便利なものが人気になるのは分かるけれど,ゲームのなかにまで取り上げられる流行になるのはなんだか不思議だし面白いね。
筆者:
細かい部分の掃除に便利だっていうことで,少なくとも私の実家にはあったね。
通販番組でも売っていて,子どものころはそのCMの真似を良くしたもんだよ。確かに今思うと,不思議な流行だったかも。
ヨーグルトきのこやハボキみたいな話は,ときメモ世代も「久しぶりにプレイするまで忘れてた!」って人も多いと思う。懐かしかったりいろいろな記憶を呼び戻すものになっているんじゃないかな。そういう時代も知るSは,プレイして見て何を感じた?
夫S:
女の子と連絡を取るときに,家の電話にかけるところ。それ以外のコミュニケーション手段がないっていうことに時代を感じるね。学校の帰り道に一緒でも,別れちゃったら家に電話するしかないっていう時代の。
筆者:
家電にかけることで,彼女の家での顔がちらっと見えることもあるから,そこは携帯電話が普及した今の時代にはないエモーショナルなポイントかも。
Sが攻略した鏡さんはとくに学校での姿と家での姿にギャップがあって,そこも魅力だよね。
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夫S:
うんうん。鏡さんのことを「いいな」と思った点のひとつとして,「最初から俺(主人公)のことを好きというわけではない」のがあるな。普通に同じ学校に通っている生徒という,ごく薄い関係性なのがよかった。
筆者:
え,それが“良かった点”なんだ。なぜ……?
夫S:
うん,最初からが俺のことが好きって寄ってくる女の子には,「何か裏があるんじゃないか」って,すごく不安になるから……。
あれくらい,始めはどうでもいいと思われていたほうが。
筆者:
そうなんだ……(過去に何かあったのだろうか?)。
主人公に対するデフォルトの好感度は,ヒロインによって違うよね。お父さんが告白された鏡さんでいうと,彼女が主人公に初めて会ったときの印象は,「それなりに小綺麗な男の子」(※容姿パラメータを上げないと鏡さんは出現しないため)くらいで,とくに好感を持っているわけではなさそうだもんね。
夫S:
そうそう。出会うときのテンションとしては,自分としてはそれくらいのほうが自然で受け入れやすいと思ってる。
筆者:
なるほど。制作側は攻略難度みたいなところでキャラ別でばらけさせたのかもしれないけど,それが人の出会いや人間関係の自然さみたいな形になっている。それについて考えたことがなかったけど,その部分にこそ良さを見出しているんだ。
人との関係の描きかたみたいな話なんだけど,放課後に一緒に帰ろうと誘ったときに,藤崎詩織ちゃんが言う名セリフ,「一緒に帰って友達に噂されると恥ずかしいし」ってあるでしょ。30年前,私の周りではあの言葉に傷ついてしまう人がそれなりにいて,「詩織の言いかた,ちょっとキツい」って言われるようなこともあったの。
娘R:
そうなんだ。私は詩織ちゃんを冷たい女の子だと思ったことはないなあ。無視とかしないで,理由をちゃんと説明して断っているから,むしろちゃんとしている人だと思うなあ。
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筆者:
ああー,すごく嫌われているときはしっかりと無視されるしね(笑)。
その発想,私が学生だったころにはあまりなかったな。実は私も,「幼馴染なのにつれなさすぎない?」と思っていた。でも,よく考えてみたら多感な年ごろだし,ただでさえ詩織は人の視線を集めてしまうタイプだから,そうも言いたくなるかも。それをあやふやにせず,ちゃんと説明しているのは確かに誠実だね。
この「一緒に帰って〜」のセリフをどう捉えるかは,もしかしたら時代や世代,年齢を重ねることとかで変わる部分なのかも。ティーンの時期って傷つきやすくてちょっときつく感じてしまうかもしれないけど,大人になって今聞くと気にならないどころか,素直に「そうか,異性とふたりで帰宅は恥ずかしいのね,なら仕方ない」って思える。
一緒に帰ろうという誘いは断るのに,ほかの女の子と遊んでいると機嫌を損ねちゃうところも寄り添って考えられるというか。「なんでもそつなくこなすように見える詩織であっても,ままならない青春を送っているんだよね」と,愛しい気持ちになるなあ。
【あなたの推しヒロインは誰? どんなところが好き?】
筆者:
じゃ次に,印象に残っている……というか,推しヒロインはいる?
夫S:
やっぱり鏡さんだね。さっきも言ったけれど,最初は全然俺のことを好きじゃないのがいい。
俺を好きになってくると,すごくデレてくるところもいいし,あとルックスが大人っぽいところかな。お姉さんっぽい人って素敵だと思うし……。
娘R:
ふうん,へえ。お父さんはそういう感じがいいんだね……。
夫S:
うう,娘の前でこういう話は恥ずかしい。
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筆者:
鏡さん,主人公と同い年だけど大人っぽいよね。
私服がボディコン……ちょっと上の世代のお姉さんたちが着ていたようなタイトなルックだったりするけど,それが背伸びに見えず,着こなしているのがかっこいい。じゃあ,Rは?
娘R:
そりゃあもちろん,夕子だよっ!
夕子は一番友だちになりたいタイプ。あんまり過去のことをネチネチ言わなさそうだし,いつも元気で感じが良いなって思う。ビジュアルも可愛くて好みだし。
まあちょっと素直で自由すぎるところもあるけど,言葉に毒がなくて,憎めない愛嬌があるんだよねえ。あと季節ごとに変わるファッションもレトロかわいい。まあ,夕子はどんな服着ててもかわいいけどね。
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筆者:
アツく語りますな〜。彼女たちとの印象的な思い出は?
娘R:
夕子の好感度が上がって,頬を赤らめた瞬間。それから,体育祭でのフォークダンスのとき,夕子と踊ったのはドキドキしたな。
そういえば,フォークダンスを体育祭でやるのもちょっとレトロな感じだよね。小学校の授業では「マイムマイム」とかのフォークダンスをしたことがあるけど,運動会や体育祭では1回もなかったから,創作のなかでしか知らないイベント,って感じ。
筆者:
よく思い返してみたら,Rの運動会には一回もフォークダンスのプログラムがなかったね。ちょっと調べてみたら,今でも運動会でのフォークダンスを実施しているところは,30年前と比べてかなり少なくなっているみたい。
娘R:
うーん,男子とマンツーマンで手をつないで踊るって,少し気まずいなあ。
筆者:
そうなんだ。私にとっては,ほとんど印象に残っていないイベントだったから,気まずさすら感じなかったかも。「ときメモ」内でのフォークダンスのほうが良く覚えている。
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夫S:
フォークダンスは小学生以来なかった。学校は男子だけだったしな……。
俺が印象的だったのは,鏡さんの成績があまり良くないっていうところ。ちょっと意外だった。
筆者:
一点集中型で,美の追求に全力。テストの成績は全然気にしていないよね。
夫S:
うん,それが意外で面白かった。ちょっと癖があって,完成されたキャラ付けの流れからちょっと外れている感じがして。
待ち合わせのタイミングが鏡さんと合わなくても,全然怒らなくなったことに気付いたときは,ドキッとしたな。関係が深まるまでは,ちゃんと時間通りに来ていてもなんだかんだと文句を言われるんだけど,あるときから,なんだかしおらしくなってしまって。
筆者:
完璧な“そういう系統”のキャラじゃないところに人間臭さがあるよね。
私の好きな紐緒結奈さんは,文化祭で人体を使った危ない物質転送実験ショーをするとか,またほかのヒロインたちとは違った方向にぶっ飛んだ女の子なんだけど,そういう子もいれば,堅実で一緒にいると安心できる性格の女の子もいるし,控えめで自己主張が苦手な子もいるんだよね。
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もちろん,ゲームのキャラクターとしてそれぞれの個性が設定されていると思うんだけど,デフォルメされた個性のなかにも血が通っているというか。出てくる小物とか,ふとした声色とか,演出の細部に気がつかわれていることも,そういうことを感じるひとつのエッセンスになっているのかも。
ふたりと会話していたらいろいろ実感できたんだけど,ほかにプレイしていて「妙にリアルだなと思ったところ」はある?
娘R:
みんなとの人間関係を保たないとだんだんギクシャクしてくるところ。そういう意図はないけど,人間関係を保つなかで思わぬ人から好かれたり,あまりうまくいっていないと悪いうわさが流れたりするでしょ。
筆者:
ゲーム内では,「女の子を傷付けた」というくらいで,噂の具体的な内容を知ることはできないけれど,何て言われているんだろう。知りたくないような,でも知りたいような……。
娘R:
え,私は全然知りたくない(笑)。
筆者:
噂といえば,ほかのヒロインとも交流していると見えてくるんだけど,好感度の変動の度合いは,ヒロインによるんだよね。
何かあったらすぐ好感度が上下する子もいれば,そこにはわりとおおらかな子もいる。好きになりやすく嫌いになりにくいとか。そこにも個性が出ているんだよね。
好きだから外野の言葉はある程度気にならないのか,主人公の立ち回りの不器用さも含めて好きなのか……,それは本人に聞くことができないから分からないけれど。
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夫S:
たしかに,誰かの行動にどう思うかって,人によって違うもんね。
筆者:
パラメータの増減でひとの個性を表せる。感じさせてくるって,あらためて「ときメモ」は面白いし,すごいなあって思う。
【プレイを終えて……】
筆者:
さて,最後に……。「ときメモ」のプレイ体験はどうだった?
娘R:
高校生活3年間のなかで,ヒロインたちの好感度を維持するのは難しいね。
私が生まれるよりもだいぶ前のゲームだからもちろん私の感覚とは結構違う部分もあって,でもそれがかえって新鮮さや面白さを感じた部分になっていたかな。
プレイするとヒロインたちに強く思い入れができるし,お母さんがライブにいくほど熱狂する理由も分かった。私は,朝日奈夕子ちゃんが現実にいたら,絶対友だちになりたいって思った!
夫S:
3年間の高校生活を通じて女の子と知り合って,うまくいけば最後に告白されて。そこまでの苦労が実を結ぶころには,推しになっているんだと思う。いろいろな経験を,長らく彼女と一緒にしてきたっていうのがあるから。
学校帰りに女の子が待っていてくれて,「一緒に帰ろう」って言ってくれることには,大きなロマンを感じたね。30年前に「ときメモ」を知っていたら,夢中になりすぎて勉強がおろそかになったかもしれない。俺は今鏡さんと出会ってよかったのかも……(笑)。
今となっては,はるか昔となった高校生活のことを思い出すきっかけにもなったな。
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筆者:
このゲームにおいて,恋愛はもちろん大きな要素なんだけど,それ以上に“高校生活”っていうものが大きいと思うんだよね。そのなかで恋愛が深く関わってくる。
だから,「青春時代をどう過ごすのか」っていうことが,このゲームの大きなテーマだと感じるんだ。Sは自分の高校生活を思い返してみて,なにか思うことはある?
夫S:
懐かしさがあるよね。定期テストに向けての対策,文化祭,体育祭,それから,それまで勉強してきた実績と実力から進路を決めることとかも。実際の高校生活にも,いろんなイベントがあったから。
筆者:
廊下でいきなり,すごく大人っぽい女の子がぶつかってきて知り合って,いつしか恋心が芽生えたとかは?
夫S:
うん,それは俺の高校生活にまったくなかった部分だね……。
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娘R:
あはは。私は,「ときメモ」で貴重な体験ができたと思ってる。
「もし別の学校に通っていたらこんな生活もあったのかな」って,楽しく想像できた。平成時代の,共学に行った人の学校生活を覗いているような感じでもある。
筆者:
私も,もしこんな学校で,素敵な女の子たちと出会っていたら……って楽しい学校生活を思い浮かべて遊んでいたなあ。
平成時代の高校が,きらめき高校みたいな学生生活を送るような場所だったかっていうと,それはまた違うと思うけど,確かに時代の空気感や流行,社会のありかたがそこに感じられるんだよね。
ふたりとも,鏡さんや朝日奈さんを追いかけているときには出てこない,または深くかかわらなかったヒロインたちがいるでしょ。そのなかで気になっている人はいる?
娘R:
さっきからお父さんの話を聞いていて,鏡さんは気になってる。少しデートしたこともあるしね。
夫S:
古式さんかな。あのスローな喋りかたが,なんだか妙に気になる。
娘R:
藤崎詩織ちゃんと,伊集院レイさんも気になるな〜。
筆者:
どなたも,知るほどに味わいの出てくる方々ですよ。私は,大人になってからあらためて早乙女優美ちゃんの良さを感じたかも。
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娘R:
好雄の妹だよね? 可愛いよね,妹! デートしたことあるけれど,とてもいい子だった!
筆者:
だよね〜! 今回名前の出なかったヒロインたちも,それぞれに素敵な子たちだから,ぜひ出会ってみてほしいな。本当はひとりひとり詳しく紹介したいけど,自分で出会うのが一番だからね。
それでは,今回のきらめき高校新入生オリエンテーションは,これにて終了です。ふたりともありがとう!
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オリエンテーションを終えて
初めて「ときメモ」を遊ぶ人の新鮮な感想を聞きたいという在校生(筆者)の願いから始まったこの企画。令和の現役学生とのジェネレーションギャップは少なからず感じるだろうとは思っていたが,実際にプレイする様子を見て,そして話を聞いているうちに,30年前の学生だった世代から見ても“懐かしさ”が随所に息づいていることに気づかされた。
それは決して「古臭い」という意味ではない,“新しい懐かしさ”だった。
時代の空気や暮らし,そして今なお色褪せないヒロインたちの魅力を楽しむ新入生たちを見ていると,ふたりがきらめきに満ちた高校生活を心から味わっているのが伝わってきた。その姿を見て,世代を越えても通じる“きらめき”があることを感じ,あらためて「今も体験する価値のあるゲームだ」と思えた。
きらめき高校は,そんなふうに誰の中にもある場所なのかもしれない。もしその扉の前で立ち止まっている人がいるなら,思いきって開けてみてほしい。チャイムが鳴るそのとき,きっとあなたの新しい青春が始まっている。
- 関連タイトル:
ときめきメモリアル 〜forever with you〜 エモーショナル
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キーワード
- Nintendo Switch:ときめきメモリアル 〜forever with you〜 エモーショナル
- Nintendo Switch
- シミュレーション
- CERO B:12歳以上対象
- KONAMI
- KONAMI
- コナミデジタルエンタテインメント
- プレイ人数:1人
- 恋愛
- 企画記事
- ライター:内藤ハサミ
(C)Konami Digital Entertainment
Nintendo Switchのロゴ・Nintendo Switchは任天堂の商標です。





















































