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「GeForce RTX 5090」のダイサイズは約768平方mm? 搭載カードが多数披露されたNVIDIAブースをチェック
ということで,本稿では,展示物の写真を中心にレポートしていきたい。
各社からリリース予定のGeForce RTX 50シリーズ
ブース内で,とくに人だかりが多かったのは,GeForce RTX 50搭載製品の実機展示コーナーだ。展示コーナーでは,ASUSTeK ComputerやColorful Technology,Gainward,Galaxy Microsystems,GIGA-BYTE TECHNOLOGY,InnoVISION Multimedia,MSI,Palit Microsystems,PNY Technologies,ZOTAC Technologyといったメーカーから,GeForce RTX 50搭載のグラフィックスカードが披露されていた。
各社の製品を見たところ,発表となったGPUラインナップでは下位に当たる「GeForce RTX 5070」は,搭載カードにはコンパクトな製品もあり,そうした製品であれば,コンパクトなPCケースへの組み込みも問題なさそうだ。それに対して,「GeForce RTX 5070 Ti」以上を搭載するカードは,かなりボディが大きくなり,PCケースの内径寸法をチェックしてから製品を選ぶ必要があるな,という印象をもった。
GeForce RTX 5070は,下位GPUコアの「GB205」を,それより1ランク上のGeForce RTX 5070 Tiは,「GeForce RTX 5080」と共通のコア「GB203」を採用するためか,カードの形状とサイズに大きな違いがあるようだ。
GeForce RTX 5080や「GeForce RTX 5090」になると,どのメーカーの製品も,大直径ファンを3基並べた大型カードが目立つ。それこそ,NVIDIAのリファレンスデザインモデルともいえる「Founders Edition」よりも大きな製品が多い。こうしたカードメーカー製の大型カードは,クロックアップモデルが多い傾向にあり,その分,性能は高いと期待できるだろう。
NVIDIA謹製,GeForce RTX 50シリーズのFounders Editionも展示
NVIDIAのリファレンスデザインカードである,GeForce RTX 50シリーズのFounders Editionも出展されていた。とくにGeForce RTX 5090 Founders Editionは,NVIDIA自身も「最新の冷却技術の集約した自信作」とアピールしていただけあり,前世代の「GeForce RTX 4090 Founders Edition」と比べると,随分薄くなったと感じる。
「GeForce RTX 5090 Founders Edition」は,定規を当てた様子を撮影してみた。展示方法の都合で定規の当て方がいまいちだが,参考にはなるだろう。大型ヒートシンクの内部には多数のヒートパイプがあり,冷却用のファンは2基取り付けられていた。
全長約30cmもあるGeForce RTX 5090 Founders Editionだが,GPUとGDDR7メモリを搭載したメイン基板は,パッと見の印象よりもコンパクトなことに驚かされる。逆に言えば,大柄なグラフィックスカードとしてのボディのほとんどが冷却機構ということなのだ。
GeForce RTX 4090こと「AD102」のダイサイズは,約609mm2だったので,この計算が正しいと仮定してGB202のダイサイズ増加率を求めると,約26%程度。GeForce RTX 4090と比べたGeForce RTX 5090のトランジスタ数増加率が約20%だったことを考えると,それなりにリアリティのある数値ではある。
2025年1月17日12時15分頃追記:掲載当初,ダイサイズの数値に間違いがありました。訂正してお詫びいたします。
GeForce RTX 50シリーズの新機能アピール展示
Blackwell世代のGeForce RTX 50シリーズには,これまでになかった新機能が数多く搭載されている。技術的な解説は改めて行うとして,ここでは,それらを紹介していこう。
GeForce RTX 50シリーズでは,レイトレーシング関連の新機能が加わった。そのひとつが「RTX Mega Geometry」だ。
これは,GeForce RTX 40シリーズで実装されたレイトレーシング向け独自拡張技術の「Displaced Micro-Mesh Engine」の進化形とも言うべき機能である。具体的には,レイトレーシングにおけるBVH構造体に,精細度(≒ポリゴン数)の異なる3Dデータ構造を階層構造的に持てるようにするものだ。
定番のゲームグラフィックス技術に,視点からの遠近に応じて,精細度の異なる3Dモデルを適宜入れ替えて活用するジオメトリの「Level Of Detail」(LOD)制御がある。こうしたLOD制御の概念を,BVH構造体に適用したような概念がRTX Mega Geometryだ。
当然,NVIDIAの独自機能なので,「DirectX Raytracing」からは使えないし,既存ゲームでもそのままでは機能しない。この機能を活用するには,「Unreal Engine」のNVIDIA独自拡張版を活用するか,NVIDIA拡張APIを活用する必要がある。
ちなみに,RTX Mega Geometryを開発するきっかけは,「Unreal Engine 5」に搭載されているマイクロポリゴンレベルのジオメトリ制御システム「NANITE」へのレイトレーシング対応だったという。
展示コーナーにいたNVIDIAエンジニアに対して,筆者は,「RTX Mega Geometryを,Mesh Shaderに喰わせることができれば,レイトレーシングと従来のラスタライズ法描画の両方に対してユニバーサルな動的LODシステムが実現できるのではないか?」と質問してみたところ,「技術的な可能性としては,将来,可能になるかもしれない。しかし現在,Mesh Shader側からRTX Mega Geometry構造体を直接参照する手段がない。それが実現できれば,レイトレーシング描画とラスタライズ法の真の融合への最初のステップとなるだろう」という興味深い答えを得られた。楽しみである。
GeForce RTX 50シリーズの発表後,ゲーマーの間では,あまり注目されていないようだが,ゲーム開発者の間で高い関心が寄せられているのが,「Neural Rendering」(ニューラルレンダリング)技術だ。
これまでのプログラマブルシェーダアーキテクチャでは,ジオメトリシェーダやテッセレーション,メッシュシェーダなど,さまざまなジオメトリパイプラインの機能拡張が行われてきた。一方で,ピクセルパイプラインへの機能拡張は,ハイダイナミックレンジレンダリングの導入などはあったものの,DirectX 9世代でピクセルフォーマットに浮動小数点が採用されたこと以外,大きな革新はなかったと言っても過言ではない。
ピクセルパイプラインの範疇を超えた拡張としては,コンピュートシェーダやレイトレーシングといった新技術の導入はあった。だが,ライティングやシェーディングにAIの概念を導入するという発想は,かなり斬新だ。
ゲームグラフィックス業界がニューラルレンダリング技術への関心を強めたのは,2019年前後くらいからだ。当時は,間接照明をAI支援で行うようなテーマがそれなりに人気があったように思う(関連リンク)。ただ,プログラマブルシェーダ技術の標準仕様に組み込むとなると,「だれがどうシステム構築を行うのか」というのが問題となり,取り組みが進んでいなかった。しかしここにきて,業界のリーダーであるNVIDIAが提唱するのであれば,業界もおおむね納得,ということなのだろう。
ちなみに,DirectXを提供しているMicrosoftも,GeForce RTX 50シリーズ発表の直後に,ニューラルレンダリング技術への対応について,前向きな姿勢を表明している(関連リンク)。
ということで,NVIDIAブースでも,ニューラルレンダリング系の概念的なデモが行われていた。
NVIDIAは,基調講演でも披露したニューラルレンダリング技術のデモムービーと同じものを,NVIDIA公式YouTubeチャンネルで公開している。未見の人は,ぜひ見てほしい。
GeForce NOWがSteam Deck,Meta Quest 3/3s,Apple Vision Pro対応へ
さりげなく注目を集めていたのが,NVIDIAのクラウドGPUソリューション「GeForce NOW」の展示コーナーだ。
最近のGeForce NOWでは,GPUサーバー側のGPUが「GeForce RTX 4080」となっており,ゲームを常にサーバー側GPUの性能上限値で実行することで,ユーザー側端末が何であっても,操作の遅延を最小限にする仕組みを実現している。
つまり,ユーザー端末側でのゲーム操作は,映像描画サイクルとは非同期に,最速でGPUサーバーに送られる。GPU側では,ゲームの処理を高いサイクルで実行しているので,届いたばかりの操作をすぐにゲーム処理に反映して,最短で映像を描画して端末に伝送できるのだ。
この仕組みでは,せっかく描画しても表示されないフレームが無数に発生するが,そこはお構いなし。描画が完了した最新フレームだけを端末に伝送,表示できるので,クラウドゲーミングで常に問題となってきた遅延を,ほぼネットの通信遅延時間まで収束できるというのが,最新のGeForce NOWにおける低遅延化メカニズムである。ちなみに,似たようなことは,リモートデスクトップアプリ「Parsec」でも使っている。
筆者は,Steam Deckで「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」をプレイしたが,驚くほど低遅延でプレイできることに感激した。筆者の好む格闘ゲームのプレイはともかく,普通のアクションゲームであれば,問題なくプレイできると思う。遅延は,体感で60fpsの2〜3フレーム遅延くらいか。ちなみに,筆者の体験したデモでは,ユーザー側端末の位置はラスベガスで,GeForce NOWサーバーがカリフォルニアであった。
NVIDIAのCES 20225特設Webページ
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