
レビュー
クロックアップ版RTX 5070は,RTX 4080超えを達成できるのか
Palit GeForce RTX 5070 GamingPro OC
NVIDIAの新型GPU「GeForce RTX 5070」(以下,RTX 5070)は,性能面で「GeForce RTX 4070 SUPER」を超える場面が多く,超解像&フレーム生成技術「DLSS 4」の導入やレイトレーシング性能の向上をはたしていた。しかし,新世代のGPUとしてのインパクトは,やや物足りなかったのも事実だ。
では,RTX 5070を採用して,動作クロックを引き上げたクロックアップモデルはどのような評価になるのだろうか。今回は,Palit Microsystems(以下,Palit)の「GeForce RTX 5070 GamingPro OC」(以下,Palit 5070 OC)を使用して,RTX 5070の可能性を確かめてみたい。
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ブーストクロックを60MHz引き上げたクロックアップカード
RTX 5070については,掲載済みのレビュー記事を参照してもらうとして,早速,Palit 5070 OCの仕様について紹介していこう。
まず,Palit 5070 OCの動作クロック設定だが,ベースクロックは2325MHzで,リファレンス仕様どおりだが,ブーストクロックが2572MHzとリファレンスから60MHz引き上げられている。
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さらにPalit 5070 OCは,「PERFORMANCE」と「SILENT」という2つのVBIOSを搭載している。工場出荷時設定はPERFORMANCEで,カード裏面にあるディップスイッチでSILENTに切り替わる仕組みだ。先述の動作クロックは,PERFORMANCEでのもので,SILENTでは動作クロックがリファレンス仕様になるので,ブーストクロックは2512MHzになる。
なお,どちらのVBIOSでもメモリクロックは28GHz相当で,リファレンスと同じである。
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Palit独自の設定ツールである「ThunderMaster」(Version 4.17)を使用すると,GPUクロックを1MHz刻みで,−1000〜+1000MHzの範囲で変更できるほか,メモリクロックも2MHz相当刻みで−2000〜+6000MHz相当(※ツール表記は1MHz刻みで−1000〜+3000MHz)に変更可能だ。
もちろん,GPUの電圧設定も変更可能で,現在の値に対する%表記(※100%なら2倍)で,1%刻みで0〜100%にまで増やせる。
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TurboFan 4.0仕様の3連ファンを搭載で,カード長は330mmとかなり大きめ
Palit 5070 OCのカードそのものについて見ていこう。
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外観は黒一色だが,側面の「GEFORCE RTX」ロゴは,カラーLEDイルミネーションが組み込まれていて,動作中は光る。カード長は実測で約330mmで,RTX 5070 FEが約243mmだったのと比べると,90mmくらい長い。
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ただ,RTX 5070 FEと同様に,基板自体は約175mmと短く,カード後方にGPUクーラーが大きくはみ出す格好だ。
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マザーボードに装着すると,ブラケットから垂直方向に約23mmはみ出すくらい背が高い。全体的なサイズ感はかなり大きめだ。
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実測重量は約1533gで,約1106gだったRTX 5070 FEと比べると,約427gも重くなっている。カードを支えるホルダーも,しっかりした物を用意したい。
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GPUクーラーは3スロット占有タイプで,90mm径相当のファンを3基搭載している。これらのファンは「TurboFan 4.0」と呼ばれるもので,ブレードの端が折れ曲がっている点が最大の特徴だ。
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GPUの負荷が低い,いわゆるアイドル時には,ファンの回転を停止する「0-dBテクニック」という機能も用意ある。
GPUクーラーには5本のヒートパイプが用いられているようで,Palitによると,これらのヒートパイプは溝構造と焼結パウダー構造という2つの技術を用いているとのこと。また,放熱フィンには30度の角度を付けた「Air Deflector」構造を採用しており,その名のとおり気流を誘導することで,静音性とエアフローは,同社の従来モデルより16%改善しているという。
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映像出力インタフェースは,DisplayPort 2.1b×3と,HDMI 2.1b×1の4系統を装備しており,ごく普通の構成だ。
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RTX 5070 FEからの性能向上をチェック。オーバークロック状態でのテストも実施
それではテスト環境に話を移そう。
今回,比較対象にはRTX 5070 FEと「GeForce RTX 4080」(以下,RTX 4080)を用意。Palit 5070 OCがクロックアップによって,RTX 5070 FEからどれだけ性能が伸びているのかを確認するとともに,RTX 4080との差を埋めることができたのかを見てみるわけだ。
なお,Palit 5070 OCは,工場出荷時設定のVBIOS設定であるPERFORMACEでテストしている。
さらに今回は,Palit 5070 OCのオーバークロックも試してみた。Palitによると,ThunderMasterからGPUクロックを+500MHz,メモリクロックを+2000MHzに変更しても動作したとのこと。
しかし,実際にその設定を試してみると,4Gamerのベンチマークレギュレーション30で規定する「3DMark」のテストは完走したのだが,「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下,FFXIV黄金のレガシー ベンチ)が,エラーで落ちてしまった。GPUのコア電圧を+100%,つまり倍に設定してみたが,症状は変わらない。
そこで,GPUクロックを+400MHzに下げると,レギュレーションで規定するテストのすべてが無事に完走した。
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なお,消費電力上限を120%まで高めてもスコアの向上は見られなかったので,今回のテストでは,消費電力設定は100%のまま変えていない。
使用したグラフィックスドライバは「GeForce 572.70 Driver」で,これはテスト時点での最新版だ。それ以外のテスト環境は,表のとおり。
CPU | Core i9-14900K(P-core 定格クロック3.2GHz, |
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マザーボード | ASRock Z790 Steel Legend Wi-Fi |
メインメモリ | Corsair VENGEANCE RGB DDR5 |
グラフィックスカード | Palit Microsystems Palit GeForce RTX 5070 GamingPro OC |
GeForce RTX 5070 Founders Edition |
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GeForce RTX 4080 Founders Edition |
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ストレージ | CFD CDDS-M2M1TEG1VNE (NVMe,1TB) |
電源ユニット | CoolerMaster V1200 Platinum(定格1200W) |
OS | Windows 11 Pro 24H2 |
チップセットドライバ | Intel チップセットINFユーティリティ |
グラフィックスドライバ | GeForce |
テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション30に準拠。ただ,次期レギュレーションを先取りする形で,「バイオハザード RE:4」に代えて「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」(以下,モンハンワイルズ ベンチ)を用意。「Call of Duty: Modern Warfare III」も,新しい「Call of Duty: Black Ops 6」(以下,CoD: BO6)に変更している。
さらに「Fortnite」も,使用するグラフィックスAPIをDirectX 11からDirectX 12へと変えている。これらのテスト方法は以下のとおり。
●CoD: BO6
「極限プリセット」を適用したうえで,「アップスケーリング/シャープニング」を「NVIDIA DLSS」に指定する。「NVIDIA DLSSフレーム生成」は,オフのまま。
この状態で,ゲーム付属のベンチマークモードを実行して,終了後に表示される平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートを結果として採用する。
●モンハンワイルズ ベンチ
「ウルトラプリセット」を指定。フレーム生成は「OFF」のままにする一方で,レイトレーシングを「高」に変更している。また,同ベンチではスコアと平均フレームレートしか得られないため,別途「CapFrameX」(Version 1.7.4)を併用して,ベンチマーク実行中の1パーセンタイルフレームレートを計測している。
●Fortnite
グラフィックスAPIをDirectX 12に変更。それ以外の設定やテスト内容はベンチマークレギュレーション30と同じ。
さらに,DLSS 4性能をチェックするため,3DMarkの「NVIDIA DLSS feature test」と,「Cyberpunk 2077」を追加している。
NVIDIA DLSS feature testでは,「Super Resolution」で「Quality」を指定。そのうえで,DLSSバージョンを「DLSS 4」または「DLSS 3」に設定して,「Frame generation」の項目を「2x/3x/4x」に変更している。
Cyberpunk 2077は,描画負荷が最も大きい「Ray Tracing: Overdrive」プリセットを選択したうえで,「DLSS Super Resolution」を「Quality」に指定。DLSS Multi Frame Generationの設定を適宜変更しながら,ゲームに用意されたベンチマークモードを実行している。
なお,ゲームの解像度は,いつもどおり3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択している。
Palit 5070 OCの性能向上は3〜5%程度
オーバークロックで1割以上もスコアが高くなる場面も
それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。Fire Strikeの総合スコアをまとめたものがグラフ1だ。
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Palit 5070 OCは,RTX 5070 FEから3〜6%程度スコアを伸ばしており,クロックアップの効果がハッキリと確認できる。
さらにオーバークロックしたPalit 5070 OC+400MHzは,Palit 5070 OCから最大で約8%スコアが向上しており,RTX 5070 FEとの差は最大15%まで広がった。RTX 4080との差も4〜11%程度まで縮めており,オーバークロックの効果はなかなか大きい。
DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果となるグラフ2を見てみよう。
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Palit 5070 OCとRTX 5070 FEとの差は4〜5%程度で,クロックアップの効果が現れている。また,オーバークロックではスコアが6〜7%伸び,RTX 5070 FEとの差は11〜12%程度まで開いた。なお,RTX 4080との差は14〜16%程度で,Fire Strikeほどは詰め切れていない。
Time Spyより新しいDirectX 12テストである「Steel Nomad」でも,オーバークロックの効果は大きい(グラフ3)。
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Palit 5070 OCは,RTX 5070 FEから約2%ほどスコアを伸ばし,オーバークロックを行うと,さらに約8%ほど向上している。結果的に,Palit 5070 OC+400MHzは,RTX 5070 FEを約10%ほど引き離しているが,RTX 4080との差は約23%と大きく,まったく届いていない。
グラフ4は「Speed Way」の結果だが,Steel Nomadと似た傾向を示している。
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Palit 5070 OCとRTX 5070 FEとの差は約5%ほどで,オーバークロックを行うと,その差を約13%まで広げている。RTX 4080との差は約16%で,Steel Nomadよりは差を詰めている。
Port Royalの結果がグラフ5だが,傾向はこれまでと同じだ。
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Palit 5070 OCはRTX 5070 FEから約6%ほどスコアが上昇しており,オーバークロック時は,差が約15%にまで広がった。RTX 4080との差は約18%と詰め切れていないものの,クロックアップやオーバークロックによって,リアルタイムレイトレーシング性能が向上すると理解してよさそうだ。
グラフ6,7は,NVIDIA DLSS feature testの結果だ。なお,RTX 4080は,DLSS 4に対応しないので,DLSS 4のスコアはない。
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Multi Frame Generationにより,どれだけフレームレートが上昇したかを計算すると,Palit 5070 OCは「2x」で2.6〜3.2倍程度となり,RTX 5070 FEの結果とほとんど同じだ。同様に,「3x」で3.7〜4.6倍程度,「4x」も4.6〜5.9倍程度なので,Palit 5070 OCとRTX 5070 FEでMulti Frame Generationの効きはほぼ変わらないと言えよう。
また,Palit 5070 OC+400MHzも,RTX 5070 FEと同程度しか伸びておらず,Multi Frame Generationの効果にGPUクロックはあまり影響を及ぼさないようだ。
実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ8〜10は,CoD:BO6の結果となる。
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RTX 5070 FEと比べたときの,Palit 5070 OCの平均フレームレートは最大で約2%増と,それほど大きくない。ただ,Palit 5070 OC+400MHzの平均フレームレートは,オーバークロック前から3〜6%程度上昇しており,RTX 5070 FEを4〜6%程度引き離した。
とくに1パーセンタイルフレームレートで,Palit 5070 OC+400MHzはRTX 5070 FEに5〜6%程度の差を付けているあたりは評価できよう。
グラフ11は,モンハンワイルズ ベンチのスコアをまとめたものだ。
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Palit 5070 OCとRTX 5070 FEの差は2〜4%程度だが,Palit 5070 OC+400MHzになると,その差を5〜10%程度まで広げている。さすがにRTX 4080が相手となると,3840×2160ドットでは約20%もの差を付けられてしまうが,2560×1440ドットでは1割弱程度にまで差を詰めた。
カプコンが示す指標では,スコア2万以上で最高評価となる。Palit 5070 OC+400MHzは,3840×2160ドットでも2万にあと一歩のところまで迫っている点は見どころと言えよう。
グラフ12〜14は,モンハンワイルズ ベンチにおける平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートの結果となる。
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平均フレームレートは,スコアを踏襲したものだ。Palit 5070 OC+400MHzは,RTX 5070 FEと比べて3840×2160ドットで約8%ほど高く,60fps弱まで達している点は評価できる。
Fortniteの結果をグラフ15〜17に示す。
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Palit 5070 OCの平均フレームレートは,RTX 500 FEに2〜8%程度の差を付け,Palit 5070 OC+400MHzになると,その差を8〜14%程度まで広げている。
Palit 5070 OCの1パーセンタイルフレームレートも,RTX 5070 FEから3〜7%程度上昇し,Palit 5070 OC+400MHzはそこから4〜6%程度向上した。Fortniteにおいては,クロックアップやオーバークロックの効果は大きいと言えそうだ。
グラフ18〜20が「Starfield」の結果だ。
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Palit 5070 OCの平均フレームレートは,RTX 5070 FEを約2%前後しか離せていない。しかしPalit 5070 OC+400MHzになると,RTX 5070 FEとの差は約7%前後と,オーバークロックの恩恵がハッキリと見て取れる。Palit 5070 OC+400MHzの1パーセンタイルフレームレートは,RTX 5070 FEに6〜7%程度の差を付け,オーバークロックがゲーム体験の向上に奏功している。
グラフ21は,FFXIV黄金のレガシー ベンチの総合スコアをまとめたものだ。
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スクウェア・エニックスが示す指標では,スコアが1万5000以上で最高評価としているが,Palit 5070 OCはもとよりPalit 5070 OC+400MHzでも,3840×2160ドットではそれに届いていない。ただ,2560×1440ドットでは大きく上回り,Palit 5070 OCはRTX 5070 FEに3〜4%程度の差を付けている点は,評価できる。
Palit 5070 OC+400MHzにいたっては,RTX 5070 FEとの差が7〜13%程度まで広がり,オーバークロックの恩恵は大きい。
FFXIV黄金のレガシー ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ22〜24だ。
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平均フレームレートは,総合スコアを踏襲したものだ。最小フレームレートは,CPU性能の影響が色濃く,あまり差が付いていない。その中でも,Palit 5070 OC+400MHzは,3840×2160ドットでこそ総合スコアは最高評価に届かなかったものの,60fpsに迫っていた点は評価できよう。
グラフ25〜27には,「F1 24」の結果をまとめている。
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Palit 5070 OCの平均フレームレートは,RTX 5070 FEから約3%伸びているほか,Palit 5070 OC+400MHzもそこから4〜5%程度性能を伸ばし,結果としてRTX 5070 FEを7〜8%程度引き離している。さすがに,RTX 4080には太刀打ちできていないものの,クロックアップやオーバークロックの効果がしっかりと表れている。
最小フレームレートでも,RTX 5070 FE比でPalit 5070 OCは約3%,Palit 5070 OC+400MHzで4〜9%程度上昇しており,快適さは向上していると言っていい。
「Cities: Skylines II」の結果が,グラフ28〜30となるが,ここまでと同様に,GPUクロックの向上がいい結果をもたらしている。
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Palit 5070 OCの平均フレームレートは,RTX 5070 FEから2〜4%程度上昇しており,Palit 5070 OC+400MHzはそこからさらに1〜3%程度の性能を底上げしている。
1パーセンタイルフレームレートも,それぞれしっかり向上しているが,ここでは3840×2160ドットの結果に注目してほしい。Palit 5070 OCとRTX 5070 FEの差は,約8%もあり,Palit 5070 OC+400MHzにいたっては,RTX 5070 FEを約18%も引き離している。高解像度でしっかりと性能向上が見られる点は,評価していいだろう。
グラフ31〜33が,Cyberpunk 2077の結果だ。DLSS 4を使用したマルチフレーム生成の効果を確認していくが,文中とグラフ中ともに,DLSS Multi Frame Generationのフレーム生成倍率を,「Palit 5070 OC FG 4x」といった具合に,FGの後ろに数字で示している。
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3DMarkのNVIDIA DLSS feature testと同様に,Multi Frame Generationによる伸び幅を計算していくと,Palit 5070 OCの平均フレームレートは,FG 2xで約1.8倍,FG 3xで2.6〜2.7倍程度,FG 4xで3.3〜3.4倍程度となり,これはRTX 5070 FEの伸び率とほぼ同じだ。
Palit 5070 OC+400MHzでも,FG 2xで約1.8倍,FG 3xで2.5〜2.6倍程度,FG 4xで3.2〜3.4倍程度となった。NVIDIA DLSS feature testと同じく,GPUクロックの引き上げは,Multi Frame Generationの効きにあまり影響を及ぼさないようだ。これは,最小フレームレートについても同じ傾向が見られる。
クロックアップで消費電力は増える? 気になる実際の消費電力を検証
クロックアップモデルは,消費電力が増加する傾向にあるが,はたしてPalit 5070 OCの実際の消費電力はどの程度なのだろうか。Palit 5070 OC+400MHzで,消費電力がどれぐらい増えているかも気になるところだ。
そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみよう。
今回の計測も,3DMarkのTime Spy Extremeにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2の実行中に行った。ただ,PCATは,グラフィックスカードとマザーボードの間にライザーカードを挟んで,PCIe補助電源コネクタだけではなく,PCIe x16スロットの電流も検出する仕組みだ。しかし,ライザーカードを経由するためか,Palit 5070 OC+400MHzでは信号が不安定になるようで,Graphics test 2を完走できなくなってしまった。そのため消費電力のテストでは,残念ながらPalit 5070 OC+400MHzの結果は得られていない。
消費電力の計測結果をグラフ34に示そう。
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グラフを見ると,Palit 5070 OCとRTX 5070 FEの消費電力は,あまり差がないように見える。Palitは,Palit 5070 OCの消費電力を250Wと説明しており,これはRTX 5070の「Total Graphics Power」(以下,TGP)と一致する。
グラフ34の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求め,最大値と合わせてまとめたものがグラフ35となる。
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Palit 5070 OCの中央値は258Wほどで,RTX 5070 FEから4W弱上昇しているだけだ。最大値を見ても,Palit 5070 OCとRTX 5070 FEの差は4W程度しかなく,消費電力はあまり増えていないと言ってよさそうだ。
とはいえ,Palit 5070 OC+400MHzの消費電力が気になるところ。そこで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測した結果から推測してみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
その結果がグラフ36だ。
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Palit 5070 OCとRTX 5070 FEの差は,19〜58W程度とかなり大きい。このテストでは,ピーク値を結果として採用するため,どうしても差が開きがちとなる。それでも看過できない差だ。Palit 5070 OC+400MHzにいたっては,Palit 5070 OCから8〜60W程度も増えてしまい,RTX 5070 FEとの差は36〜80W程度に達している。RTX 4080よりは低いものの,オーバークロックの代償は大きい。
GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっているうえ,それぞれファンの制御方法が違うため,異なる製品を同列に並べての評価には,あまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ37のとおり。
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Palit 5070 OCは,Palit 5070 OC+400MHzも含めて,アイドル時は50℃をほどと若干高め。これは,ファンの回転が停止するためだが,PCケースに組み込むと,ケースファンのエアフローにより温度はもう少し下がるだろう。しかし,高負荷時でも,Palit 5070 OCは70℃を超えていないので,GPUクーラーの冷却性能は優秀だ。さすが,RTX 5070 FEに比べて大型のGPUクーラーを採用しているだけはある。
最後に,騒音計を使って,それぞれの動作音を比較してみたい。今回は,室内の音が41.2dBAの環境で,グラフィックスカードに正対する形で50cm離したところに騒音計を置いて,動作音を計測した。
バラック状態でテストを行っているので,実際にケースに組み込んだ状態よりも動作音は大きくなることを断っておく。なお,アイドル時と高負荷時は,GPU温度を測定した条件と同じだ。結果はグラフ38となる。
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Palit 5070 OCは,高負荷時でも42.8dBAと,なかなか静かだ。とくに,RTX 5070 FEが50dBAに届きそうなのと比べると,Palit 5070 OCの動作音の小ささは顕著である。Palit 5070 OC+400MHzでも,高負荷時は43dBAに留まっており,Palit 5070 OCのGPUクーラーは静音性の面でも優秀だ。
RTX 5070でオーバークロックを試すなら有力な選択肢
以上のテスト結果を踏まえると,Palit 5070 OCのRTX 5070 FEからの伸びは3〜4%といったところ。オーバークロック状態でのテストで見られたように,かなり高いクロックを目指せる点は注目に値する。もちろん,オーバークロックは動作保証範囲外の行為なので,自己責任の範疇で行うことになるが,それでも1割程度の性能向上が見込める点は,かなり魅力的だ。
Palit 5070 OCはまだ日本で発売されていないが,クロックアップしていない姉妹モデル「Palit GeForce RTX 5070 GamingPro」が税込11万8000円で販売中であることを踏まえると,それより若干高くなるだろう。とはいえ,他社のRTX 5070搭載モデルと比べて抑えめで,コストパフォーマンスは高い。
Palit 5070 OCを素のまま使用するのであれば,ゲーム体験が変わるほどの性能向上は望めないが,GPUクーラーの冷却性能と静音性の高さを考えると選択肢としては十分価値があると言っていい。
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PalitのPalit 5070 OC製品情報ページ
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