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「GeForce RTX 5060」でも,DLSS 4を適用すれば4Kでのゲームプレイが可能に? NVIDIAが披露した新技術やAI製品群
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本稿では,会場の展示コーナーやデモルームで取材したもののなかから,4Gamer読者の関心が高そうなものをピックアップして紹介しよう。
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新発売となったGeForce RTX 5060がずらり展示。5060搭載ノートPCも。
まずは,国内発売も始まったデスクトップPC向けGPU「GeForce RTX 5060」(以下,RTX 5060)シリーズの話題から。2025年5月下旬時点での実勢価格が5万円台後半〜6万円台後半といったところ。本稿執筆時点では,グラフィックスメモリ容量は8GBだけで,噂されている16GB版はない。
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ちなみに,ノートPC向けの「GeForce RTX 5060 Laptop GPU」も,グラフィックスメモリ容量は8GBだ。メモリバス帯域幅は,デスクトップPC向けと共通の448GB/sだが,理論性能値は,デスクトップPC向けが約19 TFLOPSなのに対して,ノートPC向けは約10 TFLOPSにまで下がる点には注意してほしい。
ノートPC向けRTX 5060は,デスクトップPC向けRTX 5060よりも,無効化されたCUDA Coreが多く,動作電圧も低くなるため,理論性能値はデスクトップPC向けRTX 5060の半分程度にまで下がってしまう。ゲームの必要,推奨スペックのGPU欄は,GPU名で書かれることが多いものの,大抵はデスクトップPC向けGPUが基準だ。ノートPC向けGPUでどうなるかは未知数なので,注意が必要というわけだ。
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DLSS 4とDLSS 3の違いがよく分かるデモを披露
ゲーム関連の展示では,NVIDIAが誇る超解像技術「DLSS 4」のデモがメインだった。
GeForce RTX 50シリーズでは,DLSSのコアAIモデルを「Transformer」モデルへと刷新した「DLSS 4」に対応したのが大きな見どころだ(関連記事)。GeForce RTX 50シリーズの末っ子であるGeForce RTX 5060でも,当然,DLSS 4は使えるわけで,ブース展示のデモも,そのあたりのアピールに焦点を当てていた。
DLSS 4関連デモは,大きく分けて2種類あった。ひとつめは,DLSSオフとDLSS 4オンの比較だ。
DLSS 4を含むすべてのDLSSは,現在フレームの平面方向と,過去フレームの時間方向に,各ピクセルの動きを追跡しており,足りない解像度情報をそれらから補填するアルゴリズムになっている。
GPUには,ポリゴンを複数のピクセルに分解する固定機能ユニット「ラスタライザ」がある。だが,視点から見てあまりにも小さいポリゴンは,安定的にピクセル化できない場合があるのだ。時間方向のループ中にピクセル化される,されないが生じると,チラついた映像となってしまう。
ブース内のデモでは,DLSS 4を有効化すると,チラツキが劇的に解消される様を示していた。
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2つめは,DLSS 3とDLSS 4の比較だ。
DLSS 4では,AIコアがTransformerモデルへ刷新されたことで,画面内にあるピクセルの固まりを,ひとつの一貫した素材として理解するように処理するので,1ピクセル単位の陰影が,時間方向に安定する振る舞いが見られた。
具体的には,くっきりしているところは,プレイヤーの視点が多少動いても常にくっきりと表示し続ける。また,1ピクセル単位で描かれる紐や金網のような細い線分表現があった場合,その後ろを通り過ぎる動体オブジェクトが,手前の紐や金網との前後関係に矛盾しないように描写するといった具合だ。
簡単に言えば,高精細な陰影を描画し続けるような効果が得られるのだ。DLSSコーナーでは,そのようなデモを行っていた。
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そのほかに,DLSS 3.5で実装された,レイトレーシング法による描画で発生したノイズの低減機構「Ray Reconstruction」についてのデモもあった。
Ray Reconstructionにおいても,DLSS 4でAIコアがTransformerモデルに移行したことで,表現力が格段に上がったそうだ。デモでは,同一品質設定で同一シーンを描画した場合,描画品質が変わってくることをアピールしていた。
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NVIDIAのゲーマー向けAIアシスタント「G-Assist」の最新事情
COMPUTEX 2024でデビューした「Project G-Assist」(以下,G-Assist)を覚えている人は,どれくらいいるだろうか。
G-Assistは,GeForce RTXシリーズでPCゲームをプレイしているユーザーが,ゲーム画面に出ているキャラクターについて質問したり,あるいはアイテム画面を開いて,どんなアイテムを合成できるかを聞いたりできる「ゲームの攻略アシスタント」という触れ込みのソフトウェアだ。
発表当時は,「ゲーム攻略のあり方を変えてしまうのではないか」というくらい衝撃的なものだったのだが,COMPUTEX 2025では,G-Assistの2025年バージョンが公開された。
ブースの担当者によれば,当初は実験的なプロジェクトだったG-Assistは,「Project G-Assist System Assistant」として,本格的な開発プロジェクトに昇格したそうである(関連リンク)。
2024年に示したゲーム攻略アシスタントのようなタイプの開発も続けるが,当面は,もう少し現実なAIアシスタントとして仕上げるためのチューニングを進めていくようだ。
ということで,現在は,ゲーム攻略アシスタントとしてのG-Assistの機能は省かれ,現状は,GeForce RTXユーザー向けの汎用AIアシスタントになったようだ。何をアシストしてくれるのかと言うと,「PCの活用をアシストする」とのこと。ブースでは,新G-Assistの活用デモを細かく実演してくれた。
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新G-Assistへの指示は,音声あるいはキーボードからのテキスト入力となる。初期状態の新G-Assistができるのは,Windowsへの操作指示と,NVIDIA製GPUのコンパニオンアプリ「NVIDIA App」の操作などだ。
たとえば,プレイしたいゲームの名前を指定してそれを起動させたり,プレイ中のゲーム映像のインスタント録画を開始したり,フレームレートやCPU/GPU負荷のオーバーレイ表示をさせるといったことが行える。
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新G-Assistの自然言語対話機能は,ユーザーのPC上でローカルに動作させた約40億パラメータのSmall Language Modelで処理しているそうだ。つまり,ローカルAIモデルで,ユーザーとのやり取りをクラウド側に送って処理することはないので,プライバシーは保護されるという理屈である。
APIが公開されているアプリやWebサービスに対しては,新G-Assist向けのプラグインソフトを利用することで,連係動作させることも可能であるという。
たとえば,「インスタント録画したプレイ映像をDiscordに投稿して」とか,「『これからゲーム配信をするから集まって』とDiscordに投稿して」といった指示も行えるし,「Spotifyのプレイリストを再生して」といったこともできる。
音声コマンドも「Hey G-Assist」でG-Assistへの命令,「Hey Google」ではGoogleへの命令となり,使い分けも行える。
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新G-Assistと,他社のアプリやサービスと連係させるプラグインについては,NVIDIAが公開したカスタム「ChatGPT」に相当する「G-Assist Plug-In Builder」で制作ができるという。いわゆるバイブコーディング(※AIによるプログラミング)でプラグインソフトも作成可能だというからすごい。
G-Assistの今後の進化が楽しみである。
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注目を集めるNVIDIAのAI製品群
AI事業者やエンタープライズ向け製品も軽くチェックしておこう
一部界隈では,「GeForce RTX 5090」並みの大注目を集めているNVIDIAの新製品が「DGX Spark」である(関連記事)。
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そんなアピールポイントに,ハートを撃ち抜かれたAI研究者や各国の大学の研究室は数知れず。
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今や,PC業界の盛り上がりは相当なもので,基板自体がDGX Sparkと完全に共通の互換機も,ASUSTeK ComputerやDell,GIGA-BYTE TECHNOLOGY,HP,Lenovo,MSIなど,名だたるコンピュータ企業から販売が予定されているほどだ。ここまで複数のメーカーから同じ仕様のコンピュータが出るのは珍しい。
とはいえ,今回も,DGX Sparkの分かりやすい実動デモ展示はなかったのは残念だ。
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ちなみに,北米では2025年3月に予約が開始されており,価格は約4000ドル(税別,約57万6000円)だ。日本市場の販路は長らく不明瞭だったが,5月23日にJCSが先行予約を開始したようである。
DGX Sparkの上位ソリューションとなるのが,COMPUTEX 2025に合わせて発表となった「DGX Station」だ(関連リンク)。こちらも実動デモはなかったが,実機とメイン基板は展示されていた。
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DGX Stationは,GPUに「Blackwell Ultra」(B300)を搭載しており,GPUメモリは容量288GB,CPUメモリは容量496GBを搭載するモンスターマシンだ。
発売は2025年後半。価格は不明だが,10万ドル前後になることは確実のようだ。
会場には,チラ見せとして,次世代GPUとして予告されている開発コードネーム「Rubin」世代のGPUを搭載する次世代DGXのラックマウント型システムとして,開発コードネーム「Kyber」が出展されていた。
Kyberのリリース時期は2027年頃を予定している。
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また,複数のGPUを超高速ネットワークで結ぶ次世代スイッチ「Quantum-X Photonics スイッチ」も披露された。こちらは,速度と効率を重視するために,データの送受信は電気信号を光信号に変換してから,光通信で行うのが特徴となっている。
とはいえ,スイッチングプロセッサ自体は自前のバスインタフェースでレーザーの発信ができないので,通信に必要なレーザーを別のレーザー光源モジュールから供給してもらう構造となっている。
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NVIDIAのCOMPUTEX 2025特設Webページ
4Gamer.netのCOMPUTEX 2025特集ページ
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