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ボードゲームなのにアクションが勝負を分ける!“釣りキチ”でも“日誌”でもない,「釣りバカ大将ゲーム」 昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第7回
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印刷2025/09/24 08:00

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ボードゲームなのにアクションが勝負を分ける!“釣りキチ”でも“日誌”でもない,「釣りバカ大将ゲーム」 昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第7回

画像ギャラリー No.016のサムネイル画像 / ボードゲームなのにアクションが勝負を分ける!“釣りキチ”でも“日誌”でもない,「釣りバカ大将ゲーム」 昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第7回

 今回の「昭和・平成レトロボードゲーム大百科」で紹介するゲームは,これまでに登場したものとはちょっとタイプが異なります。一般的に,ボードゲームといえば思考力(戦略)が重視されるものが多いのですが,今回のゲームで勝負を分けるのは,テクニックというか器用さ。言葉を変えればアクション重視という,かなりレアなタイプのボードゲームです。


何でもアリのスポ根釣り漫画を

ボードゲーム化!


 ……という前置きから大きく話は変わりますが,日本で有名な釣り漫画といえば,矢口高雄氏の「釣りキチ三平」や,やまさき十三氏と北見けんいち氏による「釣りバカ日誌」あたりでしょうか。ですが,昭和らしい釣り漫画として,桜多吾作氏の「釣りバカ大将」も忘れてはならないと思います。

 その名前を知らない人もいるでしょうが,「釣りバカ大将」は,1980年から1986年,和暦でいえば昭和50年代後半に「コロコロコミック」などで連載された釣り漫画です。主人公の釣 大将(つりたいしょう)が,さまざまな技“秘釣り”を駆使してライバルたちと釣り勝負を繰り広げるという,スポ根&熱血釣り漫画となっています。

 その秘釣りがすごい。水に浸かった状態から体を高速回転させて竜巻を作り,それに魚を巻き込んで陸に揚げたり,ムササビの翼のようなものを背負って高い崖から海に向かって飛び降り,上昇気流の力を借りて大物を釣り上げたりといった感じです。物理法則や一般常識など無視,命がけで魚を釣る,実に昭和らしい少年漫画だといえるでしょう。

 そんな漫画をボードゲーム化したのが,今回紹介する「釣りバカ大将ゲーム」です!

どんな体勢で釣りをしてるんだ!? という感じですが,「釣りバカ大将」の世界ではこんなの当たり前!
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 パッケージを見ると,センターにデカデカと主人公の釣 大将が描かれ,それを取り囲むようにライバル&その仲間たちという,ザ.・昭和漫画的な構図が。ついでに書くなら大将の目がギラッと輝き,ライバルの流 竿次郎(ながれさおじろう)が「なんだって〜!?」的な顔をしているところも昭和感丸出しという,熱いデザインとなっています。

 熱いのはパッケージだけにあらず。ゲーム盤はさらにすごいことになっています。個人的に,「釣りは静かに楽しむもの」というイメージを持っていたのですが,このゲーム盤には静けさのかけらもなく,これまで見たどのボードゲームよりも派手,いやド派手です!

ゲーム盤全体から溢れ出る賑やかさ。スタートとゴールも異様にデカい。すごろくゲームとしてはいたってシンプルで,分岐がない一本道
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 盤面は大きく2つに分かれており,プレイヤーのコマを進めるすごろくゾーンと,釣りを行なう釣り場ゾーンとなっています。このすごろくゾーンのマス目がもう漫画のコマのようになっていて,全マスに誰かしらのキャラクター絵が。筆者が知る限り,全マスに絵が描きこまれているボードゲームはコレしかありません

 しかもそのマス目のまわりにもキャラ,キャラ,魚,キャラと,隙間を埋め尽くすような描きこみ。これが描き下ろしなのか,原作漫画からの流用なのかは定かではありませんが,とにかく桜多吾作氏の仕事量が半端ない。

 また,ブルーの透明プラスチックで表現された釣り場ゾーン(説明書では“海”となっています)には,サメやカジキ,エンゼルフィッシュといった魚たちが所狭しと入り乱れます。こんな漁場はまずないと思うんですが,逆にいえば,このデタラメさこそ釣りバカ大将の世界観を見事に表現しているのです。原作では,ネッシーが登場したり,ジョーズにモリで挑んだり,乗っている漁船が大王イカに襲われたりもするので,むしろこの程度ならだいぶ抑えた表現といえなくもありません。

 そしてゲームの目的は,各プレイヤーが大将となり,とにかく魚を釣ること! 行く先々で釣りまくり,釣った魚を魚拓カードに変換,最終的にその魚拓カードのポイント数が一番高かったプレイヤーが優勝という。実にシンプルでわかりやすいゲームとなっています。


釣り勝負は全部で5競技。

でもやることはとにかく釣り!


 さて,ゲームを始めるにあたって準備するのが,このゲームに欠かせない「釣り竿」の組み立て。釣り竿は「サオ」「糸」「ハリ」の3パーツからできていて,糸とハリは磁石でつながるため,重い魚を雑に釣り上げると,重さや衝撃に磁力が耐えきれず,“糸が切れる”仕組みになっています。

3パーツで構成されている釣り竿。余談ですが,漫画で大将が使っている釣り竿はバーゲン品の安物で,それで大物を激釣りしまくります
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 そして釣り竿を組み終わったら,先ほど紹介した釣りゾーン(海)にプラスチックでできた魚たちを放流。その内訳はサメ1匹,カジキ2匹,フグ2匹,イカ2匹,エビ2匹,マンボウ2匹,エンゼルフィッシュ4匹の全7種類,合計15匹です。

まずは魚から出ているフックの位置を把握。エビやイカはフックが多く,ほかの魚と比べると釣りやすくなっています
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 なお,魚の重量はサメ5キロ,カジキ4キロ,フグ・イカ3キロ,エビ・マンボウ2キロ,エンゼルフィッシュ1キロとなっています。サメ軽すぎない!? エンゼルフィッシュ重すぎない!? と思わなくもありませんが,細かいことは気にしない,それが釣りバカ大将ということで,サラッと受け入れましょう。

 すべての準備が完了したらいよいよスタート。ルーレットの出目にしたがって,すごろく状のマスを進んでいきます。なお出目は1〜5の数字に「激釣りカードを引く」を加えた6種類。激釣りカードについてはのちほど解説しますが,1〜5を出して進んだ先のマスのほとんどでは,以下のような釣り競技を行うマスになっています。

●大物釣り
時間内に魚をつなげて釣り,釣り上げた魚に書いてある重さの合計で競う。

●重量で勝負
時間内に数多く魚を釣り,釣り上げた魚に書いてある重さの合計で競う。

●数釣り
時間内に数多く釣り上げ,釣った魚の数で競う。

●一荷釣り
時間内に魚をつなげて釣り,釣った魚の数で競う。

●遠投競技
遠投競技コースを使い,ルーレットの出目でおもりコマを動かし,その飛距離を競う。

どこに止まってもほとんど釣り競技。休む暇を与えないまさにスポ根フィッシング! というかすごろくの定番マスである「1回休み」が存在しない! とにかく釣れ!
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 この説明である程度分かるかと思いますが,遠投競技だけ内容が少し異なるので,先に上4つの釣り競技を紹介していきましょう。

 まず「時間内に」の時間ですが,このゲームには「カラスタイマー」という,独自のタイマーがルーレットに付属しています。約25センチの棒にカラスの模型が付いているもので,模型を棒の一番上まで引き上げてから,くちばしを軽く押すと,カタカタと音を立てながら少しずつ下に落ちていきます。このカラスが地面に着くまで(約30秒)が競技時間となり,その時間内にいかに魚を釣り上げるかが勝負となります。


 気になる釣りの方法は,釣り竿(ハリ)のフックに,魚から出ているフックを引っかけて釣り上げるというもの。文字にすればこれだけのことなんですが,最初はけっこう苦戦します。筆者も最初は時間内に1匹しか釣れませんでした。

 コツとしては,まず落ち着くこと。カラスタイマーのカタカタ音に煽られますが,落ち着くことが何より大事です。そして竿を極力揺らさないことを心がけましょう。

 何度か繰り返しプレイすることで,だんだん釣り方のコツが掴めて,フックを引っかけるスピードも上がってきます。また,ひたすら数多く釣る「重量で勝負」「数釣り」と,つなげて釣る「大物釣り」「一荷釣り」では釣り方が微妙に異なるので,その違いを意識したうえで何度も挑戦すると,上達を実感できます(個人の感想です)。

写真のようにつなげて3匹釣った場合,一荷釣りでは3匹,大物釣りでは12キロとカウントされます
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 つまり,冒頭で書いたとおり,このゲームは技というか,この魚をハリに引っかけるテクニックをいかに早く習得するかが勝負のカギ。それはもうブルース・リーでいうところの「考えるな,感じろ」的な精神で臨まないと勝てない世界です。持ち主のアドバンテージが非常に大きいボードゲームであるともいえます。なので,少しでも公平にプレイしようと思うなら。ゲーム開始前に釣りの練習時間を設定するのもいいかもしれません。


遠投競技はルーレット勝負!

ほぼほぼ運だが,とにかく遠くへ!


 そして,1つだけタイプが異なる遠投競技は,ルーレットの出目のみの勝負となります。最初に4×25マスの遠投競技場の右上のマスにおもりゴマをセット。あとはルーレットを回して「1」「2」「3」が出れば,おもりゴマを出た数だけ左へ。「4」「5」「激釣りカードを引く」が出たら,おもりの高度が下がったことになり,斜め左下のマスに移動させます。

 これを繰り返して,4回高度が下がったら着水となり,それまでの飛距離が記録となります。

遠投競技,目指せ250メートル。ちなみの実際の釣り遠投の世界記録は257.5メートルだそうです
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自分が得意な釣り競技を見つけて,チャンピオンを目指すのが勝利への近道。認定書は魚拓カード20枚分に相当する
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 なお,各競技の最高記録は「記録ボード」に登録され,記録保持プレイヤーは,最終結果に影響する「チャンピオン認定書」を受け取れます。記録がほかのプレイヤーによって更新されれば,チャンピオン認定書もそちらに移るので,ゲーム終了するまで記録を保持することが重要です。

 とはいえ,記録を残せなかったとしても,上の4競技での釣った魚はその数だけ魚拓カードがもらえるので,魚は常にたくさん釣ることを心がけましょう。

魚拓カードは1匹,5匹,10匹と,釣った魚の数に応じて大きさが変化。できるだけ10枚魚拓カードをたくさん集めたい
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カードを引いてもやっぱり釣り!

そして運命の集計


 さて,数字以外の出目である「激釣りカードを引く」についても説明しておきましょう。

 「激釣りカード」には,全員参加でカードに描かれた魚をいち早く釣り上げる「早釣り」や,相手を指名し,お互い魚拓カード10枚をかけて戦う「対決」などがあります。

 なので,競技とは少々ルールが異なるものの,やはり釣る! 結局釣る! ということに。ですが,たまに「小さい魚10匹を海に逃がした」みたいな,大将の優しい一面を垣間見つつ,苦労して釣った魚を一気に失うカードも含まれているので気が抜けません。

ときに勝負の流れを変える激釣りカード。またカードによっては「小魚狂乱バイブレーション」など,大将の秘釣りを知ることができる
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 そんな釣りを繰り返しつつ,最初にゴールしたプレイヤーが好きな競技を1回プレイしたところでゲーム終了。各プレイヤーが魚拓の数を集計します。この時点でチャンピオン認定書を保持しているプレイヤーは,認定書の裏に書かれたポイント数をさらに加算。集計の結果,合計のポイントが一番多かったプレイヤーが勝者となります。

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 このように,「釣りバカ大将ゲーム」は,駆け引きや戦略などほぼ皆無で,ひたすら釣りをしまくるゲームです。頭を使うゲームもいいけど,たまには童心に帰って無邪気に釣りに夢中になってみるのもいいんじゃないでしょうか。

 なお今回紹介した「釣りバカ大将ゲーム」も,筆者が経営している「Book CAFE ヨミヤスミ」のイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」にてプレイできますので,よかったらご参加ください。

■■Book CAFE ヨミヤスミ■■
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京王線の京王多摩川駅から徒歩6分ほどの場所にあるブックカフェ。1980〜90年代の本や雑誌,漫画に加えて,パソコン雑誌やゲームブックなども揃っています。

毎週末開催されるイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」では,本連載で紹介したものをはじめとしたレトロボードゲームをプレイできますので,下記のイベントサイトでお申し込みのうえ,ぜひご来店ください。

公式サイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi
公式イベントサイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi-8jidayo
公式X:https://x.com/yomiyasumi
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