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謎はすべて解けた! 「金田一少年の事件簿」のボードゲームには,歴代犯人がオールスター出演 昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第8回
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4Gamerの読者なら,イギリスの推理系ボードゲーム「Cluedo」をご存じかもしれません。ある大富豪の邸宅で殺人事件が発生し,プレイヤーたちはそれぞれ邸宅内の部屋を探索して,「誰が犯人なのか」「凶器は何を使ったのか」「殺害現場はどこだったのか」を推理し,この3つすべてを特定したプレイヤーが勝者になるというゲームです。
70年以上の歴史を持つ古典的なゲームであり,ゲームのルールが比較的シンプルなので,さまざまなアレンジが加えられたタイトルが多数発売されています。
日本でも,人気推理漫画の「名探偵コナン」「金田一少年の事件簿」を題材に,「Cluedo」のシステムを採用したボードゲームが発売されました。今回の「昭和・平成レトロボードゲーム大百科」では,大胆なアレンジが加えられた「金田一少年の事件簿 謎はすべて解けた!」を紹介しましょう。
おなじみのキャラクターになりきり
孤島で起きた連続殺人事件の謎を解け!
今さら「金田一少年の事件簿」の説明は不要かもしれませんが,数十年後,何も知らない令和生まれの読者さんが不可解な事件に巻き込まれ,偶然この記事を目にするかもしれないので,一応書いておきましょう。
平成4年(1992年)に,「週刊少年マガジン」にて連載が始まったこの漫画は,原作を天樹征丸氏と金成陽三郎氏,作画をさとうふみや氏が担当。その物語は,探偵金田一耕助を祖父に持つ高校生,金田一一(きんだいちはじめ)が,幼なじみの七瀬美雪,警察官である剣持 勇警部や明智健悟警視らの協力を得ながら,祖父譲りの推理力で次々と難事件を解決していく……というものとなっています。
それをボードゲーム化した「金田一少年の事件簿 謎はすべて解けた!」は,テレビアニメも放映開始となった平成9年(1997)年にエポック社から発売されたボードゲームです。
ということで,パッケージにもアニメのものと思われるイラストが使用されていて,主人公の金田一一を中心に,七瀬美雪,剣持 勇,明智健悟といったメインキャラクターがミステリアスにコラージュされています。
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そしてゲーム盤には,漫画でも何度か登場したシチュエーション,絶海の孤島が描かれています。この孤島で殺人事件が発生し,プレイヤーはその謎を解くべく,孤島をめぐって手がかりを集め,最終的に「推理の館」と呼ばれる洋館に到着。ここですべての謎を解いたプレイヤーが勝者となります。
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ゲームは,プレイヤーキャラの選択から始まります。先ほど紹介した4人に速水玲香と佐木竜二を加えた全6キャラから1人選び(キャラによるプレイ内容の違いはなし),後ほど使う予告カード(左右各1枚)と,推理に使う探偵ノート&筆記用具を受け取ります。
それが終わったら,「リストカード」を人物(12枚),トリック(8枚),凶器(10枚)に分けて裏返しに置き,1人のプレイヤーがそれぞれの山から自分を含む誰にも見えないように1枚ずつ抜き,計3枚のカードを真相ファイル(ケース)の中にしまいます。この抜いた3枚のカードが“事件の真相”,つまり今回のゲームの正解となります。
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その後,人物リストカードからさらに1枚抜き,伏せたままゲーム盤の横に置きます。この人物が今回の事件の最初の被害者になります。
残ったリストカードは混ぜたうえでシャッフルし,参加人数に応じて,それぞれのプレイヤーに配布します。今回は6人参加でプレイした場合で説明するので,プレイヤーに4枚ずつとなります。その後,すごろくルートの途中に出てくる「血の湖」に残りのリストカードを2枚伏せて置き,これにて準備完了。
分かったことは探偵ノートにチェック
その情報は誰にも見せるな!
先に述べたとおり,本作は「Cluedo」をアレンジしたゲームです。「Cluedo」では「犯人」「凶器」「殺害現場」を推理しますが,このゲームでは「犯人」「凶器」そして「トリック」を推理します。
その初動捜査として各プレイヤーが行うのは,配られたリストカード4枚の確認です。このカードは当然,真相ファイルに入っていないので,今回の事件とは無関係であることが分かります。そこで使用するのがこのゲームでもっとも活用する「探偵ノート」です。
探偵ノートにはあらかじめ,リストカードの人物12名の名前,トリック8種の名前,そして凶器10個の名前が表組みで書かれているので,まず自分が所有している4つをチェックし,捜査対象から消します。この際,自分の手持ちのカードと同様に,探偵ノートもほかのプレイヤーに見られないように気をつけましょう。
さらに,先ほどゲーム盤の横に伏せておいたリストカードの人物をオープン。今回の事件の最初の被害者となり,捜査対象からは外れるため,探偵ノートにチェックします。
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原作ファンの方ならお気づきかもしれませんが,今回容疑者,被害者で登場する人物,つまり人物リストに名前があるのは,すべて漫画やアニメで描かれた事件の犯人たちです。
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さて,自分の所持カード,最初の被害者のチェックが済んだら,いよいよゲームスタートです。ここからは順番にサイコロを振ってすごろく状のマスを進んできます。進む先のマスは大きく分けて以下の4種類です。
- 無地のマス……何も起こらない。
- 推理のマス……推理を行なう。
- 脅迫状のマス……脅迫状カードを引く。
- 推理対決のマス……推理対決カードを引く。
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推理を重ねて情報集め
ほかのプレイヤーの推理も見逃すな
事件を捜査するうえでもっとも重要なのは,言うまでもなく推理のマス。このマスに止まったプレイヤーは「推理!」と宣言し,自分の探偵ノートをチェック。そこにある情報を踏まえたうえで,
「●●(人物)が,●●(トリック)で,●●(凶器)を使って犯行を行なった」
と,自分の推理を発表します。
推理した人の左隣にいるプレイヤーは,該当するリストカードを持っているか自分の手札を確認します。持っているときは「あります」と宣言し,該当するリストカード(複数ある場合は好きなもの1枚)を,ほかのプレイヤーには見えないように,推理したプレイヤーにだけ見せて,推理終了となります。
左隣のプレイヤーが該当リストカードを1枚も持っていなかった場合は,そのまた左隣りのプレイヤーが同じ作業を行ないます。その人も持っていなかったらさらに左隣……といったように作業を繰り返し,1周して誰も持っていなかった場合も,この推理は終了となります。推理したプレイヤーは,ここで得たリストカードの情報を探偵ノートにチェックします。
ほかのプレイヤーはカードの内容こそ分かりませんが,推理に対して誰がカードを持っていた,持っていなかったといった情報をメモっておくといいでしょう。それがのちのち重要な手ががりになることもあります。
なお,本作では,該当リストカードを持っているのに「持っていない」と嘘をついたり,間違えて回答したりした時点でゲームが成立しなくなります。悪気がなくてもゲームを最初からやり直すことになりますので注意。
このように,コマを進めながら各プレイヤーが少しずつ情報を得て,探偵リストの捜査対象の項目を絞っていきます。
推理対決カードと脅迫状カードで
別ルートから情報入手
「Cluedo」にはない,このゲームならではの情報入手方法として,「推理対決カード」があります。これは自分のコマが推理対決マスに止まったときに引けるカードで,そこに書かれている対決で勝てば,推理のときと同様に対象プレイヤーのリストカードを見ることができます。
対決方法は主に2パターンあり,1つは最初に配られた予告カードを使って2択(右か左)を当てるもの。そしてもう1つは人物,トリック,凶器いずれかのリストカードの所有枚数を当てる対決です。
勝った方のプレイヤーが,負けたプレイヤーの裏向きのリストカードからランダムで1枚引くので,想像してなかった情報を得ることも。また,プレイしているコマのキャラクターと,その時に引いた推理対決カードのキャラクターが一致したときは,2枚のリストカードをランダムで引くことができるので,かなり有利になります。
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そして「脅迫状カード」は,このゲームにおけるアクシデントカード的な存在。対決もせずに相手のリストカードを1枚ランダムで見れたり,逆に自分のリストカードを全員に1枚公開することになったりと,強制的に情報を得たり失ったりするカードが多く含まれています。慎重に捜査を進めたいプレイヤーからすれば,極力引きたくないところでしょう。
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ここまでの説明でお分かりになった人も多いかと思いますが,このゲームではリストカードの情報を得て正解を特定するのと同じくらい,自分が所有しているリストカードの情報を守り,ほかのプレイヤーに先を越されないことが重要になってきます。
そんな駆け引きを繰り返しながら,コマはさらに先へ。なお,コース途中にある「血の湖」にある伏せられた2枚のリストカードは,先に止まるか通過した上位2名のプレイヤーがもらえる(情報を得る)ので,サイコロ次第ではありますが,少しでも早く進みたいところです。
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さらにその先にある「連続殺人事件発生」のマスに止まり,人物リストカードを1枚でも持っていたプレイヤーは,ここで新たな被害者としてそのカードを強制的に公開し,手放すことになります。このあたりまで進んだ頃には,ある程度,事件の真相(正解)が見えてきているはず……。
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ついに真相解明!
「謎はすべて解けた!」
そしてすごろくの最終地点である「推理の館」に到着したら,自分の番が来てもサイコロは振らず,毎回推理を行なうことになります。そして事件の真相がわかったら,自分の番のときに,「謎はすべて解けた!」と宣言。
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探偵ノートの下の欄に,今回の事件の人物,トリック,凶器を書き込み,それを伏せた状態で,誰にも見えないように自分だけが真相ファイルの中の3枚のリストカードを確認します。
3枚すべて正解であった場合は,そのプレイヤーの勝利となり,真相ファイルのリストカード3枚と探偵ノートを公開してゲーム終了となります。が,もし1枚でも間違っていたら,捜査失敗(敗北)が決定し,リストカードを真相ファイルの中に戻します。あとはほかのプレイヤーが推理するとき,自分のリストカードを見せるくらいしかやることがありません。
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ということで,ビシッと3枚当てれば本当にかっこいい名探偵なんですが,外した場合はそこでゲームオーバーとなり,もうゲームに復帰できないので,推理は慎重に進めたいところです。
とはいえ,早く謎を解いたプレイヤーが勝つゲームなので,ある程度正解が見えたところで一か八かの勝負に出るのも1つの戦い方ではあります。また,場合によっては推理の館にたどり着く前に事件の真相が見えることもあり,その場合はさらにかっこいい勝利となります。
最後に,役立つヒントを1つ。推理のとき,1周して誰も該当リストカードを持っていなかった場合「これが“今回の真相”なのでは!?」となりそうですが,そうとは限りません。というのも,推理の際,必ずしも持っていないリストカードを発表する必要はなく,あえて自分が持っているリストカードの人物やトリックなどを発表し,相手を撹乱することもできるのです。
また,後半ある程度真実が見えてきた段階で推理する際に,例えば自分が持っている人物とトリックのリストカードを持っていないかのように推理で発表して,調査を凶器だけに限定して確認するというのもあり,このゲームに慣れた人ほど,こういったほかのプレイヤーの裏をかくようなテクニックを使ってくる傾向が。
もちろん,誰も持っていない場合,“今回の真相”である可能性は高いのですが,果たして真相か? ほかのプレイヤーのミスリードか? その見極めがこのゲームの醍醐味といえるでしょう。
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といったように,「金田一少年の事件簿 謎はすべて解けた!」は,トランプの「ジジ抜き」に似たゲームではあるんですが,そこに情報収集や整理,さらには駆け引きなどが加わって,かなり面白い謎解きゲームとなっています。
なお本作も,筆者が経営している「Book CAFE ヨミヤスミ」のイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」にてプレイできますので,よかったらご参加ください。
■■Book CAFE ヨミヤスミ■■
京王線の京王多摩川駅から徒歩6分ほどの場所にあるブックカフェ。1980〜90年代の本や雑誌,漫画に加えて,パソコン雑誌やゲームブックなども揃っています。
毎週末開催されるイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」では,本連載で紹介したものをはじめとしたレトロボードゲームをプレイできますので,下記のイベントサイトでお申し込みのうえ,ぜひご来店ください。
公式サイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi
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