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定番にして超ロングセラーの「人生ゲーム」。その初代には謎のマスが多数!? 昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第10回
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今回の「昭和・平成レトロボードゲーム大百科」で紹介するのは,本来なら連載を始めるにあたって最初に取り上げるべきボードゲーム。日本のボードゲーム文化に多大な影響を与え,いまなおさまざまなバリエーションを生み出しながら売れ続けている,タカラトミーの「人生ゲーム」です。
昭和43年(1968年),当時のタカラがミルトン・ブラッドレーの「THE GAME OF LIFE」を原型に,日本版として発売したのが初代「人生ゲーム」。パッケージデザインもアメリカで発売されたものを踏襲しつつ,新たに日本版ロゴの「人生ゲーム」を付け足したものになっています(今回紹介するものは,筆者所有の復刻版初代人生ゲームです)。
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4Gamer読者にも,本作のプレイ経験がある人は多いでしょう。昭和生まれの筆者が最初にプレイしたボードゲームも,例に漏れずこの初代「人生ゲーム」でした。とはいえ,あらためて説明書を読み返すと,遊び込んだはずの筆者もいくつか間違ってプレイしていたことに気づいたので,今回はそんな部分を正しつつ,初代「人生ゲーム」を紹介します。
すごろくで人生を擬似体験
さて,ゲーム盤を見ると,まず目につくのが中央にあるルーレットと,その周りに張り巡らされている黒いルート。発売当時のキャッチコピー「人生,山あり谷あり…」になぞらえたように,何か所かに傾斜が設けられているのも特徴でしょうか。本作は,人生に見立てたこのルートを自動車のコマで移動する,すごろくタイプのゲームとなります。
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プレイにあたって,各プレイヤーに2000ドルと自動車コマが支給されます。ここで男性のプレイヤーは水色のピン,女性はピンクのピンを自動車コマに立ててスタート位置にセットします。
そしてスタート前に,この先の人生(進むマス)で起こるかもしれない交通事故に備えて,自動車保険に入るか入らないかを選択。入るなら500ドルを銀行に払い,自動車保険証をゲット。今思うと,筆者が保険という概念を知ったのは人生ゲームだったような気がします。
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月給だけでは決められない
ビジネスコースか大学コースか
本作の参加人数は最大で8人。ボードゲームとしては,かなり大人数で楽しめる仕様となっています。参加者全員のじゃんけんで順番を決めたら,いよいよゲームスタート……といきたいところですが,その前にまず,「大学コース」に進むか,「ビジネスコース」に進むかを宣言します。
本作のプレイ経験がある人は,「スタート前にコースを決めたっけ?」と思うかもしれません。スタートから2マス目がコースの分岐となっているので,まずルーレットを回し,出た目に合わせてルートを決めがちなのですが(筆者も当時はそうでした),正式ルールでは,「先に進むコースを宣言する」となっています。これが人生ゲームにおける最初の決断です。
ビジネスコースに進んだプレイヤーはその後,給料日マスを通過するたびに5000ドルの月給を得ます。一方,大学コースに進んだプレイヤーは,止まったマスに応じた職業に就くことに。月給は,医者なら2万ドル,弁護士なら1万ドル,先生なら8000ドル,たとえ資格を得られなかったとしても6000ドルといった感じで,ビジネスコースを進んだプレイヤーより高めの額を給料日マス通過ごとに得られます。
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と,月給だけを見れば大学コースのほう有利に見えますが,ビジネスコースにもメリットはあります。「ラッキーデー」のマスに止まったとき,本来なら1万ドルの報酬が3倍の3万ドルに上がったり,株式相場(詳細は後述)で儲かった際には本来なら5万ドルのところが10万ドルになったりするので,どちらを選ぶかは本当に考えどころ。
そして,そんな職業選択後はすごろく形式で止まったマスの指示に従ってお金をもらったり払ったり。また生命保険に入ったり,株を購入したりするのもこのあたりからになります。株について補足しておくと,序盤の購入マスほど安く,先に進むほど価格が上がります。買えるなら安いうちに買っておくべきでしょう。
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結婚はマストイベント。そして子供とともにドライブ
人生ゲームの序盤における最大イベントが「結婚」でしょう。結婚のマスは強制ストップマスなので,ルーレットの数字が余っていようが必ず止まり,必ず結婚します。クルマのコマに配偶者のピン(プレイヤーとは別色のピン)を追加して,さらにルーレットに応じたお祝いがもらえたり,もらえなかったり。
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なお,結婚以降のマスには「男の子が生まれた」「女の子が生まれた」がいくつかあり,そのつどピンをクルマのコマに追加。クルマがだんだん賑やかになっていくのも,このゲームの醍醐味かもしれません。
初代人生ゲームならでは? 謎のマスたち
冒頭にも書きましたが,この初代人生ゲームはアメリカ版を日本語に翻訳して出したため,「アメリカでは常識なの?」みたいな,理解に苦しむことが書かれたマスもあります。せっかくなので,印象的なものを紹介すると……。
- 羊がとなりの家のランを食った。1000ドル払う。
- 潜水して鯨をつかまえた。5000ドルもらう。
- 火星から使者がきた。ごちそうして5000ドル払う
正直どういう状況? というか,火星からの使者にごちそうは,アメリカどうこうという話ですらないですが,こういった遊び心も人生ゲームのひとつの魅力かもしれません。
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ルーレットが運命を決める,熱いギャンブル要素
さて,ゲームが中盤に差しかかると,「ギャンブルマス」がいくつか登場します。具体的に例を挙げると「かけるチャンス到来!」マス,「株をもっていればかけをしてもよい」マスなどがあり,プレイヤーが希望すれば賭けをすることができます。
その方法はシンプルで,1〜10の数字が書かれたナンバーボードに所持金をかけ,あとは賭けを行うプレイヤー以外のプレイヤーがルーレットを回すだけ。的中すれば銀行から掛け金の10倍が支払われ,外れたら没収です。
株券の場合はルーレットを回し,1,2,3の場合は2万5000ドルの出費,4,5,6の場合はそのまま,7,8,9,10の場合は5万ドル,前述のようにビジネスコースのプレイヤーなら10万ドルの配当が与えられます。なお,株券の場合は勝っても負けても株を手放す必要はなく,「相場をはる」のマスに止まれば再度挑戦可能となっています。
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賭けを一切せず,堅実に進めるのも人生なら,ギャンブルで一発逆転を狙うのもまた人生。運の要素が強い人生ゲームですが,そこをどう判断するかに多少の戦略性があると思います。
「仕返し」という謎の意地悪マス
戦略性という意味で,もうひとつプレイヤーの意思を介在させられるのが「仕返し」マス。このマスに止まったプレイヤーは,誰かから10万ドルもらうか,誰かを15マス戻すかを選ぶことができます。かなりあからさまな嫌がらせです。
誰かに嫌がらせをされたなら,文字通りの仕返しもやむなし,といった感じがしますが,とくにそういった因縁がないプレイヤーに仕掛けることもできるので,勝つためとはいえ使い方がやや難しいマスです。
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ちなみに,15マス戻す場合のルールが,「もともといたマスに印をつけるなどして覚えておき,そのマスに戻るまでは支払いや報酬などのマスに止まっても一切金銭の出し入れはなし」というのも,この原稿を書くにあたって初めて知りました。筆者は長いあいだ,15マス戻した後は普通にプレイを続行していたので,これは今後改めようと思います。
と,そんなこんないろいろありながらルートを進み,ルーレット付近に位置している白い橋を渡ったら,ゲームもいよいよ終盤です。ちなみにこの橋は,「有料橋」という名前で,2番目以降に通過するプレイヤーは,最初に通過したプレイヤーに2万ドルを支払うルールになっています。
勝負は総資産で決まる。目指せ億万長者!
さて,ゴール直前に待ち構えているのが「決算日」のマスです。ここでは全プレイヤー強制的にストップし,精算を行います。主な精算項目としては,子供1人につき2万ドルの収入と,借金による約束手形を持っている場合は,利息をつけての返済です。
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そして,ほかのプレイヤーと勝負ができるほどの所持金があると判断したなら,ゴールである「億万長者の土地」へ。逆に,そこまでの所持金がないプレイヤーは,ラストチャンスとして「実業界の大立者」になるチャレンジへ。
このチャレンジを選んだプレイヤーは,全財産をボード1〜10のうちの1つに賭け,ルーレットを回します。見事にその数字を出せば,そのプレイヤーが勝者となり,ゲームが終了となります。外れた場合は全額没収となり,コマは決算日マス横の「貧乏農場」に運ばれ,そのプレイヤーだけがゲームオーバーに……。
道中あまり稼げなかったうえ最後は一文無し,というのは切ないのですが,一発逆転を狙える面白さにもなっています。
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そして「億万長者の土地」にたどり着いたプレイヤーには,到着順に応じて,1位10万ドル,2位8万ドル,3位6万ドル,以降は2万ドルというボーナスが。さらに1位のプレイヤーにはラッキーナンバー(好きな数字)が与えられ,全員がゴールするまでのルーレットでその数字が出るたびに1万ドルがもらえます。
最終的に全員がゴールしたところで,すべての所持金を計算。そこで一番所持金の額が大きかったプレイヤーが億万長者,つまり優勝となります。
といったように,「人生ゲーム」は,地域性の違いや50年以上の時間を感じさせる謎のマスが並ぶものの,カードなどはなく,ルーレットを回してはお金のやりとりを繰り返して進む,非常にシンプルなゲームです。ある程度の戦略性はありますが,運の要素も強いので,年齢に関係なく勝負できそうなゲームでもあります。
この年末からお正月にかけて,集まった親戚たちとプレイして,久しぶりに億万長者を目指してみてはいかがでしょうか。
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なお今回紹介した初代「人生ゲーム」(復刻版)も,筆者が経営している「Book CAFE ヨミヤスミ」のイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」にてプレイできますので,よかったらご参加ください。
■■Book CAFE ヨミヤスミ■■
京王線の京王多摩川駅から徒歩6分ほどの場所にあるブックカフェ。1980〜90年代の本や雑誌,漫画に加えて,パソコン雑誌やゲームブックなども揃っています。
毎週末開催されるイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」では,本連載で紹介したものをはじめとしたレトロボードゲームをプレイできますので,下記のイベントサイトでお申し込みのうえ,ぜひご来店ください。
公式サイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi
公式イベントサイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi-8jidayo
公式X:https://x.com/yomiyasumi
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