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「シブヤスクランブルストーリーズ」ファンミーティングレポート。新たに出演予定のキャスト2人をサプライズ発表。“共犯者”からの質問コーナーも
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「シブヤスクランブルストーリーズ」公式サイト
本作は,ゲームデザイナーのイシイジロウ氏が手がける,実写画像を多用した渋谷が舞台のアドベンチャーゲーム最新作だ。2025年5月にクラウドファンディングを開始し,同7月の終了時に目標額の1095%となる約5400万円もの資金を集め,さらに東急不動産とSkeleton Crew Studioをパートナー企業に迎え,開発が正式にスタートしている。
今回のイベントは,本作の原点にある「サウンドノベル 街」(以下,「街」)の劇中の舞台背景となる日付,10月11日〜10月15日の3日目にあたる10月13日に,クラウドファンディングに出資した“共犯者”と呼称される出資者を抽選で30名招いたもの。総監督のイシイ氏,脚本の北島行徳氏,そして出演予定のキャストがトークを展開した。
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イベントにはイシイ氏,北島氏に加え,「街」に出演し本作にも出演予定のあらい正和さん,松田 優さんが登壇。さらにサプライズゲストとして「街」で「細井美子」を演じた伊藤さおりさん(北陽)が,新たな出演予定者として紹介され,客席は大いに湧いた。
![]() 来場者には知らされていなかったサプライズゲストの伊藤さおりさん(左) |
![]() 壇上左から北島氏,松田さん,あらいさん,伊藤さん,イシイ氏 |
伊藤さんは「街」が発売された27年前,芸人としてまだ駆け出しの頃に美子役で出演できたことをうれしく思っており,今でも「街」のファンから声をかけられることが多く,何かしらのお礼をしたかったそうだ。
この「シブヤスクランブルストーリーズ」のクラファンについては終了後に知ったそうで,事前に気付いていれば本名で出資する気満々だったとコメント。
イシイ氏はクラファン事情に詳しくない伊藤さんに向けて,これまでの経緯を説明した後,もう1人の新たな出演予定者を発表した。その人は今回のゲスト3名と同じく,「街」の主人公の1人「篠田正志」として出演した草野康太さん。
当日はスケジュールの都合で,ビデオレターでの登場となったが,「もう一度渋谷で皆さんとお会いしたい」と来場者に向けメッセージを贈った。
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草野康太さんからのビデオメッセージです。#渋谷ADV #SSS #シブヤスクランブルストーリーズ pic.twitter.com/BsnnNguZ8i
— イシイジロウ (@jiro_ishii) October 13, 2025
「出演に関してはすぐにお答えできない」という草野さんのコメントに対し,役者の先輩で付き合いも長いあらいさんは,「松田さんが迎えに行って『出るの? 出ないの?』と詰め寄れば一発でOKしますよ(笑)」「黒歴史を言っちゃうよ?(笑)」とイジり,客席を大いに笑わせた。
ただ,撮影は2年後の2027年を予定しているため,現在発表されているキャストの具体的なスケジュールも不確定で,草野さんを含む全員が現時点では「出演予定者」であることをイシイ氏は強調した。
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今回は「街」の出演者がゲストということで,当時の思い出話も語られた。伊藤さんは当時,「北陽」としてコンビを結成したばかりで,お金もなく風呂なしのアパートに住んでいたという。そんな時期にマネージャーから勧められて,オーディションに行くことになったそうだ。
オーディション自体も初めての体験で,何も分からない状態で行ってみると,会場で「寄り目をしてくれ」と言われ,その顔が出演する決め手になったと本人は分析している。実際,「街」の中で演じた美子は寄り目をするシーンが多い。
また,衣装で相撲のまわしを着用したり,ウェディングドレスを着たら背中が閉まらずガムテープで固定して撮影したり,肌寒い時期に池に入って巨大なワニ(の模型)と格闘したりと,かなりハードなロケだったことを振り返った。当時はほかの仕事もなかったこともあり,とにかく全力で挑み,結果的には楽しかったことも明かしていた。
刑事の「雨宮桂馬」として出演したあらいさんも,オーディションでは,撮影時にコーヒー牛乳を飲めることが合格条件の一つだったという。撮影時は静止画なので実際には飲まなくていいのに,役者としてはちゃんと飲んだほうがいいという考えを持って,ほぼ毎日飲んでいたそうだ。
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松田さんはオーディションではなく,「ゲームの主役で2役」という名指しのオファーとなったが,当時のマネージャーも事情がよく分からず,本人がディレクターと面談をして出演をOKしたという。
撮影は約1か月間ほぼ休みなしで,普段とは違ってセリフをしゃべらない静止画での撮影や,同じ顔で同じ衣装の「牛尾政美」と「馬部甚太郎」の2役に戸惑ったものの,途中から松田さんの要望により動いての演技に変更になったそう。
それにより演技の迫力が増し,撮影中に極道映画のファンから声をかけられたこともあったとか。
撮影前には全員が分厚い台本を渡されたが,ゲームの台本はドラマや映画のそれとは体裁がまったく異なり,しかも複数のシーンが複雑に入り交じっているため,読んでも理解できない特殊な内容だったそうだ。にもかかわらず,役者である松田さんとあらいさんは,撮影開始の時期は普段どおりに読み込んで撮影に挑んだという。
またゲストの3人は「街」撮影時に全員が池や噴水など,水に入る撮影をしたことを覚えていて,今回の「シブヤスクランブルストーリーズ」でもそういったシーンがあるのかイシイ氏や北島氏に確認しつつ,伊藤さんは「私は(水に)入りますよ!」と力強く宣言していた。
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ちなみに北島氏が手がける脚本は,年内にプロットを仕上げて2026年内に完成予定のスケジュールで動いているという。主人公が5人いると仮定して,現在は5人目のプロットを書き終わったところまで進んでいるそうだ。
ゲストが演じる予定の登場キャラクターについては,2026年の4月28日に発表ができるよう調整中とのこと。ただ,「428 〜封鎖された渋谷で〜」(以下,「428」)には,ゲームの途中から存在が明らかになったキャラクターがいたように,出演予定だとしても演出上キャラクターを発表できないこともあるため,そういった部分をどう発表するか,イシイ氏は検討しているそうだ。
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休憩を挟んでトークの後半では,来場者からの質問に登壇者が返答した。いくつか抜粋して紹介しよう。
――新作として作られている「シブヤスクランブルストーリーズ」が,“「街」や「428」みたいな作品”と例えられることに対してどう感じていますか?
イシイ氏:
「428」が出るときも,“「街」みたいな作品”と例えられたことはありましたが,実際に発売されると,「街」とは違うことが分かりましたよね。
それから20年が経って,「街」や「428」のファンの方がこの「シブヤスクランブルストーリーズ」を生んでくれているので,そう考えると“「街」や「428」みたいな作品”で,両タイトルが好きな人のことも念頭に置きつつ,まったく新しいものを提供していきたいと思っています。
北島氏:
「街」が好きな人も「428」が好きな人も,どちらか一方が好きな人でも楽しめるようなものを今書いています。これがどういう意味かは,ゲームが発売されてから分かると思うので,期待していてください。
――今回のシナリオの中には「忌火起草」のような怖いシナリオはありますか?
北島氏:
5本あるうちの,1本はそれっぽいものがあるかな? “怖くてミステリー”っぽいもの……それ以上はイシイさんに怒られてしまうので,ここまでにしておきます(笑)。
――桂馬,美子,牛尾&馬部はそれぞれゲームのエンディングの後,どんな将来を迎えていると思いますか?
あらいさん:
桂馬は現場が好きなので,たぶん出世はしてないと思います(笑)。世話好きなしおりさんに結婚しようと迫られているような,そんなふうになっているといいなという願望はあります(笑)。
伊藤さん:
美子はあの後幸せな結婚をして,子供が4人ぐらいいて,出産で増えた体重が落ちて,また太るという,そんなイメージで思っていましたね。
松田さん:
馬部の場合は,役者の厳しい世界で細々と芝居をやりつつ,「街」での活躍を思い出しながら満足しているんじゃないかな。
牛尾はヤクザの世界から引退して,いいおじいちゃんになってるかも。
ああいうアウトローが活躍する作品では,若い頃からやんちゃや無茶をしたキャラクターって,晩年は大概うらぶれているか,白髪になって海辺で孫を可愛がっているので,牛尾もきっとそうなってるでしょう。
――映画好きのイシイさんに伺います。「街」や「428」を楽しめた人にオススメできる映画はありますか?
イシイ氏:
「街」が好きな人に薦めたいのは「彼女を見ればわかること」と「マグノリア」ですね。「街」ってシナリオが交わらないタイプなので,この2作品はきっと楽しめると思います。
「428」が好きであれば,「バンテージ・ポイント」ですかね。この作品は「428」を作ったあとに出た作品ですが,「やられた」と思いました。
あとは邦画の内田けんじ監督の作品でしょうか。とくに「運命じゃない人」が大好きでいろんな方に勧めています。
北島氏:
「運命じゃない人」は僕がイシイさんに勧めたんですよ(笑)。観に行ったきっかけが,内田監督がインタビューで「街」の話をしていたことだったんですよね。そしたらとんでもなく面白くて,すぐにイシイさんに薦めました(笑)。
――「街」や「428」を知らない人に対して「シブヤスクランブルストーリーズ」を勧めるには,どうすればいいと思いますか?
北島氏:
まずは「実写である」「アドベンチャーゲームである」「群像劇である」のどれか一つでも引っかかるようであれば,ぜひ遊んでほしいと勧めてください。あとは「文章を読むのが好き」とか「パズル的なアドベンチャーゲームが好き」といったところも勧められるポイントだと思います。
イシイ氏:
これはチュンソフト時代の中村光一さんの話なんですが,「弟切草」は,「ドラゴンクエスト」が難しくてできないという人のために作ったそうなんです。「ドラクエ」の戦闘や魔法が分からなくても,ボタンを押して選択肢を選ぶだけで物語が進んでいくという,誰にでも遊べるゲームというのがサウンドノベルの原点です。そこにのっとったゲームデザインにしているので,誰でも面白いと思えるところまで行けるのはポイントになると思います。
あと,最近のゲームはフルプライスではなかなか手が出ないという人も,発売から半年〜1年と経つと値段が安くなったりするじゃないですか。そういうときに勧めたい相手を巻き込んでいくことで,新しい楽しみを分かっていただけるのではないでしょうか。
キャストの皆さんに関しても,「街」や「428」を知らない人でも「この人が出ているなら遊んでみようかな」と思えるメンツも参加していただきたいと思っていて,それは声の出演とか音楽といった方面からのアプローチも考えています。
ただこちらから「何そのゲーム?」という人に頭を下げてお願いするのではなく,「街」や「428」を多少なり知っていて,その面白さも分かっているから協力しようと言ってくれる方を,これからも積極的に探していきたいと思っています。
――「シブヤスクランブルストーリーズ」の海外へ展開はあるんでしょうか。
イシイ氏:
英語圏と中国語圏の方からは問い合わせは来ていますし,企業から移植しませんか? というお話もあります。中国では最近実写ゲームが流行しているようですし,「428」は中国語圏でも評価が高いですからね。ただ,まだ体制ができておらず,具体的な対応ができないので,もうしばらくお待ちください。
現実問題としてゲームのシステム上,文字数がすごく多いんです。「428」でも70万文字ぐらいあって,これが100万文字とかになると,1言語増やすだけで翻訳の費用が1000万円を超えてしまうんです。そこで海外向けのクラファンをする可能性もありますし,あとは日本のエンターテイメントを海外に届けるための補助金のシステムなどもありますから,可能な限りやっていきたいですね。
――最近のノベルゲームはボイスが入っていることもあります。キャストの皆さんの声を聞きたいという要望などもありますが,ボイスを入れるといったことは考えていますか?
イシイ氏:
そこは即答しますが,ボイスは入りません。なぜかというと全体のボリュームを多くすることを目標に作っているので,後のチューニングは必須で,ボイスを録ってしまうと,それが難しくなってしまうからです。クオリティアップのために,ボイスはあえて入れないことを何とぞご理解ください。
なお,キャストの声については,今回もメイキングシーンを撮影してどこかに入れる予定です。そこでキャストの皆さんの声を少しでも聞けるようにして,遊んだファンの方がそれを聞くことで,あらためて楽しんでいただけるような形を考えています。
――「シブヤスクランブルストーリーズ」は現在,「SSS」や「シブスク」といった略称で呼ばれていますが,公式の略称をイシイさんから提案していただけませんか?
イシイ氏:
略称をどうするかは僕も悩んでるんです。「SSS」は響きもいいですが,東急不動産さんの「Shibuya Sakura Stage」と同じなのが良いですし,「シブスク」の呼び方も少しずつ定着しつつありますよね。
「ファイナルファンタジー」が出始めの頃は「FF」だけでなく「ファイファン」と呼ばれていたことがあったように,今はどちらで呼んでもらっていいので,いずれはより使われているほうが主流になっていくような気がします。今は両方ともオフィシャルと考えていただいていいと思います。
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新たに出演予定のキャストが発表され,大きな盛り上がりのうちに終了した今回のファンミーティング。「シブヤスクランブルストーリーズ」は2028年の発売を目指して企画が進行中で,先日,公式サイトと公式Xアカウントも開設されれた。
前者ではクラファン出資者のクレジットがすでに全員分掲載されていて,これはゲーム本編でも同様のものが収録される予定だ。もし表記の間違いなどがある場合は,事前に連絡をすれば製品版に掲載するまでに修正対応するとのこと。
また公式Xでは今後,最新情報を配信していくそうなので,“共犯者”のみならずこの「シブヤスクランブルストーリーズ」が気になっている人はフォローをしておこう。
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「シブヤスクランブルストーリーズ」公式サイト
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