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そろそろ知っておきたい「Warhammer 40,000」の世界。難解だけど“わかった瞬間”に面白さが押し寄せる濃密設定&狂気の人類帝国の歴史を解説【PR】
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好みのミニチュアを集め,思い思いのペイントをし,戦場を再現したフィールドで対戦する,ゲームズワークショップ発のミニチュアゲーム,もしくはその作品群としておなじみ。TRPGやTCG,デジタルゲームの分野へと派生して認知度を高めたシリーズなので,関連タイトルを目にしたことがある人も多いだろう。
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海外人気が高く,良質かつ遊びごたえたっぷりなコンテンツなのだが,日本での知名度は“知る人ぞ知る”という感じ。というより,多方面に展開しているがゆえにゲーム界隈では特殊な立ち位置に置かれるように思う。
「作品名は知っている」
「デジタルのゲームを遊んだことがある」
「でも,ミニチュアは遊んだことがない(もしくは知らない)」
「結局どんな世界なのか分かっていない」
という人が少なくない。そんな覚えがある人にこそ伝えたい。
「長年にわたって蓄積された“41千年”にわたる壮大な銀河史。登場人物,勢力ごとに用意された濃密な設定の数々。設定を掘れば掘るほど銀河史上のドラマが点と点でつながっていき,面となって世界が広がっていくこの快感……! 『WH40K』は読みものとしてもとんでもなく面白いぞ!!!!」と。
そんなわけで,「WH40K」の世界をそろそろ知っておきたいという人に向けて,理解を深めるための歴史解説をお届けする(2025年夏に週刊「Warhammer」の新シリーズも出ることですし!)。
今回取り上げるのは,「WH40K」世界における人類の帝国を中心とした銀河史だ。最低限の内容をざっくりと紹介するにとどめるが,それでも結構長いので途中で休みつつ,ときには公式サイトやコミュニティの解釈にも目を通しながら読み進めてほしい。
「Warhammer 40,000 Homepage」公式サイト
<ちょっぴり補足「Warhammer」シリーズのこと>
「Warhammer」シリーズとは,ゲームズワークショップが製作,販売しているミニチュアゲーム,およびそれらを原作とした作品群のことで,日本では剣と魔法のファンタジーものである「Warhammer Age of Sigmar」と,遠未来の銀河を舞台としたSFもの「Warhammer 40,000」の2シリーズが展開されている。
精巧に作られたミニチュアを自分で組み立て,ペイントし,アーミーとして使用するのがこのミニチュアゲームシリーズの特徴だ。アーミーを盤上に並べ対戦するさまは圧巻で,まさにホビーの究極形といったところ。集める,作る,塗る,遊ぶ,読むの5つのアクティビティがあり,純粋に対戦ゲームとして楽しむ層もいれば,コレクションやペイントがメインという層もいたりと,プレイヤーそれぞれで楽しみ方を追求できる。
作品全体の世界観や種族の設定は,コアブックや各勢力のコデックスに掲載されている。詳細な背景を調べるなら,こうした書籍を読むのがおすすめ
「WH40K」がどんな物語であるかを端的に説明するならば,「戦争だけが残された41千年紀の遠未来を舞台に,人類の帝国,邪悪なる渾沌の者たち,侵略を目論む異種族の三つ巴によって織りなすスペースオペラ」といった感じなのだが,ただし書きを加えておきたい。
「WH40K」は世の中にありふれた“普通のSF”ではない。このディストピアはあまりにも奇妙で,救いのない陰鬱さに満ちている。
想像してみてほしい。遠い未来,数百万の惑星を支配する壮大な国家が打ち立てられた世界を。素晴らしい未来像だと思うかもしれないが,そこにあるのは,裏切り,衰退,悲劇,あらゆる怨嗟が渦巻くディストピアだ。危機的状況のなか,生きるとも死ぬとも分からぬ戦いが常に繰り広げられている,まさに地獄のような世界といっても過言ではない。
◆銀河でしのぎを削るイカれた奴らを紹介するぜ!
「WH40K」世界には,人類の帝国のほか,渾沌(ケイオス)の軍勢やさまざまな異種族(ゼノ)の存在が確認されている。
<帝国>
「異種族死すべし! 皇帝こそ絶対神なり!」を理念とした人類の勢力。超人的な能力を持つ皇帝によって繁栄を遂げるも,大逆者の反乱によって衰退。絶対的な統治者を失った今,臣民は皇帝を神と崇め,機械に宿りし精霊に祈りを捧げる歪んだ宗教国家と化している。
あらゆる資源が不足しているものの,人的資源は潤沢な模様。臣民の命の価値はないに等しい。
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<渾沌の軍勢>
<歪み(ワープ)>に潜む非物質界の神々と信奉者から成る軍勢。渾沌の神々は<歪み>に流れ着く感情や魂によって生み出され,信奉者からの信仰,知的生物の精神活動,魂を糧に力を蓄える。
非物質界に住まう神々は物質界に直接干渉することはできないものの,精神に働きかけ,祝福を授けることで渾沌の軍勢に招き入れる。ケイオススペースマリーンをはじめ,帝国から寝返った軍勢も多い。
渾沌の四柱は,「戦い,流血,憤怒」を体現するコーン神,「変化,宿命,無限の魔力」を司るティーンチ神,「疾病,悪疫」の源であるナーグル神,「傲慢,欲望」を源泉とするスラーネッシュ神によって構成されている。帝国の皇帝を忌むべき存在として認識しているようで,ことあるごとに妨害してくる。
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<異種族>
戦うことが大好きなオルク,すべてを食い尽くすティラニッド,かつての銀河の支配者アエルダリ,大善大同の思想を持って銀河統一を目指すタウ・エンパイア,亜人種族キンの同盟組織リーグ・オヴ・ヴォータンなど,現在確認されている種族は以下のとおり。
・アエルダリ
人類が台頭するはるか昔から存在する種族。身体能力が高く,長寿命。手足が長く,整った顔立ちで,ハイスペックな種族という印象を受ける。
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かつては銀河を掌握するほどの一大文明にまで発展したが,傲慢な気質とあくなき探求心によって堕落し,王国が壊滅している。種族全体で自己欲求を追求しすぎた結果,快楽と堕落を司る渾沌の神を爆誕させてしまった。
・ネクロン
短命に苦しむ一族を救うため,生身の身体から頑強な生体金属に乗り換えた不死の軍勢。旧き時代の戦争を経て長き眠りについていたものの,銀河の各地で目を覚まし始めている。
自由意思を失った不死の軍勢は,かつての王国の領土を取り戻すため無慈悲に武器を振るう。彼らが生身の身体を捨て,眠りにつくに至った経緯は,涙なくしては語れない。なかなか不憫な種族。
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・オルク
闘争本能の塊で,暇さえあればあらゆる種族を相手に,ときには同族をも相手取って「Waaaaagh!(いくさだァァァア!)」している戦闘種族。戦いたいから戦う,強くてデカいヤツが偉いという単純明快な思考回路を持ち,陰鬱な「WH40K」の世界を本能のままにエンジョイしている。絶命すると胞子を飛ばし,戦闘経験を受け継ぎつつ増殖する,という厄介さが持ち味。銀河で一番ピュア,そしてしぶとい。
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・ティラニッド
外宇宙から突如現れた恐ろしき侵略者。空腹を満たすためにあらゆる星で捕食活動に明け暮れている。標的となった惑星は数兆の個体によって襲撃され,あらゆる生命と有機物が貪り尽くされる。
――つまりは蝗害ような存在だ。恐ろしいのは,ただ捕食と繁殖を繰り返す原始的な側面だけでなく,生物に卵を産み付け強制的にティラニッドを崇拝させてしまう,知能的な策略にも長けている。そうして生まれたジーンスティーラー・カルトは,静かに異種族の社会を内部から崩壊させていく。
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・タウ・エンパイア
「多数にとっての利益のため一致団結して奉仕する」という大善大同の理念を掲げる,全体主義っぽさのある種族。他種族であっても大善大同の理念に恭順するのであれば迎え入れる,外交的な一面が特徴だ。
相手を素晴らしき理念に染めるためならば,長い時間をかけることも厭わない。「WH40K」世界には珍しい平和的な種に見えるが,従わない者に対しては圧倒的な武力を持ってつぶしにかかる過激派。怒らせると厄介なタイプだ。
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・リーグ・オヴ・ヴォータン
太古の思考機械ヴォータンと機械知性を持ったアイアンキンと共に発展を遂げてきた種族。クローン種族である彼らは同じ閥族の者と遺伝子的に結束しているため,個々の絆が深い。それがゆえ一番優先すべきものは家族,尊き祖先は崇めるべし,という祖先崇拝につながっている。
節約志向であることも種の特徴で,リスクとリターンが見合わない戦いは早々に放棄してしまう。だが,宿敵たるオルクが相手となれば資源の限りを尽くしてぶっ潰す。これこそがキンなり!
天の川銀河には帝国,渾沌,異種族の勢力が己が版図を広げるべく絶えず争い,ときには一時的な共闘によって脅威を退けた数々の歴史が刻まれている。となれば,そのすべてを網羅したいところなのだが,壮大な銀河史となってしまうので,メイン勢力である帝国の歴史にフィーチャーしたい。
ここからは,帝国がどのようにして41千年紀の悲惨な状況に至ったかを,「天界戦争時代」「地球の時代」,テクノロジーの黄金期である「技術の時代」,孤立による衰退期を迎える「不和の時代」,人類再統一に向けた「大征戦の時代」,大逆に血塗られた「暗黒の時代」,ホルスの大逆以降の「帝国時代」に分類してお届けしたい。
さあ,準備はいいか? 銀河史上最も不運で,最も過酷で,そして奇妙なことに最も魅力的な物語が今,始まろうとしている。
序章 終わりなき争いの源流――天界戦争
帝国の歴史に入る前に,今日の終わりなき戦争の源流と言われる旧き時代の闘争にも触れておきたい。というのも,人類が台頭するはるか昔から銀河では争いが起きており,その戦いの遺物がのちの帝国に影響を与えているからだ。
人類が星を見上げ,銀河の征服に思いを馳せる数百万年前――かつてネクロンティールと呼ばれた人型種族と,高度な知性を持つ古代種族・旧き者との間で,激動の争い“天界戦争”が繰り広げられていた。
短命の呪いに苦しむネクロンティールが,旧き者に不死の術を尋ねるも,これを拒否されたことが天界戦争の始まりとされている。しかしながら,旧き者の圧倒的な力を前にネクロンティールはまったく刃が立たず,戦いに敗れたばかりか,部族の内部分裂が加速する結果に終わってしまう。
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それでも権力と不死の術を求めたネクロンティールの支配者は,星界の神々ク=タンと取引を交わし,一族の宿願である不滅の体を手にする。こうして弱き身体を捨て,朽ちることのない金属の体を手にしたネクロンティールは,不死の征服者“ネクロン”に生まれ変わった。
……のだが,彼らが捨てたのは身体だけではなかった。取引の代償は一族の魂と,民の自由意志だったのだ。星界の神々とともに旧き者を退けたネクロンは,一族の魂を食らったク=タンに反旗を翻し,神々をシャードに封印する。
残る敵は,旧き者と同盟を結んでいた種族アエルダリのみとなったが,闘争を避けたネクロンは6000万年の“大いなる眠り”につき,天界戦争は終結を迎える。その後の宇宙は長らくアエルダリが掌握し,渾沌の神が一柱スラーネッシュの誕生までその地位は揺るがなかったという。
★旧き者とは?
太古に存在した知的生命体。銀河の星々に生命の種をまき,他の生物の誕生に関わったという伝承がある。他の種族を凌駕するほどのテクノロジーを有していたようだが,その出自は謎に包まれており,天界戦争後の行方も分からずじまいだ。
★天界戦争が銀河に与えた影響
旧き者とネクロンティールによる天界戦争は銀河に深い傷跡を残し,のちの「WH40K」世界に大きな影響を与えている。その1つが<歪み>に巣くう,邪悪なる存在の誕生だ。
<歪み>とは,物質界の表皮の下に潜むエネルギーと限りなき可能性に満ちた次元のことで,星辰感応通信や恒星間航行に欠かせないワープホールとして利用されている。
この空間内では苛烈なる嵐が吹き荒れており,時間の概念は意味をなさず,現実世界の物理法則も通用しない。備えなしに足を踏み入れれば,その者はたちまち正気を失い,邪悪なるディーモンに魂を捕食される恐ろしい空間でもある。
元来の<歪み>は,無垢なエネルギーに満たされる場所であり,ディーモンをはじめとした邪悪なるものの巣窟ではなかった。だが,天界戦争によって生まれたあらゆる想念と夢と感情,野望と恐怖が集積した結果,エネルギーの潮流が大きく歪み,渾沌の者たちが誕生してしまったというわけだ。
★関係ないようで関係がある。戦争の遺物たち
旧き者が銀河の各地に遺したワープポータル<網辻(ウェブウェイ)>や,ネクロンが遺したノクティリスの石柱,6000万年の眠りについたネクロンの民,星界の神々が封じられたク=タン・シャードなど,この時代の遺物の多くは長き時を経てのちの銀河史に登場する。とりあえず名前だけは覚えておこう。
第1章:人類,宇宙へ旅立つ
帝国が建国される以前,“地球の時代(M1-15)”と呼ばれる頃に人類による宇宙開拓が始まった。発祥の地である地球と,テラフォームが完了した初めての惑星である火星を礎として,人類は確かな一歩を踏み出したのだ。
とはいえ当時の技術力はまだ乏しく,長距離の恒星間航行ともなれば,世代交代を重ねながら途方もない時間をかけて目的の惑星に到達するほかなかった。
いわゆる光速の壁に阻まれていた人類であったが,“技術の時代(M15-25)”に突入すると宇宙空間に存在する<歪み>を利用した超光速航行を実現した。これによって,恒星間宇宙の彼方まで通常要する時間の数百,数千分の一の時間で到達可能となったのだ。
異種族のテクノロジーを貪欲に取り入れた結果,人類の技術水準はのちの時代から見れば想像もつかないほど高度なものとなった。
遺伝子改造兵,思考機械である鉄人(マン・オヴ・アイアン),標準テンプレート生産装置の導入によって,惑星への入植は苛烈ともいえる速度で進行したようだ。また,人類のサイキックの進化が加速したのもこの頃であり,サイキックの研究も盛んに行われていた。
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かつてないほどの繁栄を享受した人類だったが,25千年紀頃,星系を揺るがす厄災が同時多発的に巻き起こる。人類の諸惑星のあらゆる場所で異能者<サイカー>の大暴走が発生したばかりか,創造主たる人類に機械兵士が牙をむく,数十億規模の殺戮が始まったのだ。
そこに追い打ちをかけるように,銀河全域を巨大な<歪み>の嵐が覆い尽くし,怒り狂う海のように激しく乱れた。安全なワープ航行など夢のまた夢となり,星系間の往来と通信が途絶えたことで,諸惑星は数千年にわたる分断と侵略の恐怖に怯えることとなった。
この<歪み>の嵐の発生は,アエルダリの堕落を糧に新たな渾沌の神が<歪み>に宿ったことが要因とされている。
かくして目ざましい技術発展と,爆発的な勢力拡大を遂げた人類の黄金時代は終わりを告げ,“不和の時代(M25-30)”と呼ばれる渾沌と孤立の時代へと突入していく。かつての栄光は忘れ去られ,テクノロジーは闇に葬られ,多くの植民地は未開社会へと退行。黄金時代の知識と技術は禁忌とされ,迷信と恐怖に置き換えられていく。
★人類の黄金期を支えた標準テンプレート生産装置(STC)
STCは,人類のあらゆる技術情報と設計図を収めたデータベース付きの生産装置だ。植民地で必要となるものを現地の資源から効率的に製造できる優れモノで,これによって文明レベルに差のある辺境の植民地であっても,高度な技術水準を再現することが可能となった。偉大な発明の1つであるが,残念ながらSTCの多くは技術の時代の争乱によって失われている。
★<歪み>航法ってなんなの?
感情や思考によって形作られる精神的な領域たる<歪み>は,人類をはるか銀河の果てへと導く便利なポータルとして機能した。この航法は,物質界の皮膜を破り非物質界に航宙船舶を潜らせ,ワープドライヴで再び這い上がる工程を踏むため,非物質界に巣くう捕食者の懐に飛び込む形になる。そんなわけで,備えなしに入れば無事には帰れない。
<歪み>内に入った船舶は,そこに巣くう非物質界の捕食者にとってまばゆい灯火のごとく輝き放ち,防衛手段を持たねばたちまち乗員の魂魄は食らい尽くされるリスキーな航法なのだ。
仮に襲撃を逃れられたとしても,第三の目によって歪みの潮流を視るナヴィゲイター(航宙士)がいなければ目的地へ到着することも叶わない。乗組員の航海はまさに命がけだ。それゆえナヴィゲイターは帝国内で非常に重宝され,その家系は地位ある貴族として扱われる。
悪夢の潮流からの干渉を防ぐゲラーフィールド,変異人種であるナヴィゲイターを導入したことで帰らぬ船の数は減ったものの,<歪み>内でナヴィゲイターが正気を保ち続けられる保証はない。恐ろしい旅路だ。
★<歪み>とサイキック
異能者は<歪み>から得られるエネルギーを利用し,雷を落としたり,シールドを張ったりといったサイキックを使用できる。
便利な力ではあるのだが,サイキックを使役するということは,それだけ<歪み>による精神汚染を受けやすくなるということ。制御を誤れば発狂,または混沌の者を物質界へと招き入れてしまう危険がある。
★アエルダリの堕落が招いた<歪み>の嵐
人類のめざましい発展の裏で,銀河を掌握していた一大勢力“アエルダリ古王国”が,繁栄の末に退廃と堕落に身を委ねていた。
旧き者,ネクロン,ク=タンが銀河から姿を消し,種の存亡を揺るがす脅威がなくなると,アエルダリは神々への崇拝や敬意を忘れていった。
発展したテクノロジーを有するがゆえ一切の苦労を負うことなく生活を維持でき,かつ数世紀にもわたる寿命を持つ彼らは,自らの欲望を叶えることに情熱を注いだ。いや,享楽を味わうことでしか満たされなくなっていたのだ。
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その見事なまでの探究心は,より刺激的で暗い欲求へと発展していった。あらゆる新興宗教が生まれ,アエルダリ古王国が無政府状態になると,欲望にとりつかれた同族同士で争いが頻発した。
秩序なきアエルダリの星々では欲求を満たすがために,日常的に殺人,拷問が横行し,暴徒化した民衆の怒号が響き渡っていたという。
あまりにも過激で退廃的なパーティーを数千年も続けた結果,彼らの集合的な精神エネルギーを糧に新たな渾沌神が生まれようとしていた。その前兆として<歪み>のエネルギーが不安定になり,惑星を分断させる嵐が吹き荒れた,というわけだ。
第2章:不和の時代にさした光明,皇帝現る
<歪み>の嵐による分断は,人類文明にとって致命的な打撃となった。これは地球も例外ではなく,外部からの補給なしには高度な文明を維持できず凄惨を極めていた。
秩序なき地球では,技術蛮族(テクノバーバリアン)が廃墟となった都市国家を支配し,血なまぐさい争いに明け暮れ,まさに退廃的な世紀末の様相を呈していた。
分断に苦しんだ“不和の時代(M25-30)”も末期に差し掛かった頃,地球に一筋の光明が差し込む。のちに“皇帝”として帝国に君臨する人物の登場である。
並外れた能力と知性を持つかの存在は,優れた軍事指導力をもって兵団を率い,地球にはびこる軍閥をバッタバッタと制圧していった。
その戦いで投入されたのが,遺伝子操作によって創造された超人兵<雷霆兵(サンダーウォリアー)>だ。のちに<戦闘者(アスタルテス)>として帝国の盾となるスペースマリーンの前身である。
皇帝が地球全域を支配下に置いた頃,銀河にはある変化が起きていた。渾沌の神の一柱であるスラーネッシュが爆誕し,誕生時に発生した爆縮によって銀河に吹き荒れていた<歪み>の嵐が消し飛んだのだ。皇帝はこれをチャンスと捉え,人類再統一に向けた次なる計画に着手した。
その1つが,不和の時代を経てもなお,高度な技術を維持していた火星との同盟だ。機械賢人(カルト・メカニカム)らの技術を欲した皇帝は,武力による征服ではなく外交的手段で歩み寄り,同盟を結ぶことになる。
賢人らは皇帝を機械神オムニシア(万機神)の化身として認め,帝国に技術支援を提供することを約束。その見返りに,皇帝は機械神教の自治と宗教的自由を保証した。
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余談だが,この同盟以降のカルト・メカニカムは,皇帝を万機神の化身として崇めているのだが,当の皇帝は大の宗教嫌いだ。自身を神として信仰するなどもってのほか,なんなら宗教団体はすべからく弾圧したい派である。
カルト・メカニカムは例外とするほどに,彼らの技術力が魅力的だったということだろう。
次なる一手として着手したのが,総主長(プライマーク)の創造だ。銀河の星々をめぐる人類再統一の道のりは途方もなく長い。超人の皇帝であっても,そのすべてを1人で管理するのは難しいものだ。
そこで,自らの遺伝子から20人の総主長を創造し,20の兵団の指揮をゆだねようと考えたのだ。しかし不運なことに,渾沌の勢力の手によって総主長たちの養育ポットは<歪み>の潮流に投げ入れられ,幼き彼らは銀河各地へ散り散りになってしまうのだった。
予期せぬ損失を被るも,皇帝は総主長らの遺伝種子を使用し“スペースマリーン”を生み出す。この超人戦士らは,通常の人間をはるかに凌駕する身体能力と寿命を持ち,帝国による銀河征服を先導する存在となった。こうして皇帝は,人類再統一に向けた<大征戦(グレイトクルセイド)>に乗り出すことになる。
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★スラーネッシュ誕生の裏で起きた惨劇
アエルダリの堕落を糧に,<歪み>の中で産声をあげたのは,快楽と堕落の神スラーネッシュだ。誕生の爆縮はアエルダリ古王国を中心に広がり,多くのアエルダリを絶命させ,その魂はスラーネッシュによって食い尽くされたという。
この出来事によってアエルダリ古王国は滅亡し,銀河で繁栄を極めたアエルダリはその数を大きく減らすこととなった。皮肉にもアエルダリ古王国の終焉が,人類の銀河再進出につながった形だ。
ちなみに,アエルダリのすべてが爆縮に巻き込まれたわけではなく,爆縮前に王国から離反していた者や,運良く回避できた者たちもいた。
爆縮を逃れ残存するアエルダリの部族はいくつかの勢力に分たれた。方舟(クラフトワールド)に乗り星々を巡る「アシュルヤーニ」,惑星に入植し自然との共存を目指す「エクソダイト」,<笑う神:セゴラック>に仕える戯曲の殺戮者「ハーレクィン」,宇宙をゆく悪名高き海賊「コルセア」,<死の神:インニアード>の元で種族の救済を唱える「インナーリ」,そして<灰暗き都>コモラフの歪んだ住民「デュカーリ」,といった具合だ。
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★地球統一の功労者サンダーウォリアー
遺伝子工学の末に生まれた超人兵サンダーウォリアーは,今日の帝国を守護するスペースマリーンのプロトタイプ版といえる存在だ。当時の技術力の問題なのか,皇帝が意図的にそうさせたのかは不明だが,サンダーウォリアーは致命的な欠陥を抱えていたという。
統一戦争が終結すると表舞台から姿を消すのだが,彼らは本当に滅んだのだろうか?
★ここがすごいよカルト・メカニカム
のちに,帝国技術局(アデプトゥス・メカニカス)と呼ばれる彼らは,知識の化身である万機神を信仰している。万機神は機械や技術に宿ると考えられており,彼らにとっての知識,とくに失われた古代技術は神聖なものとして扱われる。
身体改造を積極的に行うサイボーグ推進派であり,見た目はほぼロボットだ。また,テクノロジーを宗教的な儀式や教義と結びつけているのが特徴。機械整備の折には香を焚きあげ,聖油を塗り,祈りを捧げることで機械に宿る精霊をなだめ,不調を鎮められると考えている(もちろんちゃんと整備もする)。この奇妙な設定,ゾクゾクしないだろうか?
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★消えた総主長たちの行方
渾沌の者によって<歪み>に投げ入れられ,銀河各地の惑星に不時着した総主長たち。のちに行われる大征戦の過程で皇帝との再会を果たすのだが,彼らは人間を遥かに超える強靭な肉体と精神をもって,惑星の環境に適応し独自の成長を遂げる。コアブックの記述によると,皇帝との再会時には成人していたようだ。
それぞれの惑星で得た経験を糧に,独自の性格と信条を形成しており,若くしてその惑星の支配者,英雄,あるいは伝説的な存在となった者もいる。おもしろいのは,誰もがみな皇帝のような高貴な思想であるというわけではなく,歪んだ正義感,荒ぶる暴力性,サイキックへの執着など,困った特性を引き出した者もいるようだ。
★スペースマリーンはどこからくるの?
総主長の遺伝種子を用い,生み出されるスペースマリーンたち。彼らは生まれつきの存在ではなく,厳しいプロセスを経て人間から“改造”されることで生み出される。
スペースマリーンになる条件は,思春期前後の若い男性,かつ19の特殊臓器の移植に耐えられることだ。肉体改造を行い,精神調整と厳しい訓練を経て,パワーアーマーが与えられて初めて,兵団の一員として迎え入れられる。臓器の移植には危険が伴い,多くの候補者が命を落とすという。
余談だが,帝国の戦力=スペースマリーン兵団のイメージが強いが,身体強化を施されていない一般兵による軍団ももちろんいる。帝国防衛軍がそれにあたるのだが,彼らはあくまで普通の人間のため,個々の力ではなく集団戦による圧倒的物量で敵勢力を制圧する。使いつぶされることを前提にしており,戦闘を15分生き残ったら“幸運”らしい。
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第3章:人類再統一の船出――大征戦始まる
30千年紀末,人類史上最大の軍事作戦<大征戦(グレイトクルセイド)>が始まった。簡単に説明すると,<大征戦>は不和の時代に分断された人類の支配域を巡り,再び1つの文明圏のもとに統合する軍事遠征だ。
平和的な交渉によって帝国に帰順するならばよし! 抵抗もしくは,異種族に支配されていれば,ありったけの武力ですり潰す! という感じの遠征内容で,皇帝自らが指揮をとり銀河へと旅立った。
船出から数十年経つころには,大征戦は勢いを増していき,数百にのぼる惑星が帝国の旗の下に集められた。
大征戦の最中,皇帝は銀河各地に散らばった総主長らを次々と発見した。最初に発見されたのはホルス・ルペルカル。のちに<大征戦>の指揮を任されることになる皇帝の右腕だ。
そうして発見された総主長らは,自らの遺伝種子から創られた軍勢,スペースマリーンの指揮を執り<大征戦>に加わることとなる。
皇帝の遺伝子を継ぐハイスペックな総主長らの参戦が,<大征戦>の進行を加速させたのは想像に難くない。だが忘れてはならない,総主長のすべてが高潔無比の聖人ではないことを。
31千年紀,人類がオルクの一大勢力を壊滅させウラノール戦役で勝利をおさめると,皇帝はホルスを<大元帥(ウォーマスター)>に任命し,<大征戦>の指揮権を委任。極秘プロジェクトに着手すると告げて地球へ帰還してしまう。
プロジェクトの内容はごく限られた者が知るのみで,皇帝の息子である総主長たちにも知らされていなかったという。
ホルスの指揮のもと<大征戦>はさらに勢いを増すも,皇帝の不在は総主長たちの間に疑念を生み,とくにプロジェクトから除外されていると感じた者たちの間で不満が募っていた。
皇帝が第一線を退いたことだけが不和の原因というわけではないが,ここで生まれた溝は帝国を二分する事件<ホルスの大逆>に影響を与えることになる。
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★人類に画期的な移動手段をお届け! 皇帝の極秘プロジェクト
地球に帰還した皇帝が秘密裏に進めていたのは,<旧き者>が銀河に張り巡らせた移動経路<網辻>の研究だ。
危険の伴う<歪み>航行に代わる移動手段として,星々の間を驚異的な速さで移動できる<網辻>を利用すべく,皇帝は秘密裏にポータルの解析と確立を進めていたようだ。なお,この計画の中核となる制御装置が<黄金の玉座>である。
★官僚制度の誕生と新たなイデオロギー
<大征戦>が進み帝国の統治体制も徐々に整備され,<地球の至高卿(ハイロード・オヴ・テラ)>を頂点とする官僚制度が確立された。あわせて皇帝は,新たなイデオロギーとして“帝国の真理”を提唱している。
その内容は「信じるべくは論理と理性のみであり,あらゆる宗教と迷信は弾圧すべし」というもの。神々や超自然的存在,宗教,迷信の一切を否定し,皇帝のもとに団結せよ,という御触れだ。
というのも,カルトや迷信は,不和の時代に人類社会を衰退させた大きな要因であり,渾沌の神々の糧となる思想だからだ。帝国の民から迷妄を取り除けば,渾沌の神々の力を弱められると皇帝は考えたのだろう。
だがこの厳しい弾圧は,皇帝の神格化を加速させ,帝国を巨大な宗教国家へと変貌させるきっかけとなってしまう。
★思考機械は禁止,半機械生命体はOK?
<大征戦>は人類を再統一する軍事遠征であるとともに,分断によって失われたテクノロジーの回収も目的とされていた。そうして人類が古代の科学的知識を取り戻す一方で,皇帝は人類を脅かす可能性のある技術を禁じ,<歪み>を利用するサイキックの使用を制限した。
技術の時代に起こった思考機械の反乱で得た教訓から,とりわけ自律的な知性を持つ機械の開発は禁忌とされている。他方で,サーボスカルやサーヴィターといった限定的な知能を持つ機械や,生体機械の開発は認められている。
サーボスカルとは,帝国に忠誠を尽くした信者や従僕の頭蓋骨をベースに作られるドローンのこと。この素材になることは,死後も帝国への奉仕を続ける名誉とされている。
一方でサーヴィターは,犯罪者や戦争捕虜の脳を機械に接続した半機械生命体であり,人間のロボット化(自由意思はない)という倫理的に難のある技術である。
第4章:帝国を二分する反乱<ホルスの大逆>
百年を超える大征戦,いよいよ人類が銀河を掌握……と思いきや,とある事件が起きる。それは,大元帥ホルスの堕落だ。
遠征中に重傷を負ったホルスは渾沌に魅入られし総主長ローガーの策略によって,欺瞞と疑念を植え付けられ渾沌の神々に忠誠を誓ってしまう。皇帝に対する忠誠が憎悪へと変貌したホルスの裏切りの始まりである。
<ホルスの大逆>と呼ばれるこの大規模な内戦は,スペースマリーンの20兵団のうち9つが忠誠派として帝国を守り,残りの9つが大逆派としてホルスと徒党を組んだとされている。まさに帝国を真っ二つに引き裂き,兄弟同士が互いに命を奪い合う惨劇が繰り広げられた(残りの2つは帝国の記録から抹消されており,詳細は不明)。
皇帝を打倒すべく,地球の防衛線を突破せんとする大逆軍。数多の戦いを経て,いよいよ地球包囲戦へと突入すると,ついに旗艦ヴェンジフル・スピリットにて皇帝とホルスが刃を交える。
皇帝は瀕死の重傷を負うも,ホルスを滅殺。旗印を失った大逆軍は撤退を余儀なくされた。かくして,父と子の悲しき対決は銀河史上最も悲惨な結末を迎えたのだ。
その後,瀕死の皇帝は地球へと運ばれ,<黄金の玉座>に安置された。玉座は<網辻>計画のために設計されたものだったのだが,皇帝の生命維持装置として役割を果たすことになってしまった。
1人の将に戦力を集中させることなかれ――この大逆から得た教訓は,総主長ロブート・グィリマンによって<戦いの聖典>に記されることとなる。
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★<ホルスの大逆>は「WH40K」屈指の沼落ち地帯
かなり端折りながら流れを書いたが,<ホルスの大逆>はイシュトヴァーンIIIの裏切りから始まり,ウルトラマールへの強襲,地球への最終進路を確保すべく起こったタイタンデスなど,数多くの戦いが巻き起こった。
もちろん,大逆中に起きた戦いも見どころではあるのだが,それぞれが大逆に至ったエピソードや,後世に残した呪い,総主長同士の友情と決裂を描く個々の物語も注目どころだ。
<ホルスの大逆>と総主長周りのエピソードは,調べれば調べるほど沼にハマってしまう面白さだ。本稿では紹介できなかったが,総主長サングィニウス,ローガー,マグナス,フルグリムのエピソードは必見。
★大逆の最中,皇帝は何をしていた?
<ホルスの大逆>で描かれるのは,忠誠派と大逆派に分かれた総主長らの戦いが主となっており,当の皇帝は地球に籠りきりだ。大逆の初期に皇帝が介入していれば,ここまで大きな内乱には発展しなかったのでは……と考えずにはいられないのだが,出るに出られない事情があった。
時は遡り<ホルスの大逆>初期,幻視によってホルスの裏切りを察知した総主長の赤きマグヌスは,この事実を皇帝に伝えるべくサイキックを使って警告を送った。しかしマグヌスの異能力は皇帝が構築した<網辻>を損傷させ,渾沌の軍勢がなだれ込む裂け目を形成してしまう。
流れ込むディーモン,食い殺される技術者たち,広がり続ける裂け目。地獄という言葉がふさわしい状況の中,皇帝はディーモンに抗いながら<網辻>の裂け目を閉じるため,自らの精神力を注ぎ込まねばならなかった。そりゃあ,それどころじゃないですな。
★逃げおおせた大逆軍の行方
彼らの多くは巨大な歪みの乱流地帯<恐怖の眼>へと飛び込み,帝国軍からの追撃を逃れた。この領域は現実世界と非物質世界の境界が曖昧になっている場所で,渾沌の力が強く働いている。
大逆軍は時間の流れが異なるこの領域で変貌を遂げ,ケイオス・スペースマリーンをはじめとする渾沌の軍団として知られる存在となった。
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★皮肉にも生きる屍は“神帝”となった
<黄金の玉座>に接続された皇帝は,玉座の生命維持機能によって生きる屍となった。肉体は朽ち,自ら軍を率いることも,同胞と直接言葉を交わすことも叶わない。
しかし,皇帝の強靭な精神は今もなお玉座に残り続け,<歪み>を貫く聖なる光<星辰波(アストロノミカン)>を放ち人類を導いている。
<ホルスの大逆>以降の皇帝の状態は国民に秘匿され,「黄金の玉座から人類を永遠に見守り,保護する全能の神」として神格化する思想が急速に広まった。
皮肉にも,神帝崇拝を推進する帝国聖教会と呼ばれる国教組織までもが設立され,皇帝が生前否定していた宗教が,今や帝国の結束を保つ核となっている。
★<戦いの聖典>の内容は結構細かい
大規模な大逆を防ぐべく,兵団を1000単位に分割せよと唱えた戦術書。ロブート・グィリマンによってしたためられた聖典の内容は,それだけにとどまらず,自らが持つ軍事と兵站の知恵が数千ページにわたってまとめられているという。
戦局ごとの戦略と戦術,指令書の書き方,部隊の紋章に何がふさわしいか,武装の完全無欠なリストなど,スペースマリーンがとりうる行動で聖典に書かれていないものはない,と言われるほど情報が網羅されているらしい。
いわばスペースマリーンにとってのありがたい教科書なわけだが,すべての兵団が聖典の内容を遵守しているわけではなく,兵団の伝統を優先している隊もあるそうだ。
第5章:終わりなき戦争の41千年紀――衰退と絶望の中の灯
絶対的な統治者を失った帝国は,迷信と恐怖に支配され,技術革新は停滞,異端審問が日常となった要塞国家へと変貌した。
テクノロジーは進歩するのではなく保存されるものとなり,革新は異端視されるようになった。帝国を管理する巨大な官僚機関は,数百万の居住世界を抱え,惰性で動く巨大な組織を何とか維持しているような状態である。
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41千年紀になっても,帝国は終わりなき戦争に苛まれている。なかでも強奪者アバドンによる13度目の<黒き征戦>は,人類の版図を分断し帝国途絶領域を生みだした。
戦団ルナ・ウルフのファースト・キャプテンであったエゼカイル・アバドンは,ホルスの死後,大逆軍の残党を率いてきた人物だ。彼は過去1万年の間に12回の大規模な侵攻(黒き征戦)をしかけ,そのたびに帝国は侵攻を食い止めてきたが,13度目の征戦によってケイディアが壊滅。これをきっかけに,銀河を横断する巨大な<大亀裂(グレイト・リフト)>が形成された。
この邪悪な裂傷により,天の川銀河は文字通り真っ二つに分断され,帝国は窮地に立たされている。
しかし,絶望の暗闇を照らす灯ともいえる出来事が起きた。その1つ目が皇帝に揺るぎなき忠誠を誓う総主長グィリマンの復活である。彼は<ホルスの大逆>以降,総魔長フルグリムとの戦いで致命傷を負い,ステイシスフィールドに安置され1万年の眠りについていた。
黒き征戦にてケイディアが陥落するなか,インナーリのイヴライネと機械教団の重鎮ベリサリウス・カウルの助力を得て,長き眠りから目覚めたのである。
1万年の時を経て,論理と理性で統治されるべき帝国が,恐怖と盲信によって腐敗する宗教国家へと変貌した姿を見て,グィリマンはどのような心境だったのだろうか――。
地球へと帰還したグィリマンは皇帝との謁見を果たし,その後,摂政としての地位を得る。精神のみの存在となった皇帝に代わり,グィリマンは今日の帝国の大規模な軍事,行政改革に力を注いでいる。
2つ目が,新たな戦力プライマリス・スペースマリーンの実戦投入だ。グィリマンの指示を受け1万年にもわたって進められていた極秘プロジェクトで,ベリサリウス・カウルの手によってより身体能力が高く,安定した遺伝子を持つプライマリス・スペースマリーンが開発された。
この新戦力の導入は,多くの戦場に新たな戦力をもたらした一方で,伝統を重んじる一部の戦団からは懐疑的な反応も示された。
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★<大亀裂>の影響
ケイディアの崩壊が<大亀裂>を生じさせた要因の1つとされているが,これは仮説にすぎず亀裂の原因ははっきりとは分かっていない。
宇宙で起きたあらゆる事象が積み重なったこと,ケイディアに設置されたノクティリスの石柱の破損が<歪み>の拡大を誘因し,<大亀裂>が生じたと帝国の技術者たちは分析している。
ちなみに,ノクティリスの石柱には<歪み>の影響を遮断する効果がある,という研究者の談もある。
銀河を横断するように生まれた<大亀裂>には,激しい歪みの嵐が吹き荒れ,テラから放出されるサイキック信号<星辰波>を遮断している。
皇帝の支配域から隔絶された“帝国途絶領域”は,星辰波通信はおろか長距離ワープも叶わぬなか,恐ろしき渾沌の軍勢や異種族を相手取り孤軍奮闘を強いられている。
★新たな戦力プライマリス・スペースマリーン
上述したとおり,思春期前後の若い男性に遺伝種子から培養された19の特殊臓器を移植することで,スペースマリーンは生み出される。その上位版であるプライマリス・スペースマリーンの場合は,さらに3つの特殊臓器の移植が必要となり,それらによって生理的機能がさらに高められるという。
すでにスペースマリーンとなっていた者たちに,3つの俊英臓器を移植することでもプライマリス化が可能だそうだ。その手術を最初に受けたのは,ウルトラマリーン戦団長マルネウス・カルガーであったといわれている。極度の危険を伴う数日がかりの手術であり,術後の肉体への負担も大きい。
41千年紀の終わりに立つ帝国は,「戦争しかない(There is only war)」のかもしれないが,その闇の中にも,わずかな希望の光は灯り続けているのである。
超人的な皇帝,遺伝子強化された宇宙軍団,巨大な官僚機構,そして数え切れないほどの一般市民の犠牲によって,帝国は今日も存続している。銀河で最も不幸な1万年を経ても,人類の物語はまだ終わらない。
それこそが,「WH40K」世界の最大の皮肉であり,希望なのかもしれない。
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