連載
グリッドなしで描く地中海の街「Town to City」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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駅に降り立つ人々の瞳は,これから始まる新しい生活への期待に輝いている。ここの主となり,たった一軒の家から街の歴史を刻み始める。
住民のささやかな願いを叶え,レンガを積み上げ,やがては賑やかな都市へと育て上げるのだ。
本日紹介するのは,「マス目」に縛られない自由な建築システムを特徴とする「Town to City」だ。
本作では,曲がりくねった道を敷き,不規則に建物を配置していくことで,現実にある古い街並みのような有機的な景観を作り出せる。
この土地で暮らす住民には一人ひとり独自の思考があり,彼らの幸福度を高めることが街を大きくする鍵となるのだ。
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食料の屋台を置いたり,花壇で通りを飾ったりして住民を喜ばせると,街の評判が上がり新たな移住者がやってくる。人口が増えれば技術研究が進み,より高度な施設が建てられるようになる。厳しいノルマや資金繰りに追われることはない。住民の声に耳を傾け,ひたすらに理想の景観を追い求めることに集中できる作品だ。
曲線を描く有機的な街並み
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多くの都市建設ゲームが碁盤の目状の区画整理を強いるなか,本作はそこから解き放たれている。道は緩やかにカーブし,建物はどんな角度でも置ける。この仕組みのおかげで,整然としすぎない,生活の匂いがする路地裏や広場を生み出せる。
建物の隙間を埋めるようにベンチや木々を置けば,そこには計算された都市計画ではなく,長い時間をかけて自然と広がっていったかのような美しい風景が立ち上がる。
住民たちの小さな物語
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ここに住む人々は単なる数字の集まりではない。それぞれが名前を持ち,日々の生活を営んでいる。「家の近くに公園が欲しい」「家族を呼びたい」といった彼らのつぶやきに応えることが,プレイヤーの主な仕事だ。
国を揺るがすような壮大なドラマこそないが,こうした小さな願いを一つずつ叶えていく過程そのものが,街の歴史となり愛着へと変わる。彼らの幸福そうな様子を眺めるだけで,心が満たされるはずだ。
失敗を恐れない優しい設計
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街づくりにつきものの,破産や犯罪といった頭の痛い問題はここにはない。資金は尽きてもゲームオーバーにはならず,自分のペースで立て直せる。この緩やかなルール設定は,効率を追い求めるプレイから開放してくれる。
失敗を気にせず,納得がいくまで装飾にこだわり,何度でも作り直せる。ただひたすらに,自分の思い描く理想の風景を作り上げることに没頭できるのだ。
「Town to City」は,効率や数字との戦いに疲れた人にこそ触れてほしい一作だ。ボクセルで描かれた穏やかな世界で,気の向くままに道を引き,花を植える。そんな箱庭遊びの原点とも言える楽しさが詰まっている。自分だけの理想郷を,ゆっくりと時間をかけて育ててみてはどうだろうか。
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