連載
悪魔の少女がしっぽでお仕置きしていく「Brush Burial: Gutter World」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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コンクリートの迷宮で,悪魔フェンネルは今日も影に潜む。頼れるのは腰に差したナイフと,意のままに動く二股の尻尾だけ。
慈悲を与えるか,それとも冷徹に命を摘み取るか。この薄暗い底辺で生き残るため,彼女はまた一歩,深淵へと足を踏み入れる。
本日は,Knife Demon Softwareが手掛ける「Brush Burial: Gutter World」を紹介しよう。本作は,退廃的な都市の最下層を舞台にした一人称視点のアクションゲームだ。プレイヤーは,故郷を追われた悪魔「フェンネル」となり,この過酷な環境で生き抜くために汚れ仕事に手を染めていく。
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このゲームの特徴は,自由度の高い攻略スタイルにある。敵を正面からねじ伏せてもいいし,誰にも見つからずに闇から闇へと葬り去ってもいい。その中心にあるのが,主人公の特異な身体能力だ。
とくに,自在に動く長い尻尾を使ったアクションが,本作の見どころとなっており,高所への移動から戦闘時の搦め手まで,あらゆる場面でこの尻尾が鍵となる。
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マップは立体的で複雑に入り組んでおり,プレイヤーの観察眼とひらめきが試される作りになっている。決まった正解はなく,目の前の道具と自身の能力をどう組み合わせるかは,すべてプレイヤーの判断に委ねられているのだ。
尻尾を使った無限のアクション
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主人公の二股に分かれた尻尾は,あらゆる局面で活躍する万能ツールだ。パルクールのように壁面を自在に移動したり,敵の頭上からの奇襲したり,あるいはオブジェクトをつかんで投げつけたりなど,その用途は多岐にわたる。
特に敵を絡め取ってからの処刑アクションは,視覚的なインパクトだけでなく,武器を持たない状況での重要な攻撃手段となる。この尻尾を使いこなす感覚こそが,本作の手触りを決定づけている。
試行錯誤を促す濃密な空間
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ステージ数は少ないが,そのぶんマップの密度は極めて高い。迷路のように入り組んだ空間には無数の侵入ルートが用意されており,配管を伝うか,窓から忍び込むか,プレイヤーの判断が試される。
一度のクリアで満足するのではなく,不殺や完全隠密といった厳しい条件下で何度も挑むことで,新たな発見がある。狭く深く作られた箱庭は,プレイヤーが独自のアプローチを研究し,実践するための実験場となっているわけだ。
頽廃と官能が混じる世界観
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搾取と貧困が蔓延する辺境の植民地という舞台設定が,独特の哀愁を漂わせている。主人公フェンネルの挑発的で官能的なビジュアルと,血生臭い暴力描写が目立つ一方で,底辺で生きる者たちの人間臭い営みも丁寧に描かれる。
単なる過激な演出にとどまらず,社会の暗部をデフォルメしたような世界観が,プレイヤーを奇妙な居心地の悪さと,そこから抜け出せない引力で縛り付けるのだ。
本作は,広大な世界を冒険する長編の叙事詩ではない。限られた空間で極限まで自身の動きを研ぎ澄ませる,職人的な楽しみ方ができる作品だ。「Dishonored」や「Thief」といった往年の名作が持つ自由度の高さを愛し,手探りで最善手を見つけ出す過程に喜びを見出せる人であれば,この泥臭くも妖艶な悪魔の仕事に,深くのめり込むことだろう。
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