連載
料理で怪物を満腹にするデッキ構築ローグライト「ハングリー・ホラーズ」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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迎え撃つ王女の武器は剣でも魔法でもない。湯気の立つハギスと焼き菓子だ。ひとたび手順を間違えれば,次の瞬間には自分が「食事」になってしまう。
食卓という名の戦場で,生死をかけたフルコースが幕を開ける。
本日は,Clumsy Bear Studioが手掛ける「ハングリー・ホラーズ」を紹介しよう。本作はイギリスやアイルランド民話を題材にしたデッキ構築型のローグライトカードゲームだ。プレイヤーは王女として,王国を脅かす飢えた怪物たちを自慢の料理でもてなしていく。
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このゲームの特徴は,敵のHPを削りきるのではなく「満腹ゲージ」を満タンにして満足させる点にある。戦闘は一本道のレーンで行われ,画面右側から少しずつ迫ってくる怪異に対し,手札の料理カードをプレイして対抗する。もし満腹にする前に目の前まで到達されれば,王女は無慈悲に丸呑みされゲームオーバーだ。
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独自のシステムとして面白いのが,ただ高カロリーな料理を出せばいいわけではない点だ。出発前に食材を組み合わせて作った「料理デッキ」を駆使し,相手の舌を満足させる必要がある。
敵は毎ターン,プレイヤーへの接近や攻撃といった行動を予告してくる。スタミナが尽きても敗北となるため,シビアなリソース管理,そして何より「いかに効率よく腹を満たすか」という思考が常に求められる。
民話から抜け出してきたような不気味な客人を相手に,最高のもてなしで帰ってもらう。それがこのゲームの醍醐味だ。
欲求を「誘導」してつなぐ満腹の連鎖
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本作の戦闘は,運任せのカードバトルではない。「塩味の次は甘味を欲しがる」といった具合に,敵の「欲求」は直前に食べた料理によって変化する明確な法則を持っている。
この法則を利用し,「次はこれを食べさせたいから,今はこれを出す」と,意図的に相手の欲求をコントロールしてコンボをつないでいくのだ。
コンボ中は食べた料理が消化され続け,毎ターン追加で満腹度を与えてくれるボーナスが発生する。逆に,一度でも手順を誤り欲求に合わない料理を出せば,連鎖は途切れ,積み上げた消化効果も霧散してしまう。「次の次」まで見越してコースを組み立てる,論理的な思考が求められる。
知識と巻物で挑む「美食」の旅
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ローグライトとしての周回要素は,知識とシステムの両面で用意されている。まず,怪異ごとの「大好物」を見つけ出し,図鑑を埋めていく知識の蓄積。これはプレイヤー自身の経験値となる。
加えて,道中で拾える「タリエシンの巻物」を使った育成も重要な要素だ。これを消費することで,獲得資金の増加や最大スタミナの上昇といったパッシブ能力を永続的に強化できるのだ。
知識で攻略の糸口を掴み,巻物で王女自身をたくましく育てる。この二つの成長が,高難易度な晩餐会を乗り越える鍵となる。
ポップなハートと無慈悲な捕食
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ビジュアルのバランス感覚も見逃せない。ドット絵で描かれた怪異たちは,料理に満足するとハートを浮かべて喜ぶなど愛嬌たっぷりに描かれる。全体的にポップな雰囲気だが,一歩間違えて距離を詰められると,唐突に「丸呑み」される残酷な結末が待っている。
この可愛さと死の隣り合わせなギャップが,イギリス・アイルランド民話特有の不気味さを際立たせている。明るいBGMの中で行われる命がけの饗宴は,独特の没入感を生んでいる。
「Hungry Horrors」は,暴力ではなく「食」で解決するという平和なコンセプトを掲げつつ,その実,シビアなリソース管理とコンボ構築を求めてくる骨太な作品だ。相手の行動を読み,手札を整え,完璧なオーダーを通した時の達成感は格別である。Slay the Spireのような思考型ゲームを愛する人や,少し変わったファンタジーに浸りたい人に強く推したい一皿だ。
- 関連タイトル:
ハングリー・ホラーズ
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