連載
幽霊とカードで会話して真相に迫る「CARIMARA: Beneath the forlorn limbs」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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プレイヤーは声を持たぬ小さな魔法使い「カリマラ」となり,この静寂に包まれた家を訪れる。
言葉の代わりにカードを差し出し,そこに秘められた真実を探る,優しくも不穏な夜が幕を開ける。
本日は,一切の言葉を持たない主人公が,手に入れた「カード」を使って意思疎通を行う独自のシステムを特徴としたアドベンチャーゲーム「CARIMARA: Beneath the forlorn limbs」を紹介しよう。
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プレイヤーは家の中を歩き回り,家具や道具,あるいは住人たちに触れることで,その対象を描いたカードを手に入れる。集めたカードは単なる収集品ではなく,他者との会話や謎解きの鍵として機能する。
たとえば,幽霊の正体を探るために,関連するカードを老婆や動物たちに見せて反応をうかがうのだ。
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こうして集めた情報の断片を組み合わせ,最終的に「誰が,誰を,何で殺したのか」という問いに対し,三枚のカードを提示して真実を告げる。探索で見つけた物がそのまま言葉となり,推理へと自然につながっていく流れが,本作の体験を特別なものにしているわけだ。
言葉代わりのカードが紡ぐ対話
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本作では,会話の選択肢を選ぶのではなく,持ち物であるカードを相手に見せることでコミュニケーションをとる。何気ない道具のカードでも,見せる相手やタイミングによって返ってくる反応が変わるのが面白い。
相手が何を知りたがっているのか,どのカードを見せれば心を開いてくれるのかを推測する過程は,言葉を使わないからこそ,相手の感情に寄り添うような手触りを生んでいる。
粗さと温かさが同居する映像美
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ローポリゴンで描かれたキャラクターや背景は,どこか懐かしく,同時に底知れぬ不気味さを漂わせている。ストップモーションアニメのようにカクカクと動く挙動や,粗いテクスチャが作り出す陰影は,まるで古い人形劇を見ているような気分にさせる。
この一風変わった表現が,いわゆるジャンプスケア系のホラーとは違う,じっとりと肌にまとわりつくような静かな恐怖を引き立てている。
愛と許しの悲しい怪談
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ホラーゲームという体裁をとってはいるが,本作が描こうとしているのは単なる恐怖体験ではない。幽霊がなぜそこに留まるのか,その背景にある悲劇と愛憎を紐解くにつれ,プレイヤーの感情は恐怖から哀れみ,そして温かいものへと変化していく。
謎を解き明かした先に待っているのは,驚きよりもむしろ,長い雨が止んだ後のような静かな安らぎだ。物語は,失われたものへの許しとして幕を閉じる。
本作は,カードを使ったユニークな対話システムと,民話をベースにした物悲しい物語が見事に調和した作品だ。派手な演出や複雑な操作はないが,その分,一つひとつの発見が心に残り,短編小説を読み終えたような余韻に浸れる。静かな夜,一人でじっくりと物語の世界に入り込みたい人に,ぜひ触れてほしい一本だ。
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CARIMARA: Beneath the forlorn limbs - この記事のURL:



























