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第3世代iPhone SEは,ホームボタンはそのままに最新SoCで生まれ変わった優等生なスマートフォン入門機だ
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印刷2022/03/25 20:00

テストレポート

第3世代iPhone SEは,ホームボタンはそのままに最新SoCで生まれ変わった優等生なスマートフォン入門機だ

 第3世代となる「iPhone SE」の2022年モデルが登場した。外観は2020年4月に登場した前世代モデルと変わらないが,搭載SoC(System-on-a-Chip)に,「iPhone 13」シリーズと同じ「A15 Bionic」を採用して,基本性能を大幅に向上したのが特徴だ。
 内蔵ストレージ容量が異なる3モデルをラインナップしており,最も安価なストレージ容量64GBモデルが税込5万7800円と,比較的手に取りやすい価格であるのも魅力となっている。
 そんな第3世代iPhone SEは,ゲーマーのニーズに応えられるのか,iPhone 13との比較も交えながら,その実力を簡単に検証してみた。

iPhone SE
メーカー:Apple
問い合わせ先:サポートページ
税込価格:5万7800円から
画像集#020のサムネイル/第3世代iPhone SEは,ホームボタンはそのままに最新SoCで生まれ変わった優等生なスマートフォン入門機だ


ホームボタンを残した定番デザイン


 4.7インチサイズの液晶ディスプレイを備える第3世代iPhone SEの公称本体サイズは,67.3(W)×138.4(D)×7.3(H)mmである。これは,第2世代iPhone SEはもとより,それよりも前の世代となるiPhone 8とも変わらないサイズであり,既存のiPhone SEや,一桁番台のiPhoneを使い慣れている人には,実に馴染む大きさだろう。

長らく採用されている定番のデザイン。2014年発売のiPhone 6から,本体やディスプレイのサイズはほとんど変わっていない
画像集#012のサムネイル/第3世代iPhone SEは,ホームボタンはそのままに最新SoCで生まれ変わった優等生なスマートフォン入門機だ

 ディスプレイ上側のベゼルに,インカメラやスピーカー孔とマイク孔を,下側のベゼルには,指紋認証センサー機能「Touch ID」付きホームボタンを配置したデザインは,今となってはクラシックな印象も受けるが,iPhone SEならではの特徴と言ってもいいだろう。物理ホームボタンの存在に,安心感を感じる人も少なくないはずだ。

 実際に手に持って,筆者がメイン端末として使っているiPhone 13 Pro Maxと比べると,「iPhone SEって,こんなに小さかったっけ?」と驚く。ケースに入れずに使っていると,薄い板を持っているような気持ちだ。手が大きくない人でも無理なく持てるサイズだろう。服のポケットにも収まりやすく,気軽に取り出せるのもうれしい。
 
iPhone 13 Pro max(左)と第3世代iPhone(右)のサイズ比較
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 ただ,筆者の場合,iPhone SEよりも厚みがあって,側面がフラットであるiPhone 13 Pro Maxに慣れていることもあって,気を抜くとするりと手から抜けていってしまいそうな感覚も覚えた。

第3世代iPhone(右)は側面が丸くカーブしていることもあり,実際に持つと見た目以上に薄く感じる
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 Appleによると,第3世代iPhone SEは,前面と背面パネルに,iPhone 13シリーズの背面パネルでも採用する強度の高いガラスを採用することで,耐久性を高めたそうだ。なお,第3世代iPhoneは,アクセサリー用規格「MagSafe」に対応しないので,周辺機器を選ぶ際に注意したい。

第3世代iPhone SEの左側面。左からミュートスイッチと音量調整ボタンが並ぶ
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右側面。左からSIMカードスロット,「電源/スリープ」ボタンの並びだ
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上側面(左)はなにもなく,下側面(右)は中央のLightningコネクタを挟んで,マイク孔,スピーカー孔が並ぶ
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ベゼルありのディスプレイにもメリットがある


 先述したとおり,第3世代iPhone SEが搭載するディスプレイは,約4.7インチサイズで解像度750×1334ドットの「Retina HDディスプレイ」である。サイズや解像度は,こちらも第2世代iPhone SEやiPhone 8と変わらない。画面の上下に太いベゼルがある点も同様だ。
 
 2017年に発売となった「iPhone X」以降のiPhoneでは,インカメラやセンサー類をまとめた切り欠け(以下,ノッチ)部分を除いて,前面ほぼ全体をディスプレイパネルで覆うデザインを採用してきた。画面の上下にベゼルを設けたiPhone SEと比べると,ノッチがあるiPhoneはベゼルがない分,表示領域を広く確保できるので,動画やゲームを表示したときに画面が大きくて見やすいように感じるものだ。
 その点,第3世代iPhone SEは上下のベゼルが太いので,画面が少し狭く感じる。

第3世代iPhone SE(左)とiPhone 13 Max Pro(右)のディスプレイを並べてみた
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 大画面感には劣るものの,ゲーム用途ではiPhone SEのディスプレイが適していると感じる場面がある。iPhone SEなら,ノッチやパンチホールによって画面の一部が欠けてしまう問題はないからだ。
 たとえば,「原神」のように画面全体を使って表示するゲームの場合,iPhone 13 Pro Maxでは,ノッチやディスプレイパネルの四隅で,表示が欠けてしまう。それに対してiPhone SEは,画面サイズは小さくても,表示が隠れることがない。
 
iPhone 13 Pro Max(左)では,ノッチでゲームの表示が隠れてしまうのに対して,第3世代iPhone SEではそれが起こらない
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 画面端ぎりぎりの位置に重要な情報表示や操作ボタンを配置するゲームはほとんどないものの,映像が表示されているはずの部分がノッチやパンチホールで隠れることを好まないゲーマーには,iPhone SEを積極的に選ぶ要素になるだろう。
 
 また,iPhone SEでゲームをするときに,ベゼルをフィンガーレストとして使いやすいのが思わぬメリットだった。指の位置をそれほど変えずに,ゲームの操作と指休めを切り替えられるので,RPGで長めのムービーやシナリオパートが挟まれるときや,FPSで動かずに相手を待ち伏せるような場合に有効だった。
 
 今や絶滅危惧種と言ってもいい,物理ホームボタンについても触れておこう。現行のiPhoneシリーズのうち,ホームボタンを備えるのはiPhone SEシリーズだけだ。指紋認証センサーである「Touch ID」をボタンに組み込んでいる点は,既存のiPhone SEと変わらない。
 
iPhone SEならではの特徴であるホームボタン
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 最新のiOS 15.4をインストールしたiPhone 12とiPhone 13シリーズでは,マスクをした状態でも,インカメラやセンサーを使った顔認証機能「Face ID」が利用可能になった。とはいえ,Touch IDのほうが使いやすいと感じる場面は,いくつかある。とくにApple Payを使うときに,ポケットの中で指紋認証を済ませておいて,iPhone SEを取り出すと同時にレジや改札機にタッチできるので非常に手軽だ。


内部は完全に別物。A15 Bionic採用で性能が現行世代に追いつく


 外観は前世代製品と変わらない第3世代iPhone SEだが,中身は完全に別物に生まれ変わった。とくに,SoCにA15 Bionicを採用したことで,大幅に性能が向上している。Appleによると,第3世代iPhone SEのGPU性能は,第2世代iPhone SE比で最大1.2倍,iPhone 8比で最大2.2倍の性能向上を実現したという。また,iPhone SEシリーズ初の5G端末であるのもポイントだ。

第3世代iPhone SEのアウトカメラ
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 第3世代iPhone SEのアウトカメラは,第2世代iPhone SEと同じ単眼カメラで,撮像センサーも変わっていないという。ただ,A15 Bionicに組み込まれた画像処理用プロセッサ(Image Signal Processor,ISP)は強化されており,ISPの能力を生かした画像処理によって,写真の品質が向上したという。たとえば,暗い場所での撮影時に写真の画質を改善する「Deep fusion」や,写真のフィルター機能「フォトグラフスタイル」といった,上位のiPhoneに搭載する機能が利用できるようになったのは,カメラ部分における見どころと言えよう。 

 第3世代iPhone SEの性能を確かめるため,「Geekbench 5」と「3DMark」という2つのベンチマークソフトでテストを行った。今回は,比較対象として,同じくA15 Bionicを搭載するiPhone 13 Pro Maxでも検証している。上位モデルと同じ名前のSoCを採用してはいるが,実機での性能に違いはないのかを見極めてみよう。

 まず,Geekbench 5のCPUテストでは,第3世代iPhone SEのSingle-Core Scoreが「1732」,Multi-Core Scoreが「4784」であった。対するiPhone 13 Pro Maxのスコアは,それぞれ「1743」,「4803」だ。やや下回ったとはいえ,その差は極めてわずかであり入門機的な位置付けの製品に,最上位モデルと同じ性能が備わっていることに驚く。

 一方,GPUを使ったGeekbench 5のComputeテストでは,第3世代iPhone SEが「11740」,iPhone 13 Pro Maxが「15058」と差が開いている。
 これは,同じA15 Bionicでもスペックが異なるためだ。具体的には,

  • 第3世代iPhone SE:CPUコア数 6基,GPUコア数 4基
  • iPhone 13 Pro Max:CPUコア数 6基,GPUコア数 5基

といった具合で,CPU性能では差がないものの,GPU性能はコア数が多い分だけ,iPhone 13 Pro Maxが有利というわけだ。

A15 Bionicのブロック図
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 3DMarkのクロスプラットフォーム対応テストである「Wild Life Extreme」のスコアでは,第3世代iPhone SEが「2571」,iPhone 13 Pro Maxが「3207」であった。1.25倍ほどiPhone 13 Pro Maxの性能が上回っており,ここでもGPUコア数による性能差が表れている。

 とはいえ,ベンチマークテストの結果に差があっても,それが実際の使用感に反映されるとは限らない。今回は,第3世代iPhone SEとiPhone 13 Pro Maxで原神をプレイしたのだが,画面サイズの違いに起因する要素は別として,操作した印象は差がなかったというのが正直なところだ。
 原神は,最近のスマートフォン向けゲームの中でも,とくにリッチなグラフィックス表現で知られる。画質設定を上げてプレイするには,相応の性能が求められる。
 まずは,設定メニューの「画面」から,グラフィックスのプリセットを「高」,フレームレートを60Hzに設定してプレイした。この設定では,iPhone SEでも表示がカクつくこともなく,快適にプレイできる。マップ移動時のデロード時間も短い。また,バッテリー駆動では,端末の発熱もちょっと温かいかなという程度で済んでいる。

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 グラフィックスのプリセットを「最高」にした状態でもプレイしてみた。この設定でも,スムーズに動作はするものの,iPhone SEは,かなり発熱する。第3世代iPhone SEで,長時間安定したプレイをしたいのであれば,原神の画質設定は「高」のままがいいだろう。


メインでもサブでも使える優等生


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 まとめに入ろう。
 ここまで第3世代iPhone SEの外観や性能を見てきたが,非常に良くできたスマートフォンだと言える。個人的には,大きなめスマートフォンが好みなのだが,必要な要素がぎゅっとコンパクトにまとまった第3世代iPhone SEに魅力を感じたのも事実だ。
 
 第3世代iPhone SEは,持ちやすいサイズに代表されるように,幅広い層に向けたiPhoneのスタンダードモデルとしての存在価値がそこにある。税込5万7800円という価格も含めて,これからスマートフォンを使い始めようという人にとって,手を出しやすく失敗もしない製品というのは大きい。
 また,すでにiPhone 7やiPhone 8を使っていて,慣れ親しんだサイズやデザインはそのままに,最新スペックのiPhoneを使いたいといった人にも魅力的な製品だろう。

 より大きな画面でゲームをプレイしたいという人には,合わないかもしれないが,ゲーム用のメイン端末とは別にサブ端末として使ってみるのもいいかもしれない。なお,内蔵ストレージ容量が64GBだと,重量級アプリを数個インストールしただけで余裕がなくなってしまうので,できれば内蔵ストレージ容量128GB以上を選びたい。
 

Appleの第3世代iPhone SE製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    iPhone本体

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