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[インタビュー]“フラスタ”はここまで進化! 推しイベントを彩る最新演出と制作の舞台裏を聞く

 好きなアイドルやキャラクターなどを指す“推し”。ある人にとっての推しは癒やしであり,ある人にとっては生きがいそのものであるように,応援のスタイルも実にさまざまだ――それが“推し活”である。

 イベントに参戦したり,グッズを集めたり,手紙などで想いを伝えたり……そのなかでも,ライブやイベント会場を彩る“フラスタ(フラワースタンド)”には,ここ数年で驚くような仕掛けや装飾が施されたものも登場してきた。推し本人だけでなく,見る人の目も楽しませ,話題を集めている。

 本稿では,そうした進化を続けるフラスタについて,“痛車”や“痛バッグ”になぞらえた“痛花”というキーワードで展開する専門店「感動フラワー専門店 Flower's room F(エフ)」中村佳晴さんに話をうかがった。フラスタがどのように作られるか興味のある人や,これから贈ってみたい人も必見のインタビューを,ぜひ最後まで楽しんでほしい。

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「感動フラワー専門店 Flower's room F(エフ)」公式サイト

公式Instagram

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1つのオーダーをきっかけに人気店へ
推しが喜ぶ“痛花”づくりの裏側とは?



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「感動フラワー専門店 Flower's room F(エフ)」
中村佳晴さん

 「F」では,自らも“オタク”だというスタッフが,推しへの想いや愛情を込めて,こだわりのフラスタを制作してくれる専門店だ。「F」が掲げる“痛花”というキーワードは,「推しが喜ぶ“痛い花”を贈ろう!」というメッセージが込められた,「F」の登録商標である。

 なお,店名の「F」は,六田登氏の漫画「F」からヒントを得たもので,「Flower」「Fun」「Fan」「Fantastic」「Fantasy」など,さまざまな意味を重ねて名付けられている。



“痛花”を扱うきっかけは?

4Gamer:
 ここ最近,イベント会場などでインパクトのあるフラスタを見る機会が増えてきました。「F」さんの作品も印象的なものが多く,以前から気になっていたのですが,中村さんのお店では,最初から現在のようなフラスタを手がけていたのでしょうか。

中村佳晴さん(以下,中村さん):
 2005年の開業から,店舗を持たないスタイルで,当初は一般的なお祝い花を作っていたんです。その後,流行りもあってウエディング系のお祝い花が主流になり,2011年の震災でそうした現場が一気に減ってしまったんですね。そこからしばらく低迷していて,大変だな……と思っていたところに,「こういうお花を作ってほしい」という1人のお客さまが現れたんです。

4Gamer:
 それが,いわゆる“推し活向け”のフラスタだったわけですね。

記念すべき「F」の“痛花”第1号。愛が込められた渾身の作品だ
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中村さん:
 はい。9年前でしたが,その手の実績はなかったので「なんでうちに?」と思いました。その注文は,「アイマス」(「アイドルマスター シンデレラガールズ」)の橘ありすちゃんと,声優の佐藤亜美菜さんを応援するもので,「お花でイチゴをかたどってください」という内容でした。

 最初はどのように形にすればいいのかすぐには想像がつかなくて……(笑)。それでもどうにか作ってみたところ,すごく気に入っていただいたんです。実は,サイトのTOPに載せているのがその第1号なんですよ。

4Gamer:
 そうなんですね! 確かに,当時としてはかなり個性的なご注文だったと思います。

中村さん:
 それから,その方が別のお客さまを紹介してくださって。そちらも気に入っていただけたので,うちのSNSに載せてみたところ,Webサイトを制作する会社に勤める友人が「オタク向けのフラスタ専用ページを作らせてもらえないか」と声をかけてくれました。その人自身もそういった文化に理解があったのですが,企業向けのサイトばかり作っていたので,もう少し自分の趣味や感性をいかしたかったそうなんです(笑)。

 ランディングページが出来上がったあと,その最初のお客さま2人から「Twitter(現X)で拡散すればいいんじゃないか」と言っていただき,事例写真を載せていったら,あれよあれよとお客さまが増えていったという感じです。半年後にはもう,かなり手一杯になりましたね。

4Gamer:
 ファン同士のつながりが広がっていった結果だったんですね。最初はウエディングや一般的なお祝い花を作られていたとのことですが,今でもそういったオーダーは受け付けているのでしょうか。

中村さん:
 オーダーがあればやりますが,今はもう“推し活”関連のフラスタで制作スケジュールが埋まってしまっていますね。

4Gamer:
 なるほど。“痛花”は登録商標を取られているそうですが,そのきっかけについて教えていただけますか。

中村さん:
 最初は,そのWebサイトを作ってくれた友人が「こんなネーミングがいいんじゃない?」と名付けてくれたんです。それで,知り合いの弁護士に聞いたところ,「誰も(登録商標を)取っていないよ」とのことだったので,「じゃあ,ちゃんと取っておこうか」という流れになりました。

4Gamer:
 とても方向性が分かりやすくて,親しみやすいネーミングだと感じました。幅広く対応してくれそうな雰囲気も伝わってきますね。

中村さん:
 ありがとうございます。皆さんの期待に応えるのは毎回気が引き締まりますが,そう思っていただけたらうれしいです。



制作者自身だからこそ分かること

4Gamer:
 お店では,中村さんがお客さまとのやり取りや配達を担当されていて,もう一人のスタッフが制作を担当されているそうですね。サイトではお二人とも“推し活に詳しい”と書かれていましたが……?

「F」でフラスタを制作する中村リサ氏
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中村さん:
 僕はもういい歳なので,いわゆる昭和のアニメが好きだったんです。それこそ「機動戦士ガンダム」や「うる星やつら」「北斗の拳」など,大好きでグッズを集めたりしていて。といっても,当時は今のような“オタク文化”的なものは,ほとんどなかったんですよ。

 一緒に店をやっているスタッフは妻なのですが,もともとはその手の趣味がなかったんです。でも,今のようなフラスタを作るようになってから,「こういう趣味を表に出してもいい時代なんだ!」と思ったようで。一気に爆発して,今では家の中にグッズが溢れています(笑)。

4Gamer:
 そうだったんですね! 昔はアニメや漫画の趣味を話すのに少し遠慮があったように思いますが,今ではずいぶん身近なものになりましたよね。では,制作は奥様が一人で担当されているのでしょうか。

中村さん:
 そうです。僕はお客さまとのやり取りや会場への運搬のほか,お花以外の装飾物を作ったりもします。

4Gamer:
 中村さんご自身もそういったカルチャーに親しんでこられたとのことですが,だからこそ,オーダーされる方の気持ちがよくお分かりになるのではないでしょうか。

中村さん:
 そうですね。昔と今とではファンのスタイルも少し違うかもしれませんが,お客さまからイメージなどが送られてきたときに,「これは何を表現したいんだろう」と考えるのが好きなんです。

 分からなければ直接うかがいますし,「なるほど,こういう想いをお花や装飾で表現したいんだな」と理解できると,とても作りやすいですね。必ず,100%内容を決めて,お客さまにご納得いただいてから制作に入るようにしています。

4Gamer:
 それは,オーダーする側としてもとても安心できますね。ちなみに,現在の客層は男女比でいうとどのくらいでしょうか。

中村さん:
 最初のお客さま2人は男性でしたが,現在はだいたい半々くらいだと思います。

2022年10月「Argonavis TOUR 2022 RUN-UP」(リンク)。「アルゴナビス」関連の依頼が広がるきっかけとなったフラスタ
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4Gamer:
 リピーターの割合はいかがですか。

中村さん:
 そうですね……半分以上,7割くらいはリピーターの方だと思います。

4Gamer:
 一度オーダーされた方は,「F」さんの魅力を実感されているんですね。では次に,具体的な制作の流れについておうかがいしたいと思います。



制作プロセスの実際
細かい要望は遠慮なく伝えるのがベター!


【Q】注文とやり取りの方法は?

中村さん:
 9割以上はメールでのやり取りですね。ときどき,オンラインで打ち合わせをすることもありますが,「どうしても会って打ち合わせがしたい」というご要望があった場合は,店舗を持っていないため,近くのカフェなどでお話ししています。

4Gamer:
 先ほど「お客さまからイメージが送られてくる」とおっしゃっていましたが,やはり皆さん,ラフ画のようなものを描かれるのでしょうか。

中村さん:
 イメージについては,ほとんどの方が何らかの形で送ってくださいます。イラストでなくても,過去の事例写真をもとに「ここをこのように変えたい」と伝えてくださる方もいますし,最近はAIを使ってフラスタのイメージを作成される方も増えています。

4Gamer:
 なるほど! 絵が描けなくても,AIを活用するというのは今の時代らしくて,非常に興味深いですね。

▼お店のInstagramで紹介されている多彩なフラスタの一部
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【Q】どこまで細かく要望を出しても大丈夫?

中村さん:
 それはもう,技術的にできるかどうかは一旦置いておいて,思いつく限りのご希望をうかがっています。お花に関しても,「花言葉にちなんでこの花を使ってほしい」「本数は○本にしてほしい」といった,細かなご要望をいただくこともありますよ。

4Gamer:
 こだわりたくなる気持ちはよく分かります。逆に,フラスタを作りたいけれど,具体的なイメージがまだ浮かんでいないという方もいらっしゃいますか。

中村さん:
 そういう方はあまり多くないですね……そもそも,具体的な希望がまったくない場合,うちのような店にはあまりご依頼されないのかなと思います(笑)。

 ごくたまに「まだイメージが固まっていない」という方はいらっしゃいますが,やはりキャラクターや“推し”への理解はお客さまが一番お持ちなので,明確な形でなくても構いませんので,「こういう雰囲気が好き」「こんな印象にしたい」など,思いつく範囲でイメージを共有していただけるようお願いしています。

 決して安いお買い物ではありませんし,こちらから「こうしたほうがいいですよ」と提案することはほとんどありません。

4Gamer:
 あくまでお客さまが再現したいイメージや,やりたいことを汲み取って制作されるということですね。

中村さん:
 はい。少し珍しいケースですが,「予算10万円でお願いしたい」とおっしゃっていたお客さまにイメージをうかがったところ,内容的には4〜5万円ほどでも十分実現できそうだったことがありました。

 その際は,いったんご提示いただいたイメージを見直すご提案をして,「せっかくのご予算なので,より印象に残るものを一緒に考えてみませんか」とあらためてお話をさせていただいたんです。

 「予算に合わせてしっかり作り込みたい」というご希望もうかがっていましたので,結果的には当初の内容とはまったく違う,より特別な仕上がりになりました。

4Gamer:
 そんなことがあったんですね。少し具体的な話になりますが,パネルについてはお店で出力されるのでしょうか。

中村さん:
 A3サイズを超えるものはお客さま側で制作していただき,持ち込んでもらっています。それより小さいサイズでしたら,データを送っていただければこちらで出力いたします。

4Gamer:
 そうなんですね。もう一つ気になったのが,お花屋さんのイメージとして,季節や流通の関係で使えない花があるのでは,という点です。要望どおりにいかない場合はどうされていますか。

中村さん:
 最近は,半分ほどをフェイクフラワーにするか,場合によってはすべてフェイクにすることも多いです。理由としては,フラスタではイラスト入りのパネルがメインになることが多く,生花だと高さが足りなくなってしまうんですね。

 しかも,イベントによっては数日間展示されることもありますし,生花だと萎れてしまうリスクもあります。フェイクのほうが,制作面でも融通が利きやすいという利点があります。

▼パネルが映えるフラスタ
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【Q】注文から完成までの期間はどれくらい?

中村さん:
 そのときの状況にもよりますが,最低でも制作期間として10日ほどはいただくようにお願いしています。その前に内容を決めるためのやり取りもありますし,最近はスケジュールがかなり埋まってしまっているため,できるだけ余裕を持ってご相談いただけるとありがたいですね。

4Gamer:
 そうなると,目安としては1か月くらい前に相談するのが良さそうですね。ちなみに,どのくらい前から注文を受け付けているのでしょうか。

中村さん:
 実は,来週のとあるイベントにフラスタを出されるお客さまは,1年前からご注文いただいているんです。常連の方なのですが,そのイベントでは毎年翌年の日程が発表されるため,発表のタイミングですぐ「その日にスケジュールを空けてほしい」とご連絡くださいます。ですので,日程に余裕がある場合は,早めでもまったく問題ありません。

4Gamer:
 なるほど。お店の予定が埋まっているとお願いできないこともあるでしょうし,フラスタのイメージが固まっていなくても,先に日程だけ押さえておけば確実にお願いできるということですね。実際の制作期間中は,いくつかを並行して作っているのでしょうか。

中村さん:
 一部の装飾品を除いて,基本的には妻が1人で制作していますので,並行ではなく,1つずつ丁寧に仕上げています。



【Q】使用した装飾品はどうなる?

中村さん:
 基本的には,すべてのお客さまに「イベント終了後はどうされたいか」をお聞きしています。持ち込まれたものや,装飾品を記念として手元に残しておきたいという方も多いですからね。

4Gamer:
 私は実際にフラスタを出したことはありませんが,せっかくの作品ですし,記念として取っておきたくなる気持ちはよく分かります。

中村さん:
 そうですよね。「送ってほしい」というご希望を毎回いただく方もいますし,逆に「置き場所がないので処分してください」とおっしゃるお客さまもいらっしゃいます。

4Gamer:
 それは,中村さんが配達まで担当されているからこそ対応できる,きめ細やかなサービスなのかもしれませんね。

中村さん:
 はい。配達や引き取りに関しては,すべて僕が現場に足を運んでいます。配達に関しては,フラスタがそのまま車に積めないため,現地で組み立てることも多いですね。

▼装飾アイテムが光るフラスタ
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表現は無限大。近年のフラスタはここまで進化している!


4Gamer:
 ここからは,過去の事例のなかからいくつかの作品を取り上げ,より具体的なお話をうかがっていきたいと思います。

キャラが愛する「コロッケそば」を見事に再現!


2023年1月「from ARGONAVIS 2nd LIVE -Rezonance-」
キャラが好きな食べ物であるコロッケそばをモチーフにした作品(リンク
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4Gamer:
 今回「F」さんにインタビューさせていただくにあたって,ぜひお聞きしたかったのが「from ARGONAVIS」のフラスタについてです。実は,これが今回の取材のきっかけにもなった作品なんですよね。テレビでも紹介されたそうですね。

中村さん:
 はい。こちらは,のれんなどはお客さまのほうで制作されたものを持ち込んでいただき,コロッケそばの部分は私が制作しました。

4Gamer:
 コロッケそばを,どのように……!?

2021年制作のフラスタの写真(リンク
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中村さん:
 実は数年前に,先ほどお話ししたWebサイト制作の友人から「うどん店へのお祝い花を出したい」と注文をもらったことがありました。

 その際,遊び心でうどんを模したフラスタを作ったことがあるんです。その流れで,「コロッケそばなら作れるな」と思い,オーダーをお受けしました。

 私は花屋になる前はずっと建築業界にいたんです。それで建築資材にはある程度の知識があったので,近所のホームセンターで材料をそろえて制作しました。

4Gamer:
 それは驚きです……! 3Dプリンターなどを使っているのかと思いましたが,完全に手作りだったんですね。

中村さん:
 そばの器には大きなプランターを使い,麺は家やビルなどに使われる発泡資材で作っています。コロッケも,発泡スチロールに茶色のスプレーで色を付けて……という感じですね。

4Gamer:
 お花屋さんへのインタビューで,こんなに多方面のお話が聞けるとは思いませんでした。とても面白いです!



演者の髪型を表現! フラスタの概念を超えた作品


2024年5月「鈴木愛奈ライブ2024 in TOKYO 〜果てのない旅〜」(リンク
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4Gamer:
 こちらも非常にインパクトがあって,フラスタという枠を越えた作品のように思いました。オーダー時にはどのようなやり取りがあったのでしょうか。

中村さん:
 この作品を注文されたお客さまは,コロナ禍前から「こういったものをいつかやってみたい」と思っていたそうです。そして,ようやくチャンスがめぐってきたタイミングで,ほかのお客さまからの紹介でご連絡をいただきました。

 最初にオーダーの内容をうかがった際は,どう作ればよいか正直分からなかったのですが,その方は絵がとてもお上手で,美しいイメージ図を送ってくださいました。うしろのパネルも,ご自身で描かれたものです。

4Gamer:
 この髪型の造形には,どのような素材を使われているのでしょうか。

中村さん:
 髪の毛の部分は,フェイクの細長い葉っぱを使っています。仕上がりをとても気に入ってくださったようで,その後,うちの常連さんになっていただきました。



花に囲まれた遊園地は,細部に驚きのこだわりが!


2022年11月/東山奈央 5th ANNIVERSARY TOUR「Welcome to MY WONDERLAND」(リンク
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4Gamer:
 こちらもまた,すごいボリューム感ですね……!

中村さん:
 このご注文をくださったのは,毎回ユニークなアイデアで私たちをワクワクさせてくれる常連のお客さまです(笑)。今回は「遊園地にしたい」というリクエストでしたが,イメージ画がなかったため,パネルのみをお持ち込みいただきました。

 そこで「よろしければ,今回はおまかせで制作してもよいでしょうか?」とご相談し,全体のデザインは私のほうで組み立てました。

 遊具もパネルにしてしまうと味気ないと感じ,観覧車などはキットを購入し,立体的に仕上げました。制作には予想以上に時間がかかりましたが,楽しい挑戦でした。

4Gamer:
 立体的な造形が加わると,フラスタのクオリティがさらに高まるように感じます。あっ,拡大写真を見ると,人がたくさんいるのがよく分かりますね!

Instagramより(リンク
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中村さん:
 このフラスタには,およそ80名の方が参加されていたので,すべてのお客さまのお名前とイラストを飾りました。イベント後にお礼のご連絡をいただいたのですが,参加者の皆さんが「自分がどこで遊んでいるのか探すのが楽しかった」とおっしゃっていたそうです。

4Gamer:
 それはきっと,参加された方々にとっても大変うれしい演出だったでしょうね。注文された方と中村さんの良いコミュニケーションがあってこそ生まれた,素晴らしい作品だと思います。



作曲家・林ゆうき氏への熱い思いが、本人に届いた!


中村さん:
 この2つのフラスタは,どちらも同じお客さまからのご依頼で,林ゆうきさんの大ファンの方でした。「風が強く吹いている」のほうは,「駅伝で走っているような姿を作ってください」というご希望で,その前のものでは本物のガンプラを飾りました。

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2021年12月「TVアニメ『風が強く吹いている』コンサート」(リンク
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2020年1月「林ゆうき 10th Anniversary Concert 〜劇伴食堂はやし屋〜」(リンク

4Gamer:
 林さんは「ガンダムビルドファイターズ」の音楽を手がけられていて,ご本人もガンダムやガンプラがお好きだそうですね。このガンプラは,どなたが作られたのでしょうか。

中村さん:
 こちらはお客さまがご自身で制作され,持ち込まれました。そして当日,現場で林さんがそのフラスタをご覧になって,「イベント終了後によければ,このガンプラをいただけないか」とおっしゃったんです。実は僕も撤収の場に立ち会っていたのですが,お客さまご本人が,林さんに直接ガンプラを手渡されたんですよ。

 その後,林さんがご自身のSNSにも掲載してくださったそうで,それをご覧になったお客さまが「感動して泣いた」とおっしゃっていました。

4Gamer:
 それはすごい……! 本当に,フラスタがつないだ感動的なエピソードですね。

▼林ゆうき氏のInstagramより



演者が描いたイラストをフラスタで再現!?


2025年2月「石原夏織のCarry up&up!? -公開イベント2025-」
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中村さん:
 こちらも,毎回こだわりのあるご依頼をくださる常連のお客さまからのオーダーでした(笑)。このときは「演者さんが描いたイラストをお花で再現してほしい」という内容で,妻もお花でイラストをどう表現するか工夫しながら,じっくり取り組んでくれました。

4Gamer:
 これもまた,フラスタの域を越えた作品ですね……。もしかして,線の部分も含めて,すべてお花でできているのでしょうか。

中村さん:
 はい。フェイクではありますが,イラストの線に見える部分もすべてお花でできているんです。こうした難度の高いオーダーをいただく場合は,イメージが届くまで,僕たちもドキドキしながら待っています(笑)。でも,そういうやり取りも楽しみの一つなんですよね。



こんな作品もアリ!? 盆栽風の楽屋花

2023年2月「BanG Dream! 11th☆LIVE」(リンク
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4Gamer:
 こちらはフラスタではなく楽屋花ですが,この作品にもとても驚かされました。「こんな斬新なアイディアがあるのか!」と感動しました。

中村さん:
 正直なところ,最初にご相談いただいたときは,「本物の盆栽をそのまま贈るのもいいのでは?」と思うくらい,ちょっと意外性のあるご依頼でした(笑)。

 これは,葉の部分にグリーンのカーネーションのフェイクフラワーを使っています。制作は妻が担当しましたが,「こんな材料を使ってみては?」といったアドバイスは,僕が行うことも多いですね。


これからフラスタを頼んでみたい人へ


4Gamer:
 それでは,中村さんが今後やってみたいことや,「こんなお店にしたい」と考えている目標などがあれば教えてください。

中村さん:
 実のところ,忙しすぎてあまり先のことまで考えられていないんです(笑)。お店を始めた当初の話でもお伝えしたとおり,今まではずっと成り行きに任せてここまで来てしまったので……。ただ,やりたいこととしては,予約がいっぱいでご注文をお断りするようなことがないようにしたいとは思っています。

 それと,本当は制作させていただいたフラスタをもっとSNSでご紹介したいのですが,なかなか時間が取れず,すべてを載せきれていないのが現状です。お客さまがタグ付けして投稿してくださると,本当に助かります!

4Gamer:
 それだけ中村さんの作品に魅力を感じている方が多いということだと思います。ちなみに,お店の規模を広げていくようなご予定はありますか。

中村さん:
 新しくスタッフを雇うと,万が一対応が必要なことがあった場合に大変なので,今のところ増員は考えていません。その代わりに現在は,予約がどうしても埋まってしまった場合に手伝ってくれるお花屋さんが2軒あります。

 お客さまとのやり取りはすべて僕が担当し,資料をまとめてお渡しし,制作をお願いするという形です。妻と同じような役割を担ってくださっていて,おかげでキャンセルせざるを得ない状況はかなり減りました。

4Gamer:
 そうなんですね。これからさらにお忙しくなりそうですが,今後もステキな作品を楽しみにしています。読者のなかには,フラスタに興味はあるものの,まだ一歩踏み出せずにいる方もいらっしゃると思います。そうした方に向けて,何かアドバイスをいただけますか。

中村さん:
 とにかく,「やってみたい」と思ったことは,まず自由に伝えてみてほしいですね。もちろん予算との兼ね合いはありますが,遠慮せずにご希望をお話しいただければと思います。

 むしろお客さまからのアイディアをとおして,私たちも新しいノウハウを得ることが多いんです。誰かの作品で試したテクニックが,また別の方の作品にいかされることもあります。ですので,ぜひ推しへの想いを形にするお手伝いができたらうれしいです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました!

――2025年6月19日収録

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