TGS会場のホール7,e-SportsコーナーにあったNOKブース
![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / [TGS2022]脳波でプレイスタイルが分かる。劇的にコンパクトになったNOKの脳波計を体験してみた](/games/999/G999902/20220917071/TN/002.jpg) |
日本の電子部品メーカーであるNOKは,東京ゲームショウ2022の同社ブースで,「脳波でゲームのプレイスタイルが分かる」という体験デモを行っている。同社の脳波計測関連技術については,2021年にも
レポートしているが,手軽に使えるというものではなかった。それが,2022年バージョンでは,劇的な小型化に成功しており,ようやく身近に思えてきた印象だ。今後の広がりが楽しみな脳波計測機器についてレポートしたい。
脳波を計測する装置と聞くと,ケーブルがたくさんつながったゴツいヘッドギアをかぶるといったイメージがあるかもしれない。しかし,NOKの脳波計は,帽子サイズまでの小型化を実現したのが大きな見どころだ。
帽子型になったNOKのヘッドギア
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内部構造は撮影禁止だったのだが,筆者が見た印象では,ヘルメットの内側にあるフレームに似ていた。電極は,おでこに2つと,両耳それぞれにクリップで1つずつ取り付けるだけだ。電極と聞いて,「金属製の不愉快なものではないか」と抵抗感を覚える人もいるだろうが,NOKの場合,生体ゴム電極を採用しているのも特徴で,大仰なセンサーを体に貼り付けているという感覚はなかった。
両耳に,クリップで電極を固定する。ケーブルがわずらわしいが,この構成からの脱却は難しいそうだ。電極からBluetoothでデータを飛ばすという案もあるが,遅延やノイズの問題が増えてしまうとのこと
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耳に取り付ける生体ゴム電極
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ゲームをプレイしながらの体験デモには,「ロケットリーグ」を採用していた。2人で協力プレイをしていく過程で脳波を一定時間計測して,その脳波傾向から,5つのプレイスタイルを算出するそうだ。
ヘッドギアを装着して遊んでいる……ようには見えない。白い帽子の内側が青く光っているが,これはゲーマー向けデバイスのお作法に合わせたそうだ。おそらく世界初のゲーミング脳波計? 選手の感情が色で分かれば,eスポーツの観戦における見どころ要素が増えそうでもある
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計測できるパラメータは,「ゾーン」と「集中力」,「リラックス」という3種類がある。また,右脳と左脳の動きも追って,最終的に感性評価として,「行動力」「直観力」「注意力」「判断力」「冷静さ」という5つの5段階グラフで結果を示す仕組みだ。ソフトウェアには,脳波に関わるソリューションを手がけるリトルソフトウェアと共同開発した「スポーツKANSEIアプリ」を用いている。いわゆるスポーツ用途はもちろん,eスポーツ選手向けにも使えるものなので,TGSでアピールしているわけだ。
プレイ中の計測画面。[終了]ボタンの上にある「L/R」は,左脳と右脳のシグナルを示すもので,横棒グラフはスコアの累積になる
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スポーツKANSEIアプリの機能が書かれたパネル
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実際にかぶってプレイしてみたが,とくに帽子型脳波計が気になることもなく,プレイを阻害する要因はなかった。見た目は,これからの課題としても,実用性の高さを感じる。たとえば,ゲーム実況配信では,ときおりApple Watchなどで取得した心拍数を画面に出している配信者もいるが,そういった用途であれば,今すぐにでも使えそうだ。
ただ,スポーツKANSEIアプリの仕様で,いまいちよく分からない点もあったので,今後またレポートする機会があることを期待したい。
さて,筆者の計測結果は「補佐型 フォロー」とのこと。グラフを見ると,注意力がやたらと高い結果にだった。一緒に体験することになったサードウェーブ「
GALLERIA」担当の人が,ボールに向かって突っ込んでいくのを確認しつつ,「あんまり電極がくっついてる感じがしないな」とか,「軽く首を動かしても,ずれる感じはないな」などと,確認しながらプレイしていたからだろうか。もちろん,ボールや相手の動きも目で追っていたので,その影響もあるだろう。なお,GALLERIAの人は「司令官 フォロー」という結果だった。
判定結果。「右脳がよく使われています」というコメントもあった
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ちょっと話を戻して,脳波計について,軽くおさらいしておこう。
一般的な脳波計は,その多くが「非侵襲型」ヘッドギアを使用する。電極を皮膚の表面に貼り付けて,脳波を計測する方式だ。体に電極を埋め込むインプラント型に比べて,非侵襲型はノイズ要素が増えてしまう欠点がある。だが,インプラントを体に付けるのは難しいため,社会的な実装や展開のしやすさから,非侵襲型の進化が進んでいる。
NOKブースでは,開発中の脳波計測用ヘッドギアも展示しており,ヘッドギアというよりも,ヘアバンドに近いデザインを目指しているようだ。ヘアバンドに近い形状であれば,ヘッドフォンとセットで装着しても邪魔にならないし,将来的にはVRゴーグルとの融合も期待できるという。
今回の体験デモで使用したヘッドギアに,市販のゲーマー向けヘッドセットを組み合わせた例
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開発中のヘッドギア
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ヘッドフォンを装着する前提で開発が進んでいる将来モデルのモックアップ。青いラインはLEDで発光するようだ
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「脳波で何をするの?」と思う人もいるだろうが,研究や商品開発,もちろんゲーム開発でも,脳波測定はすでに活用されており,「どういった場面でどんな反応をプレイヤーはしているのか」が分かるパラメータを取得している。ゲーマーの環境で使える技術としても,いずれは登場するだろう。
それが実現したときの使い方は,脳波計だけでなく,そのときに使える周辺技術次第になる。プレイの反省材料にしたり,ピンチになったときにアイテムを自動的に選ぶトリガーにしたりなど,現時点の技術でも使い道がいくつか思い浮かぶ読者も多いだろう。
将来的には,ブレインマシンインタフェース(Brain Machine Interface,BMI)として,脳波でデバイスを操作するための基盤技術にもなっており,たとえば,ゲームパッドと脳波でのハイブリッド操作をするゲームも期待できる。なおBMIについては,筆者による
レポート記事を以前に掲載しているので,興味がある人はチェックしてほしい。
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[2020/03/21 16:50]
NOKブースにはほかにも,脳波計測とゲームを組み合わせた実験結果を示したパネルも展示されていた。大きめの画像で掲載しておくので,興味がある人は,拡大画像で確認してほしい。視線追跡技術も交えた検証はなかなか興味深く,うまい選手になるほど目の動きが多い,といった傾向も分かるだろう。