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感情を可視化する「OVOMIND」のリストバンド型生体センサーがパワーアップ。ゲーム開発やマーケティングでの採用進む[TGS2025]
リストバンド型生体センサーで,皮膚の温度や心拍数,発汗といったパラメータを測定したうえで,機械学習によって装着しているプレイヤーの感情を可視化する,という技術を展示していたところだ。
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そのOVOMINDが,東京ゲームショウ2025(以下,TGS2025)にもブースを出展している。
今回は,TGS2025開催前にゆっくりと試せる機会があったので,アップデートした点を中心に見ていこう。
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OVOMINDの感情可視化技術におけるポイントは,同社の技術に対応するゲームであれば,プレイヤーの感情に合わせて,ゲーム内の展開や演出などを動的に変更できる点にある。
たとえば,高難度の場面でプレイヤーの感情が落ち込んでいると判定できる場合,難易度を動的に変更したり,苦手な操作やシーンを自動的に回避したりする展開が考えられよう。あるいは,苦手な操作が必要になる場合に,プレイヤーの体験を損なわないレベルで自然と助けてくれる,といったことも可能になる。
また,特定シーンでの感情の乱れも分かるので,純粋にプレイレベル向上ツールとしての可能性もある。とはいえ,ゲーマーや一般消費者層への浸透は,まだ先の話だ。
ゲーム開発シーンにおける応用では,新しい演出手法に用いるだけでなく,感情を可視化することで,品質の改善につなげられることが重要だ。
分かりやすい例を挙げると,なんらかの感情がトリガーになって離脱しやすいポイント探しがある。大型のヘッドギアを装備する必要がないので,調査側はより手軽に,被験者も心理的障壁が少なく,平常と変わらない状態でテストプレイができる点も大きい。
4Gamer読者にも,何かしらの対面調査を受けたことがある人はいるだろうし,実施する立場の人もいるだろう。そのときの回答が,本音であるかどうかは分かりにくいものだ。
その点,OVOMINDの技術は,なかなか本音を言わない,5段階評価ではとりあえず真ん中の「3」を選びがちな日本人向けの調査で手軽に使えるデバイスとして,とても都合がいい。そのため,製品やサービス開発,もしくはマーケティング分野から,注目されているわけだ。
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今回,事前に体験できたタイトルは,TGS2024でもデモに使われていたホラーゲーム「DEAD SHADOWS」だ。バージョンアップが行われ,生成AIによってプレイヤーの感情に応じた台詞が自動的に生成されたり,BGMが自動的に変化したりするようになった。
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筆者がプレイしたところ,怖がりはじめると,「何か音がしたぞ」「あいつ,こっち見てない?」といった台詞が出てきて,びっくりしていると悲鳴を上げるといった展開が見られた。
2024年のレポートでも触れているが,筆者の状態を可視化しているスマートフォンアプリの画面を撮影しようとすると,感情が撮影にシフトしたからか,一気に落ち着いた状態になっていた(筆者は,わりと第三者視点のような感じで撮影することが多い)。
今回も同様で,その都度,深呼吸が発生していたと思われる。
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台詞の生成に,生成AIを利用するのは妥当だ。プレイ中は,感情のヒートマップが拡大して,項目数も激増しているのだが,その組み合わせごとに音声を準備するのは大変だ。そもそも,プレイヤーの反応調査目的なら,そこまでの台詞を事前に用意するのは,費用対効果が悪い。
筆者は,2024年のプレイを思い出しながら,ほとんど迷わず進んでいたのもあり,AIによる台詞を聞くことはあまりなかった。もし,TGS2024のOVOMINDブースで体験していた人は,未体験の人を生贄にして,後方腕組芸すると面白いだろう。
ちなみに,DEAD SHADOWS自体の新要素として,目をつむったような画面になると,プレイヤーが落ち着くための状態に切り替わる,というものが加わった。ボタン押下の間だけ実行されるのだが,プレイ中に試したところ,デンジャーバーのゲージがもりもり回復した。
また「ストレスモード」と「リラックスモード」も追加されていた。
ストレスモードは,恐さを高める演出や(生成AIの)台詞が多い。BGMも存在していたが,プレイ中に意識するほどではなく,無音の中を歩いている感じだった。
一方のリラックスモードは,BGMの自己主張が少し強くなり,ゲームらしさが増して,台詞も「落ち着こう」などポジティヴなものが目立った。
TGS2025のバージョンでは,プレイ開始前に明示的にモードを切り替える必要があったが,将来的には,プレイ中にこれらのモードを動的に変化させるようことも可能だろう。
プレイ後に表示される情報もアップデートされていた。感情のヒートマップが,より詳細になり,
- ANNOYED(いらいら)
- JOY(喜ぶ)
- ANXIOUS(不安)
- SERIOUS(まじめな,真剣な)
- BORED(退屈,飽きている)
- RELAXED(安心して落ち着いた)
- ALARMED(危機感を覚えた)
- EXCITED(興奮している)
の8つの属性に加えて,詳細な感情に関する項目が80項目ほど用意された。つまり,より詳細な感情を可視化できるようになったわけだ。
実際にストレスモードをプレイしたときの感情マップを示そう。
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2024年のデモを思い出しつつプレイしたのだが,赤文字のANNOYED(いらいら)やAngry(怒っている),Bitter(苦々しい),Startled(ぎょっとした),disappointed(がっかりした)が目立つ。操作を確認しながらだったり,2回目のプレイでもちょっとびっくりしたりしたほか,「やっぱり移動速度が遅すぎるな」と感じたゆえだろうか。
感情の振れ幅がないNEUTRAL付近にいたのは,画面を撮影していたとき。JOY(喜び)やDelighed(大喜び)の部分は,2024年の記憶よりもテクスチャの解像度が高く感じられて,ちょっとテンションが高まっていたタイミングと思われる。
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続けて,リラックスモードをプレイしたときの感情マップを見てみよう。
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ストレスモードのときとは,分布が大きく変わっている。連続してプレイしたことで展開が読めているため,ANXIOUS(不安)とBORED(退屈,飽きている)の間が強くなっており,dejected(落胆した)が赤くなっている。既存のゲームであれば,離脱確定のような分布だろうか。
とはいえ,スマートフォンでステータスを監視していたFrachi氏は,親指を立てていたので,とても正しい挙動だったということだろうか。
2024年の公開では,「具体的にどのタイミングで,どんな感情になったのか分からないのか」と思った人もいただろう。その点は,感情の切り替わりが分かるアイコン付きのプレイ動画で確認できるようになり,具体的にどのタイミングで恐怖を感じたのかが,分かりやすくなった。
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この機能は,ハンズオンした開発者などからの意見を採用したそうだ。2024年のレポートで筆者も似たようなことを書いていた。今後追加してほしい機能としては,プレイヤーの表情データともリンクできる機能がほしいところだ。
ゲーマーが自分の腕にセンサーをつけて,いろいろなゲームで利用する……というのはまだ先の話になる。ただ,冒頭で触れたように,eスポーツチームへの採用が決まっているため,配信などで目にするかもしれない。ゲームに関するさまざまな調査の場で,触れる可能性も高いだろう。
2026年には,対応ゲームに6タイトルが加わるそうなので,とりあえず遊んでみて,感情マップを見てみたいなら,OVOMINDのWebサイトからDK1を購入してみよう。
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高垣 楓さんやアグネスタキオンを見たときにどんな感情を抱くのか,チェックするのをまたしても忘れてしまった。新規タイトルで,ツボなキャラクターと遭遇した瞬間の感情も,可視化してみたいところだ。
OVOMIND 日本語公式Webサイト
4Gamerの東京ゲームショウ2025記事
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