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ナイキと「グランツーリスモ」が18年前に夢見た“2022年のスポーツカー”は,今見ても未来感にあふれている
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印刷2022/12/30 14:00

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ナイキと「グランツーリスモ」が18年前に夢見た“2022年のスポーツカー”は,今見ても未来感にあふれている

 1996年に第1作が発売されたドライビングシミュレータの「グランツーリスモ」シリーズは,2022年12月24日に25周年を迎えた。3月に最新作「グランツーリスモ7」PS5 / PS4)が発売され,記念すべき年に華を添えたのだが,ファンの中には“2022年”と聞いて,ある車を思い出す人がいるかもしれない。

 2004年に発売された「グランツーリスモ4」には,スポーツ用品メーカーのナイキとコラボしたコンセプトカー「Nike One 2022」が収録されていた。その名前からも分かるように,当時は18年先の未来だった2022年のスポーツカーを想定してデザインされたものだ。
 “未来”が“現在”になった今年,「Nike One 2022」を改めて紹介しよう。

画像集 No.001のサムネイル画像 / ナイキと「グランツーリスモ」が18年前に夢見た“2022年のスポーツカー”は,今見ても未来感にあふれている

 「Nike One 2022」のプロジェクトは,グランツーリスモのスタッフと,ナイキの新規事業部メンバーの個人的な付き合いから始まったという。デザインしたのは,ナイキのスポーツウォッチやバックパックのほか,「Saleen S7」などのスポーツカーも手がけたフィル・フランク氏だ。

 どこから紹介すればいいか迷うくらいユニークなデザインの車体だが,モチーフとなっているのは,陸上選手のクラウチングスタート。前輪の左右幅が後輪に対して極端に広くなっているところは,選手が両手を広げた姿勢に似ている。

画像集 No.002のサムネイル画像 / ナイキと「グランツーリスモ」が18年前に夢見た“2022年のスポーツカー”は,今見ても未来感にあふれている

 ドライバーもシートに“座る”のではなく,オートバイのようにシートにまたがり,上体を前に倒した姿勢で運転する。アクセルペダルはその姿勢から脚を伸ばし,後ろへ押し出すように操作する。筋トレのバックキックのような動きになるので,とても疲れそうなのだが,フランク氏によると,これは「体を鍛えているドライバーであれば,長時間速く走れるデザイン」なのだという。実にナイキらしいコンセプトだ。

 このコンセプトをより強く表現するためなのか,ゲーム内には,「Nike One 2022」での走行中に主観視点にすると,ドライバーの心拍音が聞こえる(速く走るほど心拍数が増える)演出もある。走行音にかき消されて気づかない人も多いようだが,本稿後半に掲載するムービーには停止状態のシーンを入れているので,確認してほしい。

 外装後部が曲線で切り取られていて,コックピット内部が露出しているところも目を惹く。これはナイキのロゴ「Swoosh(スウッシュ)」マークを逆さにしたイメージとのこと。
 なお,「Swoosh」は「物体が高速に動いてシューッという音を立てる」という意味の英単語で,その点でもスポーツカーにぴったりと思える。

画像集 No.003のサムネイル画像 / ナイキと「グランツーリスモ」が18年前に夢見た“2022年のスポーツカー”は,今見ても未来感にあふれている

 ここまでの画像を見て,「ドライバー1人がやっと収まるくらいのスペースしかないみたいだけど,エンジンはどこ?」と思う人は多いだろうが,駆動は4輪それぞれの「モーター内蔵ホイール型ハブ」で行う。車体搭載のパワーユニットから駆動力を4輪に伝える仕組みではないので,ドライブシャフトなどの部品は不要。ホイール型ハブにもスポークのようなものはなく,向こう側がよく見えるところは,今でも未来感たっぷりだ。
 モーターの駆動に必要な電力は,フロアに敷き詰められた薄型の燃料電池から供給される。つまり「Nike One 2022」は,四輪駆動の燃料電池自動車ということになる。

画像集 No.004のサムネイル画像 / ナイキと「グランツーリスモ」が18年前に夢見た“2022年のスポーツカー”は,今見ても未来感にあふれている

 ゲーム内では,モーター内蔵ホイール型ハブや燃料電池のおかげで「デザインの自由度が飛躍的に増している」と説明されている。ただ斬新にしたのではなく,“裏付け”あってのデザインというわけだ。

 電気で動くだけに,回生ブレーキ(車体を減速させる際に,運動エネルギーを利用して発電する装置)はもちろんのこと,減速時に車体後部の尻尾のようなウイングが起きて空気抵抗を上げる空力ブレーキも採用されている。

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 馬力は259PSで,ゲーム内で走らせてみると,最高速度は250km/hほどとなる。トップクラスのレーシングカーほどのパワーは持っていないが,加速やステアリングの反応がよく,それほどうまくないプレイヤーでも,ほどよい速さで楽しく走れる。ギアは8速あり,こまめなシフトチェンジが必要になるので,マニュアル派にとってはその点でも面白い車と言えそうだ。

 ここまでいろいろと説明してきたが,「Nike One 2022」がどんな車なのかを理解するためには,その走りを見るのが一番だと思うので,こちらのムービーで確認してほしい。


 残念ながら,これまでのところ「Nike One 2022」の実車デビューの噂は聞かないのだが,まったくの“過去の車”というわけでもない。

 デザイナーのフィル・フランク氏は今年,自身のサイト(外部リンク)やInstagramに,「Nike ONE 2022 Launch Edition」と題した画像の数々をアップした。オリジナルのコンセプトと,2022年という当初の“生産時期”を尊重したという「Nike ONE 2022」のリファイン版だ。
 基本的なデザインは変わっていないが,コックピットにPlayStation 5のコントローラであるDualSenseを分割したような操作デバイスを確認できるなど,“実際の2022年”に合わせて仕様変更されている。


 これらの画像は,あくまでフランク氏が個人的にリファインしたものというのが現状の認識だが,グランツーリスモ側にも「もしかして」を思わせることがある。
 グランツーリスモ公式サイトの「ビジョン グランツーリスモ」のページ内(外部リンク),「Coming Soon」のコーナーにナイキの名前があるのだ。

 ビジョン グランツーリスモは,グランツーリスモと,さまざまなメーカーやブランドがコラボレーションし,コンセプトカーを開発する企画。2013年に発表され,現在も新車が続々と登場しているが,その企画が生まれた要因の1つに「Nike One 2022」があるのは間違いないだろう。

 プレイヤーとしては,現実には無理としても「グランツーリスモ7」で「Launch Edition」をドライブしてみたいところだが,シリーズが見続けてきた時代の先端という面では,18年前を踏襲するだけは少々物足りないような気もしてくる。現在のさらに18年先を見据えた「Nike One 2040」ぐらいのインパクトがある車の発表にも夢を馳せたい。

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