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日本ゲーム大賞「U18部門」の予選大会をレポート。エントリーした13タイトルの中から,決勝大会に進出する7タイトルが決定
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印刷2019/06/10 16:16

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日本ゲーム大賞「U18部門」の予選大会をレポート。エントリーした13タイトルの中から,決勝大会に進出する7タイトルが決定

 コンピュータエンターテインメント協会(以下,CESA)は2019年6月9日,日本ゲーム大賞「U18部門」の予選大会を東京都内で開催した。

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日本ゲーム大賞「U18部門」公式サイト


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予選大会のMCを務めたのは,CESA人材育成部会 委員でスクウェア・エニックスに務める時田貴司氏
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松原健二氏
 日本ゲーム大賞の「U18部門」は,18歳以下の小中学生および高校生などを対象としたゲーム制作コンテストで,2019年4月に実施された一次審査で全応募作品の中から選ばれた13作品が今回の予選大会に進出し,東京ゲームショウ2019に合わせて開催される決勝大会を目指してゲームの内容を競った。本稿では,会場で行われた開発チームのプレゼンテーションと審査結果をお伝えしよう。

 予選大会の冒頭では,主催者を代表してCESA人材育成部会 部会長/セガゲームス 代表取締役社長 COOの松原健二氏が登壇し,挨拶を行った。松原氏によると,日本ゲーム大賞「U18部門」には,ゲームクリエイターを目指す18歳以下の人材を顕彰することにより,ゲームを作って人を楽しませることの素晴らしさを広めていく狙いがあるという。
 またこの予選大会には,現役ゲームクリエイターである審査委員から作品をより良くするためのアドバイスがもらえたり,自分達の考えを他者に理解してもらうためのプレゼンテーションを体験したりするという意味もあるそうだ。

 それでは以下に各タイトルを紹介していこう。

「Drag Voxel Distance」

チーム名:エスカルゴ
開発者:早坂空也,奥澤大輝,尾崎将志(バンタンゲームアカデミー高等部)

 「Drag Voxel Distance」は,「圧倒的に親しみやすいゲーム」をコンセプトにしたタイトルで,すごろくをベースとした誰でも楽しめるルールや,キャラクターを引っ張って飛ばすだけという簡単操作,そしてボクセルアートで表現したキャラクターやマップなどが親しみやすさをアピールしている。
 すごろくがベースになっていることもあり,複数のプレイヤーでワイワイ楽しめる内容を目指したゲームでもあるという。将来的には,ネット対応も検討している。

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「幽体離脱」

チーム名:すいか
開発者:伊豫冬馬(茨城県立竹園高等学校)

 「幽体離脱」は,主人公が幽体離脱を駆使してドアの鍵を入手したり,敵の動きを止めたりしながらゴールを目指すというゲームだ。ただし幽体は万能ではなく,一定時間内に本体に戻れなかったり,特定の敵の攻撃範囲内に入ったりするとゲームオーバーになってしまう。そのため,プレイヤーキャラクターと幽体を交互に操作しつつゲームを進めていく必要がある。
 本作はまた,「なぜ幽体離脱ができるのか」「幽体とは何か」と主人公が混乱する様子を盛り込んだストーリーや,主人公と幽体でそれぞれの旋律が奏でられ,ストーリーの流れを示唆するといったシステムなども大きなポイントになっている。今後は,新たなギミックや敵を用意するほか,BGMや物語で,より人の心を動かす深い世界観を作っていくという。

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「ぷるりんの冒険」

チーム名:Swing-bye
開発者:住友嵩征,岡田明樹,川染翔吾(城南高等学校)

 「ぷるりんの冒険」は,プレイヤーキャラクターの「ぷるりん」を操作してゴールを目指すという,全方向スクロール型の2Dアクションゲームだ。ぷるりんには緑と赤の2種類があり,縦にくっつくか,横にくっつくかでジャンプ力やスピード,攻撃力が変化する。
 特徴としては,文字以外のグラフィックスをすべて自作したことと,さまざまなコントローラに対応し,キーコンフィグが可能であること,登場キャラクターの裏設定が見れる「プルペディア」を用意したこと,そして,スクロール速度を調整して違和感なくプレイできるようにしたことなどが挙げられる。
 今後はスクリーンショット撮影機能やマップエディタ,新ブロックや新キャラクターの実装を目指すとのこと。

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「Treasure Hunting」

開発者:堤 日向(大阪電気通信大学高等学校)

 「Treasure Hunting」は,ステージを探索して宝を集めたり,敵を倒して宝石を奪ったりしながら制限時間内にどれだけスコアを稼げるかを競うゲームで,スピード感を重視して,何度も繰り返し遊べることを目指したという。
 画面左下にはステージ全体のミニマップが表示されているが,これには「次はどこへ行くか」「この地域はどうなっているのか」というプレイヤーの関心を惹く狙いがあるそうだ。

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「Imaginary World」

チーム名:Hidetyo’s App
開発者:藤澤秀彦(芝浦工業大学附属高等学校)

 「Imaginary World」は,オープンワールドとして作られた広大な世界を冒険して世界の謎を解いていくゲームで,時間の経過やオブジェクトの配置によって空間の広さを表現し,自然音と環境音を使い分けたサウンド作りによって,「空気感を描く」ことを目指しているという。
 また時間帯に応じたNPCの行動の変化や,雨が降るとたき火が消えるといった天候に応じたオブジェクトの変化など,「細かさへの追求」にもこだわりを見せている。
 現時点では全体の15%ほどの完成度で,今後はプレイヤーに次の目的地を想像させるナラティブな仕組みなどを導入していくという。

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「Overturn」

開発者:松田 活(函館ラ・サール高等学校)

 「Overturn」は,オレンジの三角形を操作してゴールを目指すパズルゲームで,三角形はステージを構成するブロックに沿って,時計回りか反時計回りにしか移動できない。マップにある灰色のブロックは押したり回転させたりが可能で,水色のブロック上では静止できず,ゴールに到達しても三角形が静止した状態を保てないとクリアとは見なされないといったルールがある。
 スタート画面から実際のプレイ画面に移るときなど,シーンが遷移する際にステージを構成するブロックを使ったアニメーションが見られるが,これらは自作のプログラムで表現しているとのこと。
 今後は,ステージが反転するブロックなど,新たなギミックを組み込んでいく予定だ。

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「浮遊大陸」

チーム名:戦場に咲く一輪の草
開発者:?橋勇輝,岡野日翔,香田 駿(山形県立米沢興譲館高等学校)

 「浮遊大陸」は,空に浮かぶ大陸の上で,大陸を破壊する敵を倒しながら生き残りを目指す2Dアクションゲームだ。
 武器使用に必要なアイテムを収集する「鉱石回収システム」,敵を倒して得たコインで特殊効果を購入する「コインシステム」,4種類の武器を使い分ける「攻撃システム」,そして毎回異なるマップが生成される「ランダムマップ」などが用意されており,繰り返し楽しめる仕上がりになっている。

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「shotlix」

チーム名:shotlix
開発者:鎌谷天馬,池田逸水,改野由尚(N高等学校)

 「shotlix」は,自動的に前進する自機を操作して,邪魔なブロックを避けたり,撃って消したりしながらステージ内の数字を集めてハイスコアを狙というシューティングで,四方から出てくるブロックに当たったり,枠外に出たりするとゲームオーバーだ。
 特徴は方向キーとスペースバーだけという簡単操作と,リソース管理や戦略,戦術次第でハイスコアを狙える奥の深さにある。ランキング機能や,SNS共有機能も搭載しており,画面デザインやユーザーインタフェースは,オシャレさや親しみやすさを意識したものになっているという。
 本作はブラウザゲームとして開発されており,今後はスマートデバイスへの対応を予定している。また,対戦モードの実装も検討しているとのこと。

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「Flick Drop」

開発者:大西海人(大阪電気通信大学高等学校)

 「Flick Drop」は,操作を4方向のフリックに限定し,誤動作が起きないようにした対戦型パズルゲームだ。同じ色のブロックを4つそろえると消えるが,灰色のブロックは周囲のブロックを消すことで消える,ブロックを消すと,出現するはずだったお邪魔ブロックを消せるといったルールが用意されている。
 ブロックのそろえ方によって連鎖を生み出せることや,ランキング機能でほかのプレイヤーと競えるようにした点,難度を選択可能にした点なども特徴で,今後はグラフィックスの強化を図っていく予定だ。

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「手裏剣Jump」

開発者:池上颯人(横浜市立美しが丘小学校)

 「手裏剣Jump」は,主人公が投げた手裏剣が敵を倒すだけでなく,跳ね返った手裏剣に主人公が当たるとジャンプするというギミックを活かして進んでいく。特徴は手裏剣ジャンプを使った新しい操作感や,主人公達のちぐはぐなやり取りが面白いストーリー,ジャンプに加えて分身の術や隠れ身の術などを使って進んでいく多彩な仕掛けの3つとなる。
 今後は手裏剣ジャンプを活かしたステージを増やしていくという。

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「朝を知らぬ星」

開発者:梅村時空(N高等学校)

 「朝を知らぬ星」は,太陽が昇らなくなった世界を舞台に,地上に君臨するバケモノを倒していく3Dアクションゲームで,戦闘では,敵の攻撃をジャスト回避することでチャンスを作り,一気に攻めるというメリハリのある展開にこだわっている。また,爽快感や達成感を演出するため,パーティクルライトやブラー,振動といったエフェクトを用いている。さらに,キャラクターやオブジェクトによって世界観を表現することにも力を入れているとのこと。
 本作はもともと協力プレイを想定しており,今後はオンラインの協力プレイを実装する。着せ替え機能の実装やシナリオの充実も予定しているそうだ。

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「ふにゃごん」

チーム名:ふにゃごん制作委員会
開発者:宮崎章太,西岡明矢斗(神戸市立科学技術高等学校)

 本作は,怪獣「ふにゃごん」にオブジェクトを吸い込ませることでふにゃごんを巨大化させ,ゴールにたどり着いたときのサイズと,到達タイムを競う3Dゲームだ。ただしふにゃごんは,自分より背が高いものは吸い込めないといったルールがあり,吸い込む順番が重要になる。
 1本のスティックだけで怪獣を動かせる独自の操作性が特徴で,スティックを右に倒すと左足が,左に倒すと右足が動くという,慣れるまではかなり難しいが,うまく動かせると楽しくなってくるようなものを目指している。
 怪獣のふにゃふにゃした動きは,ラグドール物理を使って表現しており,今後は,ふにゃごんの大きさに応じた敵や,複数プレイヤーで遊べるモード追加,そしてステージの拡張などを検討しているという。

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「KAISENDOOOON!!!」

チーム名:バーチャル SUSHI↓
開発者:田染颯野,水上嵩大(ヒューマンキャンパス高等学校)

 「KAISENDOOOON!!!」は,狙った魚を釣り上げ,その刺し身を盛り付けて,制限時間内に自分だけの海鮮丼を作っていくゲームで,魚は釣り上げた瞬間に刺し身になり,酢飯の上に盛り付けられていく。
 ポイントは,釣り上げた魚が,画面下の海から画面上の丼に向けて豪快に飛んでいくところで,魚釣りと丼作りのシームレスな表現を目指したという。また,グラフィックスでは,魚のリアルさや刺し身の鮮度を表現することに力を入れたという。今後は,魚の種類の増加や図鑑機能の実装などを検討している。

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現役ゲームクリエイターも刺激を受ける場

 上記13タイトルを審査した結果,決勝大会進出タイトルとして選出されたのは「朝を知らぬ星」「KAISENDOOOON!!!」「Overturn」「ふにゃごん」「幽体離脱」「手裏剣Jump」「shotlix」の7作品だ。審査員はグリーの下田翔大氏,ディー・エヌ・エーの山口 誠氏,Cygamesの星野健一氏,セガゲームスの麓 一博氏の4名が務めた。

左から下田翔大氏,山口 誠氏,星野健一氏,麓 一博氏
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 「朝を知らぬ星」は,事前の試遊でアクションゲームの基礎を理解している人が作ったことが感じられるという点が評価されており,またプレゼンテーションで今後に期待できることを加味したうえで選出された。

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 「KAISENDOOOON!!!」は,明確なコンセプトとシンプルなゲーム作りが,現役ゲームクリエイターである審査員を刺激したという。ゲームのコンセプトに合わせた釣りの爽快感や,今後の追加される予定の新たな魚への期待感なども評価された。

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 「Overturn」は,完成度の高さや,完成させようという熱意が高く評価された。また現状に甘んじず,プレゼンテーションで見せたさらなるブラッシュアップへの意気込みも好印象だったという。

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 「ふにゃごん」は,独自の操作性や怪獣の可愛い動きなど,ゲームの基本部分の表現が評価された。より多くの人にプレイしてもらい,フィードバックに基づいて改良していけば,さらに完成度が高まるであろうという期待感もあるという。

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 「幽体離脱」は,幽体離脱というテーマをゲームに落とし込もうと試行錯誤したうえで,きちんと形にまとめた点が審査員に評価された。また,幽体離脱にこだわる一方,その説明を短くし,すぐに遊べるといったプレイヤーへの配慮もポイントだったという。

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 「手裏剣Jump」は,ゲームとしての面白さとプレゼンテーションの巧みさが評価された。ゲームのコアな部分がしっかりしている分,さらなるブラッシュアップが見込めそうで,ステージギミックだけでなく,敵のアクションなどにも期待が持てるという。

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 「shotlix」は,完成度の高さと,多くの人に試遊してもらってゲームのレベルを高めていったという過程が評価された。プレゼンテーションで語られた今後の展望も,期待が高める効果があったという。

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 審査員の下田氏は,「前回と比較してレベルが上がっており,切磋琢磨していることが伝わってくる」「ゲームは独善的に作るものではなく,他者に遊んでもらい,その意見を謙虚に受け止めてプレイしやすく改善していくもの。その過程は人生の中でも重要になる」とコメント。

 山口氏は「完成度が高いものが多い一方で,未完成の作品もあり,本大会のハードルがそれほど高くないことを改めて示せた」「チームマネジメントを兼任するメンバーもいるなど,面白いゲーム作りのためのチーム構成を考えている人が増えた」と語った。

 星野氏は,惜しくも落選してしまったチーム/開発者に向けて,「作品を世に出していく場はいろいろある。どれもいい作品だったので,今日の悔しさをバネに,これからも作品作りを続けてほしい」」とエールを送った。

 麓氏は,「どの作品もクオリティが高く,完成したらどうなるんだろうと期待させてくれた。今回,残念な思いをした人も,ぜひ作品を完成させてほしい。そして何かしらの形で世に出し,フィードバックをもらい,新しい作品作りにつなげるというスパイラルの乗ってほしい」「これだけクオリティの高い作品を作れる若者がいるので,日本のゲーム業界は明るい」と話した。

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 大会の閉会式では,CESA人材育成部会 副部会長/バンダイナムコスタジオの斎藤直宏氏が,改めて決勝大会進出チーム/開発者を称えるとともに,「日本ゲーム大賞『U18部門』は,若い人にチャンスを提供したいと考えて作った部門だが,実は現役ゲームクリエイターが刺激を受ける場でもある。長くゲームを作っていると安定志向に走りがちになるが,皆さんの作品には『こんなゲームを作りたい』という意思が表れており,それが新しいシステムになっている」と語った。
 
 冒頭にも書いたように,決勝大会に進出した7タイトルは,審査員のアドバイスを参考にブラッシュアップが施され,東京ゲームショウ 2019に出展される。東京ゲームショウ 2019では,事前の試遊審査と,9月15日に開催される決勝大会での最終プレゼンテーション審査により,各賞を決定する予定だ。

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日本ゲーム大賞「U18部門」公式サイト

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