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 [CEDEC 2022]ゲーム離れを避けるカギは“居場所を作る”こと。ゲーム実況が業界にもたらす影響が独自の分析で語られた講演をレポート
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印刷2022/08/25 20:15

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[CEDEC 2022]ゲーム離れを避けるカギは“居場所を作る”こと。ゲーム実況が業界にもたらす影響が独自の分析で語られた講演をレポート

 ゲーム開発者向けのカンファレンス「CEDEC 2022」の2日目となる2022年8月24日に,ゲーム実況をテーマとした講演「この1時間でゲーム実況業界の全てがわかる!?ゲーム実況の過去・現在・未来〜【2022年版】ネットを通じた『居場所化』がゲーム業界を救う」が行われた。

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 本講演を行った中田朋成氏は,いち視聴者としてゲーム実況に接し,「ニコニコゲーム実況チャンネル」(NGC)との出会いからゲーム実況業界を独自に分析するようになったという人物だ。CEDECでは2018年,2020年に講演を行ったほか,昨年の「CEDEC 2021」でも「この1時間でゲーム実況業界の全てがわかる!?ゲーム実況の過去・現在・未来【2021年版】〜『ゲームコミュニティ』を形成せよ!」と題して,ゲーム実況にまつわる講演を行っている。


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 今回の講演ではいくつかの事例を挙げつつ,中田氏の私見と前置きされたうえで,ゲーム実況の可能性やゲーム実況がもたらす効果や影響,またゲーム実況コミュニティなどについて語られた。

中田朋成氏
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 まず中田氏は,ゲーム実況に関する歴史について解説を行った。現在は配信者がしゃべりながらゲームをプレイするというスタイルが主だが,もともとインターネットにおける実況文化とは,掲示板などに書き込むことによる実況が主軸であり,このころは動画配信サイトなどもほとんどない。ゲーム実況についても,ゲームの動画を見ながら掲示板に視聴者がその都度書き込みを行うことで実況するというスタイルを形成していた。

 ゲーム実況が現在のスタイルになった要因として,中田氏は徐々に普及してきた動画サイトなどに加え,影響力という点での大きさから「ゲームセンターCX」の存在を外せないものとして挙げた。

 中田氏は“爆発的に広がるものはハードルが低くて奥が深い”という考えを持っており,「ゲームセンターCX」の存在が大きかった要因としても,ゲームやトークの上手か下手かを問わず,いい意味でプロっぽくない作りや,わかりやすく言うと「自分でもできそう」という空気感があったことが大きいと語る。同番組の出演者よゐこ有野氏のキャラクター性や番組作りが親しみを与えやすかったとし,結果的に多くのフォロワーが生まれた要因になっているのではないかと,中田氏は分析していた。

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 動画サイトにおけるゲーム配信の黎明期では,ユーザー側がある意味法的にグレーな部分を当たり前のように行っていることもあった。しかし,人気のある実況者などは公式から声がかかることもあり,その際は「個人は個人,公式は公式」のような,「それはそれ,これはこれ」というスタンスも見られていたという。これは,当時ゲーム実況のルールやガイドラインが曖昧だったことが要因のひとつなのではないかと語る。
 また,そうした中において「スタジオえどふみ」(現:スタジオNGC)はプロという立場を明確にして活動することを,記者会見で発表したことは大きいと中田氏は語った。

 そして,ゲーム実況の文化が徐々に広がりを見せると,メーカー側からゲーム実況のガイドラインや実況の可否を明確にするスタンスが増加。現在ではそれがスタンダードになってきている。
 こうした動きの中で大きかったのが,ハード側からの歩み寄りだ。特にPlayStation 4のシェア機能は,最低限の設備で誰でも実況を可能にしたことでゲーム配信,ゲーム実況をする人が爆発的に増えたと話す。中田氏はこれを「ほぼ違法」から「適時適法」の時代になってきたと表した。

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 続いてeスポーツとゲーム実況について中田氏は,eスポーツの実況はスポーツ実況と同様のものが求められるとし,実際にスポーツ実況をしていたプロのアナウンサーがeスポーツの実況を行っている事例を紹介した。その結果,eスポーツの配信のクオリティも上昇し,文化の発展に貢献していると話す。

 そして,プロゲーマーについても,以前であればプロゲーマーは大会に出場して賞金を獲得するといった部分にフォーカスが当たっていたが,現在はその多くがゲーム実況者としての活動も同時に行っており,活動の幅が広がっていることを紹介した。

 ゲーム実況の歴史にはさまざまな出来事があるが,その中でもやはり大きな存在として中田氏も認識しているのが,VTuberの登場だという。現在ではマネジメント会社が多くのVTuberを有することによる「ファミリー化」によって,VTuberとファンをつなげることもでき,コラボ配信や大会ともなれば,かなり大きな話題づくりも可能で,その相乗効果も大きくなる。

 だが,メーカー側が当初定めたガイドラインやルールは個人を対象にしていたものが多く,事務所に所属するYouTuberやVTuberなどがゲーム実況で収益化した場合,企業として利益をあげている活動とみなされ,未許諾の実況動画が権利者削除となるケースも発生していた。
 近年では大きな事務所などは各ゲームメーカーとの包括的使用許諾契約などを行っており,個人・団体ともに現在ゲーム実況という文化は特殊なものではなく,一般的なコンテンツとして認知されてきたと話した。

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 中田氏は「ゲーム実況はゲームの販売に対して有益か否かと」いう話題に対して,意味はあるとしながらも,やり方次第という但し書きが必要だと語り,ゲーム実況のメリットとデメリットをピックアップしてそれぞれ解説を行った。

ゲーム実況のやり方によってはゲームをつまらなく見せてしまい逆効果にもなり得るが,効果的に活用できれば売上の増加だけでなく,ゲームの寿命も伸ばす効果も期待できると話す
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 まずゲーム実況のメリットとして最初に挙げたポイントは,新たなゲームや実況者との出会いを生むという点。これは,好きなゲームの動画を探す中で面白い実況者と出会う可能性もあり,その逆もありえる。
 次のポイントは,ゲーム離れの抑止効果。これは,ゲーム実況が“友達の家でゲームをしている”ような環境や感覚を味わいやすく,社会人などで多くありがちな,忙しくてゲームをプレイする時間や,一緒にプレイする仲間が減ることで,徐々にゲームから離れていく流れを抑止できるとしている。

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 また中田氏は,ほかのメリットとして,スタジオNGCのVR関連の活動を事例として挙げた。VRゲームはVR機器の購入が必要なためハードルが高く,しかもVRは実際に体験してみないと感じられないことも多い。しかし,スタジオNGCではVR関連ゲームを多く取り扱っていったことでVRゲームのユーザーが集まるようになり,そこでコミュニティが形成された。結果として,ハード未所持だったユーザーもVR機器を購入。よりコミュニティが広がっていったと話した。

 さらに「FINAL FANTASY XIV」で活動していた「NGCクラフト委員会」という独自の組織では,当初クラフト(装備やアイテム,家具などの制作)関連の企画を行っていたが,活動が広がり,独自のクエストを作成するに至ったという。
 そしてそのクエストは,同作のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏にプレイしてもらうという状況にまで発展したとのことで,ゲーム実況をきっかけにしたコミュニティの広がりと熱量を語った。

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 続いてゲーム実況のデメリットが事例とともに語られた。まず1つ目に挙げられたのはとある3Dシューティングゲームの実況にて,初見プレイのアイドルたちに,事前の操作説明もなくチュートリアル部分も飛ばした状態でプレイさせたという事例だ。これにより,ゲームの面白さや魅力を視聴者に伝えらなかったという。
 なお,同ゲームをしっかりとしたアドバイス役がいる状態で行った別の番組では,先述した番組とは真逆の結果となり,成功を収めたという。

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 また,プロレスゲームの実況では,実況者がプロレス団体の知識を持っていなかったことで,ファンなら楽しめる要素などもわからず,操作方法も把握しておらずぶっつけ本番となり,うまく紹介できないまま終了し,ゲームの魅力を伝えられていなかったそうだ。
 中田氏は,こういったゲームはマニア知識があったほうが楽しめる要素が多く,視聴者に対しても魅力を伝えやすいため,知らない場合はある程度のリサーチは必要だとし,また操作に関しても事前に調査・確認が必要だと話した。

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メリットにもデメリットにもなり得る要素として,ゲーム実況は実況者の「素」が出やすいとし,デメリットになってしまった事例も挙げていた
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 デメリットへの対策を,中田氏は「ゲーム実況におけるロケハンの重要性」と表し,ゲーム実況はプレゼンの一種であり,プレゼンを行うのであれば情報(操作方法を始めとした扱うゲームの知識)を把握しておくことは基本。さらに,現在はあまり長すぎない動画が主流にもなっているため,ゲームや内容によって適切な放送時間を見定めることも重要だと話した。

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 続いて中田氏は,「ファミリー化する出演者,コミュニティ化する視聴者」というテーマで話を展開した。出演者の「ファミリー化」は先ほど挙げたが,多くの出演者を有するチャンネルは,出演者をファミリー化することでチャンネルへの入り口を増やし,各人のファンを呼び込んでくることで新たなファン層の獲得にもつなげられるという重要な要素であると語る。
 視聴者の「コミュニティ化」については,人が増えることで情報が増え,仲間も増えることでコミュニティが形成できるとし,Discordなどのツールの存在によりコミュニティ運営も低コストで可能になると話した。

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Discordによるゲームコミュニティの一例も紹介された
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 また,ゲーム実況の世界において,芸能人のゲーム界隈への進出が近年目立ってきているが,中田氏はこれを芸能人による一種のセルフブランディングとして機能しているとする。それで成功した芸能人のひとりとして狩野英孝氏をピックアップし,その実績を紹介するとともに,芸能事務所によるeスポーツ活動やゲーム実況活動を紹介した。

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 ゲーム実況のキャスティングについては,「ゲームの面白さ」を伝えられる要素を揃えていることが大前提で,ゲームやコンテンツに対する理解がなさすぎる人物の場合,逆効果になってしまうことがあることを注意し,別途サポート役を立てることが重要だと中田氏は話す。

中田氏はデベロッパやパブリッシャがゲーム実況に関わることはよしとしており,それは必ずしもプロデューサーやディレクターでなくてもよいという
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 まとめとして中田氏は「居場所を作れ!」という言葉を掲げ,自分のゲームの趣味が兄ゆずりであることや,その兄がゲームから離れてしまったことを例として話した。
 中田氏の兄がゲームから離れた原因は,兄の周囲にゲーム仲間のコミュニティがなくなり,別の趣味にはコミュニティがあり仲間もいたことで,そちらの趣味へと移ったのだとか。中田氏は兄がゲームから離れることはないと思っていたため,衝撃を受けたという。
 一方ゲーム実況との出会いによって,居場所がゲームから動かなかった中田氏は,そうした経験から居場所が重要であることを知ったと語る。適切な情報を発信し,コミュニティ作りを促進,または自らコミュニティを立ち上げて居場所を作ることが大事であり,それはメーカーがやってもいいのではないかとも話した。
 そして,より良い居場所を作ることで人生が豊かになるとし,居場所が増えることで,メーカーもユーザーもWIN-WINになれる未来があるのではないかと述べ,講演を締めくくった。

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