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印刷2023/03/23 00:00

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[GDC 2023]脚本執筆の補助を行うAIツール「Ghostwriter」で,NPCのセリフが豊かになる?

 Ubisoft EntertainmentのR&D部門であるUbisoft La Forgeが,GDC 2023の機械学習サミットで行われた同社のセッションに合わせて,脚本執筆の補助を行う社内専用AIツール「Ghostwriter」を開発したことをアナウンスした。

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Ubisoft La Forgeのベン・スワンソン氏
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 Ubisoft La Forgeといえば,「[GDC 2019]機械学習がゲーム開発の未来を変える? Ubisoft La Forgeが近年の研究成果を報告」(関連記事)で紹介したように,過去にも機械学習をゲーム開発に応用することで成果を挙げていることで知られる。今回のセッションは「ゲーム脚本のための自然言語の生成」(Natural Language Generation for Game Writing)というタイトルで,「Ghostwriter」のプロジェクトを先導した同社リサーチサイエンティストのベン・スワンソン(Ben Swanson)氏が壇上に上がり,開発経緯やその内容について紹介した。

 スワンソン氏は,機械学習を専門分野として博士号を取得後にGoogleに入社したという人材だ。GDC 2021に参加して「[GDC 2021]「ウォッチドッグス レギオン」の“ロンドンの人々の誰もが主人公”となるゲーム性を支え,その世界における“社会”を築いたAIシステム・Census」(関連記事)を公聴してUbisoft La Forgeの取り組みに感銘を受けたことで,同年にUbisoft Entertainmentに入社したという。そこでスワンソン氏は,同社の脚本家やナラティブ・デザイナーと話し合いを重ね,自分の知識が今後のゲーム開発に生かされることを直感したという。

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 「ウォッチドッグス レギオン」はもちろん,「Grand Theft Auto V」や「The Elder Scrolls V: Skyrim」のようなNPCが多いゲームをプレイしてきた人なら,冒険中に出合うNPCが多くても,通りすがりに聞こえてくるセリフが同じものばかりで,そこが気になっている人も少なくないだろう。実際,Skyrimにおいてはどの村に行っても兵士がつぶやく「昔はお前のような冒険者だったが,膝に矢を受けてしまってな……」というセリフがミームになってしまうほど,セリフの繰り返しはゲーム開発会社にとっては1つの課題なのである。
 もちろん,ジュニアレベルの脚本家を増やして対処すれば良いのだが,AAA級レベルのプロジェクトでは10人を超えるような脚本チームを抱えていることも多く,メインストーリーに集中させるため,NPCたちの他愛もないセリフに開発費や貴重な人材を注ぎ込めないのが実情だ。

 「Ghostwriter」は,脚本執筆の作業を補助する目的で開発されたものであり,脚本家が「昔はお前のような冒険者だったが」というようなサンプルを書き込むことで,そこからさまざまなな会話サンプルを生み出してくれる。その会話も,「憤慨している」とか「モチベーションが高い」といった複数のパラメータで言葉尻や表現が異なるものが2種類生み出され,脚本家はそこから適切なほうを選んだり,より正確な言い回しに変更したりすることが可能だ。
 「Ghostwriter」は,そのようにして選択されたものや変更内容を学習し,さらに生成する会話文の内容の正確性を高めていく。決して,ゲームの脚本すべてを自在に作り出すというレベルではないものの,NPCたちのセリフのバリエーションを増やしつつも,脚本家にとっては優先度が低いレベルの作業から解放されるというメリットがありそうだ。

「Ghostwriter」が内製ツールであることの良さを話すスワンソン氏だが,サードパーティでも利用できるウェブベースのアプリケーションも公開する予定であるらしい
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 まだ,この「Ghostwriter」がUbisoft Entertainmentで開発中のプロジェクトに採用されているというわけではないようだが,スワンソン氏はその使い勝手の良いインタフェースとパワフルなインフラストラクチャから,今後は同社傘下のさまざまな開発チームに採用されていくと考えている。とくに,「ChatGPT」のようなナチュラル言語による会話文生成は今後も大きく進化していくはずであり,「Ghostwriter」が内製ツールであることはUbisoft Entertainmentにとっての大きな力になるはずだと話していた。

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