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シンガポール最大のボードゲームイベントに突撃。アジアを中心に13か国のボードゲームが集まった
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印刷2024/11/28 08:00

イベント

シンガポール最大のボードゲームイベントに突撃。アジアを中心に13か国のボードゲームが集まった

 2024年11月22日から24日まで,シンガポール最大のボードゲームイベント「Asian Board Games Festival 2024」(以下,ABGF2024)が開催された。主催はシンガポールのボードゲームパブリッシャ「ORIGAME(オリゲーム)」だ。会場にはシンガポールをはじめ,アジア地域を中心に13か国から30を超えるクリエイターやパブリッシャが集い,ボードゲーム作品の試遊・販売を提供した。
 2019年の開催以降,コロナ禍を挟んで今年は4回目の開催となる。今回は3日間参加した筆者がその模様をレポートする。

会場の「Fusionopolis One」。24階建ての高層ビルだが,一般向けの施設は3階までだ
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エントランスの風景。11月下旬という時期柄もあり,大きなクリスマスツリーがお出迎え
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 会場はシンガポールの西部,one-north駅に直結した総合施設「Fusionopolis One」だ。スーパーマーケットや飲食店,オフィスなどが入居する施設だが,そのロビーを使って開催されていた。来場者層はさまざまだが,ボードゲームファンに加えて子供連れのファミリーが多く見られた。買い物や外出のついでにふらっと立ち寄れる立地であることに加え,プレスクールやプログラミングスクールなどがビル内にあり,子供が多い立地ということもあるように思われた。

ABGF2024会場の様子。会場施設の性質もあり,土曜日夕方ごろが一番盛り上がっていた
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Fusionopolis Oneの3階には子供が集うプログラミングスクールやプレスクールが多く見られた
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 館内に入るなり気づくのは,イベント会場の大半が試遊ブースであることだ。会場の大部分には出展者ごとに割り当てられた試遊テーブルが広がっており,ボードゲームを遊ぶ来場者で埋め尽くされていた。一方で販売ブースは出展者ごとに1つずつ用意されているのではなく,公式で用意した1つの販売ブースのみだ。「Play Your Way Through Asia」というスローガンにたがわず,「遊び」に重点を置かれたイベントであることの表れと言えるだろう。
 来場者のお財布にも優しく,イベント会場への入場は無料。さらに6シンガポールドル(記事執筆時点で約700円)の「Play Passport」を買えば,試遊したゲームの数に応じて特典をもらうこともできる。

会場風景。試遊ブースはボードゲームを試遊する来場者でいっぱいだ
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試遊に必要な「Play Passport」。5個遊ぶと会場限定ゲーム「Secret Guardian」が,10個遊ぶとくじ引き「Lucky Dip chances」へのチャレンジ権がもらえる
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 会場の活況は見られたが,1階・地下1階・別会場の3フロアを使った昨年に比べて,今年は1階・2階の2フロアとやや会場を縮小としての開催だった。アジア発ブースも多かった「ゲームマーケット2024秋」の翌週開催につき,出展に伴う移動や荷物運びなどのスケジュール調整が難しい,といった時期的な問題もあったようだ。
 一方,2024年7月にはマレーシア開催の同名イベント「ABGF Malaysia」なども行われ,活動の幅は年々広がっているようだ。


特色あるアジア地域のボードゲーム作品


 ABGF2024に出展されていたボードゲームの特徴を見ていこう。
 まず驚くのは日本にまだ入ってきていないゲームの多さだ。主催のORIGAMEはゲームマーケットに参加するなど日本でも作品を展開しているが,それ以外のブースでは見たことのないゲームが多く遊ばれていた。こうしたゲームの中には海外展開している作品もあり,世界最大級のアナログゲームイベントであるドイツのSPIEL Essenに出展しているものもいくつか見られた。

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シンガポール地下鉄駅が描かれたカードを出し合うTembusu Gamesの「NEXT STATION」
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渡り鳥の飛来を題材としたPlaylogue Creationの「Fly a Way」。ネットワーク構築ゲームだ
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ファンタジー風カードゲーム「Legions of Kadmon」。プロトタイプ版とのことだが,すでに迫力あるアートワークだ
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Ameba Gamesの戦車で戦う2人用ゲーム「Tank Clash」。デフォルメされつつも細かいところまで作られた戦車コマがうれしい
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King & The Pawnが出展していた旧正月をお祝いするゲーム「Fú」。お菓子でおもてなしをしたり,紅包(ホンバオ。日本のお年玉のようなものらしい)を入れる赤い袋などが登場したりする
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主催のORIGAMEはゲームマーケットでも販売されていた「Overparked」など多数の作品を展開。来年も日本へのイベント出展が予定されている

 日本からは,ホビージャパンと妄想ゲームズ/Board Game Business Expo Japanの2ブースが出展。そのほか,主催のORIGAMEがゲームマーケットの出展ゲームを紹介する「ゲームマーケットコーナー」を設置していた。実際に遊ぶことのできるもの以外にも多くの作品が販売され,存在感を放っていた。

妄想ゲームズ/Board Game Business Expo Japanブース。昨年に続いての出展だという
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ゲームマーケットコーナー。日本作品の販売もたくさん
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海外出展者フレンドリーなABGF2024の開催形式


 最後に,出展者にとってのABGF2024についても触れておきたい。
 ABGF2024には13か国というさまざまな地域からのブース出展があった。特に日本やオーストラリアのようなシンガポールから遠い地域では移動も準備も大変だが,こうした出展へのハードルを下げる工夫がされていた。

 まず,出展作の英語版ゲームへの限定だ。開催地のシンガポールは中国語,マレー語やタミル語など多彩な言語話者の住む地域であるが,英語の浸透度は極めて高い。筆者も現地では英語以外を使わなかったが,英語が分からない人に出会うことはなかった。そうした事情もあってかABGF2024は「English-speaking Boardgame Convention」とうたっており,会場に出展するボードゲームの言語対応は英語のみでよいとされていた。出展者としてもローカライズ対応言語が少なく済めば,出展に踏み切りやすくなるだろう。

 ゲーム販売ブースを主催のORIGAMEが一括して請け負っていることも,出展のしやすさにつながっている。ABGF2024では,出展者が自分のブースで直接来場者に作品を販売するのではなく,ORIGAMEが各出展者の作品をまとめて1つのブースで売る形式を取っている。実際に出展者が自分たちで販売を行う場合,販売スタッフを雇ったり,お金の管理等をしたりと大変だ。こうした役目をORIGAMEが代行することで,出展者は少ない人数のスタッフで参加できる。結果,試遊の案内をしてユーザーと触れ合ったり,出展者間のビジネスマッチングなど,より自分の作品を広げる活動に時間を使ったりできるようになっている。

販売ブースの様子。会場で遊べるゲームや出展者の過去作を買えるようになっている
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 会場では,開場前の時間や比較的来場者が少ない時間に出展者がお互いのゲームを遊び合う光景が見られた。ABGFを契機にローカライズや流通の話が始まることもあるようで,ゲーム販売にとどまらないビジネスチャンスとしてとらえている出展者も少なくないようだ。
 SPIEL EssenやGen Con,日本のゲームマーケットと比べればまだまだ小規模なイベントではあるが,独自の成長を遂げつつあるアジアのボードゲーム交流の場として今後も注目していきたい。

著者紹介:
Im Karton
 海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」(シュピールエッセン)をはじめ,アメリカ「Gen Con」(ジェンコン),フランス「Festival International des Juex」などを訪問。昨年刊行した「Essen Spiel Guidebook 2023」に続き,2024年はアメリカのアナログゲームイベント「Gen Con」へ行きたい人の旅行ガイド「Gen Con Guidebook」を刊行。

Omochicard
 Im Kartonメンバー。海外イベント訪問時は旅行の計画や日本へボードゲームを送る宅配便の発送などを担当。海外ボードゲームが大好き。好きなボードゲームは「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」や「Kemet: Blood And Sand」。
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