企画記事
ブロックチェーンゲーム業界を牽引する31名に聞く。2024年に注目したニュース,ヒットを生むために必要なこと,そしてブロックチェーンの未来
しかし,世間のブロックチェーンゲームに対する印象は,4Gamerが初めてこの企画を立ち上げた2年前から,あまり変わっていないように思える。業界が消滅したりする危機はなさそうだが,決定的なブレイクスルーを見いだせないまま,現在に至っている。
そんなゲーム業界を横目に,ブロックチェーンは社会が割と必要としているテクノロジーなのか,結構いろいろなところで実証実験が行われていて,実際に稼働しているプロジェクトもある。
学位の発行・管理にブロックチェーンが使われたり(学歴詐称を防ぐ),中古車販売でブロックチェーンが使われたり(走行距離などの改ざんを防ぐ),ワインのトレースでブロックチェーンが使われたり(ラベルの貼り替えを防ぐ),ぶどうのDNAや栽培者の情報を記録したり(違法栽培に対抗)……社会での活用事例は,思ったよりも広い。
この記事を読んでいる人には釈迦に説法かもしれないが,ブロックチェーンEXPOなどに行くと,ありとあらゆる業界の人達が,このテクノロジーをどう生かそうかと皆真剣に考えている。とくにバイオメディカル分野などは顕著で,(海外ではあるが)ブロックチェーンを使って個人のDNAデータを直接取引できる市場などもまさに確立されようとしている。
また,トランプ氏再選によるビットコインの高騰や,Telegram※1におけるTON経済圏の拡大など,ブロックチェーンゲームを取り巻く環境も変化し始めている。とくに後者は,「Wizardry」や「Ragnarok」などの有名IPの参入や,Telegramの対抗馬になるかもしれないLINEのMini Dappプラットフォームの発表といった追随する動きも見られ,ここからいよいよ何かが始まるかも……! と思わせるものがある。
※1
日本では一般的に,「闇バイト御用達の連絡手段」と認識されてしまうのが不幸ではある。
「ブロックチェーンゲーム」自体を見ても,世界の誰も彼もが同じようなものを作っていた数年前(ソシャゲのときにも見た景色だ)と比べると,各社趣向を凝らしている。社会貢献型ブロックチェーンゲーム※2「ピクトレ 〜ぼくとわたしの電柱合戦〜」や,ゲームと仮想通貨が一体化した「コインムスメ」,ユーザー投稿型の縦型ショート動画クイズ「QAQA」など,様々なコンセプトを目にするようになってきた。
※2
DEAはほかにもこんなことをやっていて,なかなか目が離せない。
なんか適当にガチャさせて,適当なキャラを適当に凸して,適当なゲーム性で適当にレベルアップするようなゲームはほぼ一掃され,「お,なるほど!」みたいな興味を引くものが増えてきたのは素直に嬉しい。
“あの”岡本吉起氏が放つ「ちゃんごくし!」シリーズも,クレカで暗号資産要らずでNFTが買えたり,NFTのキャラが実際に複数のゲームで使えたりと,NFTの良さが最大限に※3生かされている。
※3
「ゲームが終わってもNFTには価値がある」とか「複数のゲームで使えるようになる」とか散々言われているが,実際にそれができるゲームはほぼ存在せず,それができるというだけですごい。……と思っていたら,12月26日にスクエニもこんな発表をしていた。NFTの相互運用性にはいろいろな方向性があると思うが,こうやって大手メーカーから使い道が提示されるとは思わなかった。誰かがこれに続き,いろいろな可能性を見せてくれることに期待したい。
「ゲーム業界」という視点でも,スクウェア・エニックスやコナミデジタルエンタテインメントなどの大手が,いままでと違う新たなブロックチェーンゲームやプラットフォームの姿を模索している。各社表に出ていないだけで,新しいプロジェクトも着々と動いている。
「ブロックチェーンゲームの真打ちなるか?」という期待がかかる「魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-」は,残念ながら2024年内にはその姿を見せなかったが,CBTは開催しているし,ローンチは近そうだ。
Blockchain Game Allianceのレポートによれば,ブロックチェーンゲーム業界の52.5%がいわゆる「ゲーム業界」の人で,ブロックチェーンや暗号資産の専門家はわずか11%ほどにとどまっているとのこと。このデータを鵜呑みにするならば,ブロックチェーンゲーム業界の人は(いままでと違って)半分がゲーム業界の人なのだ。
ついに,ようやく,何かが変わっていく兆しが見え始めている。「遊んで稼ぐ〜」とか「エアドロップが〜」とかそういう小手先の話ではなくて,ブロックチェーンという概念がキチンとゲームシステムと溶け合って,ゲームとして普通に面白いとか,新しい体験を見せてくれるとか,2025年はそういった作品が出てくることに期待したい。
そんな過渡期のブロックチェーンゲーム業界を引っ張っている,31名の方達のコメントを,今年もお届けしよう。
質問一覧
<質問1>
いま最も読者に知ってほしい自社サービスは何ですか。それにはどのような魅力がありますか。
<質問2>
2024年に最も興味を惹かれたWeb3関連のニュースは何ですか。
<質問3>
ブロックチェーンゲームをヒットさせるのに必要なことは何だと考えていますか。
<質問4>
近い将来(遠い将来でもかまいません),ブロックチェーンというテクノロジーはどのように社会に浸透していくと思いますか。
<質問5>
2025年に向けての抱負と,4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
回答者一覧
(敬称略,社名のアルファベット/五十音順)
※名前をクリックすると,その人物の回答にジャンプします
■0x Consulting Group
細金恒希[Founder]
■Ava Labs
井上大悠[ソリューションアーキテクト]
■BLOCKSMITH&Co.
真田哲弥[代表取締役社長]
■CCP Games
Hilmar Veigar Pétursson[CEO]
■CRETA
中里英一郎[共同創業者/チーフクリエイティブオフィサー/日本法人代表]
■CryptoGames
小澤孝太[CEO]
■Digital Entertainment Asset
山田耕三[Founder & Co-CEO]
■double jump.tokyo
上野広伸[代表取締役/CEO]
■enish
公文善之[De:Lithe Last Memories エグゼクティブ・プロデューサー]
■EPIC LEAGUE
Jay Kim[Executive Director]
■Eureka Entertainment
辻 拓也[CEO]
■extra mile
内海暢介[取締役]
■GALLUSYS
吉田健一[取締役CTO]
■Kudasai
脇田洋平[取締役]
■LINE NEXT
キム・ウソク[CSO/Business Director]
■LOOTaDOG
横山優人[Japan Marketing Manager]
■MARBLEX
Jinpyo Hong[CEO]
■METAX
矢野慶一[Co-Founder]
■Oasys
松原 亮[Representative Director]
■Startale Group
熊谷祐二[Project Manager]
■WLF PROJECT
鈴木カズ[代表]
■YGG Japan
椎野真光[Co-Founder/SHAKE Entertainment 代表取締役]
■オカキチ
岡本吉起[ゲームプロデューサー]
■グリー
村田卓優[Head of Web3 Business Development]
■コナミデジタルエンタテインメント
金友 健[web3事業部長]
■しおにく企画
しおにく(澤 紫臣)[代表]
■スクウェア・エニックス
畑 圭輔[インキュベーションセンター ブロックチェーン・エンタテインメントディビジョン ディレクター]
■スゴロックス
西山泰弘[エグゼクティブプロデューサー]
■セガ
内海州史[代表取締役 社長執行役員COO]
■ドリコム
内藤裕紀[代表取締役社長]
■ネクソン
ファン・ソンヨン[Executive Producer of MapleStory Universe]
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