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デヴィッド・リンチ氏が78歳で死去。ゲームの表現にも大きな影響を与えた映画監督
1946年にアメリカ・モンタナ州で生まれたデヴィッド・リンチ氏は,芸術系の学校で絵画を学びながら制作活動を行い,1977年の自主制作映画「イレイザーヘッド」で長編映画監督としてデビュー。そのシュールで難解,そして奇怪なストーリーや表現,ビジュアル,サウンドなどでアンダーグラウンドな人気を博し,作品はカルト映画の代名詞に。1980年に公開された長編映画第2作「エレファント・マン」では興行的な成功を収め,また映画賞の受賞やアカデミー賞にノミネートされるなど批評的にも好評を得た。
「ブルーベルベット」に「ワイルド・アット・ハート」,「ロスト・ハイウェイ」といった長編作品に多くのショートフィルム,そして代表作のひとつであるドラマ「ツイン・ピークス」など,氏の名作を挙げようとするとキリがないが,カルトの帝王と呼ばれるその独特の作風は,映像作品はもちろんアートや音楽,小説などさまざまなジャンルの創作に影響を与えている。
それはゲームも例外ではなく,映画好きで知られる小島秀夫氏や須田剛一氏などの作品や,「Alan Wake」をはじめとしたRemedy Entertainment作品全般。ツイン・ピークスのような田舎町が舞台の「サイレントヒル」に,昨年(2024年)リリースされ高い評価を得たインディーゲーム「Lorelei and the Laser Eyes」など,デヴィッド・リンチ氏の作風があまりにも説明が難しいため「どの作品のどのあたりが?」と解説しようとすると長くなるが,その影響を感じられる作品や影響を受けたことを明かしているクリエイターは多く,またオマージュや隠し要素などを感じられる作品もたくさんある。
のちの「ゼルダの伝説」シリーズのストーリー性に影響を与えた「ゼルダの伝説 夢をみる島」もその一つ。その世界観を構築するうえでディレクターの手塚卓志氏の“怪しい人ばかりが出てくるツイン・ピークスのような”という注文があったことが,任天堂公式サイトのインタビュー企画「社長が訊く『ゼルダの伝説 大地の汽笛』」(リンク)で語られている。夢か現実かが分からない,怪しい人ばかりが現れる範囲が限定された世界が舞台の「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」も“ツイン・ピークス的なモノ”を感じられる作品だった。
またデヴィッド・リンチ氏は2000年に放映された「Welcome To The Third Space」などいくつかのPlayStation 2のコマーシャル映像を手がけており,YouTubeのPlayStation Europe公式アカウント(@PlayStationEurope)で公開されている。
リンチ氏の家族によるFacebookの該当の投稿では,氏の訃報とともに「彼がいなくなった今、世界には大きな穴が開いています。しかし彼が言うように『穴ではなくドーナツに目を向けてほしい』」「青く広がる大空に黄金色の太陽が輝く美しい日です」というメッセージが送られている。
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