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イベント
「FFX」「FFXIII」「サガ フロンティア2」などの名曲をピアノトリオが熱演。コンサート「Pianoschlacht 4R 〜浜渦正志作品集〜」をレポート
本公演は,作曲家・浜渦正志氏の手がけた楽曲をピアノとヴァイオリン,チェロのトリオが演奏するというもの。
2024年9月に開催されて好評を博した「Pianoschlacht IV mit Kammermusik 〜浜渦正志作品集〜」を,音源・映像化するための公開収録コンサートという位置付けだ。
会場では,「FINAL FANTASY X」(以下,FFX)および「FINAL FANTASY XIII」(以下,FFXIII)や「サガ フロンティア2」の楽曲を含む前回の「Pianoschlacht IV」の公演プログラムを踏襲しつつ,一部変更・初演の楽曲が披露された。
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「Pianoschlacht 4R 〜浜渦正志作品集〜」公演概要
■Program:
・Sony a CLOCK
グアナフアト
サンクト・ペテルブルク
ギョレメ&カッパドキア
万里の長城
メンフィス
・Sanzui
Ka
En
~ Extra part
Zen
・Atmosphäre Op.1
I〜III
・台風のノルダ
No.1〜7
・Giant
- IMERUAT -
・緒〈てがかり〉
Music by 濵渦斐音
・クラシカロイド
モツ 華麗にジャンプ/平穏な日常/みなさん,ご無事で?
・ポレットのイス
イントロダクション/ポレットのイス
十年の歳月/お引っ越し/空飛ぶイス
・極北の民
- FINAL FANTASY X -
・襲擊
- FINAL FANTASY X -
・Feldschlacht V
- サガ フロンティア2 -
・希望与えし「戌吠の神楽」
- シグマ・ハーモニクス -
・Mediator - Roots
- 不滅のあなたへ -
・閃光
- FINAL FANTASY XIII -
・Mißgestalt
- サガ フロンティア2 -
・ルフルール
- IMERUAT -
■出演(敬称略):
ベンヤミン・ヌス(ピアノ)
室屋光一郎(ヴァイオリン)
結城貴弘(チェロ)
浜渦正志(作曲・ディレクション)
■主催:
MONOMUSIK
MONOMUSIK公式サイト
本公演は公開収録であるため,編成が変わるたびにマイクの位置を変更するなど,通常のコンサートとは一風変わった雰囲気で進行した。
オープニングを飾った「Sony a CLOCK」では,ソニーのWebサイトで展開されている世界遺産定点撮影プロジェクト「“α”CLOCK -“α”が刻む世界の時」に,浜渦氏が提供した楽曲の中からピアノソロ5曲が披露された。
続く「Sanzui」は,浜渦氏がピアニストのベンヤミン・ヌス氏のために書き下ろした,4部構成のピアノソロ楽曲。いずれも技巧的で力強く,かつ繊細で美しいピアノの演奏が観客の心を鷲掴みにしていく。
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「Atmosphäre Op.1」は,ピアノとヴァイオリンのデュオによる3部構成の楽曲で,華やかさ,静けさ,にぎやかさといった多彩な空気感が次々に表現されていった。
アニメ映画「台風のノルダ」の楽曲は,ピアノとヴァイオリン,チェロのトリオで披露。劇判ということで,それまでに披露された楽曲よりもエンタメ感が強く,穏やかなシーンや緊張感のあるシーンなどが脳裏をよぎる演奏だった。
本公演の前半を締めくくった「Giant」は,浜渦氏のユニット・IMERUATの楽曲。原曲の再現度が高いミニマル調のアレンジで,奏者3名の見事な技巧が惜しみなく披露された。
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本公演後半の最初に演奏された「緒〈てがかり〉」は,浜渦氏のご息女である濵渦斐音氏が手がけた楽曲で,ピアノトリオによって中盤から終盤にかけての広がりを感じさせる印象的な演奏が披露された。
続くアニメ作品の「クラシカロイド」および「ポレットのイス」の楽曲は,ピアノトリオによるエンタメ感の強い演奏となった。
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FFXからは2曲を披露。デュオで演奏された「極北の民」は,緩急のついたチェロと繊細かつ力強いピアノがフィーチャーされたアレンジで,観客を魅了した。対照的に「襲撃」は,ピアノソロによる軽快でスピード感のあるアレンジで演奏された。
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サガ フロンティア2の「Feldschlacht V」は,通常バトル曲のピアノソロアレンジで,戦闘らしさがまったくない鎮魂歌のような演奏に。
同じくピアノソロで披露された「シグマ ハーモニクス」の「希望与えし『戌吠の神楽』」は,スピード感と力強さのあるアレンジで,原曲がバトル曲であることをしっかり感じさせる。途中,ヌス氏が鍵盤から手を放し,ハンドクラップでアクセントをつけるパフォーマンスも印象的だった。
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「Mediator - Roots」は,アニメ「不滅のあなたへ」のシーズン1とシーズン2のエンディングテーマのメドレーで,ピアノトリオで披露された。原曲よりも楽器の数が少ないこともあってか,聴いた人の心にストレートに訴えかけてくるようなアレンジとなっており,客席からは一際大きな拍手が贈られた。
同じくピアノトリオで披露されたFFXIIIの「閃光」は,ピアノ,ヴァイオリン,チェロのいずれもが力強く迫力のある演奏で,これまた大きな拍手とともに,「ブラボー!」の声が挙がっていた。
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サガ フロンティア2の「Mißgestalt」は,ピアノソロで披露。ヌス氏による渾身の力を込めたかのような演奏は本当に圧巻で,とくに終盤の叩きつけるような奏法は観客を圧倒していた。
本公演本編の最後に演奏されたIMERUATの「ルフルール」は,ピアノトリオ向けのインストゥルメンタルアレンジに。ヴァイオリンのピチカートなどを入れつつ,原曲の哀愁のある雰囲気を見事に再現していた。
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通常のコンサートであれば,このあとアンコールで終わりなのだが,本公演は公開収録であるため,演奏でミスした部分を収録し直す「リテイクタイム」が設けられた。浜渦氏は「素晴らしい演奏だったと思います」とコメントしていたが,奏者3名は納得のいかない部分があったようで,数か所を録り直すことに。ヌス氏の「“とり”あえず,“トリオ”で」というダジャレにほかの3名がずっこけるというパフォーマンスや,ディレクターである浜渦氏と奏者達によるレコーディング現場さながらのやり取りを挟みつつ,再収録が行われた。
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再収録のあとには,アンコールとしてIMERUATの「LIFE CM」のピアノトリオアレンジが披露された。しかしヌス氏は演奏に納得がいかず,同じ曲をもう一度披露するという,通常のコンサートでは絶対あり得ない事態が発生。観客は,公開収録ならではの貴重な体験を堪能できたのではないだろうか。
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MONOMUSIK公式サイト
※写真:Manuel Chillagano
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