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しげるのゲーミング子育て日誌:第7回は「イヤイヤ期死にゲー説」。ついにやってきた2歳児との戦いは,もはや「Bloodborne」かもしれない
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印刷2025/02/11 11:00

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しげるのゲーミング子育て日誌:第7回は「イヤイヤ期死にゲー説」。ついにやってきた2歳児との戦いは,もはや「Bloodborne」かもしれない

画像集 No.004のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:第7回は「イヤイヤ期死にゲー説」。ついにやってきた2歳児との戦いは,もはや「Bloodborne」かもしれない

 ゲーマーにしてライターのしげるさんが,頭を悩ませつつも楽しんで子育てに向き合う過程をエッセイにする企画「しげるのゲーミング子育て日誌」。不定期でお子さんの成長とともに起こる悲喜こもごもを連載していきます。

 第7回はついに到来した「イヤイヤ期」についてです。言い聞かせようとしてもまったく言うことを聞いてくれないこの状況は,しげるさんいわく「もはや死にゲーだ」とのことで……?

 子供が生まれてから2年と10か月あまり。ついにうちにもやってきた。子供の自我の目覚め,通称イヤイヤ期である。ほんとに厄介。ほとんど死にゲーというか,「Bloodborne」ですね,これ。

画像集 No.001のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:第7回は「イヤイヤ期死にゲー説」。ついにやってきた2歳児との戦いは,もはや「Bloodborne」かもしれない
意味不明かもしれないんですけど,本当にBloodborneなんです

 イヤイヤ期とは書いたものの,うちの子供の場合はいわゆる「なんでも嫌がる」という形をとってはいない。どちらかというと,「なんでも自分でやりたがる」「やりたいことを自分でやらせてもらえなかったり,うまくできなかったりすると癇癪(かんしゃく)を起こす」という感じである。これがまあ,本当に悩ましい。

 もう寝起きの瞬間から,子供の自我も目覚めまくっている。起きたあとは親に抱っこされて移動したいのか,それとも自分で歩いて移動したいのか,前の晩に寝室に持ち込んだオモチャは自分で持って歩きたいのか,それとも親に持っていってほしいのか……。

 起床直後から発生するさまざまな行動の細かい選択肢にいちいちこだわり,親が「あ〜ハイハイ,お父さん持ってくね」と言って布団に持ち込んだトミカを拾って持って行こうとすると,「ヒ〜ン! 自分で持ってく〜!」と朝から半泣きで訴えるのである。め,めんどくせ〜〜!

 着替えのプロセスも,いちいちこの調子である。冬なので,保育園に行くときに着ていく服の点数も多い。パジャマを脱ぐところから始まり,おむつ,肌着,保育園指定の体操着,ズボン,靴下といったそれぞれのアイテムごとに1枚ずつ「自分で着たいかどうか」を聞かなくてはならない。

 「これ自分で着る?」「ズボン自分で履く?」と逐一聞いていき,「お父さんする〜(「お父さんが着せる」の意味)」と言われればその服を着せ,「自分でやる〜」と言われれば作業が完了するまで見守り……というプロセスを,服を全部着るまで1枚ずつ繰り返さなくてはならないのだ。め,めんどくせ〜〜!!

 とりわけ面倒なのが,家を出る前に上着を着せる工程である。防寒着として保育園指定のジャージがあるのだが,これがいわゆる前開きのフルジップの服。ファスナーのスライダーをジーッと上げ下げするの,楽しいじゃないですか。当然我が子もファスナーの開け閉めが大好きなのだが,困ったことにそれを「もう3分で家を出ないと保育園に遅刻する!」というタイミングでやりたがる。

 「ファスナー自分でする〜!」と絶叫し,「ダメだって! もう時間ないんだから!」と言って親が勝手にファスナーを閉めようとするとブチギレ,即ゲームオーバーである。一日の頭からこの調子。「序盤の難所」と考えると,これはほとんどヤーナムキャンプファイヤーである。

 ゲームならばゲームオーバーになったらそのままチェックポイントからやり直せばいいが,イヤイヤ期のゲームオーバーは一味違う。癇癪を起こした我が子の事後処理という作業が待っているのだ。癇癪を起こし,ブチ切れ,玄関先で泣き喚きながらゴロゴロ転がる我が子。これをなんとかして保育園まで担ぎ込まなくてはならない。こうなるともう自走での移動は不可能。そもそも本人が「抱っこする〜〜〜〜!!!!」と絶叫しながら泣き喚いている。抱っこ〜? マジで〜?

 「とにかく家から近い」という基準で選んだ保育園だから,大人の脚で歩けば10分かからずに到着できる。しかし,もうすぐ3歳にならんとする我が子の重量はおよそ12kg。毎日元気に食べて遊んで,すくすくと大きくなっている。そして今,目の前で癇癪を起こして,玄関に寝っ転がりながらグルグル回転している。これを……かついで……保育園まで……行く……?

 所要時間は倍以上に伸び,その間ずっと12kgの生き物を抱っこしっぱなし。考えただけでもどっと疲れる。今は冬場だからまだマシなものの,夏場だとそれだけで汗だくのビッチャビチャ,保育園に行って帰ってくるだけで一日分の体力を使い果たした気分になるだろう。

 このように,イヤイヤ期の子供との生活には至る所に危険が潜んでいる。回避にしくじれば即死,前回はここで死んだから次はこう対策しよう……と浅知恵を使ったとて,子供のブチギレ・ポイントは頻繁に位置がずれる。毎日ランダムにトラップが生成されるので,何度プレイしても新鮮な気持ちでミスをするわけである。イヤですね。

 「昨日は父親に靴を履かせて欲しかったけど,今日は自分で履きたかった」といった感じで,毎回気分によってOK/NGの判定が大きく変わる。そこを踏み間違えるとやっぱり即死。それではと1工程ごとにおうかがいを立てても,途中で気分が変われば,それはそれで死。戦闘中,「これはいけるかも……」と思ったタイミングでいきなり獣化するガスコイン神父を思い出す理不尽さだ。

 何度あそこでめげそうになったことか……いや,でも武器を強化したりすれば難敵でもなんとかなった「Bloodborne」と比べれば,なんだかイヤイヤ期のほうがずっと理不尽でメチャクチャな気がするな……。

 このように,イヤイヤ期の子供との生活というのは,日によって異なる子供の気分を察しつつ,できるだけすべての選択肢をミスらずに行動することが求められる。一発ミスるとここまで面倒くさいことになるとは,自分でやってみるまで分からなかった。「親の言うことを聞かない子供にはガツンと一発言って,シュンとなったら詳細を詰めて諭す」などという叱り方は,2歳児にはまったく不可能なのである。なんせ日本語もふんわりとしか分かっていないんだから。

 言葉で言って聞かせられないから,当然選択を間違ったときの破滅も言語的なものではない。先ほど書いたように,ゴロゴロ転がって泣き喚くのである。そうなってしまうとその先のオペレーションが全部目詰まりを起こす。

 たとえば家に帰る途中で子供が癇癪を起こせば,その先にある「夕食を食べさせる」「風呂に入れる」「パジャマに着替えさせる」「寝かしつける」といった作業のスケジュールが,すべて後ろ倒しになるのだ。破滅である。

 電車の中やスーパーといった公共のスペースで,2〜3歳くらいの子供が泣き喚いているのを放置しているように見えたり,逆になんだか妙に甘い対応をしたりしている親御さんを見かけたことはないだろうか。はたから見れば,「なんで泣いてるのをほっとくんだよ」とか「対応が甘い。ガツンと言い聞かせればいいだろうが」とか,いろいろ言いたくなってしまう状況である。

 しかし,「イヤイヤ期の子供との付き合いは基本死にゲーである」「この時期の子供は本当に意味が分からないタイミングで爆発する」という点を考慮に入れれば,また違った風景が見えてくるのではないだろうか。

 泣き喚く子供を半ば放置している親は,爆弾解体に失敗し,残機がゼロになったプレイヤーである。状況をリセットするためにいったん子供から距離を置いて気力を充電しており,その間に子供をある程度好きに泣かせることでストレスを少しでも発散させ,事態の立て直しを図っている。

 周囲に迷惑をかけているのは分かっているが,とはいえ誰かが子を家に連れて帰ってくれて,寝かしつけてくれるわけでもない。その親はもう一度立ち上がる気力を奮い立たせるため,迷惑を承知でスマホを見ているのかもしれない。

 妙に子供に甘い対応をしている親は,今まさに死にゲーをプレイしている最中である。家に帰った後も,手を洗わせてご飯を食べさせ,風呂に入れて寝かせなければならない。一度のミスが原因で子供が爆発してしまえば,その後のオペレーションが全部玉突き事故を起こし,最終的に寝かしつけの最中に子供と一緒に寝落ちしてしまうだろう。そんな事態を避けるため,ひとまず無事に家に帰ることを最優先しているはずだ。

 もちろん,「公共の空間で騒がしくしているほうが変だろう,こっちも疲れてるんだよ」という意見も分かる。分かるんだけど,イヤイヤ期の子供というのはピンの抜けた手榴弾みたいなものであり,ちょっとのしくじりで即爆発する生き物なのである。どんな親も,子供の癇癪の種を率先して刺激しようとは思っていない。

 また「これ,周りからしたらうるさいんだろうなあ」「迷惑がられているだろうなあ」という自覚もある。しかし親の心,子知らず。そんなことおかまいなしに子供は泣く時は泣く。なんせ死にゲーなので……。

 実のところ,子供にやたら気をつかって生活すること自体に,親としてはけっこう葛藤もある。そもそも癇癪を起こされるのは理不尽な話だし,「いくらなんでも甘いんじゃないか?」という疑問が脳裏をよぎるのだ。ひとつひとつの選択が積み重なることで現実が理不尽な方向に捻じ曲がってしまうかも……という感覚は,最近プレイした「Slay the Princess」っぽい気もする。これは明らかに様子が変なプリンセスを前にしてどの選択肢を選ぶかで,プレイヤーはおろか世界の行く末まで決まってしまうゲームだった。状況の理不尽さと選択肢の重さという点では,ちょっとイヤイヤ期っぽいように思う。

画像集 No.002のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:第7回は「イヤイヤ期死にゲー説」。ついにやってきた2歳児との戦いは,もはや「Bloodborne」かもしれない
Slay the Princess

 子供の将来についての心配なら,いくらでも悪いほうに膨らむ。「子供に気をつかって服を一枚ずつ自分で着るかどうか確認しながら着せたり,わがままを聞いてトミカを買ってあげたりする」というようなところからスタートして,いつの間にかめちゃくちゃわがままな幼児に育ち,親の言うことは聞かず,気に入らないことがあるとすぐに物や人に当たり,対人関係の構築ができなくて友達もできず,勉強にもついていけなくなり,気がついたら自宅から出られなくなり,そのまま30年が経過し,生活能力がないまま中年になってしまうのではないか……。

 イヤイヤ期の子供に負けて機嫌をとるたびに,「今こいつの言うことを聞いて甘やかしたことで,将来は滅茶苦茶なことになってしまうのでは……」という,最悪のバタフライエフェクトの可能性を想像してしまうのだ。

 おそらく,公共スペースで泣く幼児の機嫌をとっている親御さんたちの脳裏にも,そんな最悪バタフライエフェクトについての想像はチラついているはずである。例えば今日のお出かけでは,帰宅後のオペレーションのことを考えて子供の機嫌を取るためにガチャガチャを1回だけやらせたけれど,正直ちょっと甘いんじゃないだろうか……しかし不機嫌な状態だと帰宅後の工程をこなすのに通常の倍は時間がかかる……仕方がない……とはいえどうなんだろう……といったような葛藤がある。

 つまり,「今自分は我が子を甘やかしているのでは?」「オペレーションをスムーズに成立させなくては」の間で心を揺らしつつ,目の前で暴れる我が子をなんとかしてストップさせなくてはならないというのが,イヤイヤ期の子供の世話という死にゲーをプレイしている親の立場なのだ。

画像集 No.003のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:第7回は「イヤイヤ期死にゲー説」。ついにやってきた2歳児との戦いは,もはや「Bloodborne」かもしれない
子供の機嫌を取るために回したガチャガチャや、購入したトミカたち

 この時期の子供は,聞き分けの悪さから何かと外で迷惑をかけがちである。しかし,今後そんな親子を見かけたら,「死にゲーをやってるんだな……」と思っていただけるとありがたい。そして絶賛イヤイヤ期の子供と戦っているご同輩の皆様,まことにお疲れ様である。

 子供の発育に関する本によれば,イヤイヤ期はそのうちおさまり,以降は徐々に聞き分けがよくなるものらしい。本当に,そうでなくては困る。親の言うことを素直に聞き,昼寝を嫌がって七転八倒するようなことがなくなるその日まで,万国の親御さんと連帯しつつ戦っていきたいと思うのだった。


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