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カプコンの「RE ENGINE」を用いた学生向けゲーム制作コンペの授賞式をレポート。最優秀賞はHAL大阪チームが開発した,タコが主人公のアクションパズル
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本コンペは,次世代クリエイターの育成と教育支援を目的としたもので,日本国内の大学,大学院,高専,専門学校に在籍している18歳以上の学生により結成された93チームがエントリー。その中から選出された15チームが,カプコンの提供するクラウド環境のもと,同社の自社開発エンジン「RE ENGINE」などを用いて,約半年間にわたりゲーム開発に取り組んだ。
この授賞式では,最優秀賞を含む全7賞の受賞作品が発表・表彰された。披露された14作品と,開発チーム(所属教育機関)は以下のとおり。
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各作品の審査を行ったのは,カプコンの開発者3名と本コンペの協賛企業から招かれた審査員だ。
●審査員
「バイオハザード ヴィレッジ」ディレクター 佐藤盛正
「モンスターハンターライズ:サンブレイク」ディレクター 鈴木佳剛
RE ENGINE リードアーキテクト 石田智史
アマゾンウェブサービスジャパン ゲーム営業・ソリューションアーキテクトチーム
オートデスク CTS シニア テクニカルサポートスペシャリスト 古屋 涼
インテル 技術・営業統括本部IA技術本部 部長 太田仁彦
タートル・ビーチ APAC マーケティングマネージャー 益田直哉
※敬称略
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受賞作品は以下のとおりだ。
■最優秀賞 / AWS賞 / タートル・ビーチ賞
「octΩpus」/Critical Path(HAL大阪)
本作は,主人公のタコが吐き出すスミを駆使して海底を冒険するアクションパズルゲームだ。ゲームの画面とメカニズムだけでプレイヤーに遊びを理解させようとする誘導や,さまざまなギミックの作り込み,繰り返し挑戦したくなるリスタートポイントの設定などが評価された。
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■優秀賞 / Autodesk賞
「Turret Valet」/Neighbor(アミューズメントメディア総合学院)
本作は,プレイヤー4人が2チームに分かれ,1つのコントローラを2人で操作する対戦ゲームである。その斬新な協力・連携システムと分かりやすいルール,ゲームサイクル,UIやビジュアルの作り込みが評価を受けた。
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■特別賞
「FLUENT」/チーム北海道(北海道大学工学院)
パルクールのようなアクションで爽快感を生み出す本作は,その気持ちよさはもちろんのこと,巧みに誘導するレベルデザインや飽きさせないゲーム構成など,こだわりを感じさせる完成度が評価されていた。
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「ATEA: THE LOST SEEKER」/DiBi(HAL東京)
バトルアクションゲームの本作は,スタイリッシュなワイヤーアクションとバトル演出に特化した完成度の高さが評価された。開発にあたっても,盛り込みたい部分はほかにあったが,期間の制約などを踏まえてバトルに集中することにしたそうだ。
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■インテル賞
「BREAK RUNE」/RE RAMEN(日本工学院専門学校蒲田校)
アクションパズルゲームの本作は,シンプルなルールや操作性,完成度の高いパズル設計,グラフィックスやサウンドが世界設定とマッチしている点などが評価された。開発にあたっては,少ない要素でシステムを構築し,多くのステージを生み出せることを意識したという。
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授賞式の終了後,本コンペの最優秀賞を獲得したCritical Pathと,カプコン 技術研究統括基盤技術研究開発部 基盤開発支援室 伊集院 勝氏に話を聞くことができた。
Critical Pathは,HAL大阪の3〜4年生19名によるチームだ。今回のコンペに参加したのは担当教員からの要請だったそうで,メンバーや役割もあらかじめ決まっていたという。
「octΩpus」の企画にあたっては,開発も審査もクラウド環境で行うため,まずアクション性が高いものやシビアな入力が必要なものを排除。「メンバーの誰もが作ったことのないゲーム」をコンセプトに,アクションパズルを選択したとのこと。
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当初,プレイアブルキャラクターはタコではなかったそうだ。さまざまな議論の末,タコのアクションを使ったゲームの開発は難度が高い半面,チャレンジになると判断し,採用が決まった。
苦労したポイントは,タコが吐くスミの挙動である。試行錯誤しながら,セミオープンワールドの海中で,決まった形のないスミをそれらしく広げていったそうで,開発期間の最後までブラッシュアップを続けたという。
今回,該当作品はなかったのだが,優秀な作品はカプコンから製品化に向けたバックアップを受けられるという話もあったので,その点について開発上意識したことも聞いてみた。担当教員からは「商用化にあたっては,プレイ時間の担保が必要」と指摘されていたとのことで,マップの広さやボス戦のボリュームなどに配慮したことが挙げられた。
RE ENGINEに関しては,描画能力の高さを実感したとのこと。「octΩpus」は各マップが広く,オブジェクトも多いのだが,とくに最適化しなくとも60fpsを実現できたそうだ。その一方で,クラウド環境での開発はインターネット環境に依存するため,思うように進行できないこともあるというデメリットも感じたとのこと。
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伊集院氏によると,今回のコンペは2024年に行った近畿大学との産学連携施策(関連記事)が発端だったという。そのときは,カプコンから提供したアセットを使ってゲームのコアとなる遊びの部分を作るという実習だったのだが,それをさらに広げられないかと模索した結果,今回のような形式となった。
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今回用いたクラウド環境は,カプコンがコロナ禍の中で活用したリモートワーク用のシステムがベースになっている。
またRE ENGINEはUnityやUnreal Engineのような汎用ゲームエンジンとは異なるため,学生向けに急遽マニュアルやチュートリアル,サンプルプログラムを用意したとのこと。さらに各チームには,技術的なサポートを担当するメンターを配置。加えて学生が技術的な質問を投稿できるサポートサイトを作って可能な限り迅速に回答したり,月1回テレビ会議で学生達の意見やリクエストを聞いて,システムにフィードバックしたりする体制を整えた。
そうした学生とのやり取りの中には,気づきがあったという。普段RE ENGINEを使っているカプコンのスタッフにとっては当たり前でも,初めて触る人には分からないことも多くあったとのことで,それらを今後の新入社員教育にもフィードバックしていくそうだ。
こうした自社のツールを学生に提供する取り組みは,ゲーム業界全体を将来に向けて盛り上げるべく,今後も続けていくという。今回はコンペだったが,そのときどきの状況に合わせてオープンカンファレンスや教育機関での実習などの形式も検討するとのことだった。
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