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Logicool Gとオムロンによるオリジナルメカニカルキースイッチ「Romer-G」,その製造工程を鳥取でじっくり見てきた
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印刷2015/04/18 00:10

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Logicool Gとオムロンによるオリジナルメカニカルキースイッチ「Romer-G」,その製造工程を鳥取でじっくり見てきた

G910
画像集 No.041のサムネイル画像 / Logicool Gとオムロンによるオリジナルメカニカルキースイッチ「Romer-G」,その製造工程を鳥取でじっくり見てきた
 Logitechの日本法人であるロジクールのゲーマー向け周辺機器ブランド「Logicool G」(海外における名称はLogitech G)から,2014年12月に国内発売となったキーボード「G910 Orion Spark RGB mechanical gaming keyboard」(国内製品名:G910 RGB Mechanical Gaming Keyboard,以下 G910)が,まったく新しいメカニカルキースイッチ「Romer-G」(ローマーG)を採用しているというのは,覚えている読者も多いことだろう(関連記事)。

オムロン スイッチアンドデバイス 倉吉事業所
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 Romer-Gは,Logitech本社と,日本のオムロン スイッチアンドデバイスが共同開発したキースイッチで,その製造は鳥取県倉吉市にあるオムロン スイッチアンドデバイスの倉吉事業所で行われている。少なくとも現時点では「メイドインジャパン」のスイッチなのだ。
 今回4Gamerでは,両社の厚意により,Romer-Gの製造ラインをじっくり見せてもらうことができた。まずもって滅多に見られるものではないので,Romer-Gという新世代キースイッチがどのように製造されているのかを,ゲーマー諸兄諸姉にお伝えしてみたい。



Romer-Gのふるさと,倉吉事業所とは


オムロン スイッチアンドデバイスの生産拠点(上)と,倉吉事業所の鳥瞰写真(下)。上はスライドより。下はオムロン スイッチアンドデバイス提供
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 「オムロン」と聞くと,一般には体温計や血圧計を始めとする医療機器や健康器具をイメージする人が多いのではないかと思うが,実のところ,オムロンは,工場における生産工程の自動化システムである「ファクトリーオートメーション」(FA)機器の世界的な企業だ。同時に,各種スイッチやリレー,センサーといった電子部品も事業の大きな柱となっており,オムロン スイッチアンドデバイスは,その名のとおり,オムロングループで電子部品の開発・製造を手がける,オムロンの100%子会社だ。日本国内には岡山県岡山市内の本社と今回の訪問先である倉吉事業所,そして海外では中国・深圳市と上海市,インドネシアのベカシ市で製造工場を展開している。

 オムロン スイッチアンドデバイスによれば,倉吉事業所は「マザー工場」という位置づけで,海外の製造拠点に先駆けて製品ラインを立ち上げ,製造工程をブラッシュアップする立場にあるとのことだ。
 ちなみに,先のムービーでも紹介したRomer-Gの製造ラインが倉吉事業所で立ち上がったのは2014年で,現在,中国の生産拠点でもラインを拡大中だという。

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倉吉事業所正門。入ってすぐ左には「OMRON」ロゴ入りの碑が建っていた
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構内には鳥居のある日本風の庭園と,その先に小さな神社があった

倉吉事業所の製造設備(の一部)。さまざまなスイッチを製造するラインがあり,その一角にRomer-G専用のものが設置されている
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 ちなみにオムロン スイッチアンドデバイスでは,多種多様なスイッチを生産している。最も馴染み深いところではマウスのメインボタン用となるマイクロスイッチが挙げられるだろうが,アーケードスティックのスティック部,根元にある4点あるいは8点スイッチも,オムロン スイッチアンドデバイスが手がけていたりする。PCゲーマー以外だと,「オムロン」と聞いてもピンとこないかもしれないが,実はもっと広い範囲でゲーマーと関わりがあるのだ。

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ロビーにあったロジクールのマウス(※カットモデル)。オムロン スイッチアンドデバイス製マイクロスイッチが採用されている
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格闘ゲーマーやシューターにはお馴染みのアーケードスティック。そのレバー用スイッチもオムロン スイッチアンドデバイスが手がけている
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これはステアリングコントローラではなく,本物の自動車用ステアリング。ステアリング部のスイッチなどでも高い市場シェアを持つという
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ロビーには戦隊モノの公式ゆるキャラ「オムレンジャー」のイラスト入りポップがあった。すべてスイッチを模したキャラクターになっている

 さて,Romer-Gの製造ラインを見る前に,スイッチの構造について簡単に説明しておくと,たいていのスイッチは,

  • 電気をオン/オフする電極および接点
  • バネ
  • ケースやボタンといった樹脂パーツ

といった構成要素からできている。そして,倉吉事業所ではスイッチの性能を大きく左右する電極や接点の部分を製造しており,それらと,別途納入された樹脂パーツやバネを組み合わせてスイッチを完成させるわけだ。

 スイッチの電極には銅合金が使われる。銅合金は丈夫で電気をよく通すため,繰り返し使われるスイッチの電極素材には適している。
 ちなみに,その電極に溶接される接点部分には,銀が用いられているが,これは,銀が電気をよく通すうえ,接触時の電気抵抗が低いという特徴があるためだ。
 下に示した写真はRomer-G用の電極や接点ではないのだが,Romer-G用のそれも,だいたい同じような工程で製造されているという理解でいいだろう。

電極や接点の材料となるリボン状の銅合金がリールから製造装置に吸い込まれ(左),その先でプレス機によって型抜きされる(右)
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あらためてリールに巻かれる銅合金。右は寄ってみたところだ
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型抜きされた銅合金の板に電極を溶接する装置
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Romer-Gの製造ラインを見てみる


 前置きが長くなったが,Romer-Gの製造工程を見てみよう。
 製造ラインは,電極がプレスされる部分も含め,全長およそ10m弱といったところだ。下の写真はそんな製造ラインにおける最初の工程で,Romer-G用にあらかじめ型抜されたリボン状の電極を,プレス機でさらに整形することになる。

リールに巻かれた,Romer-Gの電極リボン(左)と精密プレス機
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 下の写真は,型抜きされた銅合金のリボンが製造ラインへ送り込まれる直前のあたりから,製造ライン全体を眺めたものになる。

手前側からリボン状に巻かれた電極が製造ラインに送り込まれている。人のいるあたりが,組み立ての佳境を迎えるところ
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 Romer-G専用の製造ラインは品質検査も含め完全に自動化されており,人手が必要なのは,Romer-Gを構成する部材の供給やラインに何らかの問題が起きて停止したときだけだ。そのため,ラインあたりの担当スタッフは1名のみとなっている。

Logitechが作った「Romer-Gの大型模型」より。中央部にレンズが組み込まれている
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 さて,Romer-G製造の最初のステップは,「リボン状の電極を1個1個の電極に整形してRomer-Gの土台になっている樹脂パーツに填め込む」というものになる。
 レビュー記事などでもお伝えしているとおり,Romer-Gでは,キースイッチの中央部に,光を通すレンズが組み込まれているため,電極はレンズ周囲の隙間に填め込まれるのがポイント。製造ラインの担当者によれば,2つの電極を「ロの字型」に組み合わせるスイッチを手がけるのはオムロン スイッチアンドデバイスとしても初めての試みだったそうだ。

先ほどのムービーで30秒過ぎから45秒過ぎあたりの部分。ここで電極を組み立てている
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土台パーツに,電極をロの字型で填め込むところ(上)。ムービーの45〜52秒あたりだ。下は電極が填め込まれた台座のクローズアップ
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 台座に電極が填め込まれると,続いて,土台パーツの四隅にグリスが塗られる。

ライン上に細い綿棒のようなものが見えるが,これで土台パーツの四隅にグリスを盛っていく。このあたりはムービーの55秒〜1分3秒あたりだ
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 ムービーの1分3秒〜1分7秒くらいでは一定のリズムで光が点灯していたのに気づいたと思うが,ここでは,盛られたグリスの量を,画像検査装置によって自動でチェックするようになっていた。
 画像検査装置は1990年代から工場へ導入され始めたのだが,当然のことながら,FA機器の大手であるオムロンも手がけている。このラインで使われている画像検査装置もオムロンが開発したものだ。

画像検査装置(左)と,画像検査装置のモニター(右)
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 続いて,LEDの光を通すレンズ,バネ,プランジャーの順番で組み付けられて,Romer-Gが完成する。割とシンプルといえるだろう。

中央部にレンズが填め込まれた後,バネ,青い樹脂製パーツとプランジャーが填め込まれて,Romer-Gの形になる。このあたりはムービーの1分7秒から1分27秒くらいと対応する
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レンズやバネなどといった部材は製造ラインの裏手側から製造ラインへと送り込まれる
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 Romer-Gそのものは以上の工程で完成だが,先ほど紹介したとおり,Romer-Gの製造ラインでは,完成したRomer-Gを検査し,適切な性能を持っているのかどうかを確認する検査工程も完全に自動化されている。
 検査は3個1組で,バネ圧と,スイッチがオンになるアクチュエーションポイントの深さ,接点抵抗などが対象となっているようだ。

3個1組で検査ラインへ運ばれるRomer-G
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 事情により,具体的な数字は紹介できないのだが,Romer-Gの大きな特徴である1.5mmというアクチュエーションポイント値に対し,許容誤差の範囲は広めに取ってあるのを確認できた。ただ,実際に検査をパスしたスイッチのアクチュエーションポイントは,恐ろしいくらい揃っていた。大雑把に,100mm分の1のオーダーでだいたい揃っている印象である。

検査工程を上から見た様子。ムービーの1分37秒あたりから先を見てもらうと分かるのだが,3個1組で,右回りに検査工程を流れながら,バネ圧とアクチュエーションポイント,接点抵抗の検査を受けることになる。おそらく同時に,解放時の絶縁抵抗なども検査されているはずだ
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アクチュエーションポイントの深さを調べる機械。Romer-Gは1.5mmというスペックになっているため,「1.5mm±許容誤差」の範囲に収まっているかどうかテストされる
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絶縁性能を検査するための検査装置が,検査ラインの真下,写真左に置いてあった。ちなみに写真で右のボックス内に見える黒い箱は検査用PCで,灰色の箱はレーザーマーキング要の制御ユニットとのことだ
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 最近は,Razerと組んだKaiHua Electronicsなど,Cherry MX互換――というか,事実上のコピーだが――のスイッチで中国のスイッチメーカーが台頭しつつあるが,オムロン スイッチアンドデバイスによれば,金型の技術や精度の点では,まだまだ日本が勝っているとのこと。
 Romer-Gのような,高い精度と微妙な押し心地が要求されるゲーマー向けスイッチは,オムロン スイッチアンドデバイスの技術が活かせる製品というわけである。

検査に合格しなかった個体は,「どういう理由で不合格か」で分類されつつ弾かれる
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 なお,検査に合格しなかった個体はラインから排除されるのだが,ラインを稼働させ続けていると何らかの理由で不合格が増えたり,また誤差が一方方向に増えていったりといったことが起こるという。そういった場合はいったんラインを停止し,製造機材を調整してあらためて稼働させることで,製品の品質と歩留まりを高めているそうである。


Romer-G製造ラインあたりの能力は月産110万個

……それが複数ある,ということは?


検査も終わってトレイに載せられたRomer-G。ここまで全自動である
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 以上,Romer-Gのために建造された製造ラインを見てきた。
 オムロン スイッチアンドデバイスによれば,この製造ラインは1つが月あたり110万個のRomer-G製造能力を持っているという。

 そして,すでに述べたとおり,オムロン スイッチアンドデバイスは現在,中国工場でも製造ラインを立ち上げるべく動いている。すでに複数の製造ラインがあり,それが今後,さらに増えるというわけだ。
 これだけの数をG910だけで捌くというのはちょっと考えられない。それだけに,そう遠からず,Romer-Gを採用した新しいキーボード製品が登場する……と考えるのが自然ではないかと思うのだが,どうだろう?

 なお,今回の取材では,Logitech,そしてオムロン スイッチアンドデバイスの担当者に,いろいろな話を聞くこともできたので,それらについては後日,あらためてお伝えしたい。

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ロジクールのG910製品情報ページ

オムロン スイッチアンドデバイス公式Webページ

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    Logitech G/Logicool G

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