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Logicool Gとオムロンによるオリジナルメカニカルキースイッチ「Romer-G」,その製造工程を鳥取でじっくり見てきた
今回4Gamerでは,両社の厚意により,Romer-Gの製造ラインをじっくり見せてもらうことができた。まずもって滅多に見られるものではないので,Romer-Gという新世代キースイッチがどのように製造されているのかを,ゲーマー諸兄諸姉にお伝えしてみたい。
Romer-Gのふるさと,倉吉事業所とは
オムロン スイッチアンドデバイスによれば,倉吉事業所は「マザー工場」という位置づけで,海外の製造拠点に先駆けて製品ラインを立ち上げ,製造工程をブラッシュアップする立場にあるとのことだ。
ちなみに,先のムービーでも紹介したRomer-Gの製造ラインが倉吉事業所で立ち上がったのは2014年で,現在,中国の生産拠点でもラインを拡大中だという。
倉吉事業所正門。入ってすぐ左には「OMRON」ロゴ入りの碑が建っていた | |
構内には鳥居のある日本風の庭園と,その先に小さな神社があった |
さて,Romer-Gの製造ラインを見る前に,スイッチの構造について簡単に説明しておくと,たいていのスイッチは,
- 電気をオン/オフする電極および接点
- バネ
- ケースやボタンといった樹脂パーツ
といった構成要素からできている。そして,倉吉事業所ではスイッチの性能を大きく左右する電極や接点の部分を製造しており,それらと,別途納入された樹脂パーツやバネを組み合わせてスイッチを完成させるわけだ。
スイッチの電極には銅合金が使われる。銅合金は丈夫で電気をよく通すため,繰り返し使われるスイッチの電極素材には適している。
ちなみに,その電極に溶接される接点部分には,銀が用いられているが,これは,銀が電気をよく通すうえ,接触時の電気抵抗が低いという特徴があるためだ。
下に示した写真はRomer-G用の電極や接点ではないのだが,Romer-G用のそれも,だいたい同じような工程で製造されているという理解でいいだろう。
Romer-Gの製造ラインを見てみる
前置きが長くなったが,Romer-Gの製造工程を見てみよう。
製造ラインは,電極がプレスされる部分も含め,全長およそ10m弱といったところだ。下の写真はそんな製造ラインにおける最初の工程で,Romer-G用にあらかじめ型抜されたリボン状の電極を,プレス機でさらに整形することになる。
下の写真は,型抜きされた銅合金のリボンが製造ラインへ送り込まれる直前のあたりから,製造ライン全体を眺めたものになる。
Romer-G専用の製造ラインは品質検査も含め完全に自動化されており,人手が必要なのは,Romer-Gを構成する部材の供給やラインに何らかの問題が起きて停止したときだけだ。そのため,ラインあたりの担当スタッフは1名のみとなっている。
レビュー記事などでもお伝えしているとおり,Romer-Gでは,キースイッチの中央部に,光を通すレンズが組み込まれているため,電極はレンズ周囲の隙間に填め込まれるのがポイント。製造ラインの担当者によれば,2つの電極を「ロの字型」に組み合わせるスイッチを手がけるのはオムロン スイッチアンドデバイスとしても初めての試みだったそうだ。
台座に電極が填め込まれると,続いて,土台パーツの四隅にグリスが塗られる。
ムービーの1分3秒〜1分7秒くらいでは一定のリズムで光が点灯していたのに気づいたと思うが,ここでは,盛られたグリスの量を,画像検査装置によって自動でチェックするようになっていた。
画像検査装置は1990年代から工場へ導入され始めたのだが,当然のことながら,FA機器の大手であるオムロンも手がけている。このラインで使われている画像検査装置もオムロンが開発したものだ。
続いて,LEDの光を通すレンズ,バネ,プランジャーの順番で組み付けられて,Romer-Gが完成する。割とシンプルといえるだろう。
Romer-Gそのものは以上の工程で完成だが,先ほど紹介したとおり,Romer-Gの製造ラインでは,完成したRomer-Gを検査し,適切な性能を持っているのかどうかを確認する検査工程も完全に自動化されている。
検査は3個1組で,バネ圧と,スイッチがオンになるアクチュエーションポイントの深さ,接点抵抗などが対象となっているようだ。
事情により,具体的な数字は紹介できないのだが,Romer-Gの大きな特徴である1.5mmというアクチュエーションポイント値に対し,許容誤差の範囲は広めに取ってあるのを確認できた。ただ,実際に検査をパスしたスイッチのアクチュエーションポイントは,恐ろしいくらい揃っていた。大雑把に,100mm分の1のオーダーでだいたい揃っている印象である。
最近は,Razerと組んだKaiHua Electronicsなど,Cherry MX互換――というか,事実上のコピーだが――のスイッチで中国のスイッチメーカーが台頭しつつあるが,オムロン スイッチアンドデバイスによれば,金型の技術や精度の点では,まだまだ日本が勝っているとのこと。
Romer-Gのような,高い精度と微妙な押し心地が要求されるゲーマー向けスイッチは,オムロン スイッチアンドデバイスの技術が活かせる製品というわけである。
Romer-G製造ラインあたりの能力は月産110万個
……それが複数ある,ということは?
オムロン スイッチアンドデバイスによれば,この製造ラインは1つが月あたり110万個のRomer-G製造能力を持っているという。
そして,すでに述べたとおり,オムロン スイッチアンドデバイスは現在,中国工場でも製造ラインを立ち上げるべく動いている。すでに複数の製造ラインがあり,それが今後,さらに増えるというわけだ。
これだけの数をG910だけで捌くというのはちょっと考えられない。それだけに,そう遠からず,Romer-Gを採用した新しいキーボード製品が登場する……と考えるのが自然ではないかと思うのだが,どうだろう?
なお,今回の取材では,Logitech,そしてオムロン スイッチアンドデバイスの担当者に,いろいろな話を聞くこともできたので,それらについては後日,あらためてお伝えしたい。
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