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印刷2005/10/20 23:25

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Intel,新しいゲームベンチマークソフトを発表

 Intelは2005年10月20日,都内で「プラットフォーム評価の新しい手法」と題する記者説明会を開催した。「プラットフォーム」とは,最近Intelがさかんに繰り返しているキーワードで,「CPUだけでなく,チップセットやメモリ,グラフィックスなどを,トータルで見ていきましょうね」といった感じの言葉である。
 さて,Intelはこの説明会で,来週「www.intelcapabilitiesforum.net」というサイトを立ち上げること,そのサイトで一般ユーザーに向けて,プラットフォーム評価用のゲームベンチマークソフト「Intel Gaming Capabilities Assessment Tool」(以下IGCAT)と,(今回は詳細が語られなかったが)「アイス・ストーム・ファイターズ」というゲームデモを自由にダウンロードできるようにすると述べた。「Unreal Tournament 2004」(以下UT2004)「DOOM 3」「Half-Life 2」(以下HL2)の実ゲームタイトルを用いるという,Intel初の本格的なゲームベンチマークソフトといっても過言ではないプログラムが,無償公開されるというわけだ。
 今回はこのIGCATについて,説明会の内容をまとめて紹介していきたいと思う。

IntelのDave Salvator氏
 説明会で壇上に立った,Intelのパフォーマンス・ベンチマーク・アナリシス ワールドワイド・クライアント・ケーパビリティ・エバンジェリストのDave Salvator(デーブ・サルバトアー)氏は,「これまでのベンチマークテストは速度だけを評価の対象としていましたが,今後はユーザーの体験そのものを評価すべきです」と述べた。その理由として同氏は,UT2004やDOOM 3のTimedemoを引き合いに出し,これらが,実際のゲームプレイを反映していないからだという。
 「フレームレートの高さと,実際のゲーム体験は,それほど関係がありません。Timedemoは,実際のゲームをプレイしているかのような画面を使ってベンチマークを行いますが,実際にはそうではないのです」(Salvator氏)。平均フレームレートを計測する手法には,3Dグラフィックス性能が分かるという意味で大いに意味があるものの,平均値の裏には多くの情報が含まれていると指摘した。

左:UT2004のTimedemoよりも,実際のゲームプレイのほうが瞬間的に大きなメモリ帯域幅を必要とするとのこと
右:DOOM 3のTimedemoでは,ゲーム内物理と敵AIの処理に用いられる「gamex86.dll」が,まったく用いられていないという


■一つのベンチで二つのデータを得て5段階評価
しきい値を調査するための実地調査詳細とするスライド
 それを踏まえて開発されたというIGCATとは,いったいどのようなベンチマークソフトなのだろうか。
 一言でいえば,「特定のゲームタイトルに対して,Intelが調査した結果に基づくフレームレートのしきい値をどの程度の時間上回るかという指標,そして,最高フレームレートおよび,時間ごとにフレームレートがどの程度変動するかという二つの要素から算出した指標で,それぞれ『ユーザ体験値』という値で5段階評価を行うもの」である。前出のゲームプログラムが付属したり含まれたりはしておらず,ゲームプログラム自体はユーザー側で用意する必要がある。
 これではさっぱり分からないと思うが,要するに,IGCATでは,一つのテストで二つのスコアを測定するのである。

 順に説明しよう。Intelは,調査会社のGartnerと協力し,2004年の「Cyberathlete Professional League」において,175人のコアゲーマーに対してブラインドテストを実施したのだそうだ。仕様の異なる5台のPCを利用してUT2004とDOOM 3,HL2をブラインドテストでプレイさせ,ゲームの快適度を5段階で評価してもらい,そのデータを基に「しきい値」となるフレームレートを算出したという。しきい値とは,それを下回ると,ゲームを快適に感じられなくなるギリギリのフレームレートと考えればいい。
 算出されたしきい値はUT2004とHL2が45fps,DOOM 3が40fps。このフレームレートを,ベンチマークテスト中にどのくらいの時間超えているかを統計的に分析し,「しきい値モデル」のユーザ体験値を算出する。

 さらに,最高フレームレートが何fpsで,時間ごとにどの程度変動するかを測定して5段階に分類する処理も同時に行う。そして,より最高フレームレートが高く,フレームレートのブレがより少ないものを高く評価する「ベイズ解析モデル」のユーザ体験値も算出するのである。


しきい値のモデルとベイズ解析のモデルを示したスライド(上段)。ベイズ解析のほうは,ちょっとこれだけだと理解するのは難しい。下段はIGCATの説明と,UT2004を用いたデモで示された実際のユーザーインタフェースだ。確かに結果では二つのユーザ体験値が「Game Experience」として示されている


 なぜ二つのモデルが必要なのか。Salvator氏は,しきい値モデルだと直感的に分かりやすいが単純すぎる嫌いがあり,ベイズ解析モデルは詳細なデータを取れるが分かりにくいという問題があるといったように,一長一短だからと説明する。一長一短なら,二つ同時に用いて,長所だけを使えばいいというわけだ。



■ビジョンは魅力的だが,実態が伴うかどうかがカギ
IGCATが今後実装していく予定を示したスライド。マルチスレッド対応のほか,テストを簡単にする「自動評価オプション」についても言及されている
 これから登場するベンチマークテストとしては,取り扱うタイトルが少々古いのが気になるところだが,これらは適切なものがあればアップデートされるとのこと。Salvator氏は,今後の予定として,FPSだけでなく,MMORPGやRTSといったほかのジャンルにも対応させる計画を明らかにしている。また,現在はどうしてもフレームレートという"呪縛"から逃れられていないが,今後は敵AIのレベルや,マルチチャネルサラウンドサウンド,バッテリー駆動時におけるノートPCなどについても,ユーザ体験値として評価の対象にしていく予定という。
 ただし,「優先順位があります。一つ一つ,徐々に対応していきたいと思います」(Salvator氏)とのことで,例えば「"IGCAT Ver.2.0"でマルチチャネルサラウンドサウンドに対応」などといった具体的なプランは述べられていない。

 テスト方法で最も気になるのは,特定のゲーマーを利用して算出したしきい値だ。当然,次の機会にしきい値を算出するときに,まったく同じ条件にはならないわけで,IGCATはどうしても「しきい値が公正かどうか」という議論の対象となることを避けられない。
 実際,説明会に続いて行われた質疑応答では,「しきい値をどう計測するか」に恣意的な運用が行われるのではないかという主旨の質問が何度も起こった。それに対しSalvator氏は「他社(=AMD)のCPUを搭載したシステムと比較しても公正な結果が出ます。テスト方法を公開しますし,ソースコードを見ていただければ,隠しごとのないことも分かっていただけると思います」と主張する。
 前出のサイト「www.intelcapabilitiesforum.net」では,ベンチマークソフトの実行ファイルだけでなく,技術ドキュメントやテストの内容など,詳細情報をすべて公開するとした。ソースコードも,Intelとプレス,もしくはデベロッパとして契約すれば公開されるという。

 なお,同氏によれば,Intelは使用者からのフィードバックを待っているとのこと。業界全体で,このプラットフォームベンチマークをブラッシュアップしていきたいとした。ちなみにこの説明会では,いわゆるデジタルホーム向けのベンチマークソフト「Intel Digital Home Assessment Tool」についての発表も行われたのだが,こちらについても同様とのことだ。

 では,IGCATが有益か無益かというと,実際に公開されていない状況では,判断の下しようがないというのが正直なところである。その理念には共感するところが多くあるし,仮に今後Salvator氏が述べたような機能が追加されていくとすれば,画期的なベンチマークソフトになる可能性だってあるだろう。ただそれは,実際に試してスコアが妥当であることを確認でき,かつ,公開されるドキュメントが信用に足るものだったときに,初めて期待できることだ。
 というわけで,現時点での評価は保留したい。ここは素直に,来週の正式公開を待つことにしよう。(佐々山薫郁)

  • 関連タイトル:

    ベンチマーク

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